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文献名1霊界物語 第66巻 山河草木 巳の巻
文献名2第2篇 容怪変化よみ(新仮名遣い)ようかいへんげ
文献名3第9章 谷底の宴〔1691〕よみ(新仮名遣い)たにぞこのえん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
主な人物【セ】シーゴー、パンク、甲、乙、丙【場】-【名】ヨリコ姫(女帝)、玄真坊、妖幻坊 舞台オーラ山の谷間 口述日1924(大正13)年12月16日(旧11月20日) 口述場所祥雲閣 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1926(大正15)年6月29日 愛善世界社版129頁 八幡書店版第11輯 777頁 修補版 校定版129頁 普及版67頁 初版 ページ備考
OBC rm6609
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本文  オーラ山の谷間には蒼味だつた水が、可なり広い流れをなして静に流れて居る。これより七八丁上に登ると非常に嶮しい滝の如き水流であるが、最早此地点は水の流れも緩やかにして底も深く、深い池水のやうな調子である。この河には新旧数多の船が無数に浮かべられ運搬用に供されて居た。日々四方より持ち運び来る物品を鉄線と滑車との作用によりて、天王の森の祠の床下から逆落しに谷間へ落し、之を船に満載してホールの隠れ家に送るのを乾児共の仕事として居た。沢山の乾児共は奔命に疲れ稍倦怠の気分を生じ、そろそろ食料の粗悪なるを憤り、二百名計り同盟脱退を謀つてゐた。三千の部下の七分通は各地へいろいろのよからぬ用務を帯て散らばつて居たのである。そこへシーゴーの親分株がパンクと共に、沢山の珍味佳肴や、豊醇の酒をつり下した。ニコニコしながらシーゴーは一同に向つて云ふ。
シーゴー『皆の乾児共、お前達には大変な骨を折らした。実に、女帝様を初め吾々幹部は感謝をして居るのだ。今日は幸い沢山のお供へ物があつたから、腹一杯美味佳肴を喰ひ、酒でも呑んで元気をつけ大活動をやつて貰ひたい。女帝様からも皆の者に宜しく伝へて呉れと仰有たぞ』
 此声に一同は今迄の不平面は何処へやら、酒肴と聞いて恵比須のやうな顔になり、拍手の声は谷の木魂を響かせ、雷の落つる如き勢であつた。
パンク『オイ、皆の奴、お前達やア ブツブツと不平を漏らして居たが、女帝さまだつて親分さまだつて、お前達の苦労はよく御存じだ。今日は女帝様の思召で、見た事もないやうな御馳走を頂くのだから、感謝したらよからうぞ』
甲『オイ、パンクさま、お前の骨折で久し振で結構な飲食にありつくのだ。毎日日日粟や黍で口腹を満たして居ても、骨離れがしさうで思ふやうな活動が出来なんだが、かう結構な油をさして貰へば、機関が円滑に運転するだらう。女帝さまに宜しく申して呉れ。一同を代表してお礼を申しておく』
パンク『ヨシヨシ、キツト伝へて置かう、女帝様もお前達の機嫌の好い顔を御覧になつたら屹度満足なさるだらう。シーゴー、玄真坊様の親分も御満足なり、俺達も満足だ。貴様達も大いに満足だらうアハヽヽヽ』
と笑ひつつ女帝の居室を指して急阪を登り行く。鯨飲馬食の宴は無雑作に開かれた。酒がなければ悄気返り、青い顔をしてブツブツ不平を漏らし、酒に飲ひ酔ひ腹が充つれば又もや怒つたり、泣いたり叫喚いたり擲り合をしたり、何うにもかうにも始末におへぬガラクタ計りが集まつて居るのだから、容易な事で統御は出来ない。泥棒の親分になるのも嗟又難い哉である。そろそろ酔ひが廻り出すと彼処にも此処にも濁りきつた言霊戦が開始された。
