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文献名1霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻
文献名2第1篇 清風涼雨よみ(新仮名遣い)せいふうりょうう
文献名3第6章 背水会〔1751〕よみ(新仮名遣い)はいすいかい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-11-07 09:11:56
あらすじ珍の城下に愛州(国愛別)は数百人の子分を集め、賭場を開帳しています。賭場の表看板には、世の風潮・施政を風刺した文句を金文字で大きく掲げてあります。その看板を見て、一人の取締りが親分に会いたいとやってきます。取締りは、役頭の命令で風刺看板を取り下げさせにやってきたのでした。応対に出た愛州の子分、照公は逆に、今の政治を批判し、取締り(佐吉)を仲間にしようと口説きます。佐吉は照公の言霊に打たれ、看板を取り下げさせに来たのがあべこべに侠客になってしまいます。一方、大親分の愛州は二三人の幹部と共に、都の街頭に立って大演説を始めます。偽善・虚偽の生活を捨て、新しい思想に目覚めよ、と呼びかける愛州を、数十人の取締りが取り囲み、しょっ引かれます。愛州は城の牢獄に投げ込まれてしまいました。大親分が囚われたと聞いた子分たちは手に手に武器を持って牢獄へ押しかけ、付近はたいへんな混乱・闘争が繰り広げられます。そこへ現れたのは、馬に乗った春乃姫でした。春乃姫はまず、取締りたちを退散させ、侠客たちにも声をかけます。子分の源州は、親分・愛州を返して欲しいと自分たちの願いを申し上げます。春乃姫は、十日の間にきっと愛州を開放すると約束します。子分たちはそれを聞いて春乃姫に感謝し、帰っていきますが、果たしてこの結果はどうなるでしょうか。
主な人物 舞台 口述日1924(大正13)年01月22日(旧12月17日) 口述場所伊予 山口氏邸 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1927(昭和2)年10月26日 愛善世界社版91頁 八幡書店版第12輯 305頁 修補版 校定版94頁 普及版66頁 初版 ページ備考
OBC rm6906
本文の文字数4981
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本文  珍の城下深溝町の俥帳場に、車夫と化け込んでゐた国愛別の愛州は、取締上りの幾公と共に、横小路に可なり広い邸宅を借受け、賭場を開帳してゐた。数百人の乾児は忽ち集まり来り、親分々々と尊敬し、親分の命令とあらば生命を鴻毛よりも軽んじ、如何なる事にも善悪共に其頤使に甘んじ、難に殉ずるを以て、乾児たる者の光栄としてゐた。愛州は普通の侠客とは違つて、元がヒルの国楓別の国司の悴丈あつて、何処とも無く気品が高く、且豪胆にして少しも物に動ぜず、一旦頼まれた事は決して厭と云はなかつた侠客である。世の中の一般の行り方が癪に障つて堪らぬので、遙々遠き山阪を越え、尊貴の身を捨てて、珍の都迄やつて来たのである。
 生れついての皮肉家で、世の中を革正する為とて、内面には博奕を渡世となし、表看板には万案内所と云ふ看板を金文字で現はしてゐた。

『一、因循姑息お望の方は最寄の取締所へお出で下され度候
一、頑迷無恥お望の方は、世悉く濁る吾独り澄むと自惚れてゐる梨田ドラック氏へお訪ね下され度候
