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文献名1霊界物語 第31巻 洋万里 午の巻
文献名2第2篇 紅裙隊
文献名3第10章 噂の影〔876〕
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-05-13 15:35:38
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年08月19日(旧06月27日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所
OBC rm3110
本文の文字数4658
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本文  日暮シ山の山麓に  教の館を開きつつ
 朝な夕なにサボリ居る  日暮シ山のウラル教
 アナン、ユーズを始めとし  ブール教主の目を忍び
 葡萄酒の倉を押開けて  盗み出したる豊醇の
 甘しき酒に舌縺れ  二人は膝を附き合せ
 ヒソヒソ話に耽りゐる。
 ユーズは酔の廻つた口から、
『オイ、アナン、アラシカ山の山麓エリナの宅へ往つた時は随分面白かつただらうなア。あの時にあゝ云ふ地震さへ無ければ、貴様は甘くやつて居たのだらうにのウ、惜しい事をしたものではないか』
『そりや随分面白かつたよ。併し乍ら流石はエスの娘丈あつて、随分売り出しよつた時にや、流石のアナンも一寸は驚かざるを得なかつたよ。併し此頃の大将の御機嫌と云つたら、サツパリなつてゐないぢやないか。何とかして機嫌を取る妙案はなからうかねい。何を云つても此間の様にヒルの都攻めに失敗し、大将が焦れて居つた、紅井姫を生捕つて帰つて御目にかけないものだから、御機嫌が悪いのだよ』
『馬鹿言へ、教主に限つて、そんな陽気な心がないのはこのユーズも知つてゐるよ。あれ丈一心に神様の事計りして御座るのだもの、……お前はチト考へ違ひをしてゐるナ』
『そこが思案の外と云ふものだ。お前も余程お目出たいねい。実の所ヒルの都攻めに、此方アナンを御遣はしなさつたのは、アナンをして肝腎要の目的は紅井姫を生捕にして帰れ……と云ふのが眼目だからなア』
『教主が又如何してヒルの館の紅井姫を知つてゐるのだ、それが分らぬぢやないか。紅井姫は所謂箱入娘で、城外へ一歩も踏み出した事がないと云ふのぢやないか』
『そこが其処だで……遠い様でも近いは男と女とか言つてなア。いつの間にかチヤンと鋭敏な教主の目には、遠うの昔に止まつてゐるのだ。お前達は幹部になつてから、まだ時日が経たないから、本当の事は知らないが五六年前の事だつた。ヒルの都の下手から船に乗つて、帆を順風に孕ませ、ブールの教主が此方へ御帰りの途中、上からスツと流して来た遊山船の中に、十四五の何とも知れぬ、天女の様な娘が乗つてゐるぢやないか。其時にブールの教主は其女に見とれて船端を踏み外し川中に陥り、大変危ない事があつたのだ。このアナンは其時お側に居つたから、能く知つてゐるのだ。教主は俺達に川の中から救ひ上げられ、御苦労だとも何とも言はずに……あの綺麗な娘は、一体何処の者だ……と意味ありげに御尋ねになつた其時に、俺は教主に向つて……あの女はヒルの都の神館紅葉彦命の娘で御座います……と云つた所、直にグンニヤリとうな垂れ、それは実に失望落胆の体だつたよ。其後と云ふものは、如何したものか、何程よい縁があつても、教主は皆撥ねつけて了ひ、元気盛りの身を以て、今に独身生活を続けて御座るのも、そこには一つの思惑があつての事だよ。何とかしてあの女を引張込み、教主の奥さまにしたいものだ。さうすれば何時もニコニコで御機嫌が能いのだけれど、此頃の様な六つかしい顔を見せられると、俺達も本当に堪らないワ』
