高姫は病床から、戻ってきた初稚姫を呼んだ。高姫の顔は怪物のように恐ろしく腫れ上がっていた。初稚姫は同情の声をかけた。
高姫は杢助の様子を尋ねた。初稚姫は、杢助と会えなかったと言えば高姫が心配を募らせると考えて、杢助は顔はひどく腫れ上がって苦しんでいたが、自分が尋ねて行くと嬉しそうに返事を返してくれたと答えた。
高姫は、誰か杢助を担いでくる人手を珍彦に手配してほしいと初稚姫に頼んだ。すると次の間に控えていたイルがふすまを開いて返事をし、初稚姫に声をかけた。高姫はイルに下心があるのだろうと予防線を張る。初稚姫はイルに珍彦への使いを頼んだ。
高姫は、自分の心配をしてくれる初稚姫に対して、杢助を世話する時とどっちが愛情が深いか、と意地悪な質問をした。初稚姫は思った通りに実父の杢助に対する方が愛情が深いように思うと答えた。すると高姫はそれを根に持って、初稚姫にきつく当たりだした。
初稚姫は真心から高姫の境遇を憐み、なんとかして霊肉共に助けてあげたいと思うほかの心はなかった。しかし根性のひがみきった高姫は、初稚姫の親切を汲み取ることはできなかった。
初稚姫も、そのとき相応の方便を使うことはあるが、宣伝使たるもの心にもない飾り言葉を使うべきでないと考えたので、正直に、実父と義理の母に対しては愛の程度に違いがあることを高姫に言って聞かせたのであった。
初稚姫は、教義を説くときには厳然として一歩も仮借しないのである。すべて真理というものは盤石のごとく鉄棒のごとく、屈曲自在することができないものだからである。もし宣伝使にして真理までも曲げて方便を乱用するなら、たちまち霊界および現界の秩序は乱れ、神の神格を破壊してしまうことを、初稚姫は恐れていたからである。