一行は、玉野の森の白砂の上を馬に乗って、ようやく玉野比女の館のある丘に着いた。
玉野丘と言われる平坦な高台の聖地である。
顕津男の神が丘のふもとから見上げると、丘の上には紅・白・紫・黄・青の五色の幔幕が張りまわされており、尊い神がご降臨されている様子であった。
顕津男の神は、なるほど、それで玉野比女が出迎えに来られなかったのか、と歌を歌う。後から来た生代比女は、どうやら主の神がご降臨されているらしい、と顕津男の神に歌いかける。後から来た神々は、丘の厳かな様子にいっせいに馬を下りた。
従者神たちが述懐歌を歌っていると、玉野比女が大麻を手に悠然として現れた。玉野比女は、顕津男の神を待ちかねて老いてしまったこと、今まさに主の神がご降臨されて、顕津男の神をお待ちになっていることを告げる。
玉野比女と生代比女は対面する。玉野比女は、生代比女が自分の代わりに御子を身ごもったのは、神の神言によってであったと述懐し、ともに神国を作ろうと呼びかける。
玉野比女に仕える本津真言の神・待合比古の神は、瑞の御霊来着の喜びを歌う。
一方、顕津男の神の従者神たちは、主の神のご降臨をかしこみ、丘のふもとで神言を奏上していた。一行は、大神のご降臨とは知らずに馬で聖地を汚してしまったことを悔い、いったん森の入り口まで戻った。そして清水に身を清めてから徒歩で戻ってくると、もうあくる日の夕方になっていた。