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文献名1霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻
文献名2第2篇 恵の松露よみ(新仮名遣い)めぐみのしょうろ
文献名3第9章 賞詞〔1199〕よみ(新仮名遣い)しょうし
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-02-26 18:26:51
あらすじ
親子の再会を神に感謝するため八尋殿に詣でに階段を下りて行くお千代を見送りながら、松彦は娘の行く末を案じる歌を歌った。

一方お千代は階段を下りながら、自分が白浪女になりたいと言ったのは父母の本心を探るためであり、自分の心はあまねく人の世を照らす神業に参加したい、そのためには本当に苦しんでいる人や鳥獣を救うことが肝心だと考えていると歌い、その心を明かした。

松彦と松姫は、お千代の心を知って感謝の歌を歌う。また松姫は、かつの師匠である高姫が開いたウラナイ教を改良し、蠑螈別や魔我彦の心に潜む曲津神を言向けて珍の聖場を開きたいと考えており、そのために夫婦協力して当たりたいと心のたけを歌った。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年12月12日(旧10月24日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年9月12日 愛善世界社版145頁 八幡書店版第8輯 303頁 修補版 校定版152頁 普及版58頁 初版 ページ備考
OBC rm4509
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本文  蛇は寸にして人を呑み、栴檀は嫩芽より香ばしとは宜なるかな。
 十二の冬を迎へたる  侠客育ちの乙女子は
 修学院の小雀が  千代々々囀る蒙求の
 聞き覚えたる白浪言葉  今は包んで云はねども
 どことはなしに小ましやくれ  此世の風にもまれたる
 老人さへも舌を巻く  水も漏らさぬ言葉つき
 末頼もしく又恐ろしく  はかりかねてぞ見えにける
 八尋の殿に詣でむと  お千代は父母の許し得て
 ニコニコしながら階段を  気もいそいそと下りゆく。
 後見送りて松彦は  妻松姫に打ち向ひ
 『末恐ろしき吾娘  如何なる者となるぢややら
 体は生みつけたればとて  魂計りは人の身の
 力に生れしものでなし  皆天地の神様の
 御息をかためて人となり  此世に生れて来し上は
 神のまにまに成人し  思ひの儘に魂の
 向ふ処に進ましめ  打ち遣りおくに如くはなし
 性にも合はぬ世の中の  業を習はせ麗しき
 柱になさむと焦るとも  魂計りは人の身の
 左右し得べき事ならず  あゝ惟神々々
 御霊幸倍ましまして  お千代の体霊をば
 厚く守らせ給ひつつ  神の御為め世のために
 太しき功績を現はして  此世の中の熱となり
 光ともなり塩となり  花ともなりて世を救ふ
 神のみのりをたわたわに  結ばせたまへ惟神
 三五教を守ります  皇大神の御前に
 夫婦二人が謹んで  畏み畏み願ぎまつる
 朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 仮令大地は沈むとも  三千世界の世の中に
 子に勝りたる宝なし  況してや愛しき一人子の
 行末思ひ煩ふは  親の身として当然よ
 あゝ松姫よ松姫よ  汝と吾とはひたすらに
 神の御言を畏みて  吾子の事に心をば
 案じ煩ふ事もなく  神の御前に打ちまかせ
 夫婦の息を合せつつ  世人を救ひ守るべく
 心の限り身の極み  誠一つを立て通し
 此世の花と謳はれて  神の御名を世に照らし
 名を万世に照らすべし  思へば思へば有り難や
 親子夫婦の廻り会ひ  小北の山に曲神が
 住まうと聞きて来て見れば  思ひも寄らぬ今日の首尾
 善悪不二の世の様を  今更思ひ悟りける
 醜神達に囚はれし  蠑螈別や魔我彦も
 神の御目に見たまへば  吾等も同じ神の御子
 愛憎の区別あるべきや  人の身として同胞を
 悪みつ審判きつ悪態に  罵り合ふは天界の
 尊き神の御心を  悩ましまつる醜業ぞ
 いざこれからは吾々は  蠑螈別の神柱
 魔我彦さまやお寅さま  其外百の司等に
 天地の道理を説き明し  言葉を尽し身を尽し
 いと穏かに正道を  勧めて神の御恵に
 醜の御霊を救ひ上げ  助けにやならぬ吾使命
 神の御稜威を蒙りて  心静に司等に
 生言霊の神力を  完全に委曲に味はせつ
 仁慈無限の御教に  仕へまつらむ吾心
 諾ひたまへ天地の  畏き神の御前に
 謹み敬ひ願ぎまつる  あゝ惟神々々
 御霊幸倍ましませよ』
と一生懸命に祈つて居るのは松彦である。お千代は階段を下りながら又もや歌ひ出したり。
『常磐堅磐に限りなく  栄ゆる松の松彦や
 緑したたる松姫の  仲に生れた千代の松
 ライオン川の川の辺に  生み落されて産声を
 上げたる事のゆかしさよ  獣の中の王と云ふ
 獅子の名を負ふ川の辺で  産声あげしも神様の
 深い仕組があるのだらう  仮令何れの道にせよ
 頭となつて世の中に  心の光を照らしつつ
 普く世人を救ふべし  人には百の業あれど
 いとも尊き神業は  憂瀬に落ちて苦しめる
 憐れな人や鳥獣  救ふに勝りし事はなし
 今父母の御前で  白浪女になり度いと
 答へて父の御心を  探つて見れば有難や
 汝が心の向ふまに  此世を渡れと嬉しくも
 宣らせ玉ひし言の葉に  情の雨は降りしきり
 嬉し涙に吾袖は  絞るが如くなりにけり
 斯も開けた父母の  仲に生れし吾こそは
 三千世界の世の中に  いと勝れたる幸福者
 神の恵と父の恩  如何でか忘れむ千代八千代
 ミロクの御代の末迄も  山より高く海よりも
 深き恵を嬉しみて  神と親とによく仕へ
 瑞の御霊の大神の  御旨に叶ひまつるべく
 願ふ心を些細に  諾なひたまへ惟神
 神の御前に願ぎまつる  あゝ惟神々々
 御霊幸倍ましませよ  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  星は空より落つるとも
 曲に心を曇らさぬ  吾魂は永久に
 松の梢に宿る月  千代の齢の鶴巣くふ
 気高き姿を神の前  父と母との御前に
 照らしまつらむ惟神  御霊幸倍ましませよ』
と歌ひながら下つてゆく。松彦松姫は窓の中より涼しき此歌を聞いて初めて娘の本心を悟り、夫婦は互に顔見合はせ嬉し涙に暮れて居る。

