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文献名1霊界物語 第71巻 山河草木 戌の巻
文献名2第2篇 迷想痴色よみ(新仮名遣い)めいそうちしき
文献名3第14章 障路〔1803〕よみ(新仮名遣い)しょうろ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
玄真坊、コブライ、コオロはシャカンナから奪った黄金を胴に巻きつけ、山野を歩いてタラハン国を抜けようとする。

しかしそこで十数人の捕り手に囲まれ、行く手を失った三人は進退窮まり、思い切って断崖絶壁の谷底に身を投げてしまった。

場面は変わって、だだっ広い原野を、切腹して果てたはずのシャカンナが一人、来し方の事を歌いながら歩いている。

すると、土の中から頭だけを出している玄真坊と出会う。玄真坊は、たくさんの黄金をゆすり取った罪で、幽冥主宰の神から罰をくらっているのだ、と答える。そして、シャカンナに許しを請う。

そこへ今度はコブライ・コオロが濡れ鼠でやってくる。彼らは谷底に飛び込んだとたん、黄金をすっかり捨ててしまっていた。

玄真坊もあまりの苦しさに、ついに黄金を捨てると宣言する。と、とたんに地面から抜け出すことができるようになった。

一同は気を取り直し、幽冥界の道を行ける所まで行こうと、歌を歌いながら行進する。

玄真坊が先に立って行くが、辻の立石に頭をぶつけてその場にふん伸びてしまった。
主な人物 舞台タラハン国の森林、中有界 口述日1926(大正15)年01月31日(旧12月18日) 口述場所月光閣 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1929(昭和4)年2月1日 愛善世界社版181頁 八幡書店版第12輯 567頁 修補版 校定版189頁 普及版90頁 初版 ページ備考
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本文  玄真坊、コブライ、コオロの三人は左守の情けに仍つて、漸くに死罪を免れ、持てる丈の黄金を胴巻に押し込み、重たい腰をゆすり乍ら、人跡稀なる森林を探りて、一日一夜西へ西へと駆け出して行く。三人共身体縄の如くに疲れ果て、最早一歩も歩めなくなつて了つた。
コブライ『モシ玄真さま、何程黄金を沢山貰つても体が達者になるといふでもなし、腹が膨れると云ふでもなし、斯うなつて見ると黄金も何も役に立たないものですな。重たい許りでこんな事三日も続けやうものなら、到底命はありませぬワ』
玄真坊『馬鹿を云ふな、金さへ有れば、どんな甘い物でも食られるし、どんな別嬪でも買はふと儘だ。今日は黄金万能の世の中だからのう、着炭議員に成らうとしても五万や十万の金は要る。短命内閣の総理大臣に成らうて思つても、二千万両や三千万両の金が要るのだ』
コ『さうかも知れませぬが、斯う山林許し跋渉してゐては、別嬪も見付からず、甘いもの食はうにも、味無いもの食はうにも、テンで店屋も無いぢやありませぬか。一千万円の包より一升米が貴いやうに私は思ひますわ。アーア何とかして食料に有付き度いものだなア』
玄『そんな弱音を吹くな。もう一日許り走れば安全地帯がある。其処へ行けば女郎も居るし、どんな綺麗な着物でも売つてゐる。百味の飲食も待つてゐる。マ、其処迄辛抱したが可からう、腹が空つて仕方なければ拇指の爪なつと甜つて居れ。さうすりや些と許り飢を凌ぐ事が出来やうも知れぬ。彼の章魚を見い、章魚は食ふ物が無くなると、自分の足を皆食つて了ふものだ』
