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文献名1霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻
文献名2第2篇 杢迂拙婦よみ(新仮名遣い)もくうせっぷ
文献名3第8章 街宣〔1817〕よみ(新仮名遣い)がいせん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
スガの港の長者、薬種問屋のアリスは、強欲非道を尽くしてその地位を得た。

その因果は子に報いて、娘ダリヤは行方不明となり、息子のイルクは妹の行方を訊ねて家を出てしまう。

二人は船中で出会い、三五教の梅公別に危難を救われて、我が家に戻ってくる。父のアリスは梅公別の道の諭しに改心する。

アリスは財産すべてを神にささげて、スガ山の聖地に神殿を作り、これまでの罪のあがないと共に、世界の民草を悪魔の教えから守るためのよすがにしようと決心した。

一方、タラハン城の大火を遠くに見た梅公別は、タラハン市を救おうと、駒にまたがり駆けて行く(ここまで、第六十七巻 第九章、十章の物語)。

後に残ったヨリコ姫と花香姫の姉妹は、スガの町々、辻々を宣伝に歩く。
主な人物 舞台 口述日1926(大正15)年06月30日(旧05月21日) 口述場所天之橋立なかや別館 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1929(昭和4)年4月3日 愛善世界社版95頁 八幡書店版第12輯 640頁 修補版 校定版99頁 普及版39頁 初版 ページ備考
OBC rm7208
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本文  スガの港に名も高く  百万長者と聞えたる
 薬種問屋の主人のアリス  金と血気に任せつつ
 強欲非道のありたけを  尽して人の生血をば
 絞らむ許りの悪逆に  遠き近きの隔てなく
 老若男女は声々に  鬼よ大蛇よ悪魔よと
 譏らぬ者こそなかりけり  金と塵とは沢山に
 積れば汚くなる譬へ  出すことなれば手も舌も
 只では出さぬ強欲さ  取込む事なら牛の骨
 犬のそれでもかまやせぬ  人の恨みの金ばかり
 積んで山なす塵の峰  親爺の罪が子に報い
 終にはダリヤの行衛さへ  分らずなりて遉にも
 親子の情のいや深く  忘れ兼ねてか煩悶の
 吐息つくづく病床に  呻吟する身となりにけり
 二男のイルクは妹の  所在を求めて遠方近方と
 探ね廻りし折もあれ  船の中にて出会し
 三五教の神司  梅公別に助けられ
 初めて神の道を聞き  妹引きつれ宣伝使
 一行と共に吾家路  いそいそ指して帰り来る
 待ちに待ちたる父アリス  娘の無事を聞くよりも
 喜び勇み狂ひ立ち  手の舞ひ足の踏む処
 知らず白髪の首ふりて  悲喜交々の為態
 梅公別の懇篤な  教の道の宣伝に
 鬼のアリスも改心し  財産全部を大神に
 捧げ奉りてスガ山の  老木茂れる聖場に
 天地の神の鎮座ます  大宮柱太知りて
 今迄犯せし罪科の  贖ひとなし一つには
 所在世界の民草が  悪魔の教に惑され
 憂瀬に落ちて苦しめる  その惨状を救はむと
 決心したるぞ殊勝なれ  梅公別は一夜の
 仮の宿りをなさむとて  夕飯を終りし折もあれ
 タラハン城の空高く  雲を焦して燃え上る
 大火の模様を見るよりも  後をヨリコや花香姫
 二人に任せおきながら  栗毛の駒に鞍おいて
 威風凛々大野原  駒の嘶き鈴の音
 ヒンヒンシヤンシヤンドウドウと  雲を霞と駆けて行く
 あゝ惟神々々  御霊幸倍ましませよ
 神の教にヨリコ姫  瑞の霊の花香る
 月と花との二人連れ  梅公別の旨を受け
 スガの町々辻々を  白妙の衣纒ひつつ
 連銭葦毛の駒に乗り  法螺貝吹き立て人集め
 やさしき花の唇を  静に開き手をあげて
 鞍上にすつくと立上り
ヨリコ『スガの港に住みたまふ  老若男女の皆様よ
 三千世界の救世主  神素盞嗚の大神の
 瑞の霊の御教を  女ながらもお取次
 致しますれば村肝の  心静に聞し召せ
 抑も此世は天地の  元津祖なる生神が
 唯一柱坐し在して  日月火水木金土
 森羅万象創造し  かつ人間を神様と
