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文献名1霊界物語 第42巻 舎身活躍 巳の巻
文献名2第4篇 怨月恨霜よみ(新仮名遣い)えんげつこんそう
文献名3第17章 酒月〔1142〕よみ(新仮名遣い)さかづき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-05-26 02:09:45
あらすじ冬のはじめ、イルナ城の門番のミルとボルチーは、日没後の無沙汰に酒を飲んで天下について議論をなし、いつしか脱線話になっていった。ミルは酔いつぶれてしまい、ボルチーは門を開けて月下に涼んでいた。そこへカールチンが、黒装束の武装した部下十数人を連れてやってきた。マンモスは、ボルチーに開門を命じた。ボルチーがすでに門は開いていると答えると、黒装束の一行は城内に進んで行った。
主な人物 舞台イルナ城(入那城、セーラン王の館) 口述日1922(大正11)年11月24日(旧10月6日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年7月1日 愛善世界社版202頁 八幡書店版第7輯 715頁 修補版 校定版207頁 普及版86頁 初版 ページ備考
OBC rm4217
本文の文字数4205
本文のヒット件数全 1 件/華胥の国=1
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本文  頃しも冬の初め、木枯の樹々を渡る声は猛獣の吼え猛るが如く烈しき夕間暮、イルナ城の表門を警固してゐたミル、ボルチーの両人は、門番の常として無聊を慰むる為め、朝から晩まで碁を打つ、将棋をさす、日没後は最早門の開閉を要しないので、強い酒に舌鼓を打ち、下宿の二階で天下を論ずる書生気分になり、性にも似合はぬ議論に時を移してゐた。
『オイ、ボルチー、今日は久しぶりでセーラン王様が沢山な御家来をつれてお帰り遊ばしたので、俺達も何とはなしに、其処等中が暖かい気分になつて来たよ。肝腎な主人が不在だと、何処ともなしに冷たい淋しいものだ。一つ今日は祝に、トロツピキ酔ふ事にしようかい』
『何だか俺も酒の加減で、冷たい体が暖かうなつて来たよ。併しながら貴様、聞いてるだらうが、あのカールチンにお位を譲らるると云ふ事だが、実際だらうかな。何で又物好きな、王位を捨てて、あんな受のよくないカールチンに位を譲つたりなさるのだらう。余り世の中が物騒なので、政治にお飽き遊ばして、吾々臣下や国民を捨て、山林に隠遁して光風霽月を友とすると云ふ風流な生活を送られる考へだらうかな』
『何と云つても、時節の力には神様でも叶はぬのだから仕方がないさ。禅譲放伐と云つて、何時迄も世は持ちきりと云ふ事はない。あひさに頭が代るのも亦人気が新しくなつて宜いかも知れないよ。カールチンさまも、矢張神界の御都合で刹帝利にお成り遊ばす時節が来たのだらう』
『左守司様を差措いて一段下な右守司様に位を譲られるとは、チツと順序が違ふぢやないか』
『漢朝に帝尭と云ふ天子があつた。在位七十年、年既に老いたれば、何人に天下を譲るべきかと大臣等に御尋ねになつた。大臣は皆諂つて、幸に皇太子様御在しまさば、丹朱にこそ御譲りなさいませと申上げた。さうすると帝尭といふ天子の言に、天下は是一人の天下ではない、何を以てか吾太子なればとて、徳足らず政の真義を知らないものに位を譲り、四海の民を苦しむべきやと仰せられ、皇太子たる丹朱に譲り給はず、何処の野に賢人あらむと、隠遁の者までも尋ね給ひ、遂に箕山といふ所に、許由といふ賢人が世を捨て光を韜み、唯苔深く松痩せたる岩の上に一瓢を掛け、瀝々たる風の音に人間迷情の夢を覚して居た。