初稚姫は神素盞嗚大神の命を奉じ、大黒主の身魂を救い天下の害を除くために、ハルナの都に向かってただ一人、征途の旅に出ようとしていた。
初稚姫は照国別、玉国別、治国別、黄金姫、清照姫たちと同時に出征の徒に上るはずであったが、神素盞嗚大神の命によって百有余日、自宅において修業を命じられていた。
修業が終わって、初稚姫はいよいよ父に別れを告げ、斎苑館の八島主神に挨拶をすべく訪問した。八島主は、初稚姫の精神を試すために、征途の旅に出る前に夫たるべき人を決めておくべきだと告げた。
八島主は、初稚姫の疑問に答えて、天国の理想の夫婦とは神が結び給うた婚姻であり、互いに善と真、意志と知性が和合一致していると説明した。
初稚姫は、自分は決して独身主義ではないが、ハルナの都の御用が済んでから八島主の世話に預かってそれ相当の夫を持つつもりだと答えた。
八島主は初稚姫の答えに満足し、互いに別れの歌を詠み交わした。初稚姫は旅支度に身を整えて斎苑館を出立し、進んで行った。