本巻は波斯国の境、産土山の聖地・伊祖の館から、印度国ハルナの都の大黒主を言向け和すために瑞の御霊神素盞嗚尊が数多の宣伝使を派遣し給うた中でも、もっとも有名な女宣伝使・初稚姫の旅を描いている。
初稚姫が妖怪変化に出会い、猛犬スマートに救われて河鹿峠を無事に越えます。祠の森の大神の社に参拝すると、初稚姫の父・杢助に変化していた妖魅が委縮して遠く山の彼方に遁走するところまでを口述している。
また、治国別宣伝使の薫陶を受けて三五教に帰順した元ウラナイ教の丑寅婆さんが、伊祖の館へ修業を兼ねて参拝する途中、高姫に出くわして面白い問答を交換するありさまが、目に見えるように現されています。
高姫は、いったん改心の曙光を認められて生田の森の神司と選ばれながら、東助に失恋してから自暴自棄の結果、祠の森でまたもや野望を企てることになる。高姫の改悪物語は、本巻の主要点ともいうべきものである。
また珍彦夫婦が神丹を文殊菩薩から与えられて高姫の毒手を免れるところや、受付の滑稽な場面も一読の価値があることと信じるものである。
豆州湯ケ島温泉湯本館の臨時教主館において、療養湯治の間をもって口述を終わる。