文献名1霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻
文献名2第2篇 杢迂拙婦よみ(新仮名遣い)もくうせっぷ
文献名3第10章 清の歌〔1819〕よみ(新仮名遣い)すがのうた
著者出口王仁三郎
概要
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データ最終更新日----
あらすじスガ山の大宮の普請も地鎮祭を行い、六十日の間についに遷座式を迎えることとなった。
五月五日のスガの宮完成式には、神谷村の玉清別を斎主として招いた。すると、祭典の二日前に、玉清別に送られて、ダリヤはスガの街に帰ってきた。
遷座式、神饌田における田植式をもって、無事に式を終えた。
それとともに、長者アリスの病は癒え、アリスは酒宴の席で喜びの舞を舞った。
主な人物
舞台
口述日1926(大正15)年06月30日(旧05月21日)
口述場所天之橋立なかや別館
筆録者加藤明子
校正日
校正場所
初版発行日1929(昭和4)年4月3日
愛善世界社版118頁
八幡書店版第12輯 647頁
修補版
校定版122頁
普及版47頁
初版
ページ備考
OBC rm7210
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本文
夜は久方の空高く 輝き照す月の国
トルマン国のスガの山 千歳の老松苔蒸して
百鳥千鳥朝夕に 御代を寿ぎ千代々々と
囀る声の勇ましく 樟の古木の梢には
鷲が出て来る巣を造る 常磐の松の色深く
田鶴なき渡り巣をかける 山水明媚の神の山
山王神社の御祠 幾千年の雨風に
破ぶれ歪めど神徳は 七千余国の月の国
隈なく輝き渡りけり ハルの湖洋々と
浪を湛へて吹き来る 風の香りも馨く
稲麦豆粟よく実り 牛、馬、羊、豚、駱駝
家畜一切よく育つ 神の恵の足ひたる
珍神国と知られける 此国中に聳り立つ
大高山の峰続き スガの神山鬱蒼と
茂れる見ればトルマンの 国の栄のほの見えて
神代の姿偲ばるる ヨリコの姫や花香姫
主のイルクと諸共に 村人多く呼び集へ
心の色もスガ山の 大峡小峡の木を伐りて
本と末とは山口の 皇大神に奉り
朝から晩迄チヨンチヨンと 削る忌斧忌鉋
鋸の声勇ましく 木を切りこなす面白さ
山王の宮の大前に 展開したる広庭の
岩切り開き清めつつ 五色の幣を立て並べ
石搗祭を始めたり 石搗祭の神歌は
今左に述ぶる如くなり。
○石搗き歌
スガの町の薬種問屋 ヨーイヨーイ ドンと打て
地獄の底迄打ち抜けよ スガの神山切り開き
土ひきならし塩撒いて 上津岩根に搗きこらし
下津岩根に搗き固め ヨーイヨーイ ドンと打て
竜宮の底の抜ける迄 スガの港の薬種問屋
天地を創造り玉ひたる 仁慈無限の大神が
常磐堅磐の御舎と 仕へ奉るぞ尊けれ
ヨーイヨーイ ドンと打て 地獄の釜の割れる迄
スガの港の薬種問屋 ヨーイヨーイ ドンと打て
産砂山の聖場に 天降りましたる瑞霊
神素盞嗚の大神の 厳の御言を畏みて
月第一の景勝地 バラモン教やウラル教
神の司が幾度も 尋ね来りて求めたる
此聖場も今は早や 輝き渡る世となりぬ
ヨーイヨーイ ドンと打て 竜宮の底の抜ける迄
スガの港の薬種問屋 ヨーイヨーイ ドンと打て
三五教の宣伝使 梅公別の神司
オーラの山に立ち向ひ 玄真坊やシーゴーと
名も怖ろしき強賊や 売僧坊主を言向けて
凱歌をあげつつ梓弓 ハルの湖渡らしつ
乗合船の其中で ダリヤの姫の危急をば
救ひ給ひし聖雄ぞ 此神司在す上は
スガの神山雲深く 包みて悪魔の襲ふとも
鬼や大蛇の攻め来とも 如何でか恐れむ惟神
神の光に消え失せむ ヨーイヨーイ ドンと打て
竜宮の底の抜けるまで スガの港の薬種問屋
ヨーイヨーイ ドンと打て ヨリコの姫や花香姫
天より降りし七夕の 栲機姫か千々姫か
天教山に現れませる 咲耶の姫の再来か
面は白く眉細く 髪は烏の濡羽色
一目拝むも気がうとく 眼も霞む艶姿
ヨーイヨーイ ドンと打て 地獄の釜の割れるまで
スガの港の薬種問屋 ヨーイヨーイ ドンと打て
弁天様の御化身が 二人も天降ります限り
此大宮は神徳も 日に夜に月に輝きて
月の御国の闇の空 清く晴れなむ惟神
神の御稜威ぞかしこけれ ヨーイヨーイ ドンと打て
地獄の釜の割れるまで スガの港の薬種問屋
ヨーイヨーイ ドンと打て。
