猿たちは時々刻々に数をまし、じりじりと押し寄せてくる。伊太公や道公はどうにもできずに掛け合いをしている。玉国別は訓戒を始めた。
押し迫ってくる猿の一匹を、伊太公が押し倒した。すると猿たちは四方から四人に対して掻きついてきた。いっそう大きな白毛の猿は、玉国別の後ろから不意に目のあたりをかきむしった。
玉国別はあっと叫んでその場に打ち倒れた。三人は猿に向かって金剛杖を打ち振り防ぎ戦ったが、数万の猿は入れ替わり立ち替わり押し寄せ、力尽きてきた。
すると山岳が崩れるばかりの獅子の唸り声が響き渡り、猿たちは悲鳴を上げて一目散に逃げうせた。
杢助宣伝使が獅子を率いて助けてくれたのであった。杢助は宣伝歌に、風に肝を冷やして谷間に隠れ、しばらくの安きを盗んだ愚かさによって、玉国別は天罰を被ったのだ、と厳しく一行を諭した。
一同は、巨大な獅子に乗った時置師神の雄姿を伏し拝んで涙を流した。