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文献名1霊界物語 第48巻 舎身活躍 亥の巻
文献名2第2篇 幽冥摸索よみ(新仮名遣い)ゆうめいもさく
文献名3第9章 罪人橋〔1263〕よみ(新仮名遣い)ざいにんばし
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-05-24 09:15:05
あらすじ高天原の霊国および天国は光明の世界である。その光明は実性において神真である。すなわち霊的神的証覚である。また天人は高天原の愛の熱に包まれている。この熱は実性において神善・神愛にして、われわれがますます証覚に入ろうとする情動、願望を有するのは、この熱より来るのである。高天原の霊国・天国は万善の集合所であり、天人の証覚の程度は、現界人の口舌のよく尽くしえるところではない。大本開祖の真湯も、その密意は現代人では容易に解し難いが、智慧証覚のはる天人には直ちに無辺無量の密意を諒得することができる。この語辞については霊界物語第二輯第三巻(第十五巻)第一天国というところにその状況を示していあるので参照されたい。ゆえに人間はその精霊を善と真とに鍛え上げ、生きながら高天原の団体に籍を有するようにしなければ、大本の神諭は容易に解釈することはできない。国祖大国常立尊が厳霊として顕現し、稚姫君命、国武彦命等の精霊にその神格を充たし、そうして天人の団体に籍を有する予言者である出口開祖の肉体に来して、大神の直々の御教えを伝達されたものだからである。しかしながら大神は至仁至愛にましますがゆえに、神諭の密意を自然界の人間に容易に諭らしむために瑞霊の神格を精霊に充たし、変性女子の肉体に来らしめ、その手と口を通して霊界の真相を覚らしめ給はんとの御経綸をあそばしたのである。神格に充たされた天人すなわち本守護神の言語は衝動と相一致し、一々概念と一致するものである。内辺の天人は言者の音声および言う所の僅少なる語字によってその人の一生を洞察し知悉し得るのである。人間の想念および情動はその声音に現れ、皮膚に現れ、霊的智者賢者の前にはこれを秘することができないものである。しかし心に欲があり悪を包み利己心あるときは、情動は鈍り知性はおとろえて、人に欺かれ失敗を招く。すべてのこの宇宙は至善至真至愛の神が目的のために万物を造り、相応の順序によって人間を神の形体に作り、神業を完全に遂行せしめ給はんとして万物の霊長として人間を世に下し給うた。人間は神界の秩序整然たる順序を守り、善のために善をなし真のために真を尽くさねばならない。しかし神が人間に自由を与えて十二分の神的活動を来さしめ給はんとしたのを、人間が次第に神に背き曲神等の捕虜となり、神を無視して暗黒無明の世界が現出したのである。ここに大神は現幽神三界の大革正を遂行するために予言者を地上に降し、一定の猶予期間を与えて人間に対して神の愛を覚らしめ、行動を改めしめようと画策し給うたのである。さて、ランチ、片彦、ガリヤ、ケースたちは伊吹戸主神のはらかいによって地獄に追い込められることになった。四人は斜め下方に続く暗黒の隧道を次第に下って行く。最後に、大きな川が横たわって細い長い橋が架けられている少し広いところに着いた。ここには武装し厳めしい顔をした冥官が武装して二十人ばかり控えていた。冥官の一人が前に進み寄って四人に説明をした。非常な悪業を盛んにやった四人は、この橋を渡りきらなければ娑婆に帰れないのだという。橋の幅はわずかに一尺ばかり、手すりもなく上下左右に揺り動いている。橋の下の激流には怪物が大口を開けて通行人が落ちてくるのを待っている。橋の上は膚をつんざく寒風が吹き、いやらしい声が八方から聞こえている。ランチは恐ろしさに身体すくんで震え、冥官に許しを乞うた。冥官は、身魂が地獄に落ちるのを望む者は一人もない、自らの罪業によってこの罪人橋を渡るよう準備をなし、永久の住処を地獄に作った以上、誰も救うことはできないのだ、と涙を流して説明した。冥官は四人の霊衣を見て、まだ冥途へくるべき命数でないことに気が付いていぶかった。そこへ我利我利亡者の一隊が現れて四人に武者ぶりついた。四人は悲鳴を上げて泣き叫んでいる。このときどこともなく天の数歌がかすかに聞こえてきた。