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文献名1霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻
文献名2第1篇 神授の継嗣よみ(新仮名遣い)しんじゅのけいし
文献名3第4章 理妻〔1390〕よみ(新仮名遣い)りさい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-08-07 16:14:13
あらすじ刹帝利ビクトリヤ王と現王妃のヒルナ姫は、アールの帰城に狂喜した。王は、悪神にたぶらかされて王子たちを殺そうと図ったことを懺悔し、涙と共に謝した。アールは父王の様子を意外に思ったが、悪神のために道を誤ったことを悟り、少しも親を怨む心はなかった。そして山中の暮らしや、妹が訪ねてきて一緒に暮らすことになった経緯などを物語り、うれし涙にかきくれた。治国別の館には数多の家来が遣わされ、残り五人の兄妹を城内に迎え取った。治国別一行も祝宴に招待され、神恩を感謝した。ビクトリヤ王は年老いて余命がいくばくもないことを悟っており、アールに王家を継がさせた。そして兄妹五人にはビクの国を六つに分け、それぞれ領分を守らせることとした。アールはヒルナ姫に実の母親のように仕えた。さて、長兄のアールに妃を迎える必要が迫ってきた。しかしアールは、幾たびも候補者に首を振るのみであった。アールは境遇の変化によって心身に変調を来たし、貴族生活が厭になってたまらなくなってきた。アールは立派な服を脱ぎ棄てて、たびたび城内を抜け出して田舎をうろつくようになってしまった。そしてたびたびの左守と右守の諌めもまったく聞き入れなかった。刹帝利は困り果てて治国別に相談すると、治国別は、しばらくはアールの好きなようにさせるように、と答えた。あるときアールが平民の服を着て城を抜け出し、ビクトル山のふもとのパイン林の木蔭に独りで休んでいた。そこへ熊手を持ち籠を背負って枯れ松葉を掻きにきた女がやってきた。女はハンナという二十ばかりの首陀の娘で、とても器量が悪かった。アールは身分を隠してハンナと話すうち、その心根と言動に感心し、この女こそ自分の妃にするべき者だと考えた。そして、ハンナに自分は実はビクトリヤ王の長子であると明かした。恐れ入るハンナに対し、アールはどうしても自分の妻になってくれと頼み込み、ハンナを連れて城に帰ってきた。左守はアールの話を聞いて驚き、アールを諌めるが、アールは父王や左守こそ頑迷で国家の行く末をわかっていない、と反論するありさまであった。アールは、治国別宣伝使の裁定を仰ぐように左守に申し入れた。左守も、このまま刹帝利に報告しても反対されることは目に見えているので、アールとハンナは城内に忍んでもらって、治国別の館に急いで出かけて行った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年02月21日(旧01月6日) 口述場所竜宮館 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年3月26日 愛善世界社版47頁 八幡書店版第9輯 636頁 修補版 校定版46頁 普及版21頁 初版 ページ備考
OBC rm5404
