テームスとベリシナは、治国別たちの居る部屋ではなく、鬼春別たち元バラモン軍指揮官たちのいる部屋に来てしまった。そしてほの暗い行灯の光に、治国別ではないと気付かず、丁寧に娘たち救出のお礼を述べた。
鬼春別は自分がこの事件の張本人であり、心苦しさに自分が鬼春別本人であることを伝えることができなかった。そこで春別と名乗ってその場をごまかそうとした。
テームスは三五教の宣伝使一行だと思って、バラモン軍の悪行を並べ立てたので、鬼春別と久米彦らは慙愧の念に堪えず、しばし油をしぼられた。
そこへ治国別、松彦、竜彦が下女に案内されて部屋にやってきた。治国別は挨拶をなし、ここにいるのは元バラモン軍の鬼春別、久米彦たち本人だとテームスとベリシナに告げた。テームスは驚いたが、治国別は彼ら四人はもう自分の弟子になったことを説明し、テームスたちを安堵させた。
一同はそれぞれ挨拶と述懐の歌を交わした。テームス夫婦はその場を下がり、怪我人の看病に戻って行った。
後には下女が治国別たちの御膳をしつらえた。そこへ万公が戻ってきて、自分の膳がないことに不平を洩らした。竜彦は、スガールの顔が万公にとっての御馳走だろうとからかった。
それでも一人前の食欲がある、と万公が不平を鳴らすので、竜彦はさらにからかって、お前はテームス家の婿になるのだから主人側だろう、給仕をする側だと持ち上げた。万公はすっかり乗せられてその気になり、客人たちをもっともてなす御馳走を出すのだと、慌てて炊事場に進んで行く。