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文献名1霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻
文献名2第3篇 転化退閉よみ(新仮名遣い)てんかたいへい
文献名3第17章 六樫問答〔1826〕よみ(新仮名遣い)むつかしもんだふ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2019-02-13 15:10:35
あらすじ
スガの宮では、キューバーの後釜として、薬種問屋の門番をしていたアルとエスが、便所掃除をしている。

スガの宮に仕える一同が、食堂に集まって朝食を取っていると、表に高姫がやってきて、宗教問答の挑戦に来たと呼ばわる。

ヨリコ姫は、まずダリヤ、花香が最初に問答を仕掛け、かなわないようであれば最後に自分が出るようにと順番を決める。

高姫は、この世の根本の神の神名を尋ねる。

ダリヤはそれは国常立の神様であると答えるが、高姫に根本の誠の神は大弥勒、と説き負かされてしまう。

次に、花香姫が登場し、高姫は問答を仕掛けて言う。

「根本の昔に、猿が三匹飛んできて、三千世界をかき回し、この世に暗と明かりと雨降りをきたしたのは、どういう訳か」

花香はそれには答えず、高姫が自分の出す問題に答えられたら、回答しよう、と言って問う。

「根本の昔に猿が六匹飛んできて、それぞれ、雪隠、頭、恥じ、借用証文、おかゆ、そこら辺り、をかき回し、ついでにお尻をかき回した。」

高姫は、わけのわからないことを言う女と問答はできないと、ヨリコ姫を出すように騒ぎ出し、花香は奥へ引っ込んでしまう。
主な人物 舞台 口述日1926(大正15)年07月01日(旧05月22日) 口述場所天之橋立なかや別館 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1929(昭和4)年4月3日 愛善世界社版203頁 八幡書店版第12輯 675頁 修補版 校定版209頁 普及版79頁 初版 ページ備考
OBC rm7217
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本文  懺悔生活の偽君子、スコブッツエン宗の教祖と名乗る妖僧キユーバーはダリヤ姫に対する恋衣のすげなくも破れしより、もとより心の汚い便所掃除、糞度胸を据ゑ、捨台詞を残して問答所より屁の如く消え去つた。あとはヨリコ、花香、ダリヤの三人、何程女丈夫でも男の受持つべき掃除は永く続かないとて、薬種問屋の主人イルクに掛合ひ門番のアル、エスを臨時掃除番として、手伝はしむることとなつた。朝も早うから、新参者の掃除番はキユーバー、ダリヤが奮戦苦闘の古戦場、上雪隠の掃除しながら、
アル『オイ、エス、主人の言付だから是非もなく、エースと云つて返事はしたものの、本当に糞忌々しい、バカ臭い目に遇ふぢやないか、エー、これだから人に使はれるのは辛いと云ふのだ』
エス『何程辛いと云つても仕方がないぢやないか、何一つ人に勝れた芸能がアルと云ふでもなし、雪隠の虫のやうに、ババの尻斗り狙つてゐるやうな事で、気の利いた大役も勤まりさうな事がないぢやないか。いつも雪隠と云ふやつは、紛擾の種を蒔く奴だ。昨日もスコブッツエン宗の小便使、キユーバーとかキユーフンとか云ふ糞坊主がダリヤさまに糞糟にこきおろされ、犬の糞のやうに云はれ、終ひの果にや糞然として屁つ放り腰で雲を霞と逃げ散つたりと云ふ為体、その跡釜に据ゑられた俺達アまるつきり雪隠虫だ、然し雪隠虫だつて落胆するにや及ばないよ、少時糞壺の中でウヨウヨしてる間に羽が生え、立派な金襴の衣を着けて、金蠅となり、ヨリコ姫の頭へでも止つて糞小便を放りかけるやうになるのだからのう』
アル『門番も今日はお尻の門番と
  成り下りけり糞忌々し。

