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文献名1霊界物語 第33巻 海洋万里 申の巻
文献名2第3篇 時節到来よみ(新仮名遣い)じせつとうらい
文献名3第17章 感謝の涙〔932〕よみ(新仮名遣い)かんしゃのなみだ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-08-29 22:53:01
あらすじ高島丸はテルの国から西へ進んで、現今の日本国台湾島へ戻ってきた。今日の航路から見ると反対方向へ迂回しているのは、三十万年前の地球の傾斜と潮流に関係している。当時は蒸気の動力はないが、先客一同がかわるがわる櫓かいを漕いで進む船で、風の有無にかかわらず航行ことができた。一行は竹島丸に乗り換えて、由良港の秋山彦の館に安着した。夕餉を済ませた高姫らはくたびれて各自寝間にて寝てしまったが、言依別命から監視役を命じられて来た松彦は、一睡もせずに秋山彦夫婦と、高姫の身の上や麻邇の宝珠に関することを協議した。聖地からは東助、加米彦らが高姫たちを迎えに由良川を下ってやってきた。松彦は神素盞嗚尊と言依別命からの密書を携えていたので、秋山彦は密書について協議すべく、高姫、鷹依姫、竜国別を招いて意見を聞くことになった。秋山彦は、竜宮の一つ島から五個の麻邇の玉が出た際、高姫、黒姫、鷹依姫、竜国別がその御用をしなければならない因縁だったのだと明かした。しかし高姫と黒姫は一つ島に来ていながら、この島には玉はないとあきらめて帰ってしまった。また鷹依姫と竜国別は焦って、見当違いの高砂島に玉探しに行ってしまっていた。そこでやむを得ず、黄竜姫、蜈蚣姫、友彦、テールス姫に臨時に御用をさせたのだと明かした。秋山彦は、今度麻邇の玉の御用をし損なったら末代取り返しがつかないことになるので、神素盞嗚大神様が、吾が子である言依別命に罪を負わせてお膳立てをしたのだと高姫たちに明かした。そして、神素盞嗚大神、言依別命、国依別からの神書を取り出した。高姫はここで初めて大神の大慈大悲の心と、言依別命と国依別の真心を悟った。そして鷹依姫、竜国別とともにその場に泣き崩れ、神恩に感謝したのであった。そこへ、筑紫の島から玉治別と秋彦が、黒姫を連れて帰ってきた。ここに四人の身魂は久しぶりに顔を見合わせることになった。秋山彦は神書を開いて読み上げた。国治立命は国武彦命と身を下し給い、豊国姫命は国大立命と身を下し給うた。国大立命は再び変じて神素盞嗚尊となった。国武彦命は四尾山に隠れ給い、神素盞嗚尊はウブスナ山の斎苑館に隠れ給うた。これは神政成就の錦の機を織りなす神界の大準備に着手すべき身魂の因縁である。稚姫君命の御霊の裔である初稚姫は金剛不壊の如意宝珠を永遠に守護し、国直姫命の御霊の裔である玉能姫は紫の玉を守護し、言依別命は黄金の玉を守護する。梅子姫命は紫の麻邇の玉を守護し、高姫は青色の麻邇の玉を守護し、黒姫は赤色の麻邇の玉を守護し、鷹依姫は白色の麻邇の玉を守護し、竜国別は黄色の麻邇の玉を守護する。これがそれぞれの身魂の因縁であり、これより四人は麻邇の宝珠を取り出し、綾の聖地に向かうべし。万劫末代の神業であるため、なんとしても四人に神業を成就させるべく、高姫以下の改心が遅れた罪を言依別命に負わせて、麻邇の玉の御用を命じるものである。四人は感謝の涙にむせび、神殿に感謝の祝詞を奏上した。秋山彦は黄金の鍵を取り出して高姫に渡した。そして密かに沓島に至って命じられたとおりに玉を取り出し、聖地に戻って神業に参加するようにと申し渡した。四人は喜び勇んで裏口から抜け出し、沓島に向かって漕ぎ出した。高姫以下四人は、神素盞嗚尊の無限の仁慈のお計らいによって罪穢れを赦され、身魂相応因縁の御用を奉仕させられることとなった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年08月29日(旧07月7日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年11月10日 愛善世界社版186頁 八幡書店版第6輯 319頁 修補版 校定版195頁 普及版70頁 初版 ページ備考
