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文献名1霊界物語 第74巻 天祥地瑞 丑の巻
文献名2第3篇 玉藻霊山よみ(新仮名遣い)たまもれいざん
文献名3第22章 天地は曇る〔1890〕よみ(新仮名遣い)てんちはくもる
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ生代比女は、顕津男の神と共に導かれていたが、なんとなく玉野比女が自分を快く思っていないのではないか、との念から、松の木陰に身を潜めていた。そして、自分のしたことのおろかさを悔い、大神にお詫びの歌を歌っていた。瑞の御霊を悩ませつづけ、ついには玉野比女の神業であった神生みを奪ってしまった自分の罪に涙していた。すると、白砂の庭を、大幣を打ち振りながら一人の神人が近づいてきた。そして大幣を打ち振りながら、自分は力充男の神であり、何事も神の心として勇んで来るように、と生代比女に声をかけた。力充男の神は、自分は力を添え充ちさせる神、と歌い、罪穢れのある身であれば、そもそもこの聖所には登って来れないのだから、と生代比女を励ます。力充男の神の歌に心の晴れた生代比女は、先に顕津男の神が禊をした清泉に導かる。生代比女は清泉を前に喜びの歌を歌い、天津祝詞を奏上した。すると、待合比古の神がやってきて、主の大神が待っているので、早く来るように、と生代比女を迎えに来る。生代比女は、自分を主の神が待っていることを知り、喜びによみがえったような心地のありがたさを歌った。生代比女は、待合比古の神に導かれ、力充男の神に守られて、白砂を踏みながら大宮居に静静と進んで行った。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年10月29日(旧09月11日) 口述場所水明閣 筆録者森良仁 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年1月5日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 259頁 修補版 校定版372頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7422
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本文  茲に生代比女の神は、顕津男の神と共に導かれ給ひけるが、玉野比女の神の御顔どことなく美しからぬ心地しければ、松の樹蔭に身を潜めて、その身の愚さを悔い、さめざめと泣き給ひつつ、ひそかに主の大神に詫言を宣り給ひつつ歌はせ給ふ。その御歌。

『あさましき吾にもあるか聖所に
  登りて魂は戦き慄ふも

 主の神の大御心に叶はぬか
  わが魂線はうち慄ふなり

 玉野比女神の心の悲しさを
  吾は思ひて堪へやらぬかも

 瑞御霊神の心を悩ませし
  吾は怪しき女神なりしよ

 恋すてふ怪しき雲に包まれて
  吾は神業を妨げにけむ

 斯くなれば天地にわが身の置場なし
  ゆるさせ給へ主の大御神

 真鶴の神山恋しくなりにけり
  煙となりて消えたき思ひに

 玉野比女神の神言の神業を
  犯せし吾は邪神なりしか

 如何にしてこの罪穢払はむと
  思へど詮なし御子は孕みぬ

 瑞御霊一目もかけず吾を後に
  御前に進ませ給ふ畏さ

 村肝の心の神に責められて
  吾恥づかしく死なまく思ふも

 聖所を汚さむことの恐しさ
  吾行く道は閉されにけり

 万代の末の末まで恋せじと
  吾は悟りぬ聖所に来て

 胸の火の燃え立つままに天地の
  道ふみ外し罪の身となりぬ

 おほらかに生むべき御子にあらずやと
  思へば悲し重きこの身は

 御手にさへ触れず孕みしこのからだ
  わが魂線の怪しさを思ふ

 一度の手枕も無く情なや
  想像妊娠の今日の苦しさ

 わが歎き凝固りて雲となり
  御空の月日覆ひ隠さむ

 主の神の御前に白す言霊の
  なき吾こそは悲しかりける

 天渡る陽光も月の顔も
  吾恐しく拝むよしなし

 つらつらに思へば罪の恐しさ
  わが玉の緒は切れむとするも

 玉の緒の生命はよしやまかるとも
  岐美思ふ心の如何で失すべき

 果しなきわが思ひかも天地に
  只一柱の岐美を恋ひつつ

 わが恋ふる岐美はすげなく玉野比女に
  御手を曳かれて奥に入らせる

 善悪の乱れ混交る天界に
  わが縺れ髪解くよしもなし

 玉野丘の聖所に吾は導かれ
  斯かる歎きに逢ふぞ悲しき

 瑞御霊玉野の比女と出でませる
  後姿を吾は見送りて泣く

 神の影側になければ吾一人
  憚ることなく泣き飽かむかも

 常磐樹の松は繁れど白梅は
  匂へど吾は悲しく淋し

 いと清き白砂の丘に只一人
  世をはかなみて吾は泣くなり

 如何にして今日の艱みを払はむと
  思へばなほも悲しくなりぬ

 主の神の依さしに反き瑞御霊の
  心汚せし吾を悔ゆるも

 あだ花となりしわが身の恋心
  斯かる歎きの御子を孕みて

 思ひきやこの聖所に導かれ
  松の樹蔭に潜み泣かむとは』

 斯く歌ひ給ふ折しもあれ、大幣を左右左に打振りながら、ザクリザクリと庭の白砂を踏みくだきつつ近寄り給ふ神人あり。生代比女の神の忍ばせる松の樹蔭に悠々近寄り給ひ、大幣を左右左に又もや打振りながら、

