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文献名1霊界物語 第31巻 海洋万里 午の巻
文献名2第1篇 千状万態よみ(新仮名遣い)せんじょうばんたい
文献名3第1章 主一無適〔867〕よみ(新仮名遣い)しゅいつむてき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-02-25 17:52:30
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年08月18日(旧06月26日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年9月15日 愛善世界社版7頁 八幡書店版第6輯 43頁 修補版 校定版7頁 普及版2頁 初版 ページ備考
OBC rm3101
本文のヒット件数全 1 件/根別の国=1
本文の文字数3768
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本文  千早振遠き神代の昔より  珍の都のエルサレムに
 天津御神の神言もて  国治立大神は
 普く世人を救はむと  野立彦と現はれまし
 豊国姫の神御霊は  野立姫と現はれて
 天と地とを兼ね玉ひ  百の神人草木まで
 安きに救ひ助くべく  心を千々に配りまし
 埴安彦や埴安姫の  貴の命と現はれて
 黄金山下に三五の  神の教を樹て玉ひ
 救ひの道を宣り玉ふ  此御教を朝夕に
 守り玉へる天教山の  木の花姫を始めとし
 日の出神の珍御子が  神素盞嗚大神の
 瑞の御霊の神業を  輔け玉ひて世に広く
 開き玉ふぞ尊けれ  豊葦原の瑞穂国
 根別の国と名に負ひし  自転倒島の中心地
 綾の高天の霊場に  国治立大神は
 暫し隠れて四尾山  国武彦と名を替へて
 五六七の御世を来さむと  桶伏山の片ほとり
 厳と瑞との神御霊  玉照彦や玉照姫を
 錦の宮の神司と  定め玉ひて三五の
 教の庭を開かせつ  言依別の瑞御霊を
 錦の宮の教主とし  西の神都はエルサレム
 東の神都は桶伏の  霊山会場の神の山
 太く建てたる神柱  緯の御霊と聞えたる
 言依別命をば  道の教主と任け玉ひ
 神の司を養ひて  自凝島を初とし
 国の八十国八十島を  皇大神の御恵みの
 光りに照らし露あたへ  曇り切つたる現世を
 寂光浄土の天国に  造り成さむと千万に
 いそしみ玉ふ有難さ  教司の其一人
 中にも清き神司  国依別の宣伝使は
 教主の後に従ひて  自凝島を出立し
 神のまにまに和田の原  荒浪分けてやうやうに
 海に浮べる高砂の  テルの港に上陸し
 夜を日に継いで三倉山の  国魂神を祀りたる
 祠に二人は参拝し  飢に迫りし国人を
 救ひ助けて人々に  救ひの神と崇められ
 教主言依別命は  袂を分ちウヅの国
 末子の姫の現れませる  都をさして出でて行く。
 後に残りし国依別は  軽生重死のウラル教が
 無道極まる迷信を  打破し尽して潔く
 此場を立ちてヒルの国  桜の花もチルの里
 夜の荒シの森蔭に  辿りて息を休め居る
 時しもあれやウラル教  乱れ散りたる信徒を
 集めて再び出で来り  国依別を十重二十重に
 囲みて生命を奪ひ取り  三五教を根底より
 殲滅せむと襲ひ来る  醜の魔神を悉く
 珍の神術に蹴散らし  皇大神の御前に
 感謝し奉る折もあれ  キジとマチとの二人の男
 国依別の神徳を  慕ひて茲に走せ来り
 師弟の約を結びつつ  日暮シ河の土堤の辺に
 進む折しもウラル教の  アナン、ユーズの両人は
 数多の部下を引率し  剣や竹槍を携へて
 ヒルの都に三五の  教を伝ふ神司
 楓別命の霊場を  夜陰に紛れて蹂躙し
 打破らむと進み来る  此一隊に出会し
 キジとマチとの両人は  国依別の司より
 鎮魂帰神言霊の  幽玄微妙の神力を
 完美に委曲に授けられ  勇み進むで河の辺を
 進みて来る魔軍に  向つて言霊打出せば
 不意を打たれて敵軍は  雲を霞と逃げて行く
 茲に三人は夜の道を  スタスタ進みアラシカの
 険しき峠を攣登り  東北指して降り行く
 道の片方の古社  楠の古木の天を摩し
 聳り立ちたる木下蔭  額づき拝む人影を
 認めて近づき伺へば  ウラルの道の神司
 エスの娘と聞きしより  キジは言葉も柔かく
 親切こめて問ひ糺し  茲に様子を詳さに
 明め尽し両人は  国依別に相別れ
 日暮シ山の岩窟に  囚はれ苦しむエスの身を
 一日も早く助けむと  勇み進むで出でて行く
 国依別の神司  エスの娘に従ひて
 アラシカ山の麓なる  エスが館に立ち向ひ
 暫くここに逗留し  神の教を宣べ伝へ
 ヒルの都に立寄りて  楓別に面会し
 キジ、マチ二人を助けむと  日暮シ山の岩窟に
 進みてブールの神司  言向け和し驍名を
 高砂島は云ふも更  豊葦原の国中に
 轟かしたる物語  狩野の渓流眺めつつ
 初秋の風を浴び乍ら  安楽椅子に横はり
 敷島煙草をくゆらしつ  浄写菩薩と立向ひ
 いよいよ霊界物語  三十一の巻始め
 言霊車転ばしぬ  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましませよ。