OBC rm3317
本文のヒット件数全 2 件/身魂相応=2
本文の文字数3388
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本文
 高島丸はテルの国、ハラの港より西へ西へと進んで、現今の日本国台湾島へ帰つて来た。
 今日の航路より見れば全然反対の道をとり、且つ非常に迂回して居るのは、三十万年前の地球の傾斜の関係及潮流の関係に依つたものである。蒸気の力を以て自由自在に航行する現代に比ぶれば、非常に不便なものであつた。併し乍ら其速力は今日の二十浬以上を、風なき時と雖も、航行する事が出来たのである。其故は例へば二百人乗りの船ならば、船の両舷側に百本の艪櫂がついてゐて、二百人の乗客の中百人は、力限りに艪櫂を漕ぎ、稍疲労したる時は、又百人これに代り、交る交る艪櫂を漕いだものである。船頭は只船の方向を定め、水先を調べ、舵をとるのみであつた。大きな船になると、二階造りになり、下からも、上からも船を漕ぐ仕掛になつて居た。恰度舷を見ると、蜈蚣の足の様に見ゆる船の造り方であつた。それ故非常な速力で、少々の荒波位には少しも弱らなかつたのである。且又昔の人は総じて剛胆者が多く、臆病者は頭から乗船を許さなかつたのである。故に余り役に立たぬ老人や、子供の船客は皆無と云つても良い位であつた。特別の事情ある者でなければ、船に乗ることを互に戒めて許さなかつたものである。
 高姫一行は漸くにして、月日を重ね自転倒島の由良の港に安着した。秋山彦は錦の宮の玉照彦、玉照姫の命に依り、高姫一行が由良の港に帰り来ることを前知し、数多の里人を集め、埠頭に一行を迎ふべく、十曜の神旗を海風に翻し乍ら、今や遅しと待ちつつあつた。
 此処へ竹島丸は波を蹴つて、高姫一行を乗せて帰り来るのであつた。高姫一行は、台湾のキルの港より竹島丸に乗り替へたのである。高姫一行六人外に松彦、鶴公の二人を加へて八人は、秋山彦の迎への人数に送られて、勇ましげに秋山彦館に入り、息を休むる事となつた。其夜は何れも草臥果て、夕餉を喫したる儘、這ふが如くグタリとした体を、与へられた各自の寝間に運び、つぶれた様に寝て了つた。
 言依別命より監視役を命ぜられて、従いて来た松彦は、其夜は一睡もせず、秋山彦夫婦と共に、高姫の身の上に関する事、及び麻邇宝珠の御用の件に就て、ひそかに協議を凝らし、夜の明くる頃漸くにして寝に就いた。秋山彦夫婦も亦昨夜の疲労を慰すべく、太陽の高く昇る頃まで白河夜船の夢を貪ることとなつた。
 聖地よりは東助を初め、加米彦其他の面々が高姫一行を迎ふべく、由良川を下つて此処にやつて来たのである。秋山彦館は俄の客にて、下僕共は上を下へと大繁忙を極め、馳走の用意に差かかつて居る。
 秋山彦は高姫、鷹依姫、竜国別の三人を一間に招き、松彦が齎せる神素盞嗚大神及び言依別命の密書の件に就て、三人に対し、意見を聞くこととなつた。
秋山彦『高姫さま、其他のお二方、永らくの間、御遠方の所、御苦労で御座いました。大神様に於かせられても、さぞ御満足の事で御座いませう。就いては麻邇の宝珠の件で御座いますが、竜宮島より迎へられた五個の中、其四つまで紛失致しました事は、実に神界経綸上大変な不都合で御座います。これに就てあなた方に今一度お世話になつて、四つの玉を発見して頂かねばならないので御座いますが、如何でせう、お世話になれるでせうか』
高姫『ハイ、私は金剛不壊の如意宝珠を初め、其他一切の玉に関し、最早何の執着もなくなりましたから、此事計りは、最早断念して居ります。此広い世の中、言依別命がどうかされたのでせうから、いくら捜しても駄目です。どうぞ玉の事だけはモウ言はないでおいて下さいませ』