一、喧嘩乱暴お望の方は惑酔会へお訪ね下され度候。又口先計りの自称対命舎及政党屋をお訪ね下され度候
一、不親切お望の方は口実職業紹介所へお訪ね下され度候
一、多角関係お望の方は妃向国の新しき村へお出で相成度候
一、偽善生活お望の方は一度花の都の一灯園東田地香氏方をお訪ね下され度候。併し乍ら同氏に対し、少しにても利益を与ふる掛合ならば極めて親切に取扱ひくれ候
一、山子欺お望の方は変態愛国者苦糟大異へお訪ね下され度候。但し畸形的愛国者に限り申候事
一、没常識お望の方は珍の都の四ツ辻便所へお出で下され度候
一、金儲お望の方は富人世界雑誌社並に心零犬灸会同人へお訪ね下され度候
一、厚顔無恥お望の方は新聞ゴロ及労働ブローカーへお訪ね下され度候
一、時代錯誤お望の方は石火暴死団へお訪ね有之度候
一、其他何事に仍らず矛盾と誤解と虚偽と偽善とお望の方は嘔吐白住持社へお訪ね下され度候
一、公平社と争論希望の方は惑酔会へお訪ね下され度候』

と云ふ様な大きな看板を掲げて、往来の人の足を止めてゐた。其処へ面を顰めて、十手を下げてやつて来た一人の取締がある。
取締『コリヤコリヤ当家の主人は居るか』
 門口を掃いて居た乾児の八公は取締の姿を見て、
『ハイ、親分は奥に居られますが、滅多に博奕は打つて居りやせぬから、何卒帰つて下つせい』
取締『イヤ、博奕は今打つて居なくても、拘引せうと思へば何時でも拘引出来るのだ。新刑法に仍つて賭博常習犯人とブラツクリストについて居るのだから、非現行犯で引張つてやらうかな』
『ヘーン、そんな細い体をして、キラキラ光る物をブラつかせ威喝したつて駄目でい。そんなことに驚く親分だ厶いやせぬ哩。わつち達の仲間は一遍でも余計芸務所の門を潜つたら顔が好う成るのでげすから、マア奥へ這入りなさい。卑怯未練に逃げる様な侠客ア一人も居りませぬよ。横町の蜈蚣の権太の親分の様に、取締が来たと云ふて二階から飛出し、脛を折つたり、腕を折つたりして、取つ捉まる様なヘマなこたア致しやせぬ』
取締『汝では訳が分らぬ、親分を此処へ呼んで来い』
八『ヘン、吾々に取つては神様同様に、命迄捧げて仕へてる親分、さう易々動かす訳には行きやせぬ哩。愚図ぐづして居ると、お前さま、笠の台が無くなりますよ。早く御帰りなさい』
 斯く話して居る所へ、奥から兄貴分の照公が二三人の兄弟分と共に現はれ来り、
照『ナヽ何だ何だ』
八『兄貴、今此取締先生が、ゲン糞の悪い朝つぱらからやつて来て、グヅグヅ云つてるのだ。俺昨晩負けて来て、今日はムカついて堪らないのに、グヅグヅ吐かすんだもの、癪に障つて仕方がねいんだ。早くボツ帰して呉れないかね』
照『ヘー、わつちや、愛州の乾児でげして、照公と申し、チツタア、珍の都で名を知られた、ケチな野郎でげす。どうかお見知りおかれまして、可愛がつて下せい。侠客渡世はして居りましても、面にも似合はねえ優しい男でげすよ。八公がどんな無礼なことを申しやしたか知りやせぬが、如何かわつちの面に免じて許してやつて下つせえ。そして今日お出になつたのは何の御用でげすかなア』
取締『外でもない、役頭の命令に依つて、当家の看板を撤回させに来たのだ。不穏文書を張出し、怪しからぬと云ふので、誰か訳の分る男に屯所迄来て貰ひたいのだ。そして一時も早く本漢の目の前で引落し、片付けて了ひ、人心悪化の極に達した今日、斯様な看板を掲載されたら、取締所として黙過する訳にや行かない。サ、早くお神の命令だ、撤回しろ』