甲『オイ皆の奴、好い加減に喰うとかぬか、何だ、アタ嫌らしい、チヨンチヨンと舌打ちをしやがつて、おまけに皿を嘗めたり箸を舐ぶつたり、まるきり乞食の所作ぢやないか、エーン、卑しいものだなア。オーラ川の杭ぢやないが、大食の長食とは貴様等の事だ。褌の河流れで、食ひにかかつたら離れぬと云ふ代物だからなア。餓鬼みたやうな奴と行動を共にするのは、本当に情ないわ。チヨツ嫌になつて了ふ』
乙『ナヽヽ何だ、何が卑しいのだい。苟くもオーラ山の山寨に割拠するヨリコ女帝様の吾々は輩下だ。まるで塵埃を箒で掃くやうな事を吐すと此方にも了見があるぞ』
甲『アハヽヽヽ、その了見を聞かして貰はうかい』
丙『(浄瑠璃)計略と云ひ義心と云ひ、かほどの臣を持ち乍ら、了見もあるべきに、浅き企みの塩谷殿、今の忠義を戦場の、御馬前にて尽さばやと、思へば無念に閉ぢふさがる、胸は七重の門の戸も、漏るるは涙計りなり、ジヤン、ジヤンジヤン、アハヽヽ。オイ甲、乙、歌でも謡つて機嫌を直したらどうだ。結構な酒を頂いて小言を云ふと云ふ事があるものか、冥加知らずの奴だなア。女帝様のお志を何と心得て居るんだ』
甲『エー、何を吐しやがるのだ。女帝の志が聞いて呆れるわ。自分が計略をもつて愚夫愚婦の懐中を捲あげ、そして俺達に振舞つてやるのなんのとはおとましいわい。自分が汗膏を流して造つた飲食でもあるまいし、譬て言へば此川の中に入つてお前と俺とが水を浴びて居る時、其手許から水を掬つて俺の口へ入れて呉れたやうなものだ』
丙『そんな水臭い事を云ふない。女帝様に聞えたらどうするのだ』
甲『聞えたらどうだい。何奴も此奴もそつと物した物を、俺達にものして呉れる丈の事ぢやないか。いつも俺達に働かして其上前をとり、大将然と構へて居るのだから、地部下の俺達は耐らないわ。たまに酒の一杯や二杯呑まして呉れたつて恩に着る理由もなし、又恩に着せる理由も無いのだ。つまり、要するに、結局俺達が物して、来た物を俺達が喰うやうなものぢや。部下に命掛けの仕事をさして置いて、自分は高い所にとまり、吾々を頤で使ひ、女帝だの何のとほんとに忌々しいぢやないか。鰌か何ぞのやうに俺達の不平の虫を酒で殺さうと思つたつて、そんな奸策に乗る奴があるか。俺や酒を呑めと吐しやがつた時にや、腹の中の癇癪の虫がグルグルと喉元で鳴りやがつて、手を出しよつたのだ。アタ味なくも無い酒を滅多矢鱈に強られて、俺だつて耐つたものぢやない。其辺の山も木も岩も草も、天手古舞をさらすなり、俺の体は宙に捲き上げらるるなり、本当にひどい目に合はすぢやないか。エヽ怪体の悪い、もう之から酒などは一杯も呑んでやらぬわい、とは云はぬわい』
乙『エヘヽヽヽ、何だか知らぬが、俺は結構な酒に酔ひ、脂肪濃い御馳走に預かつて何とも云へぬ気分だ。併し乍ら脂肪気の多い食物は些ひつこいな』
丙『さうだ一寸ひつこいはひつこいが、併しひつこう甘いぢやないか、俺はもうグンドサが破裂しさうだ。どうれパサパーナでもやつてこうかな』
と言ひ乍ら立ち上らうとして目が眩み、又もやドスンと其場に腰を下ろした。
甲『何だ其態ア、腰も何も脱けて居るぢやないか』
丙『何、今御輿を下ろした所だ。併し乍ら、かう足の立たぬ所迄結構な酒肴を頂いて、精神正に恍惚とし、天国に遊ぶやうな気分になつたのも、皆女帝様のお蔭だよ。よく考へて見よ、シーゴーの奴が大親分として威張つてけつかつた時は自分計り喰つて、手下の奴には酒一杯も飲めとは吐しやがらなかつたぢやないか。ヨリコ姫様が大親分に取つて代られてから、直様かふいふ結構な御馳走を下さつたのだ。それを思へば今度の女帝様は、吾々に対する慈母だ。拝み奉らぬと罰が当るぞよ、バヽ罰が……』
甲『何、さう有難がるには及ばないわ。あいつ等は鮟鱇に海月に鰐の集合団隊だから、終の果には吾々をよい食物にしやがるのだ。それだから俺が最初に、もう脱退しようと云つたぢやないか』
乙『三人の親分が、鮟鱇だとか、鰐だとか海月だとか貴様は云ふが、一体鮟鱇と云ふのは誰だい』