見る見るうちに我利我利亡者たちは煙のように消えてしまった。そして冥官の姿も一人減り二人減っていく。宣伝歌の声がおいおい近づいてきた。薄暗かったあたりは次第に明るくなってきた。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年01月13日(旧11月27日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年10月25日 愛善世界社版134頁 八幡書店版第8輯 638頁 修補版 校定版140頁 普及版69頁 初版 ページ備考
OBC rm4809
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本文  高天原の霊国及び天国は光明の世界である。其光明は実性に於て神真である、即ち霊的神的証覚である。此神真なる光明は諸天人の内視と外視とを同時に照破するものである。さうして内視とは天人自身の心の内にあり、外視とは其目にあるを云ふ。又諸天人は高天原の愛の熱に包まれてゐる。即ち此熱は実性に於て神善即ち神愛にして、吾々が益々証覚に入らむとする情動及び願望を有するものは此熱より来るものである。要するに高天原の霊国、天国は万善の集合所である。天人の証覚の程度は現界人の口舌のよく尽し得る所でない。人間が一千言を費しても尚尽す能はざる所をも、天人は数言にて之を弁ずる事を能くするのである。其他天人の一言一句の中にも無辺無量の密意の含まれてある事は、到底人間の言語に属する文字にて表はす事は出来ない。天人は其言語に用ふる所謂語字を以て十分に表はし得ざる所は、幽玄微妙なる音調を以て之を補ふ。そして其音調によつて情動を表はし、情動よりする想念中の諸概念は語字によつて之を表はすのである。大本開祖の神諭も亦其密意の存する所は到底現代人の智慧証覚にては容易に解し難きものである。されども智慧証覚ある天人が之を読む時は、直に無辺無量の密意の含まれてある事を諒得し得るものである。そして此語字については霊界物語第二輯第三巻(第十五巻)第一天国と云ふ所に其状況を示しあれば参照されたい。故に人間は其精霊を善と真とに鍛へ上げ、生きながら高天原の団体に籍を有するに非ざれば、大本の神諭は容易に解釈し得るものでない事を悟らねばならぬ。大本の神諭は、国祖大国常立尊、厳霊と顕現し、稚姫君命、国武彦命等の精霊に其神格を充し、さうして天人の団体に籍を有する予言者なる出口開祖の肉体に来し、大神の直々の御教を伝達されたものである以上は、余程善徳と智慧証覚の全きものでなければ之を悟る事は出来ない。併しながら神は至仁至愛にましますが故に、此神諭の密意を自然界の外分的人間に容易く悟らしめむが為に瑞霊の神格を精霊に充し、変性女子の肉体に来らしめ、其手を通し口を通して霊界の真相を悟らしめ給はむとの御経綸を遊ばしたのである。
 大本神諭の各言句の中に、人をして内的証覚に進むべき事項を含蓄せしめある所以は、神格に充されたる天人即ち本守護神の言語は情動と相一致し、一々其言語は概念と一致するものである。又天人の語字は其想念中に包含する事物の直接如何によつて無窮に転変するものである。尚又内辺の天人は言者の音声及び云ふ所の僅少なる語字によつて其人の一生を洞察し知悉し得るのである。何となれば、天人は其語字の中に含蓄する諸概念に依つて、音声の各種各様に変化する状態を察し、これに依つて、其人の主とする所の愛と信及び智慧証覚の如何なるものなるかを知るものである。現界の人間でも少しく智慧あり証覚あり公平無私なる者に至つては、其籍を生きながら天人の団体においてゐるものであるから、対者の一言一句の中に包める意義によつて其人の一生の運命を識別し得るものである。人間の想念及び情動は其声音に現はれ、皮膚に現はれ、如何にしても霊的智者賢者の前には之を秘する事が出来ないものである。此一言は愛を含むとか、此一句は親なりとか、彼の一句は勇とか、此一句は智とか、凡て一言一句の際にも顕現出没して、如何なる聖者といへども賢人といへども、心中の思ひを智慧証覚者の前には隠す事は出来ない、之即ち神権の如何にしても掩ふべからざる所以である。心に悪なく欲なく、善の徳に充されたものは従つて智性も発達し情動の変化も非常に活溌なるが故に、対者の腹のドン底まで透見し知悉し得るは容易なれども、若し心に欲あり、悪を包み利己心ある時は其情動は鈍り智性は衰へ、意思は狂ひ、容易に対者の心中を透見する事は出来ない。故に人に欺かるるものは皆其心に悪と欲と自利心が充満してゐる故である。決して愛善の徳に充され信真の光に充ちた聖人君子は、自然界の体欲に迷ひ悪人に欺かるるものでない。要するに欲深き吾よしの人間が相応の理によつて貪欲な悪人に欺瞞され、取返しのならぬ失敗を招くものである。
