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文献名1霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻
文献名2第2篇 高照神風よみ(新仮名遣い)たかてるしんぷう
文献名3第25章 言霊の滝〔1856〕よみ(新仮名遣い)ことたまのたき
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
紫微天界の高照山は、仏教で言う須弥仙山であり、スメール山または気吹の山とも言う。高地秀山は、またの名を天の高日山といい、高照山に次ぐ高山である。

高照山の高さは三十三万尺、周囲は八千八百里、川の数は五千六百七十条ある。そのうち、もっとも深く広く、当方に向かって流れているのが日向河(ひむかがわ)であり、南に向かっているのが日南河(ひなたがわ)、西に向かっているのが月の河、北に向かうのがスメール河、またの名を高照河という。

一方、高地秀山の高さは三十万尺、東に東河、南に南の大河、西に西の大河、北に高地秀河が流れ、紫微天界の大洋に注いでいる。

高地秀山は、スメール山に比べて岩石が多く、険しい姿をしている。どちらも、常に七色の雲がただよい、神霊の気が山を包んでいるが、あちこちの谷間には邪気が鬱積して邪神が現われ、ついに中津滝の大蛇のような曲神が現われ出でた。

太元顕津男の神は高日の宮にとどまって如衣比女の神を弔い、大御母の神一行は大蛇を言向け和すべく、滝に向かった。

顕津男の神はまた、大御前に端座して、一行の無事と成功を祈った。

大御母の神一行は滝に着くと、滝壺の周囲に整列し、それぞれが言霊を宣りはじめた。

大物主の神の言霊により、大蛇はその苦しそうな姿を水底より現した。眼知男の神が万の神たちの力を得て言霊歌を宣ると、大蛇は滝壺を紅に染め、のたうちまわっている。

明晴の神の言霊に、大蛇は腹を翻して浮き上がり、黒い毒気を吐いた。あたりはたちまち暗夜のように暗くなってしまった。

近見男の神が邪気を払うため、言霊歌を歌い、科戸比古神に祈願すると、科戸の風が吹き荒れ、黒い毒気は跡形もなく散り失せてしまった。

大蛇は血潮にそまりつつ、滝壺の底に再び潜んでしまった。

真澄の神は、言向けの言霊歌を歌った。真澄の神は、言霊をやわめ、我が言を悟って帰順すれば命を助けよう、と歌った。

すると、大蛇は優しい姿になって水面に浮かび上がり、両眼に涙を流し何度も頭を下げ、たちまち高照山のいただきに向かって、天高く逃げていった。

神々たちは、真澄の神の言霊の愛善の徳に感じ、おのおのに真澄の神を称える歌を歌った。

中津滝の大蛇は、諸神の言霊に打たれて、よみがえりつつ天高く立ち去っていったのである。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年10月16日(旧08月27日) 口述場所水明閣 筆録者谷前清子 校正日 校正場所 初版発行日1933(昭和8)年11月22日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 99頁 修補版 校定版252頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  抑々紫微天界の高照山は、仏書に所謂須弥仙山にして、スメール山と言ひ又、気吹の山とも言ふ。次に高地秀山は、又の御名を天の高日山と称へ、高照山に次ぐの高山なり。
 高照山は高さ、今日の測量法によれば、三十三万尺にして、其周囲は八千八百里にあまり、大峡小峡の四方に流るる数は、五千六百七十条あり。その中最も深く広く数多の谷水を合して東方に向つて流るるを日向河と言ひ、南に向つて流るるを日南河と言ひ、西に向つて流るるを月の河と言ひ、北に向つて流るるをスメール河、一名高照河と言ふ。
 又高地秀山の高さも之に準じて三十万尺、東には東河流れ、南には南の大河流れ、西には西の大河、北には高地秀河流れて、紫微天界の大洋に注ぐ。而して高地秀山も谷の数、高照山に比して大差なかりける。
 ただ高地秀山は、スメール山に比して岩石多く、山姿峻しく、屹然たるの差違あるが如し。両山共常に七色の雲ただよひ、神霊の気山を包みて霊気を四方に放てども、あちこちの谷間には邪気鬱結して邪神現れ、遂には中津滝の大蛇の如き曲神現れ出でたるなり。
 ここに高日の宮の神司等は、如衣比女の霊を厚く慰め終りて、中津滝の大蛇を言向けやはすべく、大御母の神、大物主の神、明晴の神、眼知男の神、真澄の神等その他、百の神々を伴ひて、岩石起伏の谷の難路を辿りつつ、厳の言霊宣り上げて、谷間の邪気を祓ひ乍ら、勇み進んで中津滝のふもとに着き給ひぬ。
 太元顕津男の神は、如衣比女の霊を弔ふべく、高日の宮に在しまして、大御母の神の一行の無事を祈り、大蛇の神を言向けやはすべく、大御前に端坐して、瑞の言霊宣り給ひつつありき。
 その言霊の御歌に、

