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文献名1霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻
文献名2第1篇 小北の特使よみ(新仮名遣い)こぎたのとくし
文献名3第3章 大根蕪〔1193〕よみ(新仮名遣い)だいこんかぶら
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
お寅に引っ張られてウラナイ教にやってきた松彦の前に、魔我彦が現れて、教主蠑螈別の代理だと言って挨拶をなした。

松彦は、お寅が言うように自分の身魂がそれほどウラナイ教にとって尊い神格ならば、教主自身が挨拶に来てもよさそうなものなのに、誠のある扱いをされているようには見えないと言って、去ろうとする。

お寅と魔我彦は松彦を引き留め、蠑螈別に松彦の申し分をよく伝えるからと一同をその場に待たせて奥の間に姿を隠した。

万公は長く待たされて不満を抱き、松彦を尊い神様だと崇めておきながら、入信したら謀反を起こすつもりだろうと、松彦に出立を促した。

五三公は、高姫・黒姫が悪神にうつられて開いたウラナイ教だが、教祖の高姫・黒姫自身が今や立派な三五教の宣伝使となり、自ら愛想をつかした教えに真実がありそうはない、と松彦に意見する。

アク、タク、テクも万公と五三公に同調するが、松彦はいましばし自分のなすがままに任せて見ておいてくれという。

万公たちがウラナイ教を責めるのを聞いていた文助は、万公と言い争いになる。万公は文助をからかい、それにうんざりした文助は、奥へ行って教祖に催促をしてくると姿を隠した。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年12月11日(旧10月23日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年9月12日 愛善世界社版36頁 八幡書店版第8輯 266頁 修補版 校定版38頁 普及版17頁 初版 ページ備考
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本文  艮婆さまに誘はれて  末代さまの松彦は
 万公五三公其外の  三人と共に急坂を
 心ならずも登りゆく  川辺の松の根本なる
 千引の岩に包まれし  秘密の鍵を握りつつ
 油断ならじと村肝の  心を固め腹を据ゑ
 さあらぬ体を装ひつ  細い階段スタスタと
 刻んで上る門の前  お寅婆さまは立ち止まり
 これこれ申し受付の  文助さまよ末代の
 神の生宮初めとし  五人のガラクタ神さまが
 いよいよ此処へお出ましだ  一時も早く奥へいて
 蠑螈別の教祖さまに  早く取次なされませ
 神の恵も大広木  正宗さまや義理天上
 日の出神の生宮も  嘸や満足なされましよ
 竜宮海の乙姫が  懸りたまうた肉の宮
 艮婆さまの挨拶で  ここまで喰へて来た程に
 グヅグヅしてると帰られちや  又もや元の杢阿弥だ
 早く早くと小声にて  耳に口寄せ囁けば
 文助爺さまは頭をば  縦に三つ四つ振りながら
 川の流れを遡る  やうな足つきトボトボと
 襖押開け奥の間へ  白き姿をかくしける
 暫くあつて魔我彦は  満面笑を湛へつつ
 気もいそいそといで迎へ  貴方は末代日の王の
 天の大神生宮だ  能くまアお出下さつた
 正宗さまが奥の間で  山野河海の珍肴に
 ポートワインの瓶並べ  にこにこ顔で待ちたまふ
 遠慮は決して入りませぬ  貴方は神の生宮だ
 かうなる上はお互に  敵と味方の隔てなく
 腹を合して神業に  力の限り尽しませう
 小さき隔てを拵へて  ゴテゴテ争ふ時でない
 神政成就の御時節が  いよいよ切迫した上は
 末代様の肉の宮  どうしてもかうしても此山に
 居つて貰はにやなりませぬ  神素盞嗚の悪神が
 立てた教に沈溺し  下らぬ熱を吹き乍ら
 広い世界を遠近と  宣伝して居る馬鹿者が
 沢山あると聞きました  承はれば貴方様
 三五教にお入りと  聞いて一寸は驚いた
 さはさり乍ら能く聞けば  河鹿峠で兄様に
 廻り会うたが嬉しさに  ほんの当座の出来心
 三五教に御入信  なさつた事が知れた故
 いよいよこいつは脈がある  こんな結構な肉宮を
 ムザムザ帰してはならないと  正宗さまの肉宮が
 焦れ遊ばしお寅さまを  もつて態々貴方をば
 引き留めなさつた御無礼を  よきに見直し聞直し
 宣り直しませ魔我彦が  蠑螈別の代理とし
 茲に挨拶仕る  サアサア早う遠慮なく
 奥へ通つて下さんせ  神政成就の糸口が
 開けて来る小北山  これ程目出度い事あらうか
 あゝ惟神々々  神の御前に願ぎ奉る。
松彦『朝日は照るとも曇るとも
 万公『悪魔は如何に叫ぶとも
松彦『月は盈つとも虧くるとも
 万公『つまらぬ教を聞くとても
松彦『仮令大地は沈むとも
 万公『足らはぬ吾等の魂で
松彦『誠の力は世を救ふ
 万公『誠の事は分らない
松彦『此世を造りし神直日
 万公『此世の罪を神直日
松彦『心も広き大直日
 万公『困つた事と知り乍ら
松彦『唯何事も人の世は
 万公『唯何となく調べむと
松彦『直日に見直し聞直し
 万公『何は兎もあれ上り来て
