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文献名1霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻
文献名2第4篇 新政復興
文献名3第20章 声援〔1765〕
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-11-23 16:47:32
あらすじ一方、清香姫と春子姫は高照山の山麓にたどり着いた。
二人はヒルの国の現状を嘆き、下に下って身魂を磨き立て直しをなさんとの意思を表し、歌に歌っている。
そこへ、山賊・源九郎一党が現れ、二人を取り囲んでしまう。
春子姫は啖呵を切り、あくまで賊に屈しない意気を見せるが、多勢に無勢、危機に陥ってしまう。しかし、今まさに捉えられようとするとき、宣伝歌の声が聞こえてくる。
主な人物 舞台 口述日1924(大正13)年01月25日(旧12月20日) 口述場所伊予 山口氏邸 筆録者松村真澄 校正日 校正場所
OBC rm6920
本文の文字数4403
本文のヒット件数全 1 件/黄泉国=1
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本文  清香姫、春子姫は夜を日についで、高照山の山麓迄辿りついた。本街道を行くと、追手の虞があるので、本街道に添うた山林や野原を忍び忍び進んで行くので、比較的道に暇がとれる。谷川の涼しき木蔭に二人は腰打かけ息を休め述懐を歌つてゐる。
清香『久方の天津御空を伝ひ行く  旭も清きヒルの国
 高倉山の下津岩根に宮柱  太しく立てて三五の
 皇大神を斎つつ  日出神の御教を
 伝へ伝へて世を救ふ  インカの流れ清くして
 四方の民草勇みつつ  恵の露に霑へる
 其神国もいつしかに  黄泉国より荒び来る
 醜の魔神に犯されて  払ふすべなき暗の世の
 ヒルの御国も夜の如  暗の帳に包まれて
 黒白も分かぬ人心  あが足乳根の父母は
 赤き心の紅葉彦  楓の別と次々に
 赤き心を大前に  捧げまつりて仕へまし
 世人を導き給へども  時世に暗き老臣が
 心の暗は晴れやらず  ヒルの天地は日に月に
 常夜の暗となりはてて  阿鼻叫喚の鬨の声
 春野に咲ける花の香も  梢に囀る鳥の声も
 秋野にすだく虫の音も  皆亡国の気配あり
 此世此儘すごしなば  インカの国は忽ちに
 修羅の巷と成果てて  わが衆生は根の国や
 底の国なる苦みを  うけて亡ぶは目のあたり
 時代に目覚めし兄の君は  われと語らひ逸早く
 神の御為国の為  世人の為に高倉の
 堅磐常磐の堅城を  あとに見捨てて天さかる
 鄙に下りて身と魂を  練り鍛へつつ新しく
 生れ来らむ世の中の  柱とならむと雄健びし
 神に誓約を奉り  生でさせ給ひし健気さよ
 妾は元よりなよ竹の  力も弱き身なれども
 御国を思ひ道思ふ  雄々しき心に変りなし
 すき間の風も厭ひたる  床に飾りし姫百合の
 仮令萎るる世なりとも  赤き心の実を結ぶ
 時を待ちつつ霜をふみ  慣れぬ旅路をやうやうに
 進み来りし嬉しさよ  あゝ天地の大御神
 妾兄妹両人が  清けき赤き真直なる
 心を諾なひ給ひつつ  今日の首途をどこ迄も
 意義あらしめよ幸あらしめよ  ヒルの御国の空打仰ぎ
 高倉山に斎きたる  国魂神の御前に
 空行く雲に吾心  のせて通ひつ願ぎ奉る
 あゝ惟神々々  御霊のふゆを願ぎまつる
 あゝ惟神々々  御霊の恩頼を願ぎまつる』
 春子姫も亦歌ふ。
『故里の空打仰ぎ思ふかな
  わが大君はいかにますかと。

