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文献名1霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻
文献名2第2篇 夢幻楼閣よみ(新仮名遣い)むげんろうかく
文献名3第10章 女異呆醜〔1325〕よみ(新仮名遣い)にょいほっしゅ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-09-03 19:07:46
あらすじ妖幻坊は萱草の茂る森林に高姫をいざない、妖術を使って豪華な宮殿や宝物を見せてたぶらかした。高姫は、侍女の高子と宮子の寒熱に当てられて失神したが、目を覚ますと高子と宮子がいそいそと自分を介抱していた。高姫は二人を玉の精だと信じ、それが自分の侍女として仕えて居ることに図に乗って、自分の身魂がどれほど尊いものかをとうとうと説いている。高子と宮子は高姫の歌に答えて、妖幻坊と高姫を賛美する歌を歌った。高姫は笑壺に入り、うれしくなって自分の腹中の眷属たちとこの境遇を祝い合った。高姫は高子と宮子と打ち解けて、立派な今の中で歌ったり舞ったり、美しい果実を味わい一日を過ごしていた。その実は萱野原の狸穴で夢を見ているのみであった。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年01月26日(旧12月10日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年12月29日 愛善世界社版147頁 八幡書店版第9輯 319頁 修補版 校定版150頁 普及版69頁 初版 ページ備考
OBC rm5110
本文のヒット件数全 1 件/厳の霊の大御神=1
本文の文字数3548
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本文  妖幻坊の曲神が  曲輪の玉を使用して
 夢幻の楼閣映出し  名利と恋に心魂を
 蘯かし狂ふ高姫を  うまく誤魔化し萱草の
 茫々茂る森林に  誘ひ来りいろいろと
 塵や芥や糞尿を  至善至美なる宮殿や
 其他百の珍品と  眼くらませ狸穴に
 引き入れ茲に曲神は  天地を救ふ生神の
 誠の道を攪乱し  天の下をば悉く
 暗と泥との魔界とし  暴威を振ひ永久に
 楽しまむとて心力の  あらむ限りを尽すこそ
 実にも忌々しき次第なり  高宮姫に仕へたる
 高子の素性は幻相坊  宮子の素性は幻魔坊
 妖幻坊の両腕と  頼みきつたる妖怪ぞ
 高姫心の誇りより  曲の手管に乗せられて
 浮び方なき魔の中に  陥りながら欣然と
 天下に無比の出世を  なせしものぞと勇み立ち
 日の出神の義理天上  金毛九尾醜神も
 亦高姫と同様に  妖幻坊に欺かれ
 悪魔の機関と使はれて  喜び居るこそ憐れなれ
 寒と熱とに冒されて  一度は失神したれども
 暫くありて甦り  四辺を見れば高、宮の
 二人の侍女はイソイソと  高姫司の介抱して
 薬を煎じ湯を沸し  一心不乱に真心を
 尽して仕へ居たりけり  之を眺めて高姫は
 怒りもならず顔色を  和らげ二人に打向ひ
 『ほんにお前は如意宝珠  潮満玉や潮干の
 尊き玉の御化身か  真に畏れ入りました
 貴女の様なお身魂を  何程日の出神ぢやとて
 お使ひ申すは何となく  勿体ない様な気が致す
 何卒貴女は高姫に  構はず宝座に現はれて
 金剛不壊の神力を  完全に委曲に現はして
 尊き神の御教を  世に輝かしウラナイの
 道を照らさせ給へかし  お願ひ申す』と手を合し
 頼めば二人は首を振り  『いえいえ私は本城の
 高宮彦の御命令  天にも地にも代へ難き
 高宮姫の側近く  仕へ侍れと厳かな
 命令受けて居りまする  不束なれど吾々を
 何卒お使ひ下されて  日の出神の神業の
 万分一に御使ひ  遊ばし給へ』と手を合し
 願ふ姿ぞ殊勝なれ  高姫ますます図に乗つて
 『高子よ、宮子よ、汝は又  如何した身魂の因縁か
 変性男子の御系統  常世の姫の御再来
 日の出神の義理天上  かからせ給ふ生宮の
 高宮姫の側近く  仕へ奉ると云ふ事は
 之に越したる幸福は  又と世界にあるまいぞ
 之から先は神妙に  高宮姫の云ふ事を
 一つも背かず聞くがよい  高宮彦は如意宝珠
 持たせ給へば神力が  斯くも立派に現はれて
 清く輝きましませど  あの宝玉を手放せば
 人民界に籍を置き  普通の人より勝れたる
 智勇兼備の勇将だ  さはさりながら人間は
 到底神には叶ふまい  此高姫は人間と
 姿を現じ居るなれど  高天原の最奥の
 も一つ奥のまだ奥の  天極紫微宮の其奥の
 御殿にまします月の神  日の大神の御子とます
 日の出神の義理天上  もう此上はないと云ふ
 尊き身魂の肉の宮  神人感合した上は
 高宮姫は義理天上  日の出神は私ぢやぞえ
 曇り果てたる暗の世を  日の出の守護にしよと思や
 ヤツパリ日の出神様が  御用を致さにやなるまいぞ
 五六七の神世と云ふ事は  日の出の御代と云ふ事だ
 厳の御霊や瑞御霊  ミロクの神と云つたとて
 日の出神の又の名だ  お前は年が若い故
 こんな事をば云つたとて  分らないのは無理はない
 さはさりながら如意宝珠  金剛不壊の身魂なら
 一旦私の腹中に  這入つて生れた生魂よ
 さすればお前は吾娘  変化の法で世に出でて
 ここに母子の廻り会ひ  ほんに嬉しい事だなア
