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文献名1霊界物語 第41巻 舎身活躍 辰の巻
文献名2第1篇 天空地平よみ(新仮名遣い)てんくうちへい
文献名3第3章 偽恋〔1107〕よみ(新仮名遣い)にせこい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじユーフテスは王に一喝されて自宅に戻り、思案に暮れていた。すると番頭が、門前に美人が現れて手紙をユーフテスに渡してくれと言っているという。ユーフテスが手紙を開いて見ると、それはセーリス姫からの恋文だった。ユーフテスは、門番に命じてセーリス姫を室内に呼び出させた。セーリス姫はユーフテスに気があるような素振りをし、右守カールチンのたくらみをすっかり聞き出してしまった。そして明日また登城してから会う約束をしてその日は別れた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年11月10日(旧09月22日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年6月15日 愛善世界社版40頁 八幡書店版第7輯 544頁 修補版 校定版41頁 普及版19頁 初版 ページ備考
OBC rm4103
本文の文字数6120
本文のヒット件数全 5 件/イルナの国=5
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本文  セーラン王の一喝にあひ、悄然として早々城内を逃げ帰り、自宅の奥の間に手を組んで思案に暮れて居るのは、当時城内にては飛ぶ鳥も落すやうな勢力盛なる右守の司カールチンの家老職ユーフテスである。そこへ番頭のコールが、慌しく馳せ来り、
『もしもし旦那様、門前に素敵滅法界な美人が現はれまして、此手紙を旦那様に渡して呉れと申しました。さうして直様御返事が頂きたいとの事で厶います。随分旦那様も固くるしいお方のやうで厶いますが、○○の道は又格別と見えますなア。本当に油断がなりませぬわい』
とニヤリと笑ひ、一通の手紙をユーフテスに渡す。ユーフテスは、
『コール、何と云ふ失礼な事を申すか、ちと心得たがよからうぞよ』
『ハイ、承知致しました。コールからキツト心得ます、イヒヽヽヽ』
と小さく笑ひながら、踞つて控へて居る。ユーフテスは手早く其信書を押し展き検め見れば、

私は貴方様に幾度も御親切なお手紙を頂きましたセーリス姫で厶ります。早速お返事を申上げたいのは山々で厶いましたが、何を云うても人目の関に隔てられ、燃ゆる思ひを押し隠し、今日迄耐へ忍んで参りましたが、もはや恋の炎に身を焼かれ立つても居てもゐられなくなつて来ました。それ故女の身をもつて御迷惑とは存じながら人目を忍びお慕ひ申して参つたので厶います。何卒御迷惑で厶いませうが、一目逢はして下さいませぬか。妾はお返事のある迄表門にお待ち申して居ります。一時も早く色よきお返事をお待ち申します。穴賢
      セーリスより
  ユーフテス様へ

と記しあるを見るより、ユーフテスは俄に苦り切つた顔の紐を無雑作に緩め、牡丹餅を砂原に打ちつけたやうな崩れた相好で、右手の甲で流れ落つる口辺の唾涎の始末をつけながら、目迄細くして猫撫声となり、
『オー、コール、よう使に来て呉れた。旦那様が、御多用中なれども万障繰合せ、暫くの間面会すると仰有るから早くお出でなさいと案内をして来るのだぞ』
 コールは少し耳が遠いので、右の手で耳を拘へながら、ユーフテスの言葉を聞き噛り怪訝な顔して、
『エヽ何と仰有います。多忙中だから面会が出来ない、又出直して来て下さいと申上げるのですか。折角あんな天女が天降つて来たのに素気なう追ひ帰すと云ふ事がありますかい。三五教ぢやないが、些と見直し聞直し宣り直しをなさつて、一目逢つておやりなさつたらどうでせう』