帝尭之を聞しめして勅使を立て、御位を譲るべき由を仰せ出されたが、許由は遂に勅に答へず、剰つさへ、松風渓水の清き音を聞きて折角爽かになつた耳が、富貴栄華の賤しき事を聞かされて、心までが汚れたやうだ、と云つて穎川の水に耳を洗つて居た。同じ山中に身を捨て隠居して居た巣父といふ賢人が牛を曳いて来り、水を呑まさむとして、許由が頻りに耳を洗つて居るのを見て、何故に汝は耳を洗つて居らるるか、と不思議さうに尋ねた。そこで許由は、帝尭吾に天下を譲らむと仰せられたのを聞いて、耳が汚れたやうな心地がしてならないから、耳を洗つて居るのだと答へた。巣父もまた首を振つて、如何にもそれでこの水流が常より濁つて見えたのだなア、左様な汚れた耳を洗つた水を牛に飲ますと大事の牛が汚れると云つて、牛を曳き連れて帰つて了つた。そこで帝尭様が、ハテ困つたことだ、この天下を誰に譲つたが宜からうかと、四方八方隈なく尋ね求め給うた結果は、冀州に虞舜といふ賤しい人があつた。その人の父は盲目者なり、母は精神ねぢけて忠信の言を道らず、徳義の経に則らずといふ女なり、その弟は象といふ驕慢悖戻の曲者であつた。独り虞舜のみは孝行の心深くして、父母を養はむが為に歴山に行つて耕すに、其他の人々はその徳に感動して畔を譲り、雷沢に下つて漁る時は其浦の人々居を譲り、河浜に陶するに器皆苦窪からず、舜の往きて居る所に二年在れば邑をなし、三年あれば都を成すといふ調子で、万人が其徳を慕つて来たといふ立派な人である。年二十の時には孝行の誉天下に聞えたので、帝尭様は此男に天下を譲らむと思召して、先づ内外に付いて、其行ひを観むと欲し、娥皇女、英といふ姫宮を二人まで舜に妻せられた。そして其御子九人を舜の臣下として其左右に慎み随はせられた事が、三十万年未来の支那国にあつた。カールチン様も矢張神徳に由つて王様から位を譲られ給ふのだから、大したものだなア、ゲーウツプーガラガラガラ、又しても酒の奴、天気が悪いので逆流して来よつた。アーン』
『妙な処へ話を持つて行くぢやないか。然しながら漢朝の帝尭といふ王様は変つたものだな。一点の私利私欲もなく、子孫の為めに美田を買ふと云ふ様な利己主義は微塵もなく、聖人賢人に世を譲つて世界万民を安堵させようと遊ばす其御精神は、人主たるものの模範とすべきものではないか。吾セーラン王様も、さうするとヤツパリ帝尭様の様な名君だと見えるな。然しながら俺の考へでは右守司のカールチンは、それ程聖人賢人ぢやと思ふ事が出来ないわ。只サマリー姫様のお父さまだと云ふ点が、ひつかかりで、刹帝利を譲られるのかも知れぬ。それだつたら吾々初め国民は大変な迷惑をせなくてはなるまいぞ』
『そんな事が吾々門番に分つて堪らうかい。善悪正邪は神でなければ分るものぢやないよ。卑しき臣下の分際として、そんな事を非難してみた所で屁の突張りにもなりやせぬわ。それよりも機嫌よく磐若湯を召し上つたら如何だい』
『其許由と云ふ奴、賢人か知らぬが、俺から見ると余程いゝ馬鹿だなア。普天の下、率土の浜、皆王臣王土に非ざるなしと云ふぢやないか。その王様の御守護遊ばす山林にもせよ、国土に住みながら王の勅命を拝受せず、一箪の食、一瓢の飲、光風霽月を楽しむと云ふ、利己主義の仙人気取りになつて、国家を忘却すると云ふ馬鹿者が何処にあるか。今の奴はさう云ふ拗者を指して聖人賢人と持てはやしてゐる奴が多いからサツパリ呆れて了ふわ。巣父も巣父で、担うたら棒の折れる様な馬鹿者だ。余程貧乏相と見えるわい。耳を洗うた川水を牛に呑ますと牛が汚れるなんて、何処まで馬鹿だか見当がつかぬぢやないか。そこになると虞舜は偉いわい。王様の姫君を二人まで女房に貰ひ、到頭天下をゾロリと頂戴したのだから、俺等から考へて見ると余程理想的の人物だ。末代迄も尭舜の世と云つて、かけかまへのない後世の人間にまで持囃される様になつたのも、ヤツパリ虞舜が円転滑脱、自由自在の身魂の働きをやつたからだ。許由、巣父なんて、舜に比ぶればお話にならぬぢやないか』