甲『ヘン、分らぬ奴だなア、女帝が鮟鱇で、玄真坊が鰐でシーゴーの奴が海月だ。鮟鱇と云ふ奴はな、沼の底や海の底にじつと潜伏しやがつて、頭から細い細い糸の様な物を水面にニユツと泛かべ、其先に花とも虫とも分らぬやうな肉塊をつけ、いろいろの魚が好い餌があると思つて其肉塊を喰ひに往くと、チクチクと綱を手繰、自分の口に来た時にガブリとやるのだ。今の世の中にはこの鮟鱇に似たやうな奴が、女帝のみならず沢山居るよ。さういふ代物を称して鮟鱇主義の生活と云ふのだ』
乙『ハヽヽヽヽ、そいつは面白い。そして玄真坊の鰐の理由を聞かして呉れい』
甲『ヨシ、聞かしてやらう、何でも世の中に分らない事があつたら、俺に聞くのだな。抑鰐と云ふ奴は、体にも似合はぬ大きな口をしやがつて其口の中に木の片や枯枝なんかを一ぱい詰め、小魚どもがよい隠れ家があると思つて悠々と這入つて来る奴をソツと舌を出してグイグイと腹の中へ引つ張り込み、自分の腹を肥す奴だ。あの大杉の木の下に陣を構て、寄つて来る有象無象や、小雑魚などを引張り込むやり方と云ふものは、まるで鰐そつくりぢやないか』
乙『ウン成程、こいつは面白い、序に、シーゴー親分が海月だと云ふ因縁を聞かして貰はうかい』
甲『海月と云ふ奴は骨も無ければ、ロクに顔も無い奴だ。そして長たらしい尾を幾条も幾条も引きづりやがつて浪のまにまに漂ひ乍ら、俺達のやうな小雑魚を沢山に丸い笠の下に隠し、親分気取で保護して居やがるのだ。さうすると些計り大きな魚が、その小魚を取らうと思つて海月に近づいてくるのだ。さうすると海月の奴ぬるぬるとした紐でクルクルとしめつけ、頭から食うと云ふ代物だ。そこで小雑魚は海月の奴に守られ、些し大きな魚は海月の奴に喰はれるのだ。吾々だつて今は小雑魚の身分だから親分の傘下に保護されて居るのだが、些し大きくなつて頭を擡げて見い、屹度唯では置かない。親分だつて、これを思ふと前途闇黒になつて、嫌になつて仕舞ふわ。今の世の中は形式こそ変れ、こんな奴ばかりだ。海月生活、鰐生活、鮟鱇生活と人の云つて居るのは、大略右様のやり方をやる人間の事だ。エヽ怪体の悪い、折角呑んだ酒迄醒めて了つた。オイ乙、一杯俺につがないか』
乙『サアサア呑んだり呑んだり』
甲『オツトツトツトツ、こぼれるこぼれる。矢張酒の香は有難いものだなア。イヒヽヽヽヽ』
と肩を揺する。一方の方には泣いたり笑つたり怒つたり、廻らぬ舌の面白い歌が初まつて居る。
『オーラの山に鬼が出た  出た出た出た出た鬼が出た
 このまた鬼の素性をば  調べて見れば月の国
 ハルナの都に蟠る  妖幻坊の片腕と
 羽振利かした曲津神  玄真坊やシーゴーの
 両親分に取りついて  バルガン城をば占領し
 天下を乱し人種を  絶やして曲津の世の中に
 転覆せむとの企み事  さはさりながら俺も亦
 今は曲津の御厄介  百姓するにも道具なし
 商売するにも資本なし  肝腎要の妻も子も
 親さへもなき吾々は  一層気楽な泥棒業
 元から悪とは知り乍ら  食はず呑まぬが悲しさに
 善の心を立直し  悪魔の乾児となり下り
 一寸先は暗の夜で  其日々々を送るのだ
 バラモン教の教には  人の物をば盗んだり
 人を痛めておいたなら  未来は地獄に落ちるぞと
 聞いて居れども如何にせむ  背に腹は替へられぬ
 ウントコドツコイドツコイシヨ  ヨイトサノサ、ヨーイヤサだ』
甲『ダヽヽ誰だい、そんな大きな声で不穏な事を申すと、鮟鱇さまに申上げるぞ』
丁『ナヽ何だ。喧しう云ふない。俺や今日限り脱退するのだから、もはや女帝の権力も俺にや及ぶまい。云ひ度い事を云うて酒を呑まなけりや、日頃の欝憤が晴れないぢやないか、貴様は何時迄も鮟鱇に盲従する積りか、よい馬鹿ぢやなア、エヘヽヽヽ』
 数多の部下は思ひ思ひの小言をつきながら、日の暮るる迄此谷間に酒に浸り、思はぬ睾丸の皺のばしをやつて居た。
(大正一三・一二・一六 旧一一・二〇 於祥雲閣 加藤明子録)
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