『エヽ聾と云ふ奴は仕方のないものだなア。又聞き損ひをして折角来た恋人を追ひ出してしまはれては大変だ。手紙を書いてやるが一番間違ひがなくて宜からう』
とユーフテスは、文箱より料紙を取り出し筆に墨を滲ませ、筆の穂を一寸かんでプツプと黒い唾を二つ三つ吐きながら、すらすらと何事か書き流し厳封した上、
『オイ、コール、貴様は耳が遠いから間違ひがあつては困るによつて、其女に此手紙を渡すのだ。サア早くこれをもつて往けや』
と声を高め耳のはた近く寄つて云ひつける。コールは忽ち呑み込み顔、
『ハイ承知致しました』
と肩を怒らし一足々々四股踏みながら表門さして走り出で、
『コレ、ナイス、お前も余り気が利かねえぢやないか。こんな白昼に、そんな白首がのそのそとやつて来るものだから、旦那様が大変な嫌な顔をなさつて御迷惑をして居なさる。サア早く帰つたがよからうぞ。多忙で万障繰り合つて居るから、断り状をお書き遊ばしたから之を読んで諦めて帰つたがよからう。本当に気が利かねえ女だなア。そんな不味いやり方で、ユーフテス様を擒にしようと思つたつて、手管に乗せようと思つたつて駄目だぞ、アハヽヽヽ』
『何、ユーフテス様が帰つてくれと仰有つたのかい。そんな筈はありますまいが』
『さてさて強太い女だなア。何よりも其断り状が証拠だ。早く封押し切つて読んで見なさい。さうしたらこなさんの仰有る事が嘘でないと云ふ事が一目瞭然となるであらう。あゝ惜しいものだなア。旦那様も逢ひたい事であらうが、矢張俺達に昼だと思つて気兼をしてゐらつしやると見える。ヤイ女、今晩裏口からやつて来い。此コールが気を利かしてソツと逢はしてやるから、イヒヽヽヽ』
 セーリス姫は慌しく封じ目を切り、ソツと読み下せば美事な筆跡で艶めかしい文字が列ねてある。姫はニツコリと打ち笑ひながら静々と門の閾を跨げて奥に入らうとする。コールは頻りに首を傾け、
『何とまア、押尻の強い女だなア。それだから今時の女は奴転婆と云ふのだよ。百鬼昼行とは此事だ。こんな厳粛なお館へ昼の日中に白首が往来するやうになつては、最早世も末だ』
と云ひながら、セーリス姫の袖をグツと握り、
『これこれ、何処のナイスか知らぬが厚顔しい、断り言はれた家へ入ると云ふ事があるか。早く帰つたり早く帰つたり』
とグツと力にまかして引き戻さうとするのをセーリス姫は、
『エヽ面倒』
と一つ肱を振つた途端に、コールは二三間ばかり跳飛ばされドスンと大地に尻餅をつき、アイタヽヽと面を顰めて姫の姿を見送つて居る。姫はコールに頓着なく、奥庭さして進み入る。
 ユーフテスは、セーリス姫の入り来るを今や遅しと待つ間の長き鶴の首、石亀のやうに手足を急しく動かしながら、座敷中を願望成就の時節到来とステテコ踊りをやつて居る、そこへサラサラと衣摺れの音聞えて入り来る人の跫音は、どうやらセーリス姫らしいので、俄に眉毛を撫でたり目脂が溜つて居ないかといぢつてみたり、鼻糞を掃除したり唾涎を拭つたり襟を直したり、態とに躍る胸を撫でながら控へて居る。どことはなしに顔はパツと紅葉を散らし心落ちつかぬ様子である。其処へ襖をソツと押し開けて一瞥、城を覆へすやうな絶世の美人、イルナ城の花と謳はれたセーリス姫が立居もいと淑やかに満面に笑を湛へ入り来る姿は、牡丹か芍薬か百合の花か、又も違うたら白蓮華、桔梗の花の雨露に霑ふ優姿、淑やかに白き細き柔かき鼈甲のやうな皮膚の細かい手をつきながら、態とに声を震はせ恥かし気に、
『ユーフテス様、お懐かしう厶います』
と云つたきり畳に首を打ちつけて態とに肩で息をして見せる。ユーフテスはニコニコしながら嬉しさうな顔をして、女に馬鹿にしられてはならぬ、此処が一つ男の売り所だと云はむばかりに儼然として、