 仰ぎ見て穴恐ろしと雪隠虫
  泣くに泣かれぬ糞を被りつ。

 世の中の臭い味ひしりの穴
  やがて羽衣着くる雪隠虫。

 金襴の衣まとへば糞虫も
  人の頭にとまり糞放る』

エス『ヨリコ姫ダリヤとしり(知)合の穴なれば
  肥え(光栄)ならむと糞虫云ふらむ。

 美はしき乙女の尻はよけれども
  糞婆の尻いと臭きかな。

 天香は雪隠空しうせぬと云ふ
  日に三回の飯礼ありせば』

 斯く話してゐる所へヨリコ女帝が盲腸、結腸、直腸辺りの大清潔法を施行すべく、やつて来た。アルはこれを見て、
『あな尊とひしりの君の御降臨
  アルにあられぬ恥を見しかは』

ヨリコ『雪隠と云ふ字は雪に隠るなり
  白妙の衣まとふ糞虫』

エス『白妙の衣をまとひて糞虫は
  黄金の餌朝夕に喰ふ』

ヨリコ『アル、エスの二人の君よ心して
  黄金仏にならぬやうにせよ』

アル『アル望み抱へし吾は糞度胸
  すゑてかかりぬ便所掃除に』

エス『アル望みなどとしり顔するでない
  糞奴めがいばり散らすな』

ヨリコ『アル、エスの二人の君よ今少時
  はばかり玉へ吾帰るまで』

アル『はばかりの掃除はすれどこの男
  はばかり乍ら腕に骨あり』

エス『えらさうにしり顔なしてブツブツと
  口先過ぎてババ垂れるなよ』

 両人はヨリコ姫の用を足す間、便所遠く庭の隅のパインの下にクルツプ砲の難を避けた。
アル『いか程に容姿美はしき女帝さへ
  下から見れば愛想やつきむ』

エス『裏門を開いて出づる兵卒の
  ラツパの声も勇ましきかな』

『バカ云ふなばば垂れ腰を眺めたら
  かたい約束も小便し度くならむ』

『草木もゆる谷の流れをピユーピユーと
  鵯越の進むよしなし。

 谷の戸を開いて出るは鶯の
  声ならずして鵯の声』

『思うたよりヨリコの姫の長雪隠
  心短き俺は堪らぬ』

『こんなことヨリコの姫に聞えたら
  糞腹立てて尻や持て来む。

 何事も皆しりの穴ヨリコ姫
  尻もて来れば猫婆きめる。

 猫婆をきめる積りでキユーバーが
  便所掃除請合しならむ。

 こつぴどくこき卸されて糞腹立て
  糞垂れ腰の糞坊主去ぬ』

 ヨリコ姫は便所から、しとやかに出て来た。アル、エスは先を争うて手洗鉢の前により、柄杓の柄をとり水を無暗矢鱈にかけながら、
アル『弁天の化身のやうな女帝様の
  お手洗ふさへしやくの種なる』