松彦『身の過は宣直す
 万公『皆山坂を乗り越えて
松彦『三五教の宣伝使
 万公『危ない教を宣伝し
松彦『治国別の後追うて
 万公『蠑螈の別に招かれて
松彦『漸く此処に上り来ぬ
 万公『如何なる事か知らねども
松彦『末代日の王天の神
 万公『なぞと云はれて松彦は
松彦『怪しき雲に覆はれつ
 万公『様子探らむものをとて
松彦『忙しき身をば顧みず
 万公『お寅婆さまの後につき
松彦『来りて見れば文助が
 万公『置物然と坐り居る
松彦『お寅婆さまは声をかけ
 万公『教主の宮に逸早く
松彦『報告なされと急き立てる
 万公『合点往かぬと待つうちに
松彦『やつて来たのはお前さま
 万公『義理天上の肉宮と
松彦『名乗るお前は魔我彦か
 万公『道理で腰が曲つてる
松彦『丑寅婆さまの云うたよに
 万公『この松彦が天の神
松彦『一番偉い身魂なら
 万公『蠑螈の別は逸早く
松彦『迎ひに来なくちやならうまい
 万公『何か秘密が此家に
松彦『潜んで居るに違ひない
 万公『これや浮か浮かと奥の間に
松彦『進む訳には行きませぬ
 万公『誠の心があるならば
松彦『肝腎要の教祖さま
 万公『蠑螈別が吾前に
松彦『お越しになつて御挨拶
 万公『叮嚀になさらにやならうまい
松彦『これが第一不思議ぞや
 万公『魔我彦さまよ今一度
松彦『奥の一間に駆け入つて
 万公『確な返答を聞いた上
松彦『又改めて御挨拶
 万公『得心するよに云うて呉れ
松彦『さうでなければ何処迄も
 万公『面会する事お断り
松彦『これからぼつぼつ帰ります
 万公『これこれ丑寅お婆さま
松彦『いかいお世話になりました
 万公『いざいざさらばいざさらば』
 お寅婆は両手を拡げて、
『これこれもうし肉の宮  末代日の王天の神
 気が短いも程がある  悪気を廻して貰つては
 大に迷惑致します  正宗さまの肉宮は
 貴方を決して袖にせぬ  一時も早く現はれて
 飛びつきたいよに心では  思うて厶るは知れた事
 さはさり乍ら八百万  尊き神が出入して
 お神酒を飲つて厶る故  どしてもこしても暇が無い
 短気を出さずに気を静め  暫く待つて下さんせ
 貴方の顔を潰すよな  下手なる事はさせませぬ
 これこれ日の出の義理天上  何をグヅグヅして厶る
 一時も早く奥へいて  何とか彼とかそこはそれ
 お前の智慧のありたけを  縦横無尽に振り廻し
 蠑螈別の神様に  ○○○○してお出で
 それが出来ぬよな事ならば  義理天上も怪しいぞ
 日の出の神も駄目ぢやぞえ』
魔我彦『お寅婆さまの云ふ通り  これから奥へ踏み込んで
 羽織の紐ぢやないけれど  私の胸にちやんとある
 一伍一什を打ち明けて  蠑螈別に申しませう
 末代日の王天の神  暫く待つて下しやんせ
 失礼します』と云ひながら  一間をさして入りにける。
    ○
 待つ間久しき鶴の首  万公さまは気を焦ち
 脱線だらけの言霊を  無性矢鱈に打ち出す。
万公『松彦さまよ五三公よ  アク、テク、タクの三人よ
 蠑螈別と云ふ奴は  尊き俺等の一行を
 本当に馬鹿にするぢやないか  木枯し強い寒空に
 火の気一つなき受付に  待たして置いてグヅグヅと
 神のお給仕か知らねども  鱈腹酒に喰ひ酔ひ
 ズブロクさんになりよつて  無我と夢中の為体
 夜中の夢を安々と  見て居やがるに違ひない
 これこれ申し松彦さま  私は腹が立つて来た
 松の根下の岩と云ひ  艮婆さまの云ひ草が
 どうしたものか腑に落ちぬ  こんな所へ迷ひ込み
 眉毛をよまれ尻の毛を  一つも無いよに抜かれては
 世間へ対して恥晒  治国別の先生に
 どうして云ひ訳立つものか  俺をば失敬な婆の奴
 ブラリ彦だと云ひ居つた  松彦さまはユラリ彦
 国治立の神さまの  お脇立だと崇め置き
 口の先にてチヨロまかし  謀叛を起すつもりだらう
 挺にも棒にも合はぬ奴  したたかものが此の山に
 潜んで居るに違ひない  聖人君子は危きに
 近づかないと云ふ事だ  貴方は知つて居る筈ぢや
 サアサア松彦帰りませう  こんな処で馬鹿にされ
 どうして男が立つものか  アク、テク、タクよ五三公よ
 お前は何と思うて居る  意見があれば今ここで
 遠慮は入らぬ薩張と  俺にぶちあけて呉れぬかい
 腹の虫奴がグウグウと  怒つて怒つて仕様が無い』
五三公『五三公司が思ふ事  遠慮会釈もなきままに
 陳列すれば左の通り  耳を浚へて聞くがよい
 小北の山の神さまは  常世の姫の憑りたる
 高姫黒姫両人が  迷ひの雲に包まれて
 開いて置いた醜道だ  肝腎要の高姫や
 黒姫さまが改悟して  三五教に降伏し
 今は立派な神司  見向きもやらぬウラナイの
 教を信じて何になる  肝腎要の教祖さま
 高姫さまや黒姫が  自ら愛想を尽かしたる
 ウラナイ教に信実が  ありそな事は無いぢやないか
 これだけ聞いても分るだらう  思へば研究の価値はない
 これこれ申し松彦さま  私はもはや嫌になつた
 深くはまらぬ其中に  ここをば立ち去りスタスタと
 悪魔の征途に上りませう  取るにも足らぬ奴原を
 相手に致して暇潰し  肝腎要の神業に
 後れた時は何としよう  斎苑の館の神様に
 云ひ訳立たぬ事になる  万公、アク、タク、テクさまよ
 お前等は何と思うてるか  一応意見を五三公に
 聞かして呉れよ頼むぞや』

