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文献名1霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻
文献名2第3篇 東雲神国よみ(新仮名遣い)しののめしんこく
文献名3第34章 国魂の発生〔1865〕よみ(新仮名遣い)くにたまのはっせい
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
顕津男の神は、世司比女との別れのときが迫り、比女やこれから生まれてくる御子の無事を祈って朝夕に禊をしていた。

世司比女は、せめて御子の誕生までとどまるよう、顕津男の神に歌いかけるが、顕津男の神はただ二人の安全を祈る歌を返すのみだった。

すると、世司比女は突然産気づき、姫御子を生んだ。顕津男の神をはじめ、王泉郷の神々は喜び、祝歌を歌った。

顕津男の神は、御子に日向(ひむか)の姫と名づけた。

顕津男の神は、大物主の神に王泉郷の一切をまかせ、世司比女に別れを告げて、ふたたび神生みの旅に出た。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年10月18日(旧08月29日) 口述場所水明閣 筆録者谷前清子 校正日 校正場所 初版発行日1933(昭和8)年11月22日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 137頁 修補版 校定版388頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  太元顕津男の神は  五柱の神従へて
 日向の早瀬を打渡り  玉泉郷に出でまして
 八十比女神のその中に  すぐれて賢しき細女の
 世司比女に廻りあひ  右り左の神業に
 水火と水火とは固まりて  月の雫は比女神の
 体内深く止まりぬ  之より比女は日に月に
 御身重らせ給ひつつ  御子の生れます吉き日をば
 喜び待たす許りなり  御供に侍りし五柱
 中に大物主を置き  他四柱の神々は
 西や東や北南  四方の国原拓かむと
 顕津男の神神言もて  貴の館を立ち給ひ
 俄に淋しくなりませり  東の空は東雲めて
 紫雲棚引く貴の国  東雲国の真秀良場に
 世司比女の御館  美々しく清しく建ち給ふ。
 ここに太元顕津男の神は、月満ちて比女神と別るる時となりぬれば、庭の最中の真清水に、朝夕に禊しつ、御子に恙もあらせじと、祈り給ふぞ畏けれ。
 比女神の御腹は、日を重ねつつ、追々益々に太らせ給ひ、呼吸も苦しげに比古遅の神の御前に恭しく坐して、御歌詠ませ給ふ。

『一度の契ながらも吾御腹
  月を重ねて太くなりぬる

 御腹の子恙あらせじと朝夕に
  吾は祈るも誠をこめて

 この御腹安く開けて御子生れ
  生立ち坐すまで岐美離りますな

 大神業いかに尊くおはす共
  御子生みの業は軽からず思ふ』

 顕津男の神は謡ひ給ふ。

『主の神の依さしの神業成り成りて
  御子生れますと聞くぞ嬉しき

 主の神の我に賜ひし御樋代よ
  汝の功績はあらはれにけり

 御子すでに宿らすと聞けば愛恋の
  公と寝ねなむすべもなきかな

 主の神の御子の宿らすこの館は
  高天原の清所なりけり

 朝夕を心安けく在しませよ
  御腹の御子を守らひにつつ』

 世司比女の神は謡ひ給ふ。

『朝宵に心の御綱引きしめて
  苦しけれ共御子を守らむ』

 斯く謡はせ給ふ折しも、俄かに御腹痛み給へば、比古遅の神は驚かせ給ひて、

『大物主神はいづくぞ河守比女
  神はいづらぞ疾く来りませ』

と朗に詠ませ給ふ御歌に、大物主の神、河守比女の神は、いそいそとここに現れ来り、大物主の神は、

『天晴々々御子の生れます時は来ぬ
  月日の神よ守らせたまへ

 安らけく生まし給はむ比女の神
  神の依さしの御子にありせば

 東雲の国は今日より神柱
  生れ出でましていや栄ゆべし』

 河守比女の神は欣然として、

『吾待ちし御子の生れます時は来ぬ
  天地の神守りましませ

 世司比女神よ静かにおはしませ
  御子安らかに生れますはも』

世司比女『御子を生む業に仕へし其日より
  いとも苦しき今日なりにけり』

河守比女『主の神の御水火のかかりし御子なれば
  安らに平らに御子生ませ給はむ』

 斯く謡ひ給ふ折もあれ、ウアの声をあげて玉の如き姫御子生れましぬ。女男二神を初め、大物主、河守比女二神は、歓ぎ喜び産湯等を取りて、御子の体を洗ひ清め、正座に据ゑ置きて謡ひ給ふ。

『久方の空は雲なく晴れにつつ
  地も光りて御子生れましぬ

 東雲の空晴れ渡り玉の御子
  国魂神は生れましにける

 この御子や生れます上は東雲の
  国は安けく栄えますらむ』

 顕津男の神は歓びの余り、天を拝し地に伏して合掌し乍ら、

『久方の天の岩戸は開けたり
  世司比女の貴の力に

 今日よりは月日も清く星清く
  これの国原照りまさるらむ

 主の神の稜威の恵のいや広に
  今日のよろこび齎らし給へり』

 河守比女の神は謡ひ給ふ。

『東雲の国原明くなりにけり
  瑞の御霊の御子生れませば

 この館に比女の神言をかばひてし
  久しき吾はむくいられける』

 ここに生れませる玉の御子を、大物主は抱き上げ祝し給ふ。

『足引の山も大野も言霊の
  水火を合せて寿ぎまつらむ

 天地の一度に開くる思ひかな
  神の依さしの御子の出でまし

 大物主神は今日より御子の為
  あかき心を永久にささげむ』

 太元顕津男の神は、今日の生日に生れませる御子に、日向の姫と申す御名を授け給ふ。

『この御子は日向の河の真清水の
  霊なりせば日向姫とふ

 日向姫神の恵に生ひ立ちて
  これの神国を領有ぎませよ

 我御子と思へど正しく主の神の
  御子にしありせば敬ひ奉るも

 世司の比女神よ御子の生れましし
  今日より日向姫に仕へよ』

 世司比女は御歌詠まし給ふ。

『畏しや比古遅の神の大神宣
  うなじにうけて守り奉らむ

 主の神の御水火に成出し御子なれば
  吾はいつかむ朝な夕なを

 この御子や生ひ立ちまして東雲の
  司にならすと思へば尊き』

 大物主の神は祝ぎ歌宣り給ふ。

『日向姫貴の館に生れましぬ
  早や東雲の国は明けたり

 東雲の空に昇らす日の神の
  光に等し御子の姿は

 日向姫神の御名こそ畏けれ
  東雲の国に生れましぬれば

 日向河流るる清水真清水は
  御子の生ひ立ちひたしこそすれ』

 ここに日向姫の命は、大物主の神、河守比女の神の日々の養育と、世司比女の慈愛こもれる真心の乳房に、すくすくと伸び立ち給ひたれば、顕津男の神は、神業の成りしを喜び給ひて又もや御子生み、神生みの神業に仕へ奉るべく、一切の事を大物主の神に托し置き妻神に暇を告げて、遠く遠く神生みの旅に立たす事とはなりぬ。
(昭和八・一〇・一八 旧八・二九 於水明閣 谷前清子謹録)
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