 さうして自分の迂愚不明から悪人に欺かれ自ら窮地に陥り、遂には其人間を仇敵の如く怨み且罵り、遂には自分の悪欲心より出でたる事を平然として口角に束ねながら、其竹篦は遂に神の御上にまで及ぼすものである。彼等は茲に至つて天道は是か非か、神は果して此世にあるものか、果して神が此世に儼存するものならば、何故斯の如き悪人に苦しめられ居るのも憐れみ給はず傍観的態度を執らるるや、吾々は斯の如き悪事災難を免れ家運長久を朝夕祈り立派にお給仕をして信仰を励んで居つたのに何の事だ。神には目がないのか、耳がないのか等と云つて、恨言を百万陀羅並べ立て、遂には信仰より離れ自暴自棄に陥り、益々深く地獄の底に陥落するものである。凡て此宇宙は至善至真至愛の神が目的のために万物を造り、相応の順序によつて人間を神の形体に作り、神業を完全に遂行せしめ給はむとして、万物の霊長として人間を世に下し給うたものなる以上は、人間は神界の秩序整然たる順序を守り、善の為に善をなし真の為に真を尽さねばならぬのである。然るに現代は遠き神代の黄金時代は何時しか去り、白銀時代、赤銅時代、黒鉄時代と漸次堕落して、今や混沌たる泥海世界となつて了つたのである。之も人間に神より自由を与へて、十二分の神的活動を来さしめ給はむとし給うたのを、人間が次第々々に神に背き八岐大蛇や曲神等の捕虜となり、遂に自ら神に反き神の存在をも無視するに至つた為に、かかる暗黒無明の世界が現出したのである。併しながら物窮すれば達すると云つて至仁至愛にして無限絶対の権力を具備し給ふ大神は何時迄も之を看過し給ふべき。ここに大神は現幽神三界の大革正を遂行せむが為に予言者を地上に降し、或一定の猶予期間を与へて愚昧兇悪なる人間に対し神の愛を悟らしめ、勝手気儘の行動を改めしめむと劃策し給うたのである。之を思へば吾々人間は大慈大悲の大神の神慮を奉戴し、造次にも顛沛にも精霊を磨き改過遷善の道を挙ぐるに力めねばならぬのである。
 扨て偽善者たるランチ、片彦両人の宣伝将軍は伊吹戸主の神の計らひによつて地獄へ追ひ込めらるる事となつた。ガリヤ、ケースも亦其後につき従ふ。大きな岩の虚隙から無理に番卒に押込まれ真暗の穴へ落ち込んだ。斜に下方に向つた隧道が屈曲甚しく通つてゐる。両手で探らなければ何時岩壁に頭を打ちつけ、又足許に注意せなくては何時躓くか分らない暗黒道を、四人は腰を屈めながら後から何物にか押さるる様な心地して次第々々に下つて行く。少し腰を伸ばさうとすれば頭の上の岩壁に遮られる。丁度海老腰の様になつて、何とも云はれぬ臭い香のする道を際限もなく探り探り深く深く落ち込んで行つた。少しく薄明い処へ四人は漸く着いた。そこには円い人間の潜るだけの穴が六つばかり覗き眼鏡の様に並んでゐる。さうして青、赤の顔面をさらした守衛が一々立つて居て、ものをも云はず四人を同じ穴へ無理やりに突込んで了つた。臭気紛々として嘔吐を催すが如き其辺一面の不愉快さ、彼等四人は却て愉快になり腐肉の臭気や堆糞の香を鼻蠢かし、嬉しさうに嗅ぎながらヤツと安心したものの如く息をつき又もやドンドンと以前より稍薄明き隧道を右や左に折れながら下りゆくのであつた。四人は漸くにして少しく広い所に着いた。見れば其処に大きな川が横たはつてゐる。さうして細い長い橋が架けられてある。ここには厳しい顔をした冥官が武装をして二十人ばかり控へて居た。冥官の一人はツと前に進み寄り、
『其方はランチ将軍、片彦将軍と申して、現界に於て非常に体主霊従の行ひを致し、人獣合一の悪業を盛んにやつた人足だから、此橋を渡つて向ふへ行け。此橋が無事に渡られたならば再び娑婆に帰してやらう。然し之が渡られぬ時は、此橋下に住んでゐる数多の怪物の為に其方は苛まれ、最も苦しき地獄に落ちるのだ。さあ早く行け』
