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文献名1霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻
文献名2第1篇 向日山嵐よみ(新仮名遣い)むこうやまあらし
文献名3第4章 村の入口〔968〕よみ(新仮名遣い)むらのいりぐち
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-09-23 16:40:30
あらすじ
孫公は一行に同道しながら宣伝歌を歌った。孫公は筑紫の島へやってきた経緯を歌い、黒姫一行と別行動をしていたところ、大蛇の三公がお愛とお梅を悩ませているところに出くわし、義侠心から助けに入ったが逆に捕われて生き埋めにされ、黒姫に助け出された出来事を歌った。そして、黒姫に一同を助けたことに慢心するなと気をつけた。

次に兼公が宣伝歌を歌いだした。大蛇の三公の右腕となり悪事を働いてきたが、虎公の留守を狙ってお愛を捕えて強談判をしていたところ、お愛の味方をして三公の怒りを買い自分が生き埋めの憂き目にあったことを歌った。そして大蛇の三公を恨みつつも、神様の大御心にならって赦してやろうと歌った。また、自らの罪滅ぼしをも願った。

一同は早くも、屋形の村の入り口にやってきた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年09月15日(旧07月24日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年12月25日 愛善世界社版36頁 八幡書店版第6輯 486頁 修補版 校定版39頁 普及版13頁 初版 ページ備考
OBC rm3504
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本文の文字数3514
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本文  向日峠の山麓に差しかかつたる孫公は騒がしき人声を聞きつけ、宣伝歌を歌ひ乍らツカツカと立寄り、夕まぐれに三公の手下共に謀られて手足を縛られ、土中に埋没され九死一生の所を黒姫に救はれて、今や虎公一行と共に火の国都へ至る途中を繰合せ、屋方村の三公を言向和さむと進み行く途々、足拍子を取り乍ら歌をうたつて嶮しき坂道を下り行く。
『黒姫司に伴はれ  自転倒島を後にして
 筑紫の島に来て見れば  思ひもよらぬ広い国
 山河清く野は青く  バナナ無花果其外の
 味よき木の実は遠近の  木々の梢に実りゐる
 あゝ天国か極楽か  但は神の公園か
 実にも楽しき御国なり  筑紫ケ岳の中腹で
 腰をぬかした其時に  黒姫司は冷笑し
 房公、芳公促して  私を見すてて登り行く
 ホンに思へば腹が立つ  情を知らぬ鬼婆と
 今の今迄胸に持ち  黒姫司を「ドツコイシヨ」
 心の中で「ウントコシヨ」  皆さま気をつけなさいませ
 蜈蚣の大きな奴が出た  足を刺されちや堪らない
 心に恨んで居りました  黒姫司の一行は
 何れへ逃げて行つたやら  行方も知らぬ一人旅
 鳥や獣のなき声を  心の友と頼みつつ
 岩が根木の根ふみさくみ  重たい足を引ずつて
 火の国都を目当とし  進んで来る折もあれ
 道ふみ迷ひし向日山  峠の麓の森林に
 いと騒がしき人の声  こは何事の起りしと
 「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」  叢分けて細道を
 探り探りて行て見れば  数多の男が寄り合うて
 三人の男女を縛り上げ  何ぢやかんぢやと挑み合ふ
 此奴あテツキリ悪者の  深き企みに乗せられて
 どこかのシヤンが捉へられ  手籠めに会はむとする所
 これが見すてておかれうか  三五教の神の道
 人の難儀を目のあたり  眺めて後へは引かれない
 持つて生れた義侠心  黒姫司のした様な
 薄情なことは出来ないと  一つ肝をば放り出して
 木蔭に身をば忍ばせつ  火の国都に名も高き
 高山彦と呼ばはれば  大蛇の三公始めとし
 乾児の奴等はあざ笑ひ  面を上げよとぬかす故
 彼奴等の深い企みをば  神ならぬ身の知る由も
 なければ忽ち空仰ぎ  この木の上に何者が
 ひそんで居るかと見る間に  忽ち降り来る砂礫
 「ウントコドツコイ」目潰しの  其計略に乗せられて
 眼は眩み忽ちに  大地に踞む折もあれ
 悪者共は後より  首に綱をば引つかけて
 後に倒し手も足も  所構はず縛り上げ
 忽ち大地に穴を掘り  無残や吾等三人は
 深く土中に「ウントコシヨ」  命カラガラ埋められた
 これ程深い山奥に  埋められてはモウ駄目だ
 無念乍らも今此処で  「ウントコドツコイ」玉の緒の
 命の消ゆることなるか  あゝ是非もなし是非もなし
 前生の罪が酬い来て  海洋万里の此国で
 この様な破目に落ちるのか  国に残せし女房の
 お安は嘸や悔むだろ  なぞと心を痛めつつ
 一夜を明かす其間に  体が軽くなつて来た
 あゝ訝かしや訝かしや  如何なる神の現はれて
 吾等を救はせ玉ふかと  思ふ間もなく「ウントコシヨ」
 冷たくなつた口の中  冷たい雨は顔に降り
 驚き心を取直し  あたりキヨロキヨロ見まはせば
 思ひ掛なき黒姫が  顔を覗いて呆れ声
 ヤアヤアお前は孫公か  マアマアよかつた よかつたと
 七六つかしき顔の色  牡丹の様に栄えつつ
 やさしき詞を「ドツコイシヨ」  「ウントコドツコイ」黒姫が
 かけて呉れたが「ドツコイシヨ」  こりや又如何した「ウントコシヨ」