秋山彦『如何なる神界の御用を致すのも、皆神様からの御命令、身魂相応の因縁がなくては出来ないので御座います。就いては、鷹依姫様、竜国別様、モウ一人の黒姫様、此四人の方が、麻邇宝珠の御用をして下さらねばならない因縁で御座いますが、生憎竜宮島より五色の麻邇宝珠が現はれ玉ふ時機到来して、惟神的に高姫様、黒姫様お二人を竜宮の一つ島へお導きになりましたなれど、あなた方は此一つ島には最早玉はない、外を捜さうと云つて、お帰りになられました。それ故止むを得ず、神界の思召に依つて、梅子姫様は紫の玉の御用、これは身魂の因縁で当然錦の宮へお持帰りにならねばならぬ御役で御座いました。それから青色の玉は高姫様、赤色の玉は黒姫様、白色の玉は鷹依姫様、黄金の玉は竜国別様が御用遊ばす、昔からの因縁にきまつて居つたのです。併し乍ら、四人の方はいろいろと神界の時節を待たずお焦りになつて、何れも方角違ひの方へ往ていらツしやつたものですから、神界のお計らひにて、黄竜姫、蜈蚣姫、友彦、テールス姫の四柱が此自転倒島まで臨時御用を遊ばしたので御座います。併し乍ら身魂の因縁だけの御用を、今度は勤めねばならないのですから、神素盞嗚大神様、言依別命様のお計らひにて、紫の玉を除く外四つの玉は言依別命様が責任を負ひ、或地点にお隠しになつてゐるので御座います。どうしても因縁だけの事を勤めねばならぬのであります。今度の御用を仕損つたら、モウ此先は末代取返しが出来ませぬから、そんな事があつては、あなた方にお気の毒だと、大慈大悲の大御心より神素盞嗚大神様が吾子の言依別命様に責任を負はせ、罪を着せ、あゝ云ふ具合にお取扱ひになつたので御座いますよ。今此処にウヅの国より、松彦の司に事依さし神素盞嗚大神様を初め、言依別命、国依別命より神書が届きました。どうぞ之を御披き下されば、玉の所在もスツカリお分りでせう。どうぞ御苦労ですが、モウ一働き御用を願ひませう』
 高姫は初めて大神の大慈悲心と、言依別命及び国依別命の真心を悟り、感謝の涙に暮れて其場に泣き倒れた。鷹依姫、竜国別も声を放つて、其神恩の深きに号泣して居る。
 斯かる所へ筑紫の島より黒姫の所在を尋ね、玉治別、秋彦の両人、黒姫を伴れて帰り来り、茲に四人の身魂は久しぶりに顔を見合す事となつた。
 秋山彦は黒姫に重ねて前述の次第を物語り、神書を開いて読み聞かせた。黒姫、玉治別等の筑紫島に於ける活動の模様は後日に稿を改め、述ぶる事と致します。
 秋山彦は神文を押戴き、静かに開いて、四人の前に読み上げた。其神文、
『此度、国治立命、国武彦命と身を下し玉ひ、また豊国姫命は国大立命となり再び変じて神素盞嗚尊となり、国武彦命は聖地四尾山に隠れ、素盞嗚尊はウブスナ山の斎苑の館に隠れて、神政成就の錦の機を織りなす神界の大準備に着手すべき身魂の因縁である。それに付いて、稚姫君命の御霊の裔なる初稚姫は金剛不壊の如意宝珠を永遠に守護し、国直姫命の御霊の裔なる玉能姫は紫の玉の守護に当り、言依別命は黄金の玉を永遠に守護し、梅子姫命は紫色の麻邇の宝珠の御用に仕へ、高姫は青色の麻邇の宝玉、黒姫は赤色の麻邇の宝玉、鷹依姫は白色の麻邇の宝玉、竜国別は黄色の麻邇の宝玉を守護すべき身魂の因縁なれば、これより四人は麻邇の宝珠を取出し、綾の聖地に向ふべし。控への身魂は何程にてもありとは云へども、成るべくは因縁の身魂に此御用を命じたく、万劫末代の神業なれば、高姫以下の改心の遅れたる為、神業の遅滞せし罪を言依別命に負はせて、高姫以下に万劫末代の麻邇の神業を命ずるものなり。……神素盞嗚尊』
と記してあつた。四人は感謝の涙にむせび乍ら、直ちに手を拍ち、神殿に感謝の祝詞を奏上した。秋山彦は黄金の鍵を持ち出でて、高姫に渡し、
秋山彦『いざ四人の方々、吾館の裏門よりひそかに由良の港に出で、沓島に渡り、麻邇宝珠の四個の玉を、各自命ぜられたる如く取出し、秘に聖地へ帰り、尊き神業に参加されたし。此事、聖地其他の神司、信徒の耳に入らば、却て四人の神徳信用に関係する事大なれば、一切秘密を守り、大神の御意志を奉戴し、今迄の罪を贖ひ、天晴れ麻邇宝珠の神司として聖地にあつて奉仕されむ事を希望致します。サア早く早く……』
と急き立てられ、四人は喜び勇んで、裏口より秘に脱け出で沓島に向つて進み行く。
 此事玉治別を初め、加米彦、テー、カー、常彦、其他の神司、聖地の紫姫、黄竜姫、蜈蚣姫、友彦、テールス姫其他の神司も信徒も永遠に知る者がなかつたのである。
 高姫外三人は素盞嗚尊の仁慈無限のお計らひにて、罪穢れを許され、身魂相応因縁の御用を完全に奉仕させられたのである。アヽ惟神霊幸倍坐世。
(大正一一・八・二九 旧七・七 松村真澄録)
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