コ『人間を章魚に譬られちや堪りませぬがな。お前様こそタコ坊主だから足なつと甜つて居りなさい。コブライは痩ても枯れても一人前の人間様だ。タコの真似は出来ませぬ哩、喃うコオロ。最う一足も歩けぬぢやないか』
コオ『俺も苦しうて堪らぬが、何処で此お金を以て甘いものを買ひ、別嬪を抱いて寝ようと思へば、又元気が出て来て、些と許り歩ける様になるのだ。何と云つても人間は心次第だ。最う暫時だから玄真坊様の仰有る通り、辛抱して跟いて行かうぢやないか。こんな所で野垂死しても約らぬからの』
コ『エー、仕方がない。又コンパスに御苦労をかけやうかな』
と渋々乍ら一二丁許り進んで行くと、十手指叉を持つた十数人の捕手が身を没する許りの萱草の中から現はれ出で、三人を取まいて了つた。右の方は千仭の谷間、三方は捕手に囲まれ進退これ谷まり最早これ迄と、三人一度に青淵めがけて、九死に一生を僥倖せむものと、命の安売をやつてみた。捕手はアレヨアレヨと眺めて居れど、名に負ふ断岩絶壁近よることも出来ず、みすみす敵を見捨ててブツブツ小言を云ひ乍ら帰り行く。
    ○
 渺茫として際限もなき大原野の真中を只一人の老人が蚊の鳴くやうな声で歌を唄ひ乍ら通つてゐる。
『川の流れと人の身の  行末こそは不思議なれ
 タラハン城に仕へたる  吾は左守の司なるぞ
 いつの間にかは知らね共  限も知らぬ大野原
 さまよひ来る訝かしさ  道ゆく人も無きままに
 言問ふ由もなく許り  あゝいかにせむ千秋の
 恨を野辺に残しつつ  あへなき最後を遂ぐるのか
 あゝ浅ましや浅ましや  タラハン城の方面は
 何処の空に当るやら  百里夢中にさまよひし
 吾身の上こそ悲しけれ  原野に千草は生えぬれど
 花も実もなき枯野原  吹き来る風さへ音もなく
 烏の声さへ聞え来ず  寂光浄土か知らね共
 天地一度に眠りたる  如き此場の光景は
 淋しさたとふる物もなし  あゝ惟神々々
 三五教の大御神  導き玉へ永久の
 棲処と定めしタラハンの  城下に建ちし左守家へ
 思へば思へば人の身の  行末こそは果敢なけれ
 此世を造りし神直日  心も広き大直日
 只何事も人の世は  直日に見直し聞直し
 身の過は宣直す  三五教の御教は
 梅公別の師の君ゆ  完全に詳細に聞きつれど
 見直す術も無きままに  名さへ分らぬ荒野原
 吾等は何の罪あつて  かかる処へ落ちたのか
 合点のゆかぬ世の中ぞ  憐み玉へ大御神
 導き玉へ吾宿へ  あゝ惟神々々
 御霊幸ひましませよ  旭は照る共曇る共
 月は盈つ共虧くる共  仮令大地は沈む共
 誠の力は世を救ふ  神が表に現はれて
 善と悪とを立別ける  此世を造りし神直日
 心も広き大直日  只何事も人の世は
 直日に見直す道ぢやげな  誠の力といふ事は
 此世を造り玉ひたる  真の神の力だろ
 人間界に身をおいて  どうして真が出るものか
 真の力の神さまよ  吾等の淋しき境遇を
 何卒救ひ玉へかし  偏に願ひ奉る
 三千世界の梅の花  一度に開く神の国
 開いて散りて実を結ぶ  月日と土の恩を知れ
 此世を救ふ活神は  高天原に神集ふ
 などと尊き宣伝歌  肝に銘じて忘れねど
 只一輪の梅さへも  開いて居らぬ此野辺は
 地獄の道の八丁目  八衢街道の続だろ
 かかる淋しき大野原  さまよひ来る吾身こそ
 前世現界相共に  無限の罪を重ね来て
 神の懲戒うけ乍ら  身魂を研いて居るのだろ
 死んだ覚のない吾れは  幽冥界とも思へない
 あゝ惟神々々  神が此世にあるならば
 何卒吾身を導いて  恋しき吾家にかやせかし
 偏に願ひ奉る』
