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文献名1霊界物語 第75巻 天祥地瑞 寅の巻
文献名2第4篇 千山万水よみ(新仮名遣い)せんざんばんすい
文献名3第18章 神の道行〔1912〕よみ(新仮名遣い)かみのみちゆき
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
一行は馬上にて歌を歌いながら進んでいく。

先頭の宇礼志穂の神は、真鶴国固成の功績を歌い、今は天地に黒雲かかると聞く西方の国を開くために、万里の駒にまたがり、千里の荒野原を行く、と歌う。また、先遣隊として行った美波志比古の神によって道が踏み固められていることにも言及する。

顕津男の神はしばらく駒を止めて、玉藻山を仰ぎつつ、来し方を顧みる述懐の歌を歌い、これまでの出来事と比女神たちを偲んだ。

四柱の従者神たちはそれぞれ、述懐の歌を歌って続いた。また一同、西方の国に立つ曲神の雲を払わんと、抱負を歌った。

すると顕津男の神は、一人真っ先に進みながら、歌を歌った。従者神たちに頼る自分の心を厳しく自戒し、神業をなすのは他ならぬ自分独りであり、濁った多くの言霊よりも、一つの良き言霊で曲津神を言向け和す、という決意を新たにした。

従者神たちは、自らおごった心がなかったか畏れかしこみ、顕津男の神の言霊の威力への信頼を新たにする述懐の歌を歌った。

顕津男の神を先頭に、一行は大野原を進んで行く。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年11月29日(旧10月12日) 口述場所水明閣 筆録者森良仁 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年2月3日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 381頁 修補版 校定版341頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7518
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本文  宇礼志穂の神は馬上豊に、顕津男の神の御前に立ちて進ませながら、御歌詠ませ給ふ。
『紫微天界の中にして
 𪫧怜に委曲に固まりし
 真鶴国の尊さよ
 顕津男の神出でまして
 未だ地稚き国原を
 生言霊の幸ひに
 造らせ固めなし給ひ
 国魂神と定まりし
 千代鶴姫の命まで
 生み落しまし漸々に
 玉藻の山を立ち出でて
 黒雲ふさがる常闇の
 西方の国土生まさむと
 出でます今の旅立を
 送る吾こそ楽しけれ
 天地に黒雲ふさがりて
 行方もわかぬ西方の
 国土に曲神五月蠅なし
 万の災日に月に
 起ると聞けば主の神は
 瑞の御霊を遣はして
 堅磐常磐の天津国を
 開かせ給ふぞ尊けれ
 道の隈手も恙なく
 万里の駒に跨りて
 胡砂吹く風をあびながら
 縹渺千里の荒野原
 右左に鳴く虫の
 音もさやさやに草の根に
 響き渡りて肝向ふ
 心は勇み駒勇み
 出で立つ今日ぞ楽しけれ
 嗚呼惟神々々
 美波志比古神は今何処
 岐美のみゆきを守らむと
 先に立たせる功績は
 今目の前見えにつつ
 岐美がみゆきの道芝は
 弥固まりて駿馬の
 蹄を運ぶあらがねの
 地を進むも安けかり
 嗚呼惟神々々
 恩頼の幸ひて
 今日の御空に雲もなく
 吹き来る風もなごやかに
 吾等が面をなでて行く
 げに天国の旅立と
 思へば楽し吾は今
 日南の河の河岸に
 岐美を送りて進むなり
 岐美を送りて進むなり』
 顕津男の神は暫し駒を止めて、来し方を顧み給ひつつ、遠く霞める玉藻山を仰ぎて、御歌詠ませ給ふ。

