ヤスダラ姫とリーダーは虎口を逃れ、姫の故郷・イルナ国の国境にある蓮川のたもとまで逃げてきた。
主従二人が川辺で休息していると、叢の中から数十人の黒い影が二人を取り巻いた。リーダーは我こそは左守の娘・ヤスダラ姫を守る武術の達人だと呼ばわった。
男たちの中の頭らしき大男がリーダーの前に立ちふさがり、武術の達人ハルマンと名乗った。自分たちは右守の命令でヤスダラ姫一行をとらえるべく潜んでいたのだと凄み、素直に縛につくようにと降伏を呼びかけた。
リーダーはハルマンに攻めかかる。ハルマンは、部下たちにヤスダラ姫を捕えるよう下知した。ヤスダラ姫は奮闘するが、衆寡敵せず男たちに抑え込まれてしまった。
すると、後方からあたりを響かせて三五教の宣伝歌が聞こえてきた。宣伝歌は皇神を祀る三五教をたたえ、バラモン教徒たちに皇神を祀るよう促す歌であった。
この宣伝歌に打たれて、ハルマンたちは一目散に逃げて行ってしまった。ヤスダラ姫は危急を救ってくれた宣伝歌の主にお礼を述べ、名を尋ねた。
宣伝歌の主は、セイロン島でサガレン王家を騒がせた悪僧・竜雲であると明かした。竜雲は、三五教の天の目一つの神の訓戒を受けて身魂を救われ、放浪の身となって月の国に三五教を説いて回る身の上となった経緯を涙ながらに語った。
ヤスダラ姫は竜雲の身の上話を聞き、思わず国治立大神に祈願をこらした。
ヤスダラ姫とリーダーは、自分たちがシャールの館から逃げて、イルナ国の姫の父・左守の館に戻る途中であることを明かした。イルナ国の右守の立ち回りについては竜雲も聞き及んでおり、竜雲は二人をイルナの都まで陰ながら守り送っていくことを約した。