物語の背景
バラモン教の根源地たるインドは、七千余国を一団となす地であり、浄行(僧侶階級?)、刹帝利(クシャトリア=武士)、首陀(シュードラ=隷属民)、毘舎(ヴァイシャ=商人)、その他の階級が設けられていた。
一方、ウラル教がデカタン高原の一角に勢力を築き、バラモン教の本拠ハルナの都に向かって教線を拡大しつつあった。
この状況に、バラモン教の大黒主は「宣伝将軍」を各地に遣わし、とくに大足別将軍に数千の兵を与え、討伐を主目的として出発せしめていた。
舞台となるトルマン国は、デカタン高原の最も土地の肥えた所にあり、国土は広くはないが、かなりの人口を持っている。そして、地理上、代々ウラル教を報じていた。
大黒主は、トルマン国にもバラモンの勢力を広めるため、寵臣キューバーに命じて、スコブツエン宗という、名前は違うが内容は同じ一派を立てさせ、トルマン国にて布教させた。しかし、王家・有力者の人々はスコブツエン宗に入信することはなかった。
キューバーは、大黒主の寵臣として、また密命を受けた身として、特殊の権利と地位を与えられていた。バラモン軍の将軍たちでさえも、キューバーに従わざるを得なかった。
キューバーのスコブツエン宗は、バラモン教に輪をかけて難行・苦行を重んじる残酷な宗旨である。
ある小さな山里の古ぼけた祠の前で、二人の三五教徒の首陀、レールとマークが、バラモンの批判をしている。その現世的なやり方、差別をあげつらい、首陀向上運動の進展、信仰の独立を目指している。
そこへ、スコブツエン宗のキューバーが現れた。首陀たちはにわかに話題を転じ、さっさと逃げてしまう。
キューバーは、耳さとく大黒主への反逆を聞き取って姿をあらわしたが、レールとマークもいち早く山林に姿を隠してしまった。レール、マークは再びキューバーの悪口に花を咲かせるが、またもやキューバーが追ってくるのを認めて、山林の奥へ逃げてしまった。