『ユーズは今が初耳だよ。そんな事で御機嫌が直るのなれば、何とか一つ献身的活動を続けて、成功させたいものだなア。そンな秘密を知つて居つて、何故今迄智謀絶倫のユーズに知らさなかつたのだい。どないでもユーズの利くユーズさまだから、遠うの昔に、俺が知つて居れば、成功して居るのだがなア』
『ユーズ、お前は酒に酔うた時許り、無茶苦茶に強いが、酔が醒めると、サツパリ大水が引いた跡の様に、臆病になり、シヨビンとして縮こまつて居るのだから、当にならないよ』
『ナアニ、そんな事に掛たら、得手に帆のユーズだよ。キツと成功させて見せる』
『それならお前、是からヒルの都へ乗込むで、何とか計略を以て引張出して来たら如何だい』
『このユーズの俺にはナ、一切万事吾方寸にありだ。今日は前祝として、十分にブール酒を頂戴し、いよいよ明日から活動の幕を切つておろすから、甘く往つたら拍手喝采を願ひまーすだ。アツハヽヽヽ面白い面白い』
『併しユーズ、お前、暫くヒルの都行は見合して、ここに居つて呉れねばならない事がある』
『ユーズに見合せとは、そりや又如何云ふ訳だい』
『お前も知つてゐる通り、国依別の宣伝使が使はしたキジ、マチの両人、あゝして何時迄も陥穽へほり込み、毎日腐つた梨や蜜柑の二つや三つ放り込みて、生命をつながせ、虐待して帰してやらぬものだから、国依別も今頃は日暮シ山へ遣はした両人は今に帰つて来ない、どうして居るのだらう。まさかあれ丈の熱心だから、よもやウラル教に逆転してゐるのでもあるまい、大方陥穽へでも落されて苦みて居るに違ない。一つ実地探険と出掛ようか……などと云つて、のしのしとやつて来ようものなら、それこそ此間の地震ぢやないが、此霊場は地異天変の大惨事が突発するのだ。アナンはそれが第一気に掛つてならないのだ。何とか国依別がやつて来よつたら、今迄とは態度を一変し、最善の方法を講じて見ねばなるまいぞ』
『さうだなア、今度はユーズを利かし、此方から極下に出て、御客さま扱にし、国依別を心の底から得心させ、さうして都合好くば、ウラル教の副教主に推薦してやつたら、何程頑固な彼奴だつて、今日の普通宣伝使の境遇から比べて見れば、其地位名望に於て雲泥の相違だから、喜び応ずるに違ひないワ。ウラル教も此頃の様に秋風が吹いて、日に日に寂寥の空気に包まれて居る際だから、敵を以て敵を制する筆法で、あゝ云ふ立派な男を、此方の味方に取り込みたならば、ウラル教も再び勢力を盛返し、昔の様に立派な教団になるであらうと思ふが、お前は如何考へるか』
『それもさうだ。併し乍ら、ユーズの言ふ通りにさう甘く着々と此事業が進行するだらうかなア』
『決してアナンどの、御心配御無用だよ』
と話してゐる時しも、門番のハル、ナイルの両人慌だしく駆け来り、
『ハルが申上げます。只今国依別が岩戸の口迄参りまして、それはそれは美しい紅井姫とかエリナとか云つて、二人の素的な女を伴ひ、早く幹部の誰かに会はして呉れよと云つて、何と云つても帰りませぬ。如何取計つたら宜しう御座いませうかなア』
 アナンはハツと驚き乍ら、稍声を震はせて、
『ナヽ何と申す。クヽ国依別が来たと申すか』
『紅井姫、エリナの両人がお見えになつたと云ふのか。そりや人違ではあろまいな。チツトばかり、ユーズも心配だからのウ』
『エヽ決して決してハルの言葉に間違は御座いませぬ。三倉山の谷間で見た宣伝使です。そして一人はエリナに間違御座いませぬ。紅井姫と云ふ方は是迄に会つた事がないから、真偽は分りませぬが、随分綺麗な女です。此岩館でも一目睨みたら、ガチヤガチヤと砕いて了ひさうな目付をして居りますよ。……ナア、ナイル、随分別嬪だつたなア』
『御両人様、決してナイルの眼では間違はなからうと思ひます。何とか返事をせなくてはなりませぬが、如何致しませう』
との尋ねにアナンは、
『一寸待て、考へがあるから』
と俯むき、ユーズと共に腕を組み、考へ込むでゐる。其間にハル、ナイルの両人は逸早く此場を立去り、表口に現はれ来り、国依別に向ひ、両人口を揃へて、
