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文献名1霊界物語 第33巻 海洋万里 申の巻
文献名2第1篇 誠心誠意よみ(新仮名遣い)せいしんせいい
文献名3第4章 楽茶苦〔919〕よみ(新仮名遣い)らくちゃく
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
捨子姫は結婚式の準備に繁忙を極めていたが、松若彦が慌ただしく走り来たった。捨子姫の居間に通された松若彦は、高姫が自分の館にやってきて熱心に反対運動をしに来たことを告げ、捨子姫に注意を促した。

捨子姫は松若彦の報せに感謝し、ただし自分はすでに腹を決めているし、昨日国依別に会った時も、国依別本人が固い決心だから、何が起ころうとも安心するように、と松若彦をなだめた。

そこへ言依別命が松若彦を尋ねてやってきた。一緒に盛典を成功させようと、二人は御殿に向かって行こうとしたとき、高姫は髪を振り乱して捨子姫の館の玄関口にやってきた。いつの間にか言霊停止は解除されて、怒鳴りたてている。

後からカールと春彦がやってきて追いついたが、松若彦は玄関まで出て、取り込み中だから帰るようにと高姫に告げるが、高姫は必死にこの結婚が大神様への侮辱になるからと訴えた。

松若彦は高姫に上がるようにと言った。高姫はカールとちょっとやり合い、松若彦に憎まれ口を叩いた後、捨子姫に意見を始めた。

しかし捨子姫の結婚賛成への意見は堅く、逆に言依別命、松若彦とともに、高姫の反対意見に対して諭して聞かせた。高姫もついに我を折って、ここはおとなしく改心することになった。
主な人物 舞台ウヅの館 口述日1922(大正11)年08月26日(旧07月4日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年11月10日 愛善世界社版36頁 八幡書店版第6輯 269頁 修補版 校定版37頁 普及版15頁 初版 ページ備考
OBC rm3304
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本文  夜の明けぬ前から捨子姫は、末子姫の結婚の用意に取掛り、相当に繁忙を極めて居た。そこへ松若彦は慌ただしく走り来り、案内を請うた。高公は玄関にて其用事の趣を聞き、直ちに捨子姫の居間に通した。
捨子姫『松若彦様、慌ただしきあなたの御様子、何か変事が出来したので御座いますか』
 松若彦は息を喘ませ乍ら、
松若彦『今日は誠に以てお目出たう存じます。さて只今私の館へ高姫さまが御出でになり大変な権幕で御座いました。要するに今度の結婚をジヤミにしようと熱心に車輪的運動をやつて居られます。私も言依別命様より昨夜大体を承はつて居りましたので、これは屹度其問題に違ないと思つてゐますと、果して私が只一口……ウン……と云つて、首を縦にふりさえすれば、万事解決のつく話だと言はれましたので、コリヤ大変、今となつて水を注されては、素盞嗚大神様初め、末子姫様に対し、申訳がない。弁舌の巧な高姫さまに対して議論をして居つても、追つ付かない、取り合はぬが奥の手と、裏口から逃げて参りました。あと振り返り見れば、高姫さまは髪ふり乱し、夜叉の様な勢ひで、私のあとを追つかけて来ます。私は幸ひ、一本橋を落しておいて高姫さまの進路を遮り、漸く此処まで駆けつけました。何れ、後程お宅へお出でになるでせうから、それ迄にトツクリとあなたと御相談を遂げ、姫様にも断乎たる決心を持つて頂きたいと存じまして、お邪魔を致しました次第で御座います』
