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文献名1霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻
文献名2第1篇 毀誉の雲翳よみ(新仮名遣い)きよのうんえい
文献名3第4章 陰使〔1504〕よみ(新仮名遣い)いんし
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグリューチナント(リュウチナント) データ凡例 データ最終更新日2020-05-22 17:30:02
あらすじチルテル自身は、酒と女にかけては目も鼻もない厄介者であった。バーチルの館に潜むという三五教宣伝使たちを召し捕りにまかり出たはずが、酒を突き付けられてたちまち自分の使命を忘れ、群衆に交じって酒をがぶ飲みしている。テクは番頭頭気分でチルテルに話しかけた。チルテルは、自分の屋敷の離れに隠している美人に酌をしてほしいと、テクに呼びにやらせることになった。テクは、リュウチナントへの昇進と引き換えに、女を密かに呼んでくることを引き受けた。テクが離れに近づくと、中に男の気配がする。カンナとヘールが、チルテルの留守に美人に近づこうと部屋を訪ねていると見てとったテクは、窓の外から黙って退散すればチルテルに報告することは見逃してやる、と脅した。カンナとヘールは、初稚姫のところに来たことがチルテルに知られることを恐れたが、初稚姫は構わず、テクを招き入れた。テクは、キャプテン・チルテルの命令で初稚姫に用があると言って、カンナとヘールの離席を申し出た。カンナとヘールはすごすごと部屋を出たが、闇にまぎれて二人の話を聞いている。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年04月01日(旧02月16日) 口述場所皆生温泉 浜屋 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年7月8日 愛善世界社版55頁 八幡書店版第10輯 504頁 修補版 校定版58頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm5904
本文の文字数4891
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本文  遠き神代の昔より  アヅモス山の聖場に
 梵天帝釈自在天  大国彦の神霊を
 斎きまつりて天王の  森と称へて朝夕に
 謹み敬ひ仕へたる  イヅミの国のスマの里
 里庄の役と選まれし  館の主バーチルは
 アンチーと共に湖原に  漁りせむと出でしより
 如何なりしか白浪の  面を眺めて里人が
 悲歎の涙にくれ乍ら  野辺の送りを相済まし
 諦め切つた夏の宵  憂きを三年のあともなく
 笑を湛へて帰り来る  主従二人の影を見て
 枯木に花の咲きし如  老若男女が寄り集ひ
 目出度い目出度いお目出度い  天の岩戸が開けしと
 二十戸前の倉をあけ  蓄へおきし般若湯
 各自に庭に持出して  渇きし餓鬼が川水に
 浸りし如くガブガブと  うつつを抜かし酔ひ狂ふ
 かかる所へバラモンの  キヨの関守チルテルは
 数多の兵士を引率れて  三五教の宣伝使
 此家に深く忍びしと  聞くより駒に鞭ちて
 実否を探り査ぶべく  威儀を正して入来り
 表の門を潜り抜け  目も届かない広庭を
 眼を光らし眺むれば  所狭き迄里人が
 うごなはりゐて嬉しげに  酒汲みかはし歌唄ひ
 狂へるさまを見るよりも  喉の虫奴が承知せず
 つきつけられし杓の香に  相好くづし馬上より
 ヒラリと庭に飛おりて  数多の従者と諸共に
 舌打ちならしかぶりつく  実にも卑しき酒喰ひ
 見るも憐れな次第なり。
 チルテルは酒と女にかけては目も鼻もない厄介者である。テク、アキス、アールの三人に長柄の杓で鼻先へ般若湯を突付けられ、忽ち自分の使命をケロリと忘れたものの如く、口汚く群衆の中へ交つてガブリガブリと呑み始めた。テクは夢中になつて、巻舌を使ひ乍ら、彼方此方とゴロつき始めたり。