 涼しい風の吹き廻し  あれ程えぐい婆アさまが
 俺を助けてくれるとは  前代未聞の大珍事
 合点のゆかぬ次第だと  ここまで思うてやつて来た
 「ウントコドツコイ」危いぞ  そこには蝮が「ウントコシヨ」
 飛びつきさうにしてゐるぞ  足下用心するがよい
 黒姫さまのハズバンド  高山彦が悪者に
 土中に深く埋められ  今や命の瀬戸際と
 聞いて胸をば轟かし  お梅さまをば背に負ひ
 はるばる助けに「ドツコイシヨ」  お出でなすつたと云ふ事だ
 これを思へば黒姫は  元より俺を「ウントコシヨ」
 助けてやらうと思うての  心つくしの業でない
 サツパリ様子は不知火の  波のまにまに流れ来て
 俺を助けて「ウントコシヨ」  くれたに違はない程に
 これを思へば黒姫さま  お前の真の心根は
 「ウントコドツコイ」おれの身を  助ける積りぢやなかつたが
 三五教の神さまに  知らず識らずに使はれて
 「ウントコドツコイ」孫公を  お助けさして頂いた
 神の仕組に違ひない  お前もこれから喜んで
 結構な御神徳を沢山に  頂きましたと神の前
 御礼を申さにやなるまいぞ  お前の罪も孫公を
 助けた御神徳で軽うなり  高山彦の御亭主に
 いつかは会はれる事だらう  かう云ふ具合に「ウントコシヨ」
 夕べの事件を解剖して  一々解釈下す時や
 お前の為には孫さまは  ホンに尊い救主
 一度御礼を云うたとて  メツタに損はいくまいぞ
 こんな御神徳を頂いて  孫公さまに反対に
 お礼を云はしちやすまないぞ  こんな事をば云うたなら
 高姫もどきと云ふだろが  決してさうではない程に
 孫公守る神さまが  お前の身魂を一寸借り
 御用に立てて「ウントコシヨ」  俺を助けて下さつた
 決して竜宮の乙姫の  うつつた肉の生宮が
 お愛の方や孫公や  兼公さまを助けたと
 慢心しては可かないぞ  「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」
 益々坂がキツなつた  何程坂を下るとも
 「ウントコドツコイ」下らない  サカ理屈をば云ふ奴と
 必ず思うて下さるな  これもやつぱり黒姫の
 常平常のお仕込みで  こんな屁理屈言ふやうに
 「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」  なつて了うたか知らないが
 必ず気悪う「ドツコイシヨ」  思はぬ様にしてお呉れ
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』
と謡ひつつ、一行の臍をよらせ乍ら、滑稽混りに黒姫にからかひ、坂路を上りつ下りつ進み行く。
 兼公は覚束なき口調にて又もや歌ひ出す。
『あゝ惟神々々  神の使の黒姫が
 向日峠の山麓に  さまよひ来つて吾々の
 危難を救うて下さつた  おれは元から悪い奴
 大蛇の乾児に取入つて  いろいろ雑多と画策し
 参謀次長の地位迄も  上つて居つた代物だ
 人情知らぬ三公が  虎公さまの不在の家に
 数多の乾児をさし向けて  お愛の方を縛り上げ
 かついで来る楠の  人の通はぬ木下かげ
 巌の上に座を占めて  おいらを使つて「ドツコイシヨ」
 そこには木株がころげてる  皆さま気をつけなされませ
 無理難題を吹きかけて  うまくやらうとした所
 天道さまは「ドツコイシヨ」  悪には決して助けない
 さすが三公も弱りはて  お愛の方に逆様に
 言ひ込められて劫煮やし  男女三人を無残にも
 土中に深く埋めよつた  何程度胸の「ウントコシヨ」
 人にすぐれた兼公も  手足を縛られ穴を掘り
 埋められては堪らない  寂滅為楽と思ひきや
 天地の神の御恵に  再び此世の「ドツコイシヨ」
 あかりを見せて下さつた  これもヤツパリ黒姫が
 お越しになつた其御神徳  私は感謝を致します
 「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」  虎公さまやお愛さま
 さぞやお前は「ドツコイシヨ」  随分得意で御座いませう
 死んだと思うたハズバンド  行方の知れぬ女房に
 思はず知らず廻り会ひ  無事であつたか嬉しいと
 口には云はねど顔の色  チラリとおれは見ておいた
 ホンに目出度いことだなア  サアサア是から「ドツコイシヨ」
 屋方の村に乗込んで  大蛇の三公が素首を
 引き抜きやらむと思へども  「ウントコドツコイ」まて暫し
 神の教を聞くからは  そんな無理をばやつたなら
 根底の国に落されて  無限の苦をばなめなけりや
 「ウントコドツコイ」ならうまい  さはさり乍ら余りの
 三公の仕打に劫が沸き  何程思ひ直しても
 小癪にさはつてしようがない  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましまして  私が今まで尽したる
 悪虐無道の罪科を  何卒許して下さんせ
 私も大蛇の三公を  憎い奴ぢやと思へども
 仁慈無限の神さまの  大御心に神習ひ
 今度は許してやりませう  国魂神の純世姫
 其外百の神達よ  私が三公許すよに
 如何なる深き罪科も  どうぞ赦して下さんせ
 心を清め身を浄め  皇大神の御前に
 真心こめて兼公が  慎み敬ひ願ぎまつる
 謹み敬ひ願ぎまつる』
と謡ひ乍ら進み行く。進んで来るのは早いもの、早くも屋方の村の入口に差かかる。大蛇の三公が館は、コンモリとした樫の森の中に、僅に其棟を現はしてゐる。
(大正一一・九・一五 旧七・二四 松村真澄録)
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