『オイ、一寸待て、此方にも考へがあるから……とアナン、ユーズの御大将が仰せになりましたぞ』
『なに、一寸待て、こつちに考へがあるから……とは怪しからぬ。よし其方がさうなら此方にも考へがある……サア姫様、エリナさま、私に従いてお出でなさいませ』
と窟内に踏み込まうとする。ハル、ナイルの両人は大手を拡げて、
『マアマア待つて下さいませ。タヽ大変で御座います。一寸待て、此方にも考へがある……と二人の大将が仰有つたのだから、さう勝手に押入つて貰ひますと、あとで私が如何な目に会はされるかも分りませぬ。一寸奥から返事がある迄、暫く其処に休みてゐて下さいませ』
『あゝ仕方がない、国依別暫く茲に休息がてら待つて遣はす、早く返答を致す様に、奥へマ一度伺つて来い』
 ハル小声で、
『始めて来よつて、偉相に、俺達を奴扱にしよるワイ。えゝ怪体の悪い……』
と呟き乍ら、再びアナン、ユーズの居間へ走り入つた。
 二人は互に腕を組み、差俯むいて途方に暮れ乍ら、一寸顔をあげて見ると、最前使に来た両人は何時の間にか其処に居ないので、アナンは顔色を変へて、
『あゝ二人の奴、どこへ行きよつたのかなア。まだ返事を聞かない中から飛出したのではあるまいか。災は下からと云つて、せうもない事を言ひよると、後が面倒になつて纒まりがつかなくなる。折角の神謀鬼策が駄目になつた例しもある慣ひだ。えゝ困つた奴だナア』
と両人は顔見合して呟いて居る。其処へ慌だしくハル、ナイルの両人走り来り、
『申上げます。大変に剛情な奴で、無理に押入らうと致しますので、あなたの御言葉の通り……オイ一寸待て、此方にも一つ考へがあるから……とかましてやりましたら、国依別の奴……ナニ猪口才な、そちらに考へがあれば此方にも考へがある……とエラさうな事を言つてましたぜ。御用心なさらぬと、あンな強い奴が現はれた以上は大変ですぞ』
『オイ、ハル、ナイルの両人、誰がそンな事を国依別に申せと云つたか、いつ又此方が左様な言葉を出したか』
『モシ、アナン様、モウ御忘れになりましたか。あなた確に……ここにナイルも聞いて居りましたが、一寸待て、此方にも思案があるからと云つたぢやありませぬか。今更言はぬと仰有つても、そンな無理は何程上役でも通りませぬぞや』
『それは其方に対して、一寸待て……と云つたのだ』
『さうでせう、私に仰有つたから、即ち私があなたの代理となつて、国依別に一言の間違もない様に伝へたのです。それが何処が悪う御座いますか』
『あゝ困つた奴だなア。モウ斯うなつちや仕方がない。……アンナさま、肝玉を放り出して、あなたとユーズの二人が国依別の前に十分に慇懃な詞を使つて、言向和し、怒らさない様にして、甘く行けばウラル教の副教主に祭り上げ、紅井姫は教主の奥方となし、エリナは私の奥方と決定ておいて、腹帯を締めて一つ円滑に舌剣を揮ふて見ようぢやありませぬか。一枚の舌の使ひやうに依つて、平和の女神ともなり、戦争の魔神ともなるのだから、十分に巧妙な辞令を用ゐ、三五教ぢやないが善言美詞の言霊を以て、敵を悦服させると云ふ手段に出ようぢやありませぬか』
『それは至極妙案でせう。併しそれに先立ち、ブールの教主に申上げておかなくてはなりますまい。あなた御苦労だが、其任に当つて下さい。私は是から表口に往て国依別に都合をよく胡麻をすつて来ますから……』
と俄に吾れ、俺の辞を改め、美しい言葉を使ひ乍ら、ユーズは教主の居間へ、アナンは入口へと持場を定めて進み行く。
 ハル、ナイルの二人はアナンの前に立ち、
『サアサア一寸先は如何なる事やら、暗か月夜か鼈か、困つた事が出来て来た』
と呟き乍ら、入口指して駆け出しにける。
(大正一一・八・一九 旧六・二七 松村真澄録)
(昭和九・一二・一七 王仁校正)
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