妖幻坊と高姫の経緯を歌う:
初稚姫と霊犬スマートに祠の森を追い出された妖幻坊と高姫は、小北山の霊場から曲輪の玉を奪い、妖幻坊の妖術で曲輪城を作る。妖幻坊は高宮彦、高姫は高宮姫と名乗る。
そこへ初稚姫に踏み込まれ、妖幻坊は術が破れる。妖幻坊は高姫を抱え、月の国へ空を翔けて逃げ去るが、烈風によって高姫は吹き飛ばされ墜落し、息絶える。
高姫は幽界にさまよう。さまよいつつ八衢(やちまた)でウラナイ教の布教をしていたが、トルマン国の王妃・千草姫の他界と共にその肉体に宿り、現界によみがえる。
梅公別によって金毛九尾の正体をあらわしトルマン国を逃げ去った後、浜屋旅館の一室で妖幻坊の杢助に再開し、乗合船・高砂丸でスガの港をさして行く。
三五教の光を恐れた妖幻坊は、その神の道を破ろうと、三五教に捨てられた高姫に目をつけ、杢助に変装してたぶらかしたのであった。
高砂丸には、「高砂笑」といって、どんな身分の人間であれ、あらゆる人物を忌憚なく批評し、悪口をいい、嘲笑することが許される、面白い習慣が残っていた。
先客となっていたコブライ、コオロ(元玄真坊の部下)は、さっそく話の花を咲かせている。
玄真坊が千草の高姫に有り金を巻き上げられた上に殺されかけたこと、その高姫と、大雲山の妖怪の化身・妖幻坊が、万民を苦しめ三五教の聖地を横領しようと、ハルの海を渡ろうとしていること、などを語っている。
妖幻坊と高姫は、その話を聞き腹を立てつつ、水に弱いがために、悔し涙を流しながら黙って素知らぬ顔をしていた。
突然暴風雨が吹き出し、高砂丸はたちまち転覆してしまう。乗客一同は湖に投げ出されてしまうが、そこへ新造船が勢いよくやってくる。