 ヒルの空打仰ぎつつ思ふかな
  モリス秋山別の身の上。

 あの雲は灰色だ  さうしてヒルの空から
 走つて来る  痛ましや
 秋山別モリスの神柱の  青息吐息の
 余煙だらう  あゝ痛ましや灰色の
 雲に包まれて  ヒルの国の衆生は
 さぞ苦しき雰囲気の中に  世を喞ちて
 悩んでゐるだらう  春の野の
 百花千花も  牡丹の花の清香姫も
 あの灰色の  雲も否みて
 こき紫の  雲の漂ふ珍の空へ
 逃て行く気になつたのだもの  あゝ天津風時津風
 南から北へ吹けよ  さうして
 紫の雲をヒルの空に送れ  あの灰色の雲は
 常世の国に吹散らせよ  国愛別の世子の君は
 早くも珍に坐しますか  あの珍の空の雲の色のめでたさよ
 高照山の空には  まだ灰色がかつた
 淡い雲が往来してゐる  之を思へば
 われ等二人の身の上は  まだハツキリと晴れて居ないだらう
 あゝ味気なき  浮世の雲よ
 灰色の空よ  天も地も
 山も河も  皆灰色に包まれた
 今日の景色  国魂の神の
 怒りに触れてや  四方に怪しき雲の竜世姫
 恵ませ給へ  科戸の風を
 起させ給へ  清めの風を』
 清香姫は又歌ふ。
『久方の天津御空を打仰ぎ
  世の行先を歎くわれかな。

