お寅は怪しの森が本街道と間道の分かれ道になっていることを知っており、バラモン軍が見張りを立てているに違いないと一同に気を付けた。またお寅は自分は年寄りだからちょっとここで休息させてほしいと言って休みを取った。
お寅が腰をかけると、湯津爪櫛が落ちていた。自分が侠客時代にお金をかけて作った鼈甲のもので、長らく紛失していたものであった。
お寅は失くしたと思っていたこの櫛は、蠑螈別がくすねてお民に与えていたものだと気が付いた。そしてお民が逃げる時にここに落としていったのだろうと推測した。しかしすでに神の光に照らされて執着心を捨てていたお寅は、顔色一つ変えなかった。
万公はお寅が櫛を拾ってみている様を見て話しかけ、お民が落としていった櫛だと悟った。お寅は人が欲しいと思って盗んだこの櫛には霊が宿っているから、万公にあげようとするが万公は断った。
再び一行は怪しの森を指して歩いていく。コー、ワク、エムは三五教がやってきたことを知り、恐れて相談し合っている。その間に松彦たちは早くもやってきて、蠑螈別とお民の行方を尋ねた。
バラモン教の捕り手たちは蠑螈別のときのように、三五教の一行からもわいろを取ろうとするが、松彦と話しているうちに、ゆすり取ったお金を懐に持っていると不安にさいなまれることに気が付き、明かした。
コー、ワク、エムはもともとはお寅の金を蠑螈別が盗み取ったと聞いて、金をお寅に返そうとする。しかしお寅はもうお金に執着がなかった。かえって、自分の罪障を取ると思って使ってくれとバラモンの目付たちに頼み込んだ。
松彦は、お寅が許可した以上は喜んでその金を使用するがよいとコー、ワク、エムたちに言い渡した。(松彦一行の話は第48巻第16章へ続く)