『三ツ栗の中津滝根に出でましし
  神の神言につつがあらすな

 天界を曇らせ濁せし禍ひを
  起す曲神を放らせたまへ

 如衣比女犠牲となりし中津滝の
  大蛇を言向けやはしませ神よ

 主の神の功績なくば如何にして
  この曲神のまつろふべきやは

 高照の峰より落つる滝津瀬に
  住む曲神は厳しき神はも

 曲神はいかに厳しく強く共
  生言霊の力におよばむ

 比女神は大蛇の曲神恨みつつ
  天の高宮ゆ助けますらむ』

と謡ひ終り、神の御前にひれ伏して、一行の成功を祈り給ふ。
 ここに大御母の神等一行は、中津滝の滝壺の周囲に整列して、おのもおのもに生言霊を宣り給ふ。

大御母の神『澄みきらひ澄みきらひたる滝壺に
  かくるる曲神とく出でませよ

 吾こそはアの御霊より現れし
  大御母神言霊宣らむ

 久方の高日の宮の神柱
  底の曲神を吾はきためむ

 言霊の厳の力をおそれなば
  大蛇の神よ早やにまつろへ

 万丈の滝は空より落たぎち
  大蛇の頭打ちたたけかし

 かく迄に宣る言霊を知らずがに
  水底に潜むあはれ大蛇よ』

 大御母の神の水火を込めての言霊も何の功なく、依然として滝壺は青き波をたたへ、滔々と落つる滝の音のみ四辺の森林を震はせにけり。
 ここに大物主の神は、儼然として言霊歌を宣り給ふ。

『大御母神の神言の言霊も
  聞かず顔なる醜の大蛇よ

 主の神の与へ給ひし言霊を
  醜神汝に吾はたむけむ

 潔ぎよくまつろひ来れ水底に
  長くひそめる大蛇の神よ

 なるべくは厳の言霊宣り上げて
  汝助けむと思ひつつ来し

 吾こそは大物主の神司
  高照山も滝も吾もの

 この滝は主の大神の神言もて
  吾に賜ひし言霊の滝よ

 常磐木の松は茂りて天を閉ぢ
  昼なほ暗く大蛇しのぶか

 主の神の生言霊に八千尋の
  水底までも照し明かさむ』

 斯く謡ひ給ふ折もあれ、八千尋の底より、まばゆき許りの光現れ来り、大蛇は水面に浮び上り、右に左にのた打ち廻りつつ、又もや水底に潜り入りぬ。
 ここに眼知男の神は、万の神等の力を得て、言霊歌を宣る。