 ほんにお前も嬉しかろ  之から三人村肝の
 心を協せ手を曳いて  瑞の御霊の三女神
 高宮彦の神業を  助けまつりて芳名を
 幾万劫の末までも  輝き渡す吾心
 諾ひませよ高、宮の  二人の御子よ惟神
 神に誓ひて常世姫  日の出神の生宮が
 完全に委曲に教へおく  ああ惟神々々
 御霊幸はひましませよ  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 高宮彦や高宮の  姫の命のある限り
 金剛不壊の如意宝珠  握つた上は天地を
 一つに丸めて義理天上  日の出の御代と立直し
 五六七神政の太柱  常磐堅磐に立並べ
 世の大本の生神と  称へらるるは目のあたり
 ああ有難し有難し  この世を造り給ひたる
 厳の霊の大御神  梵天帝釈自在天
 大国彦の大御神  盤古神王塩長の
 彦の命や常世彦  ウラルの彦の御前に
 畏み畏み願ぎ奉る  ああ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』
と一生懸命に狸穴の中に寝言の様に歌つてゐる。高子は高宮姫の歌に答へて、綾の袖を胡蝶の如く、しなやかに振りながら、自ら歌ひ自ら舞うて高姫の心を慰めた。
『金剛不壊の如意宝珠  其半分の分霊
 世界の火熱を守護する  高皇産霊の大神の
 其分身が現はれて  ここに高子の姫となり
 三千世界を救う為  心を尽し身を尽し
 獅子奮迅の活動を  遊ばし給ふ常世姫
 其肉宮の御為に  近く仕へて神業を
 完成せむと勇み立ち  高宮彦の父神と
 御身を守護し奉る  日の出神の義理天上
 かからせ給ふ生宮よ  何卒々々吾々を
 生みの御子とみそなはし  弥永久に何時までも
 御目をかけさせ給へかし  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 三五教の神司  勢猛く攻め来とも
 吾身の汝に従ひて  守らむ限り百千の
 猛き獣も曲津見も  又三五の強敵も
 何か恐れむ敷島の  大和魂の如意宝珠
 心平に安らかに  思召されよ母の君
 勇み喜び御前に  真心こめて永久の
 誓ひを結び奉る  ああ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』
と歌ひ舞ひ終る。高姫は笑壺に入り、顔の紐をほどいて前途の光明を夢みつつあつた。宮子は又歌ふ。
『日の出神の生宮と  現はれませる神司
 愈一陽来復の  花咲く春の廻り来て
 高宮城の司神  高宮彦の妃となりて
 三千世界の万霊を  救はせ給ふ母となり
 現はれますぞ尊けれ  吾は水をば守護する
 如意の宝珠の片割れぞ  宮子の姫と現はれて
 高宮姫の側近く  仕へまつりし嬉しさよ
 瑞の御霊の元の霊  神皇産霊の大神の
 玉の雫になり出でし  此世を洗ふ瑞霊
 厳と瑞とが相並び  高宮城に現はれて
 二人の御身を守護せば  三千世界は永久に
 無事泰平に治まりて  枝もならさぬ神の御代
 五六七の神世は忽ちに  此地の上に顕現し
 日の出神の神徳が  輝き渡るは目のあたり
 喜び仰ぎ奉る  ああ惟神々々
 水の霊の宮子姫  真心こめて母君の
 御前に誓ひ奉る』
と歌ひ終り、淑かに座に着いた。高姫は、
『何とまア結構な事が重なれば重なるものだな。もしや夢ではあるまいか』
と頬を抓つて見たり、眉毛に唾をつけて見たり、臍の辺りを突いたり押したりしながら、腹中のお客さまに向ひ、
『おい、義理天上殿、金毛九尾殿、其他の眷属共、此高姫の出世を知つて居るか。お前達は如何考へる。もしも高姫が夢を見てゐるのなら、夢とハツキリと云うて呉れ。あまり結構過ぎて本当にならないから』
 腹の中から大声で、
『義理天上日の出神、今日のお喜び謹んでお祝ひ申す。高宮姫の肉体、御苦労で厶る。オツホホホホ、先づは目出度い、お目出度い。のう金毛九尾、結構ではないか』
『成程々々、之にて願望成就致すであらう。いや大蛇殿、蟇殿、其他の連中、お喜び召され、アツハハハハ』
 腹中より、
『アツハハハハ、イツヒヒヒヒ、クツハハハハ、クツハハハハ、チツヒヒヒヒ』
とガラクタ霊が勝手に喜び笑ふ声が一つになつて井堰を切つた様な勢で高姫の口へ流れ出づるのであつた。
高子『お母さま、何、心配してゐられますの。何だか、云つて居らつしやつたぢやありませぬか』
『あ、お前は子供だからまだ分るまいが、私は今義理天上さまや上義姫様、旭の豊栄昇姫さま、リントウビテン大臣さま等と御相談を申して居たのだよ』
『何とまア、お母さまは八人芸の様な重宝なお方ですね。なア宮子さま、私も貴女も、こんなお母さまを持ち、高宮彦のお父さまを持つて居るのだから、三千世界に恐いものはありませぬわネ』
宮子『さうですとも、それに違ひありませぬわ』
『オツホホホホ、何とまア優しい子だな、肉体の人間から生れた子だと、私もチツとばかり悋気が起ろまいものでもないが、何といつても、私の腹にあつた如意宝珠から化けて出た子だから安心なものだ。なア高さま、宮さま、お前二人の名をよせるとお父さまの名にもなり、お母さまの名にもなるね』
高子『ホホホホホ、嬉しいわ』
宮子『エヘヘヘヘヘ、本当に有難いね』
 斯く三人は打解けて立派な居間の中で、歌つたり舞うたり、美はしき果実を味はひながら一日を暮した。其実、萱野原の狸穴である事は前述の通りである。
(大正一二・一・二六 旧一一・一二・一〇 北村隆光録)
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