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本文  刹帝利ビクトリヤ王を始め、アーチ・ダツチエスのヒルナ姫はアールの帰つて来たのに狂喜し、いろいろと優しき言葉をかけ、其無事を祝し、且刹帝利はアールの手を固く握り、自分が悪神に誑かされ、最愛の子供を残らず殺害せむとした事の不明を涙と共に謝した。アールは意外に父の心の柔ぎし事や、又吾れを憎み玉ひしは悪神の為に唆されたる事を悟り、少しも親を怨む心なく、久し振の面会を喜び、父の高恩を謝し、且山中生活の苦しかつた事や、妹が一年前に尋ねて来た事、其外三人の宣伝使が迎へに来てくれた経緯などを細かに物語り、嬉し涙にかきくれた。左守右守を始め内事司のタルマンも死んだ者が帰つて来たやうに喜んで、早速に神殿に拝礼をなし、直会の神酒を頂いて王家の万歳を祈つた。それから治国別の館へ数多の家来を遣はし、五人の兄妹を城内に迎へ取り、且治国別一同を招待し、祝宴を開き、神恩を感謝した。ヒルナ姫はアールに比ぶれば、親と子程年が違うてゐた。され共アールはヒルナ姫を真の母の如くに尊敬し、ヒルナ姫も亦アール兄妹を吾子の如くに労はり、陰になり陽になり、親切を尽した。刹帝利は年老い余命幾何もなきを悟り、アールをして家を継がしめ、弟妹五人にはビクの国を六つに分け、各其領分を定め、アールの王家の藩塀となつて国家を守らしめた。イースにはプリンスを授け、ウエルスにはキングスを授け、エリナンにはカウントを授け、オークスにはヴイコントを授け、ダイヤ姫にはバアロンを与へ、国の四方に領地を分つて、永らく国家を守らしむる事とした。
 先づ第一に兄のアールに妃を迎へる必要が迫つて来た。左守右守は四方に奔走して適当な配偶を求めたが、どうしてもアールの気に入る女がない。幾度も候補者を定めてアールに見せたけれ共、アールは首を左右に振つて之を拒絶するのみであつた。而して俄にアールは境遇の変化と食料の変化とに仍つて、身体に変調を来し、顕要な元の身分になつたものの、ヤハリ窮屈な貴族生活が厭になつてたまらず、こんな事なら帰つて来るぢやなかつたに、兄妹六人が睦まじう山住居をして勝手気儘に猟をして、簡易生活を営みたいものだ……と煩悶を続けて居た。遂には精神に少し許り異状を来したと見えて、隙ある毎に城内を脱け出で、只一人田舎をうろつくのを以て楽みとしてゐた。刹帝利や左守右守が何程諫めてもチツとも聞入れなかつた。終には刹帝利も困り果てて治国別に教を請うた。治国別は暫くアールの好きな様にさしておくがよからうといふ意味を答へた。外ならぬ治国別の言葉であるから、刹帝利以下の最高幹部連は、アールの好きな儘にしておいた。アールは立派な服を脱ぎすて、ホーレージ・キヤツプを頭に戴き、ベリースを被つて、城内を脱け出し、漂然としてビクトル山の麓のパイン林の木陰に独り休んでゐる。そして空行く雲を眺め、ああああと溜息をつき乍ら、兎でも通つたら獲つてみたいものだと考へてゐると、そこへ熊手を持ち、背に籠を負うて枯松葉を掻きに来た、頑丈な二十歳許りの不細工な女がやつて来た。女はハンナと云ふ首陀の娘であつた。アールの姿を見て、尊き王子とは知らず、其傍に籠をおき、枯松葉を頻りに掻き集めて籠に捻ぢ込んでゐる。アールは側へ寄つて、
アール『コレお前はどこの女だか知らぬが、俺にも一つ手伝はしてくれないか、其熊手を一つかして貰ひたい』
と云つた。ハンナはアールを見て、不思議な顔をし乍ら、
ハンナ『ハイ、お貸し申さぬことはありませぬが、一寸見れば貴方はどこ共なしに威厳の備はつた御人格、どうも普通のお方とは思へませぬが、なぜ斯様の処にお一人お出になつて居りますか』
アール『イヤ、俺はそんな尊い者でない。子供の時から手癖が悪うて、親を泣かせ、近所に迷惑をかけ、家を放り出され、行く所がないので、此パインの枝で首でも吊つて死なうかと思ひ、此処迄やつて来たのだ。併し乍らお前が松葉掻きをしてるのを見て、羨くてたまらず、それ故手伝はしてくれないかと頼んだのだ』
 ハンナは……何処ともなしに気品の高い男だなア……と思ひ乍ら、……此人の言ふ事が果して本当ならば誠に気の毒なものだ、何とかして助けてやる工夫はあるまいか……と、同情心にくれ乍ら、熊手をそこに投すて、アールの側によつて、