『高照の山にひそめる曲神を
  言向けやはすと立ち向ひたり

 かくならばせむ術なけむ大蛇神
  生言霊にまつろひ奉れよ

 比女神を吾が目の前にて害ひし
  むくいよ大蛇今に亡びむ

 亡ぼさず生言霊に救はむと
  百神達は現れましにける

 この御山顕津男の神知食す
  清所なりせば早く去れかし

 いつまでもこの水底に潜むならば
  吾は許さじ斬りてはふらむ

 澄みきらふこの神国を畏れなく
  荒ぶる神のおろかさあはれ』

 斯く謡ふ折しも、千尋の滝壺を紅に染め乍ら、又もや大蛇は水面に体を現し、前後左右にのた打ち廻り遂に水底深く沈みける。ここに明晴の神は謡ひ給ふ。

『久方の天の高照山に棲む
  大蛇の神よ斬りてはふらな

 玉の緒の生命惜しけく思ひなば
  生言霊にまつろひ奉れ

 吾は今神国の禍ひのぞかむと
  百神伴ひ上り来しはや

 水底に大蛇は深くひそむ共
  言霊の征矢さくる由なけむ

 御功績も高日の宮の比女神を
  呑み喰ひたる大蛇悪らしも

 汝も亦神より出し身魂なれば
  ただに放るは惜ししと思ふ

 なるべくは吾言霊を諾ひて
  よきに従ひまつろへよかし

 八千尋の淵の底まで明晴の
  神の功績を汝は知らずや

 よしやよし千尋の底にひそむ共
  生言霊にやらはで置くべき

 百神は今ここにあり如何にして
  大蛇よ刃向ふ力あるべき』

 この言霊に水底の大蛇は、紅の腹をひるがへし乍ら浮き上り、巨口を開いて黒き毒気を吐く事数百丈、忽ち四辺は暗夜の如く、咫尺を弁ぜざるに至れり。
 ここに近見男の神は、この邪気を祓はむとして、言霊歌をよみ給ふ。

『烏羽玉の黒き水火はく曲神は
  今を最後と荒れくるひつつ

 近見男の神ここに在り汝大蛇
  心なごめてまつろひ来れ

 曲神の水火は真黒に包めども
  ふきて放らむわが言霊に

 科戸比古神よ忽ち現れて
  谷間を包む邪気祓へかし』

 斯く謡ひ給ふや、全山の百樹の梢をゆるがせて、科戸の風は、岩も飛べよと吹き荒れつつ、大蛇の吐ける真黒き毒気は、跡かたもなく散りうせて、万丈の滝は白くかかり、滝壺は大蛇の血潮に染みて真赤く見えぬ。又もや大蛇は水底にしのびたりと見え、ブクブクと水泡を水面に吹き上ぐるのみ。
 ここに真澄の神は、威儀を正して、天を拝し地に伏して、言霊歌を詠ませ給ふ。

『科戸辺の神の伊吹きに退はれて
  黒雲忽ち吹き散りにけり

 言霊の稜威貴し近見男の
  厳言霊に風出でにける

 高照の山の百樹をそよがせて
  科戸の神は生れましにけり

 神国に禍なす滝の大蛇さへ
  得たまりかねて隠ろひにけり

 いざさらば真澄の神は主の神の
  御水火に厳の言霊宣らむ

 八千尋の滝壺深くしのぶなる
  大蛇よ厳の言霊知らずや

 言霊の厳の剣をぬきかざし
  まつろふ迄を攻めなやまさむ

 吾こそは天の真澄の神言ぞや
  汝の力はつきむとすらむ

 斬りはふる生言霊をやはめつつ
  言向けやはすと真心の吾よ

 水底の大蛇よ吾宣る言霊を
  つぶさに悟れ命を助けむ』

 斯く謡ひ給へば、大蛇は以前にかはる優しき姿を水面に浮べ乍ら、両眼に涙を流し幾度も頭を下げ、忽ち滝水を口にふくみ伊吹の狭霧を吹き起し吹き起し、雲を湧かせ、雨を降らせ乍ら、高照山の頂高く、天に向かつて逃げ行きぬ。
 ここに大御母の神は真澄の神の言霊の威力を感じ給ひて、御歌よまし給ふ。

『畏しや真澄の神の言霊に
  醜の大蛇は蘇りたり

 愛善の光ただよふ天国に
  救はれぬものはあらざりにけり

 比女神をなやまし奉りし大蛇さへ
  主の言霊に救はれにけり

 愛善の心照して吾も亦
  万の神に交はらむかな』

 真澄の神は謡ひ給ふ。

『天も地も真澄にすめる神国に
  ひとり輝く愛善の力よ

 村肝の心汚き大蛇神も
  主の大神の御子なりにけり

 主の神の御水火のくもり固まりて
  現れ出でにけむこれの大蛇は

 主の神の霊に生りしと思ふ故に
  吾は大蛇を助け逃しつ』

 大物主の神は、真澄の神の清き心に感じ給ひて、謡ひ給ふ。

『天も地も真澄の神の優しかる
  こころに感じて蘇りつつ

 魂も真澄の神の真心に
  吾恥かしくなりにけらしな

 愛善の力の強く輝かば
  醜の曲神もなびき伏すなり』

 明晴の神は謡ひ給ふ。

『高照の御山の邪気も明晴の
  今日より清く月日照るらむ

 今日よりは高照山は安らかに
  神業仕へむ百の神たち』

 かくして中津滝の大蛇は、百神の生言霊にうたれ、蘇りつつ天高く立ち去りにける。
(昭和八・一〇・一六 旧八・二七 於水明閣 谷前清子謹録)
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