『そらさうだ。俺でも許由だつたら、耳を洗ふ処か二つ返事で、猫が鰹節に飛びついた様にニヤンのカンのなしにチユウチユウチユウと吸ひつくのだけどな。然しカールチン様もヤツパリ虞舜流だ。一も二もなく刹帝利を受けるのだからヤツパリ偉いわい。三百余騎の士を抱へ、うまく大黒主の喉元へ飛び込み睾丸を握つてゐるのだから、今日の運が向いて来たのだ。左守さまの様に兵は凶器也、誠の道を以て民を治むるに軍人等が要るものかと云つて、王様始め自分迄が軍人らしきものをお抱へ遊ばさぬのだから、已むを得ず時の勢抗すべからずと云ふ塩梅で譲位さるる事になつたのだらうよ。これを思へばヤツパリ人間は勢力が肝腎だ。交際術に長じ、権門勢家に尾を掉り、頭を傾け、敏捷くまはるのが社会の勝利者だ』
『オイ、ミル、貴様はカールチンさまが刹帝利になられても、ヤツパリ神妙に門番を勤める考へか。よもや、そんな馬鹿な事はしよまいね。忠臣二君に仕へずと云ふ事があるからな』
『そんなことは今発表する限りでないわい。俺は俺としての一の見識を持つてゐるのだから……夜も大分に更けて来た様だ。ドレ、モウ寝まうぢやないか』
と云ふかと思へば、其儘ゴロンと酔ひ倒れ、白河夜船を漕いで忽ち華胥の国へ行つて了つた。ボルチーはミルの高鼾に寝就かれず、微酔機嫌で潜り門をガラリと開け、ほてつた顔を夜風にさらし酔を覚まさむと、ブラリブラリと門前を迂路つき始めた。折柄雲を排して現はれた月の光は容赦なくボルチーの頭を照らした。
『あゝあ、いゝ気分だ。秋の月も気分が宜いが、冬の夜の空にかかる月は、何処ともなしに凄味があつて之も亦一種の風流だ。月と云ふ餓鬼や、いつ見ても、あまり気分の悪くないものだ。其代りに日天様に比ぶれば気の利かぬこたア夥しい。豆明月だとか、薯明月だとか、月見の宴だとか、何だとか云つて、人間さまの翫弄にしられて平気の平座で空に控へてゐるのだからなア。ゲー、ガラガラガラ、あゝあ苦しい苦しい、あまり月の叱言を云つたので、嘔吐をつきさうだ。サツパリ嘔吐つき、間誤つき、きよろつきさがして、寝つきが悪くて、こんな処までつき出されて来たのだな。日天様と云ふお方は神威赫々として犯すべからず、ど日中に月さまの様に酒肴を拵へて、日輪見をしようと云つてお顔を拝まうものなら、忽ち目は晦くなり、頭はガンガンする、神罰は覿面に当る。大自在天様は日輪様だ。三五教は月天様だと云つてゐるが、大自在天と弥勒さまとは、これだけ神力が違ふのだから、ヤツパリ俺達の奉ずるバラモン教は天下一品の教だ』
と管を巻き一人囀つてゐる。
 そこへ慌しく十数人の部下を引率れやつて来たのは、失恋組の大将カールチンを初め、ユーフテス、マンモスの面々であつた。ボルチーは先頭に立つたマンモスにドンと突当り、ヒヨロ ヒヨロ ヒヨロと五歩六歩後しざりしながら、路傍の枯草の上にドスンと腰を下した。草の上には霜の剣が月に照らされて閃めいてゐる。
『あいたゝゝ、誰ぢやい、人に衝突しやがつて、御免なさいと吐さぬかい、アーン。礼儀を知らぬも程があるわい。一体きゝゝ貴様はいゝゝ一体何処の馬骨だ。俺を何様と心得てゐる。勿体なくもイルナ城の門番のボルチーさまだぞ』
マンモス『ヤア、よい処で会うた。貴様、これから俺等の先頭をして表門を開くのだ。サア立てい』
『俺はチツとばかり酩酊してゐるから、暫く此処で月を眺め酔を醒ますから、先へ行つてくれ。潜り門を開いておいたから……ヤア何と沢山の黒頭巾だなア』
マンモス『近き未来の刹帝利カールチン様のお通りだ』
と肩肱怒らし、一行と共に城内さして進み入る。
(大正一一・一一・二四 旧一〇・六 北村隆光録)
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