 天も地も皆灰色に包まれて
  世は常暗とならむとぞする。

 いかにせば此灰雲の晴れぬらむ
  わが言霊の力なければ。

 時津風吹けよ大空に  又地の上に
 われ等が上に  陰鬱な
 此雰囲気の何時迄も  かからむ限り人草は
 次第に次第に亡びなむ  頑迷固陋の獅子の声
 新進気鋭の馬の声  北と南に響きつつ
 地震となり雷となり  やがては割るるヒルの国
 之を思へば片時も  身を安んじて高倉の
 山に月をば楽しまむや  花は匂へど
 月は照れど  鳥は唄へど
 わが目には  わが耳には
 皆亡国の色と見え  地獄の声と聞ゆ
 あゝ痛ましき今の世を  清め澄まして古の
 インカの御代に立直し  四民平等鳥唄ひ
 花咲き匂ふ天国の  ヒルの都を来たせたい
 あゝ惟神々々  花のうてなの清香姫
 木の芽もめぐむ春子姫  踏みもならはぬ高砂の
 足を痛むる初旅を  恵ませ給へ天津神
 国魂神の御前に  谷の戸出づる鶯の
 かよわき声を張上げて  偏に祈り奉る
 偏に祈り奉る』
 斯かる所へ覆面頭巾の山賊の群十数人、バラバラと現はれ来り、二人の姿を見て泥棒の親分らしき奴、巨眼を開き、二人を包囲し乍ら、長刀をズラリと引抜き、
親分『オイ、女つちよ、其方は何処の何者だ。一寸見た所、其方の容貌といひ、持物といひ、衣服といひ、普通の民家に生れた女ではあるまい。一伍一什、其方の素性を源九郎の前に白状致せ。違背に及ばば、此方にも覚悟があるぞ』
 清香姫は始めて泥棒に出会つた恐ろしさに、顔の色迄かへて慄うてゐる。春子姫は姫の身を庇護ひ乍ら……仮令泥棒の二十人や三十人押寄せ来り、兇器を持つて向ふとも、日頃鍛へた柔術の奥の手をあらはし、一人も残らず、谷川に投込み、懲らしめて呉れむ……と覚悟をきはめ乍ら、そ知らぬ体にて、ワザとおとなしく、両手をつき、
春子『ハイ、妾は高倉山を守護致す天人で厶います。大変な偉い権幕で、妾に何かお尋ねの様で厶いますが、人間は、仮令泥棒にもせよ、礼儀といふものが厶いませう。孱弱き女だと思召し、頭から威喝せうとは、チツト男にも似合はぬ、御卑怯では厶いませぬか。何の御用か存じませぬが、天地を自由自在に致す天女で厶いますれば、誠のことならば何でも聞いて上げませう、其代り道に外れたことならば、少しも許しませぬぞ』
とキツパリ言つてのけた。源九郎は度胸の据つた春子姫の言葉に稍ド胆を抜かれたが……タカが知れた女の二人、自分は十数人の命知らずの荒武者をつれてゐる。天人か天女か知らぬが、こんな女に尻込みしては、今後乾児を扱ふ上に於て、信用を失墜する。飽迄も強圧的に出たのだから、無理押しで押さへつけてやらむ……と覚悟をきはめ、ワザと居丈高になり、
源『アツハヽヽヽ、吐したりな、すべた女、天人とはまつかな詐り、吾々が恐ろしさの其場遁れのテレ隠し、左様なことに誑かられる源九郎さまぢやないぞ。高照山の山寨に数百人の手下を引つれ、往来の男女を脅かす悪魔の源九郎たア俺のことだい。四の五の吐さず、衣類万端脱いで渡すか、さもなくば、源九郎の女房になるか、サアどうだ。速に返答を承はらう』
 春子姫は益々度胸がすわつて来た。清香姫は一生懸命、神の救ひを心中に祈つてゐる。
春子『ホツホヽヽヽヽ悪魔の源九郎とやら、好い所へ現はれて来た。妾は其方の出現を待つてゐたのだ。邪魔臭い、木偶の坊を二十や三十連れて来た所で、歯ごたへがせぬ。乾児を残らず引つれ、吾前に並べてみよ。片つぱしから、窘めてくれむ。悪魔退治に出陣の途中、悪魔の張本源九郎に会ふとは、何たる幸先のよい事だらう。一人二人は面倒だ。源九郎、サア一度にかかれ、天人の神力を現はして、汝が肝を冷しくれむ』
といふより早く、襷十字にあやどり、優しい顔に後鉢巻を締め、懐剣の柄に手をかけ身構へした。此勢に清香姫も気を取直し、又もや赤襷に白鉢巻、懐剣の鞘を払つて源九郎目懸けて、ヂリヂリとつめよせた。春子姫は十数人の乾児に目を配り、寄らば斬らむと身構へしてゐる。源九郎が一令の下に、乾児は二人に向つて、切りつくることとなつてゐた。併し乍ら頭梁の源九郎は二人の姿を見て、稍恋慕の念を起し……何程強いといつても、女の二人、片腕にも足らないが、併し斯様な、美人をムザムザ殺すのは惜いものだ、何とかして助けたい……と早くも恋に捉はれてゐる。
春子『源九郎とやら、其方は大言を吐き乍ら、なぜ孱弱き二人の女に手出しをせぬのか、吾々の威勢に恐れてゐるのか、返答せい。妾は天下を救ふ宣伝使だ。汝如きに怖れを抱いて、どうして天人の職が勤まらうぞ、卑怯未練な男だなア』
源『ナアニ、タカが女の一人や二人、片腕にも足らねども、可惜名花を散らすは惜いものだ。それ故暫時、根株を切つた鉢植の花だと思つて眺めてゐるのだ。やがて果敢ない終りを告げるだらうと思へば、聊か同情の涙にくれぬ事もないわい。テモ偖も見れば見る程、美しい……イヤいぢらしい者だワイ』
春子『エヽ汚らはしい、泥棒の分際として、天人に向ひ、いぢらしいとか、美しいとか、チツと過言であらうぞ。要らざる繰言申すよりも旗をまき尾をふつて、此場を早く立去れ、エヽ汚らはしい、シーツ シーツ』
と猫でも逐ふ様な大胆不敵の挙動に、源九郎は怒り心頭に達し、
源『要らざる殺生はしたくなけれ共、モウ斯うなれば後へは退かれぬ男の意地、コリヤ女、今に吠面かわかしてみせる、覚悟をいたせ……ヤアヤア乾児共、両人に向つて斬りつけよ』
と下知すれば、心得たりと、十数人の乾児は二人の女に向つて、阿修羅王の如くに迫り来る。春子姫は一方の手で、清香姫を庇ひ乍ら、力限りに防ぎ戦へども、剛力無双の敵の襲撃、早くも力尽きて、彼が毒牙にかからむとする危機一髪の場合となつて来た。源九郎は岩上に腰打かけ、平然として煙草を燻らし乍ら、此光景を見下ろしてゐる。清香姫は今や捉へられむとする一刹那、あたりの空気を振動させて宣伝歌が聞えて来た。あゝ此結果は何うなるであらうか。
(大正一三・一・二五 旧一二・一二・二〇 伊予 於山口氏邸、松村真澄録)
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