エス『このやうな美人を妻にする男
  面見るさへも小しやくにさはる』

ヨリコ『八尺の二人の男が漸くに
  五勺許りの水を呉れたり。

 雪隠の掃除も神の御恵みよ
  天香さまの出世見給へ』

アル『何程に出世したとて何時迄も
  尻掃除とはバツとしませぬ』

ヨリコ『左様ならアルさまエスさま別れませう
  又明日の朝会ふを楽しみに』

と云ひ乍らヨリコ姫は吾居室に帰つて行く。
    ○
 ヨリコ姫、花香、ダリヤ、アル、エスの聯合家族は食堂に集つて四方山の話に耽り乍ら朝飯を喫してゐると、表の玄関に向つて甲走つた女の声が聞えて来た。
高姫『ハイ、御免なさいませ、一寸物をお尋ね申します。ヨリコさまと云ふ無冠の女帝さまはお宅で御座いますかな、宗教問答のためにウラナイ教の教主、千草の高姫が参りました。別に驚くやうな女ぢや御座いませぬ、第一霊国の身魂、日出神の生宮、下津岩根の大弥勒の化身で御座いますよ』
と呼はつてゐる。
ヨリコ『ホツホヽヽヽ、朝つぱらから、何処の狂人か知らないが、妙な事を云うて来よつたものだ。ダリヤさま、妾の代理となつて少時相手になつてやつて下さいな』
ダリヤ『女帝様の仰せでは御座いますが、狂者を相手にする事は真平御免を蒙り度う御座います』
ヨリ『第一線に貴女出て下さい、もしも戦況危しと見た時は第二線として花香に行つて貰ひます。その第二線が破れました時、殿として此ヨリコが大獅子吼を致しますからね』
アル『もしもし女帝様、あんな狂者にダリヤ姫さまなんか、出すのは勿体ないぢやありませぬか、先陣は私が勤めますから何卒此役目をアルに譲つて下さいませ、タカガ知れた狂者ぢやありませぬか』
ヨリコ『お前さまは決して相手になつちやいけませぬよ、いくつ位の女か一寸様子を調べて来て貰ひさへすれば宜しい』
アル『ハイ、承知致しました、オイ、エス、お前は俺の副将軍だ、ソツト後から従いて来い』
と云ひ乍ら、早くも玄関口に立塞がり、
『イヨー! 何とマア チツト許り年はよつて居るが、ステキなものだなア』
高『これ奴さま、ナーンぢやいな、失礼な、お客さまの前で立はだかつて、挨拶一つ知らない穀潰しだな、僕のやり方を見りや大抵主人の性質が分るものだ。此下駄の脱ぎ方と云ひ、乱離骨灰、まるつきりなつちやゐないぢやないか。ヘン偉相に宗教問答所なんて、まるつきり狂者の沙汰だ』
アル『オイ、高姫とか云ふ中婆さま、人の所の宅へ出て来て、履物の小言まで云うてくれな、俺方の悪口をつくのならまだ虫を堪へておくが、天下無双の才女、ヨリコ姫女帝の悪口まで吐かすに於ては、断じて此玄関は通さない。エー糞忌々しい、婆の来る所ぢやない、屁なつと嗅いで去んでくれ』
高『ホツホヽヽヽ、お前がさう云はいでも、此高姫がヨリコ姫の膏を絞り、蛸を釣り灸をすゑ、鼬の最後屁を放らして往生さしてやるから臭い顔して待て居なさい、ド奴の糞奴め。こんなガラクタ男を使うて、えらさうに構へ込んでゐるとは誠に以て噴飯の至りだ、ホツホヽヽヽ』
アル『エー、とても、こんな気違婆は俺方の挺棒に合はない、サア第一線だ第一線だ』
と云ひ乍ら奥に飛び込み、
アル『もしもし女帝様、竹に鶯、梅に雀と云ふやうな婆が来ましたよ』
ヨリコ『ホツホヽヽヽそれは木違ひ鳥違ひと云ふのだらう、サア之から梅に雀の婆さまに向つて、戦闘開始をやつて下さい』
ダリヤ『ハイ、及ばず乍ら第一線に立ちませう、どうか後援を頼みます』
と云ひ乍ら玄関口に出た。
ダリヤ『玉鉾の道の問答せむものと
  遥々尋ね来りし君はも。