松彦『思ひきや気儘な娘と思ひしに
  悟りけるかな誠心を』

松姫『皇神の恵の露の霑ひて
  松の緑も栄え行くらむ』

松彦『相生の松の生みてし御子ならば
  千代も八千代も栄えますらむ』

松姫『小北山尾上に栄ゆる常磐木は
  朝日をうけて色勝りゆく』

松彦『松が枝に千代の真鶴巣をくみて
  八千代の春を祝ふめでたさ』

松姫『天地の恵の露を浴びながら
  風にたわまず水におぼれず』

松彦『雨に濡れ風に吹かれて常磐木の
  色優りゆく千代の松が枝』

松姫『妹と背の吾背の君に相生の
  月日重ねて松姫の胸。

 吾子よと名乗りもあげず小北山
  峰の嵐にまかせ居しかな。

 さりながらどことはなしに可憐子の
  胸にうつるか吾を慕ひし』

松彦『垂乳根の父と母とに廻り会ひ
  心いそいそ笑み栄えける。

 栄え往くまつの神代は千代八千代
  恵の風に靡く百草。

 魔我彦の司にいつも親なしと
  揶揄れたる子ぞ可憐らしき。

 年月を忍び耐へし胸の中
  破れて魔我の言霊をのりし。

 千代子とて朝な夕なに心をば
  父と母とにうつしゐたれば。

 父母の行衛を求め迷ふ子の
  心の奥ぞ哀れなりけり』

松姫『名乗らむと思ひし事も幾度か
  あれど後先思ひ浮べて。

 年に似ぬ賢しき娘の成す業を
  見る度ごとに心迷ひぬ』

松彦『頑是なき乙女なれども神思ひ
  親を思へる心めでたき。

 魔我彦の醜の罵り耐へ忍び
  来りたるこそ雄々しかりけり。

 吾子をば褒めるは馬鹿の骨頂と
  人は云へども褒めたくぞなる』

松姫『一粒の種と思へば殊更に
  いとなつかしく愛らしきかな。

 両親の此歌ごとを聞くならば
  笑み栄えなむ千代の心は。

 親となり子と生るるも先の世の
  奇きゆかりのあるものと知る。

 天地の神の御子を預りて
  育て参らす事ぞ楽しき。

 吾が生みし子にしあれども天地の
  霊の籠りし珍の生宮』

松姫『小北の山の松風は  いと穏かに吹き起り
 フサの御国は云ふも更  月の国をば隅もなく
 恵の雨を送りゆく  さはさりながら産土の
 神とあれます神柱  皇大神の御息を
 送らせたまふ御ためぞ  高姫司の開きたる
 これの教はさかしけど  怪しき枝葉を切り棄てて
 若芽をはやし新鮮の  空気を吸ひて永久の
 春の陽気にまかせなば  再び開く春の花
 珍の聖場となりぬべし  蠑螈別や魔我彦の
 心に潜む曲神の  厳の言霊打ち出し
 夫婦心を合せつつ  末代日の王天の神
 上義の姫の名をかつて  誠の教を説き諭し
 これの霊を天国に  堅磐常磐に救ひ上げ
 生きては此世の神となり  霊主体従の正業を
 豊葦原の国中に  宣伝せしめ三五の
 御稜威を四方に輝かし  此地の上に天国を
 立てずばおかじ惟神  神の御前に相生の
 松の夫婦が謹みて  千代に八千代に願ぎまつる
 あゝ惟神々々  御霊幸倍ましませよ』
(大正一一・一二・一二 旧一〇・二四 加藤明子録)
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