 斯く歌ひ乍ら、大野原に蚯蚓の這ふたやうについた細路を辿り行くと、土の中からムクムクと頭丈が動いてゐる。シヤカンナは此淋しい原野の正中に松露のやうな頭が動いてゐるのは合点が行かぬと、手に持つた杖で二つ三つこついてみると「アイタタ アイタタ」と云ひ乍ら、月が山の端を昇るやうに、チクリ チクリと土から抜け出で、肩まで現はして来た。よくよく見れば玄真坊の姿そつくりである。シヤカンナは驚いて、
『オイ、コラ、汝は玄真坊ぢやないか。こんな所に何をしてゐるのだ』
玄『ヤ、私はお前にお詫をせにやならぬ事があるのだ、確には覚えてをらぬが、お前の館へ行つて無理難題を吹きかけ、ドツサリ金をぼつたくつて帰つた天罰で、幽冥主宰の神から沢山な黄金を罰則として体に縛りつけられ、其重みで体が地の中へにえ込んで了ひ、今ヤツとの事で首丈地上へ現はした所だ。どうか「許す」と一言云つてくれ。さうすりや俺の罪も軽うなるだらうから……』
シヤ『何だか俺は足がヒヨロヒヨロするけれど、体が軽くて足が地上を離れ相で危険で堪らないが、お前は又体が重いとは不思議な事だのう。それぢやお前の首を千切つてやるから胴柄位土に托しておいたらどうだ。何れ遅かれ早かれ土の中へ這入る体だからのう』
玄『オイ兄貴、そんな無茶な事云ふてくれない。天一の手品師なら、首をチヨン切つても又つげるだらうが、俺のはさうはいけないよ。どうか兄貴、金剛力を出して俺の体をグツと引き上げて貰へまいかの』
シヤ『体を引き上げと云つたつて、首から下が埋つてゐるのだから、手をかける所もないぢやないか、それでも強つて引き上げと云ふのなら、両方の耳を掴んで試にやつてみようかな』
玄『どうでも可いから、兎も角一寸でも体を地上へ出してくれ、苦しくて堪らぬ、どうやら地の底の地獄へ引ぱり込まれ相だ』
 「ヨーシ」と云ひ乍らシヤカンナは一生懸命に冷たい手で冷たい耳を掴んでみたが、磐石の如くビクとも動かない。さう斯うしてる所へ、又もや二人の男が、濡衣を纏ひ乍ら、力なげにトボトボとやつて来る。シヤカンナは後ふり向いて、
『ヤ、お前はコブライにコオロの両人、どして又こんな淋しい所へやつて来たのだい』
コブ『ヤ、親方で御座いますか、まづ御壮健でお芽出度う。実アはつきり覚えませぬが、お前さま所で金を貰つて帰る途中追手に出会ひ、谷川へ飛び込んだと思や、何時の間にか斯んな所へ来てゐます。併し飛び込んだ際に折角貰つた山吹色は皆谷底へ捨てて了ひ、今ぢや欠けたかんつも御座いませぬが、どうか親方、チツと許りお金を恵んで貰へますまいかな』
シヤ『俺だとて其通りだ。一文生中も身につけてゐないのだ。こんな所を旅行するのに家もなし店もなし、金が要るものかい。腹が減つたら草でも千切つて食つて行くより仕様がないぢやないか』
コブ『ヤ、其処にゐるのは玄真さまぢやないか、何ぢやい、首許り出しやがつて、……サ、起きたり起きたり』
 玄真は目を無性矢鱈にジヤイロコンパスのやうに廻転し始め、口も目も鼻も一所に集中し顔面筋肉を頻に活動させ出した。
シヤ『ヤ、此奴アどうやら地獄落ちらしいぞ。まだ黄金に執着心を持つてるらしいぞ、オイ、玄真、すつぱりその金を思ひ切つて了へ。そすりや助かるだらう』
玄真『ヤア、何程金が欲しうても、かう苦しうては欲にも得にもかへられないワ、モウ金はコリコリだ。一文も要らない。オイ黄金の奴、今日から暇をやるから勝手に何処へ行つてくれ』
と云ふが否や、子供の玩具の猿が弓弾きに弾かれたやうな勢で、ポンと地上三間許りも飛び上り、ドスンと又元の所へ落ちて来た。
シヤ『オイ、玄真坊、欲といふ奴ア怖いものぢやのう』
玄『本当にさうだ、おらモウ金にはコリコリしたよ。併しお前は結構なタラハン城の館を捨てて、何故又こんな所へ来たのだ。チツと合点が行かぬぢやないか、……ハハー、大方俺の金が惜しうなつて、追駆て来たのだな。それで俺を器械仕掛で地の中へ電気ででも引張つてゐやがつたのだなア』