照『何の御用かと思へば、わつちの商売の看板を除れと仰有るのですか、ソリヤなりませぬ』
取締『お神の許可を受けた上で、掲揚するならしても可からう。兎も角速に下ろしたが可からう』
照『あゝ、コリヤわつちんとこの親分の商売でげすから、商売の妨害迄は、何程取締権が絶対だと云つても、其処迄の干渉は出来ますまい。断じて撤廃は致しませぬ。抑も此案内の看板に書いてあることは少しも虚偽はありませぬ。事実有りの儘の事が記してあるのですから、別に詐欺でもなければ悪事でもありますまい。事実のことをやつて居るのが悪いのですか。こんな小さいことを咎めるよりも、モツト大きい泥棒をお調べなさいやせ。何十万円何百万円と云ふ大泥棒が、玩具をピカつかせて、都大路を横行濶歩してるのが、貴方達のお目につきませぬか。自分の金で自分が勝負してるのに、賭博犯だと云つて、拘引したり、牢へ打ち込んだり、そんな末の末の問題に頭を悩ますより、法の権威を極端に発揮し、天下の大道を白昼に横行してる大泥棒を挙げなさい。何程其方が国家の為だか知れやせぬよ。お前さまも僅かな月給でチボの後を追ひかけたり、門で片肌脱いだり小便こいてる人間を叱り飛ばしてるよりも、どうだい、俺達の仲間へ這入つて、一生を面白う可笑しく快活に暮したら、可いでせう、どうでげす』
取締『生活の道は保証して呉れるだらうな』
照『宅の親分は頼むと云はれて、後へ引く様な安つぽい腰抜男とは違ひやす。サアサア合羽を脱いだり脱いだり、ヤ、男は決心が第一だ。斯うやつて出て来る取締を片つ端から乾児にし、珍の都に取締が一人も無い所迄やつてやらうと云ふ、背水会の主義綱領だ』
取締『イヤ、モウ君等に掛つたら命武者だから仕方がない。そんなら僕も、女房があるでなし、何時雄とか雌とかを貰ふか分らぬのだから、安全地帯の親分の膝下に跪くことにせうかな』
照『ヨーシ、呑込んだ。直接の親分の乾児にはなれぬぞ。俺の直参だ。俺の上には又兄貴がある。其兄貴の兄貴の兄貴の親分が大親分だ。先づ軍隊で云へば、俺は少佐位な者だから、さう思うて俺の云ふことを聞くのだぞ。其代りに三日も飯を食はぬと居らうとママだし、寒の中裸で慄はうとママだし、アイサに拳骨を二つや三つ喰はされようとママだから、マアさうして胆力を練るのだなア、アツハヽヽヽ』
取締『ウツフツフヽ』
 取締の名は佐吉と云つた。到頭照公の言霊に打捲られて、取締から侠客社会へ背進して了つた。
 大親分の愛州は二三の幹部を伴ひ、裏口からソツと脱け出で珍の都の十字街頭に立ちつつ呶鳴り始めた。群衆は喧嘩だ、狂人だ、大事件の突発だと口々に呼はり乍ら、蟻の如くに愛州の周囲を取捲いた。愛州は手近にあつた饂飩屋の牀几を無断で道路の真中に引つ張出し、其上に直立して雷声を張り上げ、
『珍の国を守ると云ふ武士達よ。汝の自己愛的なる厳めしき鎧甲を脱げ。排他と猜疑と狡猾と無恥とに飾られた宗教家よ、汝の着する法衣を脱げ。政治家も教育家も一般衆生も、汝が朝夕身に纏へる虚偽と虚礼と虚飾の衣服を脱げ。更始革新の今日、一切の旧衣を捨て、新らしき愛と真との浄衣と着替へよ。汝等の纏へる旧衣に、旧き思想と矛盾の蚤が巣ぐつて居る。偽善的精神や奴隷的根性の蛆虫が蔓つて居るぞ。汝等は斯の如き弊衣を脱がない限り、汝等の生活は虚偽の生活だ、真の人間生活では無いぞ。人間として人間の生活の出来ない位詰らぬものは無からうぞ。一時も早く眼を覚せよ。一時も早く新らしき浄衣と着かへて真実の人間生活に入れよ。この浄衣には人間生活に必要なる新思想の光明が燦然として輝いて居るぞ。