テク『これはこれは、チルテルのキャプテン様、よくマア御入来下さいました。今日は新主人バーチルが久し振りで帰国を致しまして、其祝宴を開いて居る所で厶います。第一番にお役所の方へ招待状を出すのが本意で厶いますが、何と申しても、清廉潔白なお役人様、お身分が違ひますから、此テクのやうなスパイとは同じやうには参りませず つい御案内も申かね遠慮を致して居りましたが、キャプテン様の方から御出張下さいますとは、何と云ふ光栄で厶いませう。サア何卒酒の泉は渾々と湧き出でて尽きませぬ。何卒思ふ存分おあがり下さいまして、底抜け騒ぎをやつて頂きたう厶います。此座敷は露天で厶いますが、奈落の底から搗き固めておきましたから、メツタに床の落る気遣も厶いませぬ。何卒心おきなく御召上り下さいませ。主人のバーチルに代つて、新番頭のテクが、及ばず乍ら御挨拶を申上げます』
と右の掌で無雑作に鼻つ柱をプイと左の方へ押し、肱で顔の汗を拭ふ。
チルテル『お前はテクぢやないか。何とマア気の早い、辞職の許可も得ずに、勝手に番頭になるといふことがあるものか。バラモンの御威勢を恐れぬか、不届者だなア』
テク『モシ、キャプテン様、さう酒の座で小難しい面をなさいますと、折角甘めい酒が不味くなつて了ひますワ。マア、お小言は改めて後に承はりませう。此酒の面みて笑はない者が何処にありますか。サア一つお酌を致しませう。裏の別室におかかへ遊ばした、あのナイスのお酌ならば、一入お酒が甘いでせうが、どうもそれ丈は不便で厶いますなア、エヘヽヽヽ』
チルテル『どうかして、お前、一つあの女をチルナに内証でソツと招んで来てくれまいかな、褒美は幾らでもやるからな』
テク『ヘ、畏まりました。其代りに褒美として、お金は要りませぬ、又お酒はここで沢山に頂かうと儘ですから、夫れ以外のものを戴きたいもので厶います』
チルテル『何が頂きたいと云ふのだ』
テク『ヘー、カンが頂きたいので厶います』
チルテル『カンなればすぐに出来るでないか、かう冷酒許りガブガブやつてゐては面白くないからのう』
テク『ハテまあ、カンの悪い、カンと云つたらカンですがな。酒のカン何かとは違ひますよ。ポンポン カンカンと人民を捉まへて威張り散らす官ですよ』
チルテル『成程、それなら成功の上、目付頭にしてやらう』
テク『滅相もない、そんな卑しい職掌は御免蒙りたう厶います。せめてリューチナントに抜擢して欲しいものですな』
チルテル『うまく、チルナに分らぬやうに、此処へあのナイスを引ぱつて来よつたら、リューチナントにしてやらう。一つ骨を折つてみてくれ』
テク『滅相な、此頃は何事も先金とか手附とかがなければ、一切の取引を致しませぬから、若し不成功に了つたら御返しするといふことにして、兎も角リューチナントに命じて下さいませ。さうでないと、カンナの奴、リューチナントだと云つて威張り散らしますから、裏口から忍び込むだ矢さきに、カンナの奴に「コラツ」と一喝くはされたが最後、手も足も出ませぬ。私がリューチナントならば同役ですからな』
チルテル『アヽ仕方がない、臨事憲兵中尉にしてやらう。併し余りケンペーらしく云ふと剥奪するから、さう思へ』
テク『ヤア有難う。之からテクのテクダで、巧く引張つて来やせう、マア暫く待つてゐて下さい。そしてテクの腕前を見て頂けば、光栄です。……あゝあ忙しいことだ。バーチル家の大番頭兼リューチナントと、俄に出世をしたものだから、俄に事務が煩雑になつて来た。矢張無官の太夫の方が可いかなア』
チルテル『無官の太夫がよければ、今の言葉は取消す』
テク『滅相な、一旦武士の口から出たお言葉、不調法もないに、取消は許しませぬぞ。上官の一言は金石よりも重いぢやありませぬか。仮りにも朝令暮改的の事を仰有いますと、忽ち信用が地におちますぞ』
チルテル『エー仕方がない。それならバラモンの中尉として能く注意して、女房のチルナ姫に分らぬ様、日の暮れたのを幸、うまくそこは弁舌を使つて、ナイスを此処へ連れて来てくれ。さうして酌をさせて大勢の奴にアツと云はせ、俺の腕前を遺憾なく皆の奴等に見せびらかしてやるのも愉快だ。サア早く行つた行つた』
テク『エヘヽヽヽ、こんなことに抜目のあるテクぢやありませぬワイ。サア之から一走り行つて参ります。マア悠り御酒でも召し上りませ……ヤア、コレワイサの、シテコイナ』
と妙な身振をし乍ら、頬被りをクツスリと締め、群衆の中を潜つて、足もヒヨロ ヒヨロ、チルテルが駐屯所の別室を指して忍び行く。