シヤ『馬鹿を云ふない。俺はモウ金なんか見るのも厭だ。併し俺は、今フツと思ひ出したがお前を逃がした跡で、確に神様の前で切腹をして果てた積だが、何故又こんな所へやつて来て生きてゐるのだろ。丸で狐につままれたやうで、現界か幽界かチツとも訳が分らないのだ。一体此処は何処だと思つてゐるか』
玄『サ、どうも不思議で堪らぬのだ。お前の話を聞くと、お前が俺より先死んだ者とすれば、先に此所へ来て居らにやならぬ筈だ。俺等三人は一日一夜山や谷を走つて谷川へ飛び込んだやうな気がする。それが先づ此処へ来てる筈がない。てもさても合点の行かぬ事だのう』
コブ『コリヤ何うしても、玄真さま、幽界旅行をやつてゐるのに違ありませぬよ。吾々はかうして生きてると思つてるが肉体はとうに死んで了ひ、精霊体許りが此所へ迷ふて来たのでせう。霊界には時間空間の区別も無く、遠い近いもない相だから、先へ死んだ者が後へなる共、後から死んだ者が先へなる共、そんなこた分りませぬワイ。マア死んだ者としておけや、後で驚かいで宜しかろ』
コオ『オイ、コブライ、どうやらこりや地獄街道の八丁目らしいぞ。困つた事になつたものぢやないか』
玄『さうだ、一寸面食つたな、然し乍らかうして四人の道伴れが出来た以上は、淋しさも稍薄らいで来たやうだ。兎も角、地獄でも何処でもかまはぬ、行ける所迄行かうぢやないか。俺達や元より極楽に行つて無聊に苦むよりも、地獄へ行つて車輪の活動をやるが望だからのう』
コブ『其お説はハル山峠の岩上で承はりましたね、サ、行きませう。余り淋しいから一つ行進歌でも唄はふぢやありませぬか』
玄『そら面白からう、先づ俺から歌ふてやる。
 限も知らぬ大野原  此所は地獄の八丁目
 八衢街道か知らね共  三人の家来を引きつれて
 名さへ分らぬ荒野原  進みゆくこそ勇ましき
 もしも此世に天国が  あるものとすりや行つてみよう
 無ければ是非なく地獄道  肩肱いからし進まうか
 併し此世に地獄とか  極楽などがあるものか
 どこ迄行つても此通り  冷い風がピユーピユーと
 草の葉末をなで乍ら  遠慮もなしに通つてゐる
 これがヤツパリ地獄だろ  何程地獄が怖く共
 こんな事なら屁のお茶だ  ドツコイ ドツコイ ドツコイシヨ
 コラコラ三人の家来共  しつかり後からついて来よ
 落伍をしても知らないぞ  アレアレ不思議アレ不思議
 向方に妙な建物が  チラチラ吾目につき出した
 此奴ヤツパリ現界か  現界ならば尚の事
 一生懸命にはしやいで  元気をつけて行かうかい
 タラハン城を占領し  天晴国王と成すまし
 羽振を利かそと思ふたに  いつの間にかは知らね共
 こんな所へ彷徨ふて  東西南北方位さへ
 分らぬ今日の不思議さよ  向方に見ゆる建物は
 鬼か悪魔の住処だろ  サアサア行かうサア行かう
 何をビリビリしとるのだ  もしも地獄があるならば
 地獄の鬼を引捉へ  蝗のやうに竹串に
 並べて刺して火に炙り  片つ端から食てやろか
 あゝ面白い面白い  地獄の王の御出立
 鬼でも蛇でもやつて来い  ドツコイ ドツコイ ドツコイシヨ』
 などと一生懸命に歌ひ乍ら、頭を前方に突出し、チヨコチヨコ走りに進んでゆく。三人は四五丁許り取り残され、ヨボヨボと細い声で行進歌を歌ひ乍らついて行く。
 玄真坊は足許ばかり見詰めて突進した途端に四辻の立石に頭をぶつつけ、キヤア、ウーンと云つたきり、其場に蛙をぶつつけたやうにふん伸びて了つた。
(大正一五・一・三一 旧一四・一二・一八 於月光閣 松村真澄録)
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