捨子姫『あゝ左様で御座いましたか。それは大変御心配をおかけ申しました。姫様の方に於ては夜前より、言依別命様と私が、及ばず乍ら、いろいろと申上げ、今の処では挺でも棒でも動かぬ様な固い御決心で御座いますから、たとへ高姫さまが何と云はう共、最早ビクとも動きませぬ。安心して下さいませ』
松若彦『それを聞いて私も一寸安心致しました。併し乍ら、こんなゴテゴテした事が、肝腎の国依別さまの耳へでも這入らうものなら、淡泊な人だから……エヽもう斯んなゴテゴテした縁談なら真平だ……と首を横にふられたが最後、吾々は大神様に対して申訳が御座いませぬから、それが第一心配で御座います』
捨子姫『国依別さまも、妾が夜前ソツと高公を伴れ訪問致し、いろいろと御意見を承はりましたが、高姫さまの混つ返しについて、少し許り、うるさがつて居られました。併し乍ら、今度はどうしても、大神様の思召だから、否む訳には行かぬ……と仰有つて固い固い決心が見えました。これも一つ御安心下さいませ』
 斯かる所へ、言依別命は只一人現はれ来り、高公に案内させ乍ら、ツカツカと奥に入り、
『ヤア松若彦さま、此処でしたか、よい所でお目にかかりました……捨子姫様、御忙しい事で御座いませうなア』
松若彦『つい今の先、参つた所で御座います』
捨子姫『何と云つても、お目出たい事で御座います。あなたも此事に就て御奔走遊ばし、さぞお心遣ひの程御察し申上げます』
言依別『時に松若彦さま……高姫さまの事ですが、俄に病気が起り、一旦は人事不省に陥られましたが、吾々初め、カール、春彦両人の祈願に依りて、漸く息を吹き返されました。併し乍ら言霊が停止されて了ひ、何を言つても御答へなく、目計りパチつかせ、体をプリンプリンと振つて計りゐられます。何れ今夜の御結婚がお気に入らないのでせうが、此事計りは如何あつても、高姫さまの御意見ばかり用ゐる事は出来ませぬから、飽く迄も此盛典を完全に成功させたいと思つて、あなたの御宅へ御訪ねした所、常彦さまが留守をして居り、大方捨子姫様の御宅へ御出でになつたのだらうとの事、それ故お邪魔を致しました様な次第で御座います』
松若彦『何と云つても、最早動かすことは出来ませぬ。サア是から御殿へ上りまして、一切の準備に取掛りませう』
言依別『左様ならば、捨子姫さま、松若彦様、取急ぎ参りませう』
と立出でむとする所へ、高姫は髪ふり乱し、玄関口に立塞がり、何時の間にか言霊の停止は解除されて、
高姫『言依別、松若彦、捨子姫殿、用が御座る。早く此門あけて下さい』
と呶鳴り立ててゐる。後よりカール、春彦の二人は慌ただしく走り来り、漸く玄関先で追ひ着き、胸を撫で卸してゐる。
 言依別命外二人は、高姫の声を聞き、又うるさい、やつて来よつたなア……と口には云はねど、互の顔を色に表はし乍ら、松若彦は表の戸を開き、
松若彦『高姫さま、今日は取込んで居りますので、どうぞ御帰り下さいませ。又明日ゆつくりとお目にかかりませう』
高姫『又しても妾を邪魔者扱ひにして、門前払ひを食はす積りですか。言に捨の両人も此に居られるでせう。何程忙しいか知りませぬが、今晩のことよりわけて、きまりつけねば、此儘に捨子姫と云ふ訳にも参りませぬぞや。各自が気をつけて、姫様の此結婚は末の末子姫まで考へて上げねば、あつたら娘をドブ壺へおとすやうなことを致しましたら、それこそ瑞の御霊様へ、あなた方の言ひ訳が立ちますまいぞや、此高姫も第一申訳が立ちませぬからなア。妾の言ふ事はどうで御気には容りますまいが、ここは一つ大雅量を出して老人の云ふ事も取上げて貰ひませぬと、後に至つて臍を噛むとも及ばない、困つた事になりますぞや』
松若彦『そんな玄関口で、見つともない、どうぞ奥へ御通り下さい』
