河守比女の館は、四方に青芝垣をめぐらし、常磐木の松が枝を伸ばし、楠の木は天をつくようにそそり立ち、清清しさに満ち溢れていた。
一行は館のすばらしさを称える歌を詠った。
顕津男一行は館の別殿に休息することとなった。
すると、河守比女は顕津男の神の正面に座り、笑みをたたえながら、実はこの館は自分のものではなく、八十比女の一人、世司比女のものであることを明かす。
顕津男の神はこのようなところに八十比女の一人がひそんでいたことに驚く。次の間より、世司比女は顕津男の神に相聞の歌を送り、姿を現した。
河守比女は場を退いた。あとに顕津男の神と世司比女の神は言霊による神生みを行うと、世司比女はたちまち御子神をはらんだ。
顕津男の神は、御子神誕生まで館に留められ、その間国津神々を招いて、教えを講じた。
顕津男の神に付き従う五柱の神々は、神業がつつがなく進んでいる喜びを歌に詠った。