 空は黒雲に包まれて、二つ三つ雲の綻びから、微な星が瞬いてゐる。忍びよつたる五月暗、障子の明りをあてに、足音を忍ばせ窺ひみれば、影法師が三つ映つてゐる。そして一人は女、二人はどうも男らしい。テクは『ハハア、あの影法師から考へてみると、カンナ、ヘールの両人とみえる。抜目のない奴だな。キャプテンさまの不在を伺ひ、うまく手に入れやうと野心を起して襲撃してゐやがるのだナ。併し彼奴も気が利かないワイ。一人の女を口説くに連れを誘うて行くといふ奴がどこにあるか。併し困つたことには、あんな奴が二人も側にひつついてゐやがると、肝腎要の俺の使命が果せない。ここは一つ肝玉をおつぽり出して、憲兵中尉で脅かしてやらう。そして「不義者見付けた……」と大喝一声、散り散りバラバラと小さくなつて逃失せる様にやるのだな、エツヘヽヽヽ。斯うなると、リューチナントも有難いものだ』と独言ちつつ故意とに足音高く窓の外面にすりよつて、
テク『やアやア、某は今日チルテルのキャプテン殿より改めて憲兵中尉の要職を授けられたるテクで厶るぞよ。女一人の居間へ入来り、密々と囁いてゐる奴は何者だ。大抵障子の影に仍つて、其誰人なるかは分つてゐるが今日は新任の祝としてみて見ぬ振を致す。サア早くトツトと姿を隠し、元の職に忠実についたがよからう。グヅグヅ致して此方に面を見られたが最後、其方は忽ちリューチナントもユゥンケルも棒にふらねばならぬぞや、エエン。鼻の下の長い代物だなア』
 カンナ、ヘールの両人はテクの言葉を聞いて、
『ヤア此奴ア大変だ。こんなことをキャプテンに報告されようものなら、サツパリ駄目だ。エー仕方がない、こちらに弱点があるのだから、ここはマア辛抱して退却することにせうかい』
と小声に囁き、此場をつつと立つて暗に隠れようとする。初稚姫は故意と平気な顔で、
初稚『あのカンナ様、ヘール様、マアいいぢや厶いませぬか。種々と珍しいお話を聞かして下さいまして、妾も大変得る所が厶いました。モウ暫く御悠りなさいませ。これからクラブィコードでも弾じて御慰めに供しませう。そしてお茶でも悠りあがつて御帰り下さいませ。偶々お越し下さいまして、何の御愛想も厶いませぬから』
カンナ『ヘ、有難う厶います。今御聞の通り、窓の外に誰かが来て居りますから、貴女の御迷惑になつても気の毒で厶います。兎も角一度退却致しませう』
初稚『何を仰有います、妾は決して迷惑とは感じて居りませぬ。天下晴れて文学のお話を聞かして頂いて居るので厶いますもの。貴方と私の中に怪しい関係があるのでなし、誰がお出になつても遠慮は要りますまい。却て左様なことをなされますと、痛くない肚を探られ、貴方方の御迷惑になるかも知れませぬよ。貴方も立派な軍人様ぢや厶いませぬか、酔どれさまの一人や二人が恐ろしいので厶いますか』
カンナ『ヘ、別に恐ろしいことも厶いませぬ、併し乍ら後がうるさう厶いますからなア』
初稚『うるさい心さへ持つてゐなければ構はぬぢやありませぬか。人の口には戸が立てられぬと申しまして、世間の噂を気にしてるやうなことでは、到底世の中に立つて目ざましい働きは出来ませぬよ』
カンナ『成程、お説御尤も、然らばモウ暫く御同席を願ひませう。オイ、ヘール、かう二人も居るとカサが高いから、お前暫く退席してくれまいか、関所の方も何時用が出来るか分らぬからのう』
ヘール『ヘツヘヽヽヽ、仰有いますワイ。其手に乗るやうなヘールぢやありませぬぞ』
初稚『何卒お二人様、御悠なさいませ。何も御心配は要りませぬ。……コレコレ テク様とやら、そこでは蚊がたべます。何卒お這入りなさいませ』
テク『イヤア、お出たな、矢張り、リュウチナントといふ声を聞いて、幾分か心が動いたとみえるワイ、イヒヽヽヽ』
と幽かに笑ひ乍ら、『オホン』と一つ咳払、表戸をソツとあけ、故意とすました面をして、直立不動の態度を示し、
テク『これはこれは、古今無双のナイス様、私は新中尉で厶います。一寸キャプテン様の命令に仍つて、貴方に折入つての御願がありますので、使者に罷り越しました。何卒此等両人を少時遠ざけて戴きたう厶います』
初稚『お二人様、何だか御用があるさうで厶いますから、失礼で厶いますが、一寸少時席をお外し下さいませぬか』
カンナ『ヘー、長いことですか、……長ければ永いで、此方にも事務上の都合が厶いますから、実の所は忙がしい中を繰合せて、奥様の御命令……ウン否々、奥様の目を忍んで一寸御機嫌伺ひに参つたので厶いますからなア』
初稚『奥様は御機嫌が宜しう厶いますかな、何うしたものか、私が御面会を申込んでもお忙しいと見えて、まだ会つて頂けませぬ』
ヘール『そらさうでせう。何と云つても、悋けて仕方がないのですからなア、ヘツヘヽヽヽ。オイ、カンナ、姫様の請求に仍つて、暫時離席することにせうかい』
とスゴスゴと立出で暗に忍んで二人の話を聞いてゐる。
(大正一二・四・一 旧二・一六 於皆生温泉浜屋 松村真澄録)
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