『常磐樹の松の樹蔭にしのびます
  生代比女神勇み給はれ

 吾こそは力充男の神なれば
  公迎へむと急ぎ来つるも

 何事も神の心と思召せ
  歎き止めて勇ませ給へよ

 如何ならむ艱みおはすか知らねども
  この聖所は喜びの国土よ

 悲しみも艱みも知らぬこの丘に
  勇ませ給へ生代比女の神』

 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『有難し貴き公の言の葉に
  吾は悲しさ弥まさりける

 主の神の天降らすこれの清丘に
  汚れある身の恐しさに泣く』

 力充男の神は御歌詠ませ給ふ。

『何事のおはしますかは知らねども
  力を添へむ充男の神吾は

 天渡る月も流転の影ぞかし
  歎き給ひそ惟神なれば

 罪穢ある身は如何に急るとも
  この聖所にのぼり得べきや

 聖所にのぼらす力おはす公は
  罪穢なぞ塵ほどもなし

 いざさらば心の駒を立て直し
  玉の泉に禊給はれ

 主の神の御心によりて吾は今
  公迎へむと急ぎ来しはや』

 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『有難し力充男の神の宣
  わが魂線はよみがへりたり

 死なましとひたに思ひしわが心
  公の神言によみがへりぬる

 愛善の天津神国に生れ合ひて
  歎きに沈みし愚さを思ふ

 わが心ひがみたりけむ玉野比女の
  御顔を畏れちぢみつ』

 力充男の神はまた詠ませ給ふ。

『安らかに心広けく勇ましく
  雄々しく優しくおはしませ比女よ

 愛善の天界なれば恋すてふ
  心をどらむ惟神にて

 天界のこの真秀良場に出でまして
  何を歎かむ月冴ゆる庭に

 いざさらば玉の泉に案内せむ
  進ませ給へ生代比女の神よ』

 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『薨らむと思ひし事も真言ある
  公の心によみがへりける

 いざさらば公の真言に従ひて
  玉の泉に禊せむかも

 真鶴は御空に舞へり白梅は
  樹の間に匂へり何を歎かむ

 見の限りすべてのものは勇むなるを
  何に迷ひて吾歎きけむ

 主の神の天降りませる聖所を
  吾涙もて汚せし悔しさ

 村肝の心一つの持ちやうに
  明るくもなり曇らふ神代かな

 情ある公の言葉にわが魂の
  力は充ちて雄々しくなりぬ』

 力充男の神は前に立たせながら、御歌詠ませ給ふ。

『樹下闇時雨に晴れて天津日の
  光は清しく輝きにけり

 村時雨晴れたる後の月光は
  一入明るく冴え渡るなり

 高ゆくや月も流転の影ぞかし
  何を歎かむこの天界に

 果しなき思ひの雲霧晴れ渡り
  瑞の御霊の月かげを見む』

 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『一夜の契りも知らぬ生代比女の
  神の歎きのあさましきかな

 真鶴の国原遥けく閉したる
  雲霧晴れて清しき吾はも

 主の神の愛善の御水火に包まれて
  ひがみ歎きしことを悔ゆるも

 斯くならば雲霧もなしわが魂は
  月日の如く冴え渡りつつ

 大幣にわが魂線を清められ
  よみがへりたる嬉しさに居り』

 力充男の神は、大幣を打ち振り打ち振り老松の蔭に展開せる、玉泉の汀に導き給ひつつ、御歌詠ませ給ふ。

『主の神の清き心のしたたりに
  あらはれ出でし玉の清水よ

 玉野比女朝夕に禊ませる
  この玉泉の底ひ知れずも

 瑞御霊七度の禊終へ給ひ
  大宮深く進ませ給ひぬ

 吾も亦朝夕をこの水に
  洗ひ清めて魂を生かせり

 真清水は澄みに澄みつつ掬ぶ手に
  梅の香ただよふ香ゆかしき

 いざさらば天津祝詞を奏上し
  禊がせ給へこれの泉に』

 生代比女の神は喜びに堪へず、御歌詠ませ給ふ。
『高天原に生れませる
 清けき清水真清水に
 朝な夕なを浮びます
 月の鏡の弥清く
 弥さやさやに照りはえて
 紫微天界の神国に
 恵の露を降らせまし
 百の草木をはごくみて
 永久に生かせる真清水清水
 斯かる聖所に導かれ
 わが魂線を洗へよと
 宣らせ給ひし有難さ
 この真清水や主の神の
 潔き清しき御心の鏡かも
 この真寸鏡真寸鏡
 玉の真清水うまし水
 清しき水よ玉の緒の
 生命保たす生き水よ
 生ける御神の霊線の
 恵の露のしたたりか
 この玉泉拝めば
 わがからたまも霑ひて
 若々しくもなりにける
 生命の清水真清水よ』
と御歌うたひ終りて、天津祝詞を声朗かに奏上し給ひし折もあれ、急ぎ此処に現れ給ひしは、さきに瑞の御霊に仕へたる、待合比古の神におはしける。
 待合比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『生代比女神の姿のおはさぬに
  吾心づき迎へ来つるも

 神生みの神業仕へし公なれば
  早く御供に加はりまさね

 いざさらば吾導かむ急がせよ
  主の大神も待たせ給へば』

 生代比女の神は意外の喜びに、よみがへりたる心地して、御歌詠ませ給ふ。

『有難し忝なしと申すより
  答の言葉わがなかりける

 いざさらば御前に仕へ奉るべし
  清き心に月日浮べて』

 茲に生代比女の神は、待合比古の神に導かれ、力充男の神に守られて、大宮居に進むべく広庭の白砂を踏みなづみつつ静々と進ませ給ふ。
(昭和八・一〇・二九 旧九・一一 於水明閣 森良仁謹録)
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