高姫『通れと云はなくても、通らなおきますか。妾の云ふ事が通らねば、通る所まで通して見せます。桃李物云はずと云ふ事がある。此高姫が通りたら最後、物言ひなしに私の意見を通して下さい。お前さま方は寄つてたかつて、とりどりの小田原評定計りに日を暮して御座るが、何を云つても、雪と炭、月と鼈程身魂の違ふ此縁談がどうして纏まりませう。チツト胸に手を当てて後先を考へて御覧なさい。誠に神様を侮辱すると云うても、これ位甚だしい事は御座いますまい。誰も彼も末子姫様の御機嫌をとる事計り考へて、御身の上の大事と云ふ事を一寸も構はないから、已むを得ず、年の老つた高姫が又しても又しても出馬せねばならぬ様な事が、出来て来るのだ』
カール『高姫さま、そらさうですワイ。お前さまは三五教の元老株だから、かういふ時にや飛んで出るのが当り前だらう。内閣組織の時でも、いつも元老が飛出すぢやないか。併し乍ら立憲政体の今日、元老の飛出しは時代錯誤だとか何とか云つて、随分国民が小言を云うてゐますよ。モウいい加減にお前さまも目をつぶつておとなしくしたら如何ですか。日進月歩の今日余り古い事をふりまはされると、時代に順応すると云ふ神策が行はれなくなり、此ウヅの国は今日の文明から継子扱をされる様になつて了ひますよ』
高姫『お黙り召され……カール口か何ぞのやうにベラベラと、こんな所へ出しやばる幕ぢやありませぬぞえ。私は言依別様、其外の立派な方々に御意見に来たのだ。コンマ以下のお前さまが、此大問題に対して、何嘴を尖らすのだい』
カール『これだから、あの儘にしておいたが宜かつたのだ。言依別さまを途中まで御送りすると……おいカール、お前は高姫の言霊が利く様に、マ一度引返し、ウ…ア…と二声言霊を唱へてやれ、そしたら自由自在に口が利けるやうになるから……と気の良い言依別様が仰有つたものだから、此奴ア今物言はしたら、面倒だと思ひ乍ら、教主の命令背くに由なく、引返して物を言ふ様にしてやれば、すぐ此れだから困つて了ふ。どうぞマ一遍、とめる工夫はあるまいかな』
と首を振つてゐる。
高姫『ヘン、お構ひ遊ばすなや。高姫は生れついてから唖ぢや御座いませぬぞや。言霊は天地の神様から授かつて居ります。とめられるものなら、とめて御覧なさい。妾が物言はなかつたのは余りむかつくから、言はぬは言ふにいや優ると、プリンプリンと身振りで妾の意志を表示してゐたのだよ。何も御前さまのウ…ア…なんてアタ阿呆らしい、そんな言霊で物が云へたなぞと、余り、ヘン、見違ひをして貰ひますまいかいなア。アヽドレドレ、何時迄も門立ち芸者の様に玄関口に立ちはだかつて、言霊の発射も気が利きませぬワイ』
と云ひ乍ら、奥の間に主人顔して、ドンとすわり込み、
高姫『松若彦さま、今朝程は大きに御世話になりました。ヨウまアあんな深い川へおとして下さいまして、誠に高姫も空中滑走の味を覚え、愉快なこつて御座いました、ホヽヽヽヽ。人を呪はば穴二つですよ。お前さまもシツカリなさらぬと何時ドブへはまるか分りませぬぞや……コレ捨子姫さま、お前に一つ言ひたい事がある』
捨子姫『ハイ、何事か存じませぬが、承はりませう』
高姫『お前も大抵私が何しに来た位は、云はいでも御分りになつてゐるでせう。今高姫が茶々入れに来るから、腹帯をしめねばならぬと、三人が三人云ひ合はして御座つたでせう。併し乍ら、よく考へて御覧なさい。あの国依別と云ふ男、若い時から親子兄弟散り散りバラバラとなり、碌に教育も受けず、乞食の様にうろつきまはり、少し大きくなると、女たらしの後家倒し、婆嬶弱らせの家潰しをやつて来た如何にも斯うにも仕方のない代物を、此頃球の玉とかの神力を受けたと云つて、御勿体ない素盞嗚尊様の大切な御娘子、末子姫様の婿にしよう等とは地異天変、天地転倒の行方と申さねばなりますまい。