『セーリス姫殿、此白昼に女の身として人目も繁きに拘らず、お訪ね下さるとは些と不注意では厶らぬか。左様な気の利かない貴女とは思はなかつた。今迄吾々も姫の容色に迷ひ、幾度となく艶書を差上げたなれど、決して自分の本心では厶らぬ事はない。何用あつて今頃吾宅をお訪ねなさつたか、女の分際として些と不届きでは厶らぬかナ』
と空威張りして見せて居る。
『ホヽヽヽヽお情ないそのお言葉、それ程妾がお気に入りませぬなら只今限りお暇を致します。不束な女が参りましてお腹を立てさせまして誠に申訳が厶いませぬ。妾も女のはしくれ、今迄貴方に操られて居たかと思へば腹が立ちます』
と立ち上り、クルリと後を向け帰らうとするのをユーフテスはあわてて引き止め、
『マヽヽマお待ちなさいませ。短気は損気、姫様のやうにさう早取りをしられては困ります。貴女は貴い刹帝利の家筋、私は卑しい首陀の成り上りもの、到底階級が違ひますから、貴女のお傍へも寄れない身分で厶いますが、恋には上下の隔てなしとか、つい失礼な事を申上げました。どうぞ許して下さいませ』
『ホヽヽヽそりや何を仰有いますか。若き血潮の湧き満ちた佳人と佳人、誰に遠慮が厶いませう。現界の階級は階級と致しましても、恋愛と云ふ神聖な道には上下の区別は厶いますまい。妾は左様な階級的制度は気に入りませぬ。何とかして時代に目醒めたる婦人を集め恋愛神聖論を天下に高調したいと内々活動中で厶いますよ、ホヽヽヽ』
『思ひの外開けた姫様だナア。それだから此ユーフテスが好きで耐らないと申しまするのだ。いやもうズツと気に入りました。斯うして姫様の御心中を承はつた以上は何も彼も打ち明けて、一つ天下の為めに大活動を致さうぢやありませぬか』
『左様で厶います。恋愛は恋愛として置きまして、一つ此世に生れて来た以上は、貴方と妾と夫婦となり、息を合して纒まつた大事業を起したらどうでせうかなア』
『ホー、そいつは面白い。それだからどうしてもお前さまの事が思ひ切れないと云ふのだ。エヘヽヽヽ』
『オホヽヽヽ、貴方も仲々隅に置けない悪人ですなア』
『そりやさうでせうかい、右守さまのお気に入りになつて居る位だから。エヽ併し姫様は左守さまの御息女、表面は左守右守として日々お勤めになつて親密さうにして厶るが、心の中は犬と猿、丁度仇同士のやうなもので厶いますなア。こいつを何とかして都合よく纒めたいものです。さうでなければ、私と貴女との恋はいつ迄も完全に維持することは出来ますまい』
『何と不思議の事を承はります。左守、右守の両役はセーラン王様の両腕、鳥で云はば左右の翼、どうしてそんな暗闘が厶いませうぞ。それは何かのお考へ違ひでは厶いますまいかなア』
 ユーフテスは首を左右に振り、
『イエイエどうしてどうして、大変な暗闘で厶いますよ。暗闘の中はまだ宜しいが、今日の所は既に表向の戦ひになりかけて居りますよ』
 セーリス姫は態と驚いたやうな顔付きで、一寸口を尖らし目を丸くし、ユーフテスの顔を打ち眺めながら、
『それは大変な事を承はりました。果してそんな事があつたら妾はどう致しませうか。貴方との恋も従つて駄目になりませう。それが残念で厶います』
と空涙を零して俯向く。
『訳を申さねば分りますまいが、貴女のお姉様のヤスダラ姫様が、セーラン王様の御許婚であつた事は御存じの通りです。さうした処が、セーラン王様は余り剛直一方のお方で、世上の交際がまづいため、当時勢並ぶものなき大黒主様に御意見を申上げたり、又鬼熊別様に同情をしたり遊ばすものだから、大棟梁様の御気勘に触り、既にイルナの国王を召し上げらるる所であつたのを、右守のカールチン様が種々と弁解を遊ばし、一時は無事に治まつたので厶います。其代りにヤスダラ姫様をテルマン国のシヤールといふ毘舎の家に降し、カールチン様のお息女サマリー姫様を妃に入れて漸う其場のゴミを濁し、イルナの国を今日迄維持してお出でになつたのは、隠れたる忠臣カールチン様で厶います。