ハンナ『モシ、どこのお方か知りませぬが、貴方は夫れ程までに御決心をなさつたのならば、どうです首吊りをやめて、私と一緒に暮す気はありませぬか、私は賤しい首陀の娘で厶いますが、兄が跡をとつてをりますから、親の跡を継ぐ身でもなし、此様な不細工な女でも嫁入口は沢山に言つて来ますが、どうも私の気に合はないので皆断つて居ります』
アール『お前はそれ程沢山嫁入の申込があるのに何故、俺のやうな極道息子のすたれ者と夫婦にならうと云ふのか、どうも合点のいかぬ事を云ふぢやないか』
ハンナ『私は普通の男は嫌です。極道の味も知らず、世間の味も知らない坊ちやん計りでは、到底円満な家庭は作れませぬ。夫れよりも十分落ちて命をすてる所まで決心した人なら、世の中の酢いも甘いも知つてるに違ひありませぬ。どうです、捨てる命を存らへて、私と一生暮すお考へはありませぬか。私は此通り体が丈夫で厶いますから二人前働きます。仮令貴方が病気になられても困りませぬ。女の方から結婚を申込んで、はしたない奴とお笑ひでせうが、私は貴方のやうなドン底へ墜ちた方と、夫婦になりたいと、朝夕神に念じて居りました。相当に財産も親から分けて貰つて居りますから、メツタに難儀はさせませぬ』
アール『成程お前は感心な女だ。併し随分容貌は悪いのう』
ハンナ『容貌が悪うてお気に入らねば仕方がありませぬ。併し乍ら貴方もよく考へなさいませ』
アール『イヤ、俺は容貌は決して好まない。お前の様な立派な心を持つてる女が欲しいのだ。俺も今まで沢山な美人を嫁に貰つてくれと、実の所言はれたのだが、何だか気に入らぬので、内に居つても面白からず、又嫁の話かと、うるさくて堪らず、此処迄やつて来たのだ。併し、親の財産をスツカリ使ひ果し、おまけに生殖器病を煩ひ、体中に牡丹餅疥癬をかいて、誰も彼れも俺の側へはよりつくものはない。それにも関らず沢山嫁入の申込があるのだから困つてゐるのだ。此処へ来て見れば、又お前から結婚を申込まれ、毎日日日結婚攻めに会うて、此広い天地に身をおく所がないのだ。何卒モウ云ふてくれな。私のやうな者を夫に持つた所で末が遂げられず、お前に苦労をかけねばならぬからなア』
ハンナ『貴方が其様な業病をお煩ひになつてると聞けば、猶更見捨てる訳には行きませぬ。何卒私に世話をさして下さいませ。キツと貞節に仕へますから』
 アールはハンナの言葉に……何とマア親切な心の美はしい女があるものだなア……と首を振つて感に打たれてゐた。女は又もや熊手を手にし、枯松葉を集めながら、
ハンナ『モシ貴方、どうしても私の言ふ事が聞けませぬか、私は貴方の美貌に恋着してるのぢやありませぬ、貴方の今後のお身の上を案じて此通り熱心に申上げるのですから、何卒ウンと云つて下さい。貴方が何程極道でも業病人でも私は覚悟の前です。何れ貴方を夫に持つと云へば、親兄弟や親戚が小言を申しませうが、それも覚悟の前です』
と熱心に口説き立てる。アールはこれこそ自分の女房にすべき者だと心に決し乍ら、猶も念の為に心を試しみむと忽ち大きな口をあけ、ワザと涎をたらし乍ら、「ああああああ」と唖の真似をし出した。ハンナは之を見て、俄に心気興奮し、唖になつたのかなアと、心配し乍ら思ふ様……どこの人かは知らぬが、本当に気の毒なお方だ。益々自分が身を犠牲にしてでも此人を助けてやらねばなるまい……と後へまはり、背中を撫でたり、神を祈つたりして一刻も早く病気全快せむ事を願つた。アールは其間に帯をといて、松の枝にパツとかけた。女は驚いて抱きとめようとする。アールは声を限りに、
アール『ヤ、お女中、私の体は疥癬かきだ。お前に伝染ると大変だ』
と叫ぶのを、ハンナは、
ハンナ『イエイエ、何程疥癬が伝染らうが、貴方の命の瀬戸際を、どうして見逃す事が出来ませう』