是までお前さまは何時も末子姫様の近侍を勤めてゐた関係上、主人が大事と思ふ誠があれば、国依別の欠点を包まず隠さずさらけ出して、愛想をつかさせ、此縁談を破約なさるやうに仕向けるのが、お前の誠だ。本当に姫様を大事と思召すなら、早く御意見を遊ばして、やめさせて下さい。年が老つた高姫がワザワザここへ訪問したのも其為ですから、どうぞ高姫のここへ来たことが無駄足にならぬ様に頼みますよ…なア捨子姫さま、お前は余り身魂が良過ぎて、映り易いから、言依別さまや松若彦に甘く抱き込まれ、とうとう末子姫様の御心を動かしたのぢやありませぬかなア』
捨子姫『ハイ妾が第一、大賛成で御話を持ちかけたので御座います。さうすると言依別様や、松若彦様、竜国別様初め、肝腎の末子姫様が、それはそれは御愉快相な御顔でニコニコとお笑ひ遊ばし……捨子姫、何事もそなたに御任せするから、宜しう頼むよ……と恥かし相に仰有いました。それで妾が気を利かし、相手方の国依別様へも極力運動いたし、ヤツとの事で纏まつた此縁談、何程高姫様が水をお注し遊ばしても最早ビクとも動かす事は出来なくなつて居ります。御注意御親切は有難う厶いますが、今度はモウ仕方がないと御諦め下さいませ。肝腎の御本人様同志が、ニコニコで居られるなり、大神様は特に御喜びなり、どうして今日になつて之を顛覆さす事が出来ませうか』
高姫『エヽそこ迄モウ固い決心が出来て、若い方同志が思ひ合うて御座るのを動かさうと云つたつて動きますまい。残念乍ら、モウ高姫も賛成いたしま……せうかい、就いては、貴女も御存じの通り、大神様の教には一汁一菜との定めで御座いますから、決して御馳走はしてはなりませぬぞや。上から贅沢な鑑を出すと、人民が皆それに傚ひ、世の中が不経済になつて来ましては、神様に又もや御心配をかけなくてはなりませぬからなア』
松若彦『何程軍備縮小、経費節約の流行する世の中だとて、一生一代の結婚に其様なケチな事が如何して出来ませうか、そんな時代遅れのイントレランスな事を言ふと、人が馬鹿にしますよ。それ相当の身分に応じて御馳走もせねばなりますまい。お酒もドツサリ皆さまに飲つて頂き、底抜騒ぎをやつて面白可笑しく御祝をする方がどれ丈素盞嗚大神様が御喜び遊ばすかも知れませぬ。又吾々も大変に御喜びですからな。アハヽヽヽ』
高姫『私の云ふ事が頑迷だと仰有るのですか、何程新しいのが流行る時節だと云つて、神様の教まで背いてすると云ふ事は、一つ考へものでせう』
言依別『高姫さまの御言葉も御尤もです。松若彦さまの御意見も強ち棄てる訳にも行きますまい。そこは身分相応と云ふ事に致しまして、正中を取り、余りケチつかず、余り奢らずといふ程度に、今晩の結婚を無事に、幾久しく祝ひ納めるやうにしたら如何でせう』
高姫『そんなら私も我を折つて言依別様にお任せ致します。又空中滑走さされたり、言霊を停止さされたり、灰猫婆アにせられると困りますから、憎まれないやうにおとなしう改心しておきませう』
言依別『有難う』
松若彦『安心致しました』
捨子姫『お目出たう御座います』
カール『面白うなつて来ました』
春彦『今晩は御馳走で、ドツサリと酔はして貰ひませう。何より彼より上戸の春彦、一番にお目出たいワ、有難いワ、アハヽヽヽ』
(大正一一・八・二六 旧七・四 松村真澄録)
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【霊界物語誕生百周年】
大正10年(1921年)10月18日に王仁三郎が霊界物語の著述を開始してから
令和3年(2021年)10月18日で百年目を迎えます。
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