 いざさらば問答席へ通りまし
  及ばずながら案内申さむ』

高『むづかしき歌よみかけて高姫を
  困らさむとす猾さに呆れし。

 兎も角も此家の奥へ踏ん込んで
  狸の化の皮むいて見む』

と云ひ乍ら、ダリヤ姫に従ひ問答席についた。
ダリ『いざさらば寛ぎ給へ椅子の上に
  世の悉はしりの穴の君』

高『賢しげな事を云へども何処やらに
  息のぬけたる汝の顔かも。

 汝こそはヨリコの姫の身代りと
  吾慧眼に見えたり如何にや』

ダリ『妾こそヨリコの姫の妹よ
  ダリヤの花の名を負ひし姫。

 何なりと問答遊ばせ立板に
  水の流るる如く答へむ』

高『美はしき女にも似ず出し抜けに
  大法螺を吹くしりの太さよ。

 いざさらば吾問ふことに答へかし
  今日こそ汝が生死の境ぞ』

ダリ『如何ならむ賢き人の来るとも
  後へはひかぬ弦離れたる征矢』

 高姫いかい目をむいて  ダリヤの姫の面上を
 ハツタと睨み大口を  斜に開き白歯をば
 むき出し乍ら手を振つて  演説口調で語り出す
高『お前はヨリコの妹と  名乗つたからは高姫が
 宣る言霊を一々に  川瀬の水の流る如
 答へて裁くで御座らうな  よしよしそんなら高姫が
 一つの問題出しませう  この世の中を造りたる
 誠の神は何神か  何卒聞かして貰ひませう
 それが分らぬやうな事で  問答所の役員と云へませうか
 サアサア如何に』と詰寄れば  ダリヤはニツコと打笑ひ
ダリ『如何なる難しいお尋ねと  思つてゐたのに何のこと
 この世の御先祖は云はいでも  世界に知れた厳霊
 国常立の神様よ  この神様は泥海を
 造り固めて山川や  草木の神迄生みました
 吾方の誠の親です』と  云へば高姫反かへり
 フフンと笑ふ鼻の先
 『三五教のトチ呆け  大根本の根本の
 誠の神は大弥勒  底津岩根の神様よ
 人間姿の分際で  誠の神は分らうまい
 そんな下らぬ事云うて  沢山の人を欺すより
 早くすつこんで居りなされ  お前ぢや事が分らない
 肝腎要の当の主  ヨリコの姫を呼んでおいで
 余りに相撲が違ふので  阿呆らしくて話になりませぬ』
 云へばダリヤはうつ向いて  顔を真赤に染め乍ら
 すごすご立つて奥に入る  つづいて出て来る美婦人は
 天女に擬ふ花香姫  千草の高姫見るよりも
 いと慇懃に会釈して  静に梅花の口開き
 声しとやかに『妾こそ  ヨリコの姫に仕へたる
 梅の花香と申します  何卒お見知りおかれませ
 いかなる問答か知らねども  即座にお答へ申しませう
 遠慮会釈は要りませぬ  何なとお尋ねなさいませ』
 云へば高姫反りかへり
 高『妾こそ誠の救世主  高天原の霊国の
 第一天人の霊魂ぞや  下津岩根の大弥勒
 三千世界の救世主  日出神と現はれて
 トルマン国のスガの町  天降りたるウラナイの
 教の道の神柱  必ず粗相のないやうに
 謹み敬ひ吾言葉  胸にたたんでトツクリと
 考へなされよ花香さま  サアサアこれから高姫が
 貴女に質問致すぞや  抑々天地の根本の
 大根本の根本の  その又根本の根本の
 まだまだ根本の根本の  昔の昔のさる昔
 ま一つの昔の又昔  ま一つの昔の大昔
 又も昔のその昔  ドツト張込んでその昔
 猿が三匹飛んで来て  三千世界を掻きまはし
 この世に暗と明りと雨降りを  来した訳は如何ですか
 この訳聞かして貰ひませう』  云へば花香は噴き出し
 花『弥勒の弥勒のまだ弥勒  ま一つ弥勒のその弥勒
 日の出の日の出のまだ日の出  も一つ日の出のその日の出
 昔の昔の大昔  猿が六匹飛んで来て
 一つは雪隠を掻きまはす  一つは頭をかきまはす
 一つは恥をかきまはす  一つは借用証文書きまはす
 一つはお粥をかきまはす  一つはそこらをかきまはす
 も一つお尻をかきまはす  此奴の謎がとけたなら
 お前さまの問題に答へませう』  等と分らぬ予防線
 鉄条網を張りまはし  用心堅固に備へしは
 流石はヨリコの妹と  生れし甲斐ぞ見えにける
 高姫拳を固めつつ  力限りに卓を打ち
 高『これやこれや女つちよ痩せ女郎  そんな事云うて高姫を
 煙りに捲かうとはづうづうしい  お前のやうな分らない
 女を相手にやして居れぬ  当の主人のヨリコ姫
 早く此の場へ引出せよ  この高姫の弁舌で
 道場破りをして見せる  あゝ面白い面白い
 いよいよ之から正念場  気の毒なのはお前達
 折角建てた神館  城明け渡しスゴスゴと
 逃げねばならぬ断末魔  いよいよこれが悪神の
 世の持ち終りとなつたのだ  あゝ惟神々々
 ウラナイ教の御神徳  今更感じ入りました』
 花香姫は高姫のあまりの強情に呆れ果て、暗に打ち出す鉄砲玉に持てあましつつ匆々としてヨリコの居室に駆け込んで了つた。
(大正一五・七・一 旧五・二二 於天之橋立文珠なかや別館 北村隆光録)
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