と剛力に任せて、グツと腰の辺りを抱きしめて放さぬ。アールは何程もがいても、女の剛力を如何ともする事が出来なかつた。アールは始めて素性を明さむと思ひ、
アール『イヤ、実の所は拙者はビクトリヤ王の長子アールと云ふ者だ。何卒放してくれ。お前の美しい心は骨身にこたへた。実の所は疥癬かきでも瘡毒かきでもない』
と事実を述ぶれば、ハンナは驚いて、二三間許り飛下り、地に頭をすりつけ乍ら、
ハンナ『どこ共なしに変つたお方と存じましたが、左様な尊いお方とは知らず、誠に失礼致しました。何卒私の罪幾重にも御容赦を願ひます。畏れ多くも女房としてくれなどと、不都合な事を申してすみませぬ』
と恐る恐る詫入つた。アールは言葉を改めて、
アール『ヤ、其方は首陀の娘とは云ひ乍ら、実に見上げた婦人だ。何卒俺の女房になつてくれまいか、お前とならば喜んで一生を送る事が出来るであらう』
 此言葉にハンナは身を慄はせ乍ら、
ハンナ『私如き賤しき者が、どうして左様な勿体ない事が出来ませう、何卒これ許りは御容赦を願ひます』
と頻りに首を振つて謝り入る。アールは千言万語を費やし、漸くにしてハンナを納得させ、手を携へて、嬉しげにホーフスに帰つて来た。
 左守司は之を見て大に驚き、口を尖らし目を丸くし乍ら、
『モシ、貴方様は何時も城内を勝手に飛出し遊ばし、御両親様は大変な御心配をして厶るのに、チツともお気が付きませぬか。それに何で厶いますか、左様な賤しい女の手を引いて城内へお帰り遊ばすとは、お気が違つたのぢや厶いませぬか』
アール『ウン、チツとは気も違つてゐる。併し乍ら、此気違ひは発狂者ではない。俺は今ビクトリヤ城の大黒柱を拾つて来たのだ。これでなくては此国は治まらない。何うぢや左守、此女を俺の女房にする様、父上に申上げてくれ』
左守『それは又異なる事を承はります。御粋狂にも程がある。どうして父上が御許しになりませう。サ、早くどつかへ追出しなさりませ』
アール『頑固な父と云ひ、頑固な左守と云ひ、困つた者だなア。貴族だとか平民だとか下らぬ形式に捉はれて、国家の大事を思はぬお前達は実に不忠不義な者だ。なぜ俺の云ふ事を聞かないのか』
左守『ぢやと申してビクトリヤ家の名誉にも関係致しますし、又其様な汚い女を后になさいましては、第一貴方様の御権威が地に堕ち、引いては役人共の侮りを受け、どうして国家が治まりませうか、それ計りは何卒御考へ直しを願ひたいものです。丸きり気違ひの沙汰ぢや厶いませぬか』
アール『ウン、俺は気違ひ、お前は取違ひだ。竹に鶯、梅には雀、それは木違ひ、鳥違ひといふぢやないか、時代の趨勢を考へ、上下一致して天下の経綸を行はねばならぬ刹帝利の身で在り乍ら、下らぬ形式に捉はれて、貴族結婚を唯一の能事としてるやうな事で、どうして国家が治まるか。チツと考へてみよ』
左守『あああ困つた問題が突発したものだ。こんな事を刹帝利様に申上げようものなら何と云つて叱られるか分つたものでない。為まじきものは宮仕なりけりだ。どうしたらよからうかな』
と双手を組んで両眼より涙を垂らしてゐる。
アール『父上やお前のやうな頑固連には俺の精神は分るものでない。兎も角治国別の宣伝使に裁断を請う事にしてくれ、治国別様のお言葉なら、いかに頑固な父でも聞くであらう』
左守『成程、然らば仰に従ひ、父上に申上げても、只一口に突飛ばされますから、之より治国別様のお館へ参つて伺つて参りませう。そして治国別様が可いと仰有れば、刹帝利様に掛合つて頂きませう。何卒それまでは貴方の御居間にお忍びを願ひます、御両人様』
と言ひ乍ら、足早に玄関口を立出で、治国別の館に急ぎ行く、二人はアールの居間に身を隠しける。
(大正一二・二・二一 旧一・六 於竜宮館 松村真澄録)
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