斯くして地鎮祭も済み、次で立柱式、上棟式、完成式など僅六十日の間に大工、左官、手伝人などの精励の結果遷座式を行ふこととなつた。待ちに待たる五月五日、いよいよスガの宮の落成式を挙行することとなり、神谷村の玉清別を斎主となし、主人のイルクは神饌長となり、ヨリコ、花香、ダリヤの三人の姫御子は手長をつとめ、八雲琴、箏、篳篥、太皷の声も賑々しく、無事遷座式を終了した。是よりスガ山の山下なる、神饌田に於て田植式の祭典を行ふ事となつた。祭典の次第を略述すれば、
五月五日早朝祭員一同神の座に着く。土地の農夫等神饌田の畔に列立し、次いで神饌を供し祝詞を奏上し、次に祭員、参詣者一同礼拝し、終つて祭員は撒饌に移る。農夫は神酒を戴き、次に田植の行事に着手す。斎主の玉清別は音頭の発声をなし、謳歌者声を次ぐ。農夫等神饌田に入りて耕の式をなし、道歌を歌ひながら神饌田を東西南北に列を作つて進行し、鍬を揃へて神田を耕し、終つて神饌田の正中に幣を立ておく儀式である。
○音頭
あれみさい スガの山のー横ー雲ー
ホーイ ホーイ ヤーァホイ 横雲下こそ
私等が祖国ー ホーイ ホーイ ヤーァホイ
○
ヤレー見上て見れば オホー(大)カン(寒)鳥
ホーイ ホーイ ヤーァホイ 見おろせば
スガの名所は船着 ホーイ ホーイ ヤーァホイ
○
ヤレー吾夫は 河鹿の浜で網を曳く
ホーイ ホーイ ヤーァホイ かかれかし
九反の網の目毎に ホーイ ホーイ ヤーァホイ
○
ヤレー目出度いものは芋の種 ホーイ ホーイ ヤーァホイ
茎長く葉広く子供数多にー ホーイ ホーイ ヤーァホイ
此様の床の間にかけし掛物 ホーイ ホーイ ヤーァホイ
鴛鴦に千鳥に梅に鶯 ホーイ ホーイ ヤーァホイ
此様の七つの倉の倉開き ホーイ ホーイ ヤーァホイ
白銀や黄金の徳利盃々 ホーイ ホーイ ヤーァホイ
ヤレー十や七つが柳の下で 芹を摘む
ホーイ ホーイ ヤーァホイ 芹はなし柳は撚れてからまーる
ホーイ ホーイ ヤーァホイ 十よ七つが待てならレードの出先で
ホーイ ホーイ ヤーァホイ ヤーマ(山)を見てやれ、それでは早い
早ければー、爺の息が切れ候。
愈々耕済み、水が入ると、此度は早乙女が赤襷十文字に綾どり、美々しき衣服を着飾つて水田に下りる。
○早乙女の歌
代田は富士の山程御座る 日はしんとうと山の端にかかる
○
オーラ(俺)の所の小旦那は うす田をこのむ
うす田千石厚田も千石
○
十よ七つ八つ諸舞なれば 月星出でて蚊のなく迄も
○
私と汝と何処で田を植ゑ初めた 九下八つのよし家のもとで
○
十よ七つ八つ細田の清水 見る人達が手をかけたがる
○
十よ七つの腰は品よい腰よ 品よい腰に鳴子をつけて
○
日暮し烏は汚い鳥よ 上れや終へと笠の上を廻る
○
雷さまは浮気な神よ 太皷の撥を質におき
色町通ひをするさうだ。
スガの港の薬種問屋のアリスの家は俄に一陽来復の春が来た。スガの宮は無事建設を終り、アリスの病は拭ふが如く癒え、行衛不明となつて居たダリヤ姫は、神谷村の玉清別に送られて祭典の二日前に帰つて来た。只恨むらくは、梅公別宣伝使の未だ到着なき事であつた。アリスは日の丸の扇を開き乍ら喜び祝して酒宴の席にて舞ふ。
○謡曲
アリス『世は久方の空高く 天の羽衣ふりはへて
スガの御山の奥深く 天降りましたる木の花姫の
神の姿に似たるかな ヨリコの姫や花香姫
ダリヤの姫の顔は 瑞の霊の帯ばせ給ふ
十束の剣を三段折り 天の安河を中におき
天の真奈井にふりすすぎ ぬなとももゆらに取ゆらし
さがみにかみて吹き打ち給ふ 伊吹きの狭霧になりませる
市岐島姫、多紀理姫 多紀都の姫のあで姿
今眼の当り拝がむ心地 木枯すさぶ冬の夜に
まがふべらなる老の身の 春に遇ひたる心地かな
仰ぎ敬へ天地の 神の功のただならず
月の御国の空高く 輝き渡る日月の
光にまさる如くなり イーイーー
抑々スガの山元は 遠き昔の神代より
皇大神の御舎と 云ひ次ぎ伝へ来りし
珍の御里なれば 北に清けきハルの湖
南に高き大高の峰 東に聳ゆる鐘ケ岳
西に聳ゆる青雲山 山の屏風を立て並べ
天津御神や国津神 集り玉ふ珍宮と
仕へ奉りし嬉しさは 早や天国に住む心地
あな有難や尊やな 勇めよ勇めよ家の子よ
祝へよ祝へよ国人よ 千秋万歳限りなく
国の栄も松翠 果てしも知らぬ白雲の
国の外まで御恵の 露に霑ふ神代かな
露に霑ふ神代かな』
(大正一五・六・三〇 旧五・二一 於天之橋立なかや旅館 加藤明子録)