 国依別はエリナに導かれ、エスの家に漸く着きぬ。エリナの母は思ひの外の重病にて、殆ど人事不省の体なり。国依別は取る物も取敢ず、草鞋をとくとく座敷に駆上り、直に天津祝詞を奏上し、天の数歌を称へあげ、鎮魂を施し、いろいろ雑多と丹精をこらして、病気回復の途を謀りける。されど如何にせしか、病人は少しも快方に向はずして、日に日に衰弱甚だしく、最早絶望の域に進みたり。エリナは一生懸命に水垢離を取り……、
『三五教の大神国治立命様、常世神王様、何卒々々父の危難を遁れさせ玉へ、母の難病を今一度救はせ玉ひて、夫婦親子が仮令一日なり共、嬉しく楽しく、互に顔を見合せ、恵の露にうるほひまする様……』
と、我れを忘れて祈願を凝らし居る。されどエリナの心中は未だ主一無適の精神には成り得ず迷ひあり。其理由は、国治立命は果して善神なりや? 但は常世神王の方が善神なるや? 国治立神を念じなば、常世神王の神怒に触れて、益々母の病は重り、父の大危難は愈深くなり行くには非ざるかとの疑念が、頭脳の中に往来しゐたるが故なり。
 国依別はエリナの心の中を推知し、四五日茲に逗留して、いろいろ雑多と善悪不二、顕幽一本の真理を説き諭したれども、父母の災厄に周章狼狽したる若き娘の事とて、千言万語を尽しての国依別の教示も、容易に頭に入らず、唯一日も早く父の危難を救はれ、母の重病の癒やされむことにのみ余念なく、一心不乱になり乍ら、信仰上の点に於て非常に迷ひ苦しみ居たり。それ故に神徳充実したる国依別命の鎮魂も、言霊も功験を現はすには至らざりける。
 凡て信仰は迷ひを去り、雑念を払ひ、理智に走らず、只何事も神意に任せ奉り、主一無適の心にならなくては、如何な尊き神人の祈念と雖も、如何に権威ある言霊と雖も、容易に其効の顕はれざるは当然なり。要するにエリナの信仰は二心にして、悪く言はば内股膏薬的信仰に堕し居たり。幼少の頃より宇宙間に於て常世神王に優る尊き神はなく、又常世神王に勝るべき権威はなし、万一常世神王の忌憚に触れむか、現界は云ふも更、霊界に於ても無限の苦しみを受け、且つ厳罰に処せらるべしとの信仰を深く心の底より植ゑ付けられ居たるが故に、誠の神の教を喜びて聴聞し乍らも、不安の雲に包まれ、煩悶苦悩を続け居たるなりける。
 国依別は容易にエリナの信仰の動かざるを悟り、且つ彼の母の病気は到底救はれざることを悟りて、いよいよ此処を立去り、ヒルの都に向う決心なしたりける。
 国依別はエリナに向ひ、
『エリナさま、永らく御世話になりましたが、貴女の御信仰は何うしても徹底致しませぬ。それも無理のなき事でせう。就いてはお母アさまの御病気も最早絶望ですから、其お積りで居て下さい。又エスさまを救ひ出さむとして、日暮シ山の霊場に向つたキジ公、マチ公の両人が未だ帰つて来ないのも、何か神界に於て深き思召しのある事でせう。父を救ひ、母を救はむとのあなたの真心は実に感服の至りですが、斯かる場合には、あなたの日頃信ずる常世神王様に、主一無適の真心を捧げて御願ひなさる方が却て御神力が現はれるでせう。三五教の主神国治立命様は、あらゆる万民の苦みを助け下さる有難き神様なれど、あなたの信念力が二つに割れて居りますから、神様も救ひの御手を伸べさせ玉ふ事が出来ませぬ。斯う申せば、国治立神は余程気の狭い偏狭な神様だと思はれるでせうが、決して左様な不公平な神様ではありませぬ。只あなたが神様は元は一株だから、常世神王様を念じても、国治立の神様は決して御怒りなく、又国治立命を何程一心に念じたとて、常世神王様が御立腹遊ばすものでないと云ふ事が御分りにならなくては、信仰は駄目です。神様の方では左様な小さい障壁や区画はありませぬが、貴女の心の中に区画をつけたり深き溝渠を穿つたり、いろいろと煩悶の雲が包んでゐるから、何程神様が御神徳を与へやうと思召しても、お前さまの方に感じないのだから仕方がありませぬ。それ故あなたの最も信ずる、常世神王様に御祈願をなさつた方が、却て御安心でせう。私は是から御暇を致します。ここ暫くの間は、ヒルの都の楓別命の神館に逗留の考へで厶いますから、御用があつたら、国依別と云つてお訪ね下さいませ。何時でもお目にかかります。又幸ひにエスさま始めキジ、マチの両人が帰つて来られたら、国依別はヒルの都に逗留して居るからと、伝言を願ひます。左様ならばエリナさま、御病人様を大切になさいませ』
と立出でむとするを、エリナは周章て引とめ、
『モシモシ宣伝使様、どうぞさう仰有らずに、暫く御逗留遊ばして下さいませ。これから心を入れ替へて、あなた様の仰せに従ひ、信仰を致しますから……』
『心の底から発根と分つての信仰でなければ到底駄目です。神様は仁慈無限の御方故、別に頼まず共、助けてやりたいと思召し、種々と力を御尽し遊ばして厶るのですが、あなたの心の中の執着と云ふ曲鬼が神徳を遮つて居るのです。其曲鬼をあなた自ら追出さねば到底駄目ですよ。国依別が別れに臨むで、御注意申上げておきます。左様ならば……』
と後に心を残しつつ、国依別は此家を立出でヒルの都を指して進み行く。
(大正一一・八・一八 旧六・二六 松村真澄録)
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