 同じ形に造りまし  厳と瑞との精霊を
 各自に宿しまし  天と地との経綸に
 仕へしめむとなし給ふ  人の体は斯の如
 実にも尊きものですよ  それをも知らず人間は
 此世に生れ来た上は  飲めよ歌へよ寝よ起きよ
 お金があれば酒飲んで  歌舞音曲に戯れる
 これより外に人生の  目的更にないものと
 誤解して居る哀れさよ  これで人生の本分が
 尽しをへたと云ふならば  人は獣類と同じこと
 万の物の霊長と  どうして名附けられませうか
 人は神の子神の宮  尊き神の宿として
 造らせ玉ひしものなれば  衣食住居其外に
 尊き務がなけれやならぬ  その又尊き神業は
 如何と云はば人間は  天地の神の御為に
 有らむ限りの赤心を  尽し奉りて道の為め
 天国浄土の円満を  はからむ為めに霊魂の
 魂をば研き開かせつ  此世に住める同胞を
 八衢地獄の境遇より  救ひ出して天国の
 常磐堅磐の花園に  導き渡す宣伝使
 御伴に仕へ奉りつつ  其神業の一端に
 仕へ奉るぞ人として  最大一の務なり
 あゝ惟神々々  御霊幸倍ましませよ
 神が表に現はれて  善と悪とを立別ける
 此世を造りし神直日  心も広き大直日
 唯何事も人の世は  直日に見直せ聞き直せ
 世の過は宣り直せ  これぞ全く三五の
 神の教の御言葉ぞ  敬ひ奉れ百の人
 諾ひ奉れよ惟神  神の教に嘘は無い
 一二三つ四つ五つ六つ  七八九つ十百千
 万の国の民草を  一人も残らず三五の
 神の教に導きて  天地にかはる大業を
 尽さにやおかぬ神の御子  ヨリコの姫や花香姫
 今迄犯せし罪科の  その贖の一端に
 仕へむ為の宣伝歌  心平らに安らかに
 聞かせたまへよ人々よ  偏に祈りおきまする』
 シヤンコ シヤンコ シヤンシヤン  シヤンコ シヤンコ シヤンシヤン
 馬の蹄も戞々と  手綱引き締め鞭をあて
 隣の町を指して行く  梅公別に救はれし
 梅の花香の宣伝使  未だ称号は無けれども
 世人を導き救はむと  思ふ心は紅の
 紅葉の照れる如くなり  ヨリコの姉に従ひて
 馬上豊かにスガの町  上から下迄和妙の
 美々しき宣伝服着けて  本町通りの十字街
 駒を留めて鞍上に  スツクと立ちしスタイルは
 三十二相を具備したる  聖観音の生姿
 知らず識らずに町人は  両手を合せ伏し拝み
 生神様の御出現  如来の来降と喜びて
 二人の前に寄り集ひ  蟻の這ひ出る隙もなく
 人山築きし勇ましさ  花香は優しき声を上げ
 飽迄白き白魚の  優しき右手をさし上げて
花香『あゝ惟神々々  神が表に現はれて
 誠の道を説き諭す  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 曲津は如何に荒ぶとも  誠の力は世を救ふ
 あゝ惟神々々  御霊幸倍ましませよ
 三五教の宣伝使  梅公別の神司
 雲の如くに降りまし  吾等二人の姉妹に
 いとも尊き福音を  伝へ玉ひし嬉しさに
 曇りし霊も澄み渡り  央身失せし魂は
 高天原に甦り  再び花の咲く春に
 遇へる心地の今日の旅  此嬉しさは言の葉に
 かけて語らむ術もなし  かくも尊き御教を
 一人の物となさずして  数多集へる皆様に
 千別に千別き奉り  其喜びと楽しみを
 共にせむとの吾願ひ  いと平らけく安らけく
 聞し召さへと宣り奉る  バラモン軍に名も高き
 大足別の軍勢が  トルマン城下に押し寄せて
 民を塗炭の苦しみに  おとし入れむとする最中
 見るに見兼ねて背の君の  梅公別の宣伝使
 駒に鞭ち大野原  進ませ玉ひし留守の中
 不束ながら女身を  かりて雨風苦にもせず
 世人の為めに宣伝の  道に上つた次第です
 詳き事が聞き度ば  スガの目抜の薬屋の
 アリスの宅にお出でなさい  あゝ惟神々々
 恩頼を賜へかし』  ハイハイドウドウ、ヒンヒン シヤンコ シヤンコ
 駒の嘶き鈴の音  いと勇ましく大道を
 緩歩し乍らスガの町  目抜の場所と聞えたる
 百万長者の薬屋の  表を指して帰り行く
 あゝ惟神々々  御霊幸倍まし坐世よ。
(大正一五・六・三〇 旧五・二一 於天之橋立なかや旅館 加藤明子録)
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