日楯夫婦と月鉾は、父・真道彦やヤーチン姫が重臣たちの裏切りによって捕らえられたことに心を痛め、神前にて祈願をこらしていた。たちまちユリコ姫に神懸りがあり、国魂神・竜世姫命の神勅が降りた。
それによると、このたび真道彦の禍はすべて神界の経綸によるものであり、案じ煩うことは無い、とのことであった。そしてカールス王の迷夢を覚ますためには、日楯夫婦と月鉾の三人で、南琉球の王である照彦王を尋ね、救援を求めよ、と神命を下した。
三人は密かに旅立ち、キールの港を指して山道を進んだ。月の照る夜、三人はアーリス山の山頂で休んでいた。すると峠を登ってくる菅笠が見えた。見ると巡礼姿の妙齢の美人である。
巡礼姿の美人は、月鉾を追って来たテーリン姫であった。テーリン姫はどうしても月鉾と同行すると言い張り、三人が神勅による旅だと言っても、月鉾が自分から逃げて、マリヤス姫の元に逃げるのではないかと疑って聞かない。
三人が困り果てていると、最前より木陰に潜んで様子を窺っていたマリヤス姫が現れ、月鉾が自分のところに逃げるなど無礼千万と言って、月鉾に打ってかかった。テーリン姫はそれを見てマリヤス姫に狂気のごとく組み付いた。
月鉾はこれを見てテーリン姫を縛り上げた。そして三人はこの機に乗じてその場を逃げた。後に残されたマリヤス姫は、テーリン姫に優しく接した。最初は疑っていたテーリン姫も、正直に身の上を話すマリヤス姫に心を開き、二人は姉妹のように親しむようになった。そして月鉾らの帰りを待つこととなった。