貴女の父上クーリンス様は左守の職にありながら、社交術が不味いためにイルナの国を既に棒に振らうとなさいました。此間の消息を知つて居るものは、此ユーフテスしかありませぬよ。定めてセーラン王様もカールチンは不忠な奴、自分の娘を妃となし、ヤスダラ姫を退け、遂にはイルナの国を占領しようとするものと早合点してゐらつしやるさうですが、如何に隠れたる忠臣たるカールチン様だとて、サマリー姫様を王様が虐待なされ、それがため御離縁になるやうな事があればそれこそ大変です。大黒主様に対してでも、カールチン様は反旗を翻し、涙を呑んでセーラン王を国家のために放逐せなければならぬやうになつて居ります』
『何とマア右守様は、そのやうな立派なお方で厶いますかなア。最前貴方は大悪人の右守の部下だからと仰有つたでは厶いませぬか』
『そりや悪人と云へば悪人でせう。一つ虫の居所が悪くなつたら、どんな事をなさるか計り難い権幕ですから「君君たらずんば臣臣たるべからず」と常々仰有つて居ましたから、今度サマリー姫様が王様と争をしてお帰りになつたを機に、ハルナの都に早馬使を立てられましたから、キツト王様の為に好い事はありますまい。併しながらこのユーフテスは、カールチン様の秘密の鍵を握つた男、私の首の振りやう一つで大抵の事は結末がつきますから、貴女と斯うなつた以上は、秘密さへ守つて下さるなら、何も彼も相談し合つて、貴女のお願ひとならばセーラン王様をお助けしないものでもありませぬ。又クーリンス様をお助けするもしないも、皆此ユーフテスの手に握つて居る絶対権利でありますからなア』
と稍傲慢気に述べ立てるを、セーリス姫は態と心配気な顔をして、
『実を申せば、妾だつて王様に対しあまり深い恩顧を受けたと云ふでもなし、貴方とかうして気楽に暮さるれば、これに越したる喜びは厶いませぬワ』
『姫がさういふお心なら、私は何も彼も包まずに云ひませう。実は大黒主の大棟梁より、幾度も密使が参り、カールチン様に入那の国の国王となれとの御命令、それについては鬼熊別の妻子が三五教の宣伝使となり、バラモン教の根底を攪乱すべく斎苑館の本拠を立ち出でて此方に来るとの事で、彼を一日も早く引き捕へよとの御厳命、それさへ早く手に入れば、カールチン様は忽ちイルナの国王とおなり遊ばし、ユーフテスは直に左守に抜擢される事に極つて居ります。これは大の秘密ですから誰にも言つてはなりませぬぞや』
『それは嬉しい事で厶います。仮令どうならうと貴方の御出世さへ出来れば、妾は貴方の女房、麻につれ添う蓬とやら、一緒に権力がのび行くのですから、どうぞ御成功を望みます』
『イヤ、それ聞いて私も安心を致しました。それならセーリス姫殿、キツト私の妻ですなア。必ず変心して下さるなや』
『女の一心岩でも射貫く、妾は決して変りませぬ。貴方こそ左守とおなり遊ばしたら妾をお捨てなさるのでせう。それが心配でなりませぬわ』
『決して決して、左様な心配はして下さるな。二世三世は愚か五百世まで誠の夫婦で厶る』
『それを承はつてヤツと安心を致しました。併しながら人目の関も厶りますれば、今日はこれでお暇を致します。どうぞ女が度々参りましては目的の妨げになりますから、城内でお目にかかりませう』
『あゝ惜しい別れだが二人の将来の為めだ。それならここで別れませう』
『明日御登城になりましたら、どうぞ妾の居間をお訪ね下さいませ。併し人目もありますから、態とに素気なう致して居りますから、必ずお気に触へて下さいますなや』
『口で悪云うて心でほめて蔭の惚気が聞かしたい……と云ふ筆法ですな、アハヽヽヽ』
『オホヽヽヽ左様ならばお暇致します』
と両人は立ち上り堅く手を握り合ひ、目と目を見合はし、残り惜しげに左右に袂を分てり。
(大正一一・一一・一〇 旧九・二二 加藤明子録)
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