とせき立て睨みつける。四人は四肢五体の力何時しかスツカリ抜けて了ひ、手足がブルブルと震ひ戦き、満足に歩く事も出来なくなつてゐた。さうして此橋には罪人橋と橋詰に立札が立つてゐる。其長さは目の届かぬばかり殆ど数百町に及んでゐる。さうして橋の幅が僅かに一尺ばかり、一寸体の平均を失つたが最後、真逆様に百尺以上の川に落ち込まねばならぬ。さうして其水の深さは地球の中心に達して居ると伝へられ、幾千万丈の深さとも分らない。此橋には欄もなく、加ふるにヒヨヒヨとして上下左右に揺り動く、実に危険な橋である。さうして橋の下には激流が飛沫をとばし赤黒い汚穢の水が流れてゐる。さうして何とも形容の出来ぬ怪物が沢山に棲み、橋の上を通行するものが過つて落ちて来るのを、大口を開けて待つて居るその恐ろしさ。一目見ても身慄ひする様である。さうして橋の上には膚を劈く如き寒風吹き、何とも云へぬ厭らしき声、八方より聞えて来るのであつた。
 ランチは余りの恐ろしさに身体すくみ、ビリビリ慄うて居ると冥官の一人は、
『サア、ランチ将軍、其方は現界に於ては立派なるバラモンの宣伝将軍ではなかつたか。沢山の敵味方の命をとつたる英雄豪傑でありながら、何故これしきの橋が恐ろしいのか。サア早く向ふへ渡れ』
と厳命した。ランチは震ひ声を出して、
『イヤ、モシ冥官様、斯様な恐ろしい処は到底渡る事は出来ませぬ。何卒改心しますから、元の処へお帰し下さい。お願で厶います』
『ならぬならぬ、決して霊界に於ては汝等に斯かる責苦を与へ、之を以て快楽としてゐるのではない。大神様を初め、すべてのエンゼルも冥官も、一人なりとも天国へ上り得る身魂の来り得る事を待つてゐるのだ。否唯一の歓喜としてゐるのだ。汝自らの罪業によつて汝自ら此罪人橋を渡るべく準備致し、又汝永久の住家を向ふの地獄に作りおいた以上は、汝の身魂は、其処まで行かねばならぬ。可愛さうなれど吾々は救ふ事が出来ぬ。汝は神の愛を信じて自ら天国を開くべき処を、自然界の欲に精霊を汚し、斯くも浅猿しき身の上となつたのだから、自縄自縛と諦めて行つてくれ』
と流石の冥官も憐愍の情に堪へかねてか、両眼より涙をポロポロと流してゐる。
片彦『モシ冥官様、もはや斯うなる上は自ら生んだ鬼が自らを責めるのですから、如何とも致し方が厶いませぬ。然しながら其地獄は随分辛い処で厶いませうな』
『地獄にも色々あるが先づ大別して十八地獄と分つてゐる。さうして其地獄にも其罪業によつて大小軽重の区別がある。地獄の団体も今日の処にては幾万を以て数へられるであらう。其中重なる地獄は、吊釣地獄、幽枉地獄、火孔地獄、郭都地獄、抜舌地獄、剥皮地獄、磨摧地獄、碓搗地獄、車崩地獄、寒氷地獄、脱壳地獄、抽腸地獄、油鍋地獄、暗黒地獄、刀山地獄、血池地獄、阿鼻地獄、秤杆地獄と云つて、之が大体の地獄であり、其中で罪業の大小軽重によつてそれぞれの階段が出来てゐる。お前達も確りして、地獄に行つたら随分悪の強い奴だから地獄の統治者となるかも知れない。それを楽みに行つたがよからう』
『如何しても吾々は地獄へ参らねばなりませぬか』
『お前達四人の霊衣を見れば尚多少朧気に円相が残つてゐる。未だ冥土へ来るべき命数でないが、併しながら伊吹戸主の神様より御命令があつたによつて、如何しても此処を通さにやならぬ。四人が四人ながら、まだ娑婆臭い亡者が来るとは不思議千万だ』
と首を傾け思案顔をしてゐる。
 かかる所へ骨と皮とになつた我利々々亡者の一隊、雑魚の骨を打ち開けた様にウヨウヨウヨと幾百千とも数知れず現はれ来り、ランチ、片彦両将軍に向ひ、得も云はれぬ厭らしき声を振り搾り、前後左右より武者振りつく其厭らしさ。ガリヤ、ケースも亦相当に厭らしき怪物にとりまかれ、悲鳴をあげて泣き叫んでゐる。
 此時何処ともなく天の数歌が幽かに聞えて来た。見る見るうちに我利々々亡者は煙の如く消えて了つた。さうして数多の厳しき冥官の姿は一人減り二人減り、おひおひと其数を減ずるのであつた。宣伝歌の声おひおひ近づいたと見えて、だんだん高く聞えて来た。非常に薄暗かつた四辺は、薄紙を剥いだ様に次第々々と明るくなつて来た。
(大正一二・一・一三 旧一一・一一・二七 北村隆光録)
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