アク『天地の神の御名を笠にきて
  世を乱しゆく曲ぞ忌々しき。

 義理天上日の出の神と魔我彦が
  何を目あてにそんなデマ云ふか。

 松彦を末代様よ日の王よ
  天の神ぢやと旨く釣りやがる。

 善く云はれ気持の悪う無いものと
  松彦さまが迷ひかけたる』

松彦『今暫し吾なすままに任しおけ
  善しと悪しとは神がさばかむ』

タク『沢山に怪体な宮を建て並べ
  怪体な託宣するぞをかしき。

 タクは今思ひ浮かぶる事はなし
  此場を早くぬけたいばかりぞ』

テク『テクテクと強い山をば登らされ
  きつい狐につままれてける。

 きつく姫名から狐の守護神
  義理も天上もあつたものかい』

文助『最前から黙言つて此処で聞いて居れば、お前さま達は大変にこのウラナイ教の本山を疑ひ、ゴテゴテと小言を仰有るやうだが、そんな事を仰有ると神罰が当りますぞや。唯何事も神様にお任せなされ、自分の着物の襟裏についた虱さへ捻り尽されない身で居ながら、広大無辺の御神力を彼是云ふといふ事がありますか。障子一枚外は見えぬと云ふ人間の分際で居ながら、大広木正宗様のお樹てなされた教を何ゴテゴテと云ひなさる、ちと嗜なされたら好からう、ほんに憐れな人達だなア』

万公『芋蕪大根蛇松を書く
  文助さまにかきまはされにけり。

 芋南瓜茄子のやうな面をして
  蕪大根書くぞをかしき。

 文助が屁理屈計り並べ立て
  ばば垂れ腰で睨みけるかな』

文助『これこれ若い衆、蕪大根描いたとて蛇を描いたとて大きなお世話さまだ。放つといて下され、お前達のやうな糸瓜のかすに分つたものかい。瓢箪から駒が出る、徳利から酒が出る。早く改心をなさらぬと、往きも戻りもならぬやうな大根なんが迫つて来ますぞや。嘘計りツグネ芋して、山の芋ばかりして居るのだらう。本当に、芋もよい芋助だなア。屁のつつぱりにもならぬやうな小理屈計り囀つて、何の事だいな』
万公『お爺さま、誠に失礼な事を申ました』
文助『失礼だと云ふ事が分つたかな、分ればよい、神様は何でも見直し聞直し宣直し遊ばすのだから、これからは心得なされよ。吾が目が見えぬと思うて馬鹿にして居なさるが、目の見えぬ目あきもあり、目の見える盲もある世の中だから、余り左兵衛治をなさると、取り返しのならぬ事が出来ますぞえ』
万公『こんな魔窟へやつて来て、身魂も曇らされては取り返しがつきませぬわい。ウフヽヽヽ』
文助『エヽ仕方が無い男だ。こんな没分暁漢に相手になつて居つたら竜神さまが一枚も描けぬやうになつてしまふ。お蛸さまに頼まれた蕪がもちつと仕上らぬから、どれ、奥へ往つて静かな所で一筆揮つて来ませう、これこれ末代日の王天の大神様、暫く待つて居て下さいませ。これから教祖様へ御催促して来ますから』
万公『蕪の先生、左様なら』
文助『エヽ仕方が無いわい、仕方の無いケレマタだなア』
と呟きながら奥の間へ姿を隠した。
(大正一一・一二・一一 旧一〇・二三 加藤明子録)
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