芳ばしき蘭麝の香が充ちて居るぞ。何を愚図々々躊躇するか。万々一この更衣の神業に妨害するものあらば、汝等の仇敵として其奴を倒せ。然らずんば汝等は自ら着せる旧衣の為に自滅の厄難に遭ふであらう。此目的を貫徹するには、何人も背水の陣を張つてかかれ。是位の事が出来ぬ様では、人間としての価値は絶無だ。体能く人間を廃業したが良からう。僕は背水会の会長泥池の蓮公さまだ。権門勢家に尾を掉るな。金銀に腰を屈するな。時代は浸々乎として潮の如く急速に流れて居るぞ。珍の国の衆生は文明の世界に於ける落伍者を以て甘んずるものでは無からう。畏くも神素盞嗚尊の子孫の神臨し玉ふ光輝ある歴史を持つた国民では無いか。豪毅と果断とは汝等祖先以来の特性ではないか。時は今なり、時は今なり、三千万の同胞背水会の宣言綱領に眼を覚ませ』
と滔々として傍若無人的に演説する時しも、数十人の取締は前後左右より襲来して愛州を引摺り落とした。群衆はワアイワアイと動揺めき立ち、衆生と取締との血迷ひ騒ぎが各所に演ぜられた。
 愛州は幸か不幸か、数十人の取締に取巻かれ、高手小手に縛り上げられ、ボロ自動車に乗せられて、珍の城下の暗い牢獄へ投込まれて了つた。数多の乾児共は此話を聞くより、躍気となり、列を作つて赤襷に赤鉢巻をし乍ら、棍棒、竹槍、薙刀、水鉄砲等を携へ、牢獄めがけて潮の如く押寄せ、忽ち附近は修羅の巷と化して了つた。取締は逐々繰出す。時々刻々に侠客の連中は得物を持つて蝟集し来る。一方に百人殖ゆれば一方に百人殖ゆるといふ有様で、人を以て附近の広場は埋められた。そこへ弥次馬が侠客の声援をなすべく、面白半分にやつて来て、後の方から石を投げる。忽ち大混乱大争闘の幕がおりた。そこへ兄の在所を尋ねてゐた春乃姫は、葦毛の馬に鞭ち、此場にかけ来り群集の騒ぐのを見て、まつしぐらにかけ入り、馬上につつ立ち乍ら、
春乃『双方共、解散せよ』
と優しい涼しいカン声で呼はつた。数多の取締は春乃姫の姿を見て、抗弁する訳にもゆかず、唯々諾々として一人も残らず根拠地へ引上げて了つた。跡にワイワイと鬨の声をあげて、侠客の乾児連や弥次馬がドヨメキ立つてゐる。春乃姫は一同に向ひ、
『如何なる間違か知らぬが、妾がキツとあとを聞いてあげるから、一先づお退きなさい』
 乾児の源州は恐る恐る前に現はれ、
『今日の場合となつては、後へひくことは出来ませぬが、国司様のお姫い様のお言葉を畏み、一先づ此の場は退却致します。私は珍の都の侠客愛州の身内の者、親分愛州が取締の為に捕へられ牢獄に投ぜられましたので、之を取返さむと乾児共が押寄せました所で厶います。何分宜しくお願申しやす』
春乃『あゝさうであつたか。親分一人の為に、数多の乾児が命をすてて救に来たのか、ヤ感心だ。人間はさうなくてはならぬ。併し乍ら窮屈な法規が布かれてある法治国だから、妾の自由にさう着々と解放する訳にはゆかぬ。併し乍ら妾が仲裁に這入つた以上は、キツト汝等の親分を救ひ出し無事に渡すであらう。先づ安心して引取つて下さい。今すぐといふ訳にもゆくまいが、今後十日の間にはキツト助けてやる程に、妾の言葉を信用して早くお退きなさい』
 源州は有難涙にくれ乍ら、
『何分宜しくお願申ます』
と幾度も頭も下げ、数多の乾児を引つれて、横小路の親分館へと帰つて行く。あゝ此結果は如何に落着するであらうか。
(大正一三・一・二二 旧一二・一二・一七 伊予 於山口氏邸、松村真澄録)
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