『振返り眺むる空に玉藻山は
  紫雲の衣着けてかすめり

 紫の雲のとばりを引き廻し
  玉野の比女は宮仕へまさむ

 真鶴の山遠みつつ見えねども
  生代の比女は安くいまさむ

 わが道の隈手も恙なかりけり
  主の大神の守らす恵に

 仰ぎ見れば行手遥けし西方の
  国土の御空に黒雲立つも

 日々並べて神生みの神業に仕へ行く
  我はせはしき御霊なるかも

 醜神の醜の災免れつつ
  我は今日まで進み来しはや

 今となりて高日の宮に仕へます
  八柱神の偲ばれにける

 東南の空を眺めて八柱の
  比女神われを偲ぶなるらむ

 一日だも御霊安むるいとまなく
  旅に立つ身は苦しかりけり

 国土を生み神を生まむと出でて来し
  我は世の味つぶさに覚りぬ』

 宇礼志穂の神は御歌詠ませ給ふ。

『瑞御霊神の功を今更に
  さとりけるかな大野の旅路に

 四方八方に雲立ちのぼり月も日も
  かくろひし国土を照らし行く岐美よ

 百鳥の声は千歳をうたひつつ
  八千草の根に虫鳴き渡る

 若草の萌ゆる大野を進み行く
  岐美の行手に幸あれと思ふ

 もうもうと霧立ち昇る国原を
  照らして出でます岐美の旅はも

 仰ぎ見れば眼くらまむ顕津男の
  神より出づる貴の光は

 御空行く大鳥小鳥悉く
  岐美の御後に従ひ奉るも

 幾千万の鶴は翼を揃へつつ
  岐美がみゆきを送りて舞へるも

 大空は明らみにけり真鶴の
  数多の翼白く光りて』

 魂機張の神は御歌詠ませ給ふ。

『駒止めて四方の国形眺むれば
  目路の限りは雲界なりけり

 雲界の中に漂ふ心地して
  岐美の御後に従ひ行くも

 雲の浪立ち騒ぎつつ岐美が行く
  西方の国土は遥けくもあるか

 真鶴は千歳をうたひ駿馬は
  万世いななく今日の旅なり

 岐美が生命幾億万年の末までも
  国土守るべく保たせ給へ

 たまきはる神は守らむ瑞御霊の
  生命を永久に若返らせつつ

 若返り若返りつつ幾億万世の
  岐美は神国の柱とならせよ

 行先に八頭八尾の大蛇神
  岐美が出でまし迎へまちつつ

 この大蛇幾山脈に跨りて
  怪しき水火を四方に放てる

 西方の国土を曇らす大蛇神の
  水火祓はむは言霊の幸なり

 わが力如何で及ばむ大蛇神の
  怪しき水火に立ち向ひなば

 わが岐美の生言霊の御水火には
  醜の大蛇も服従ひ奉らむ

 日南河を前に控へて醜の大蛇は
  山の姿と化りて待たなむ

 山と化り河とも化りて醜神は
  岐美のみゆきを艱めむとすも

 如何ならむ事のありともたまきはる
  岐美の生命は永久に落さじ

 果しなき神業に仕ふる岐美なれば
  醜の大蛇もものの数かは』

 結比合の神は御歌詠ませ給ふ。

『久方の御空は高し地広し
  この中国を行きます岐美はも

 仰ぎ見れば玉藻の山は雲の上に
  その頂上をかがやかし居り

 玉藻山傾斜面に一処黒き影の
  走るは雲のうつれるなるらむ

 ちぎれ雲ちぎれぬ雲のはざまより
  玉藻の山の肌は見ゆるも

 玉藻山の貴の姿はくづれつつ
  遠く来にけり大野が原を

 立ち迷ふ霧雲の野を照らしつつ
  出でます岐美の御稜威は高し

 玉藻山立ち出で給ひしわが岐美は
  光ますます強まりにけり

 かくの如畏き岐美と知らずして
  吾は光に包まれにけむ

 今となりてわが目覚めしか瑞御霊の
  強き光を仰ぎぬるかな

 行先に八岐の大蛇すむと聞きて
  わが魂線は立ち勇むなり

 わが岐美の言霊の水火の光にて
  服従ひ奉らむ醜の大蛇は

 山となり又河となり雲となりて
  道にさやらむ醜の大蛇は

 心して行きませわが岐美山も河も
  醜の大蛇の化身なりせば

 行先を醜の大蛇はいろいろに
  身を変じつつさやらむとすも

 河も沼も木草も悉言問ひて
  世を乱さむとするぞゆゆしき

 五月蠅なす醜神等の雄猛びを
  祓ふは岐美の言霊あるのみ

 いすくはし生言霊の御光に
  この地の上の曲津は亡びむ

 天界は言霊の国よ意志の国よ
  想念の国よ果のなき国土

 意志想念曇りて醜の醜神は
  生れ出づると聞くぞ恐ろし

 掛巻も畏き皇大神の
  水火の光を力ともがな

 主の神の依さしの儘に旅立たす
  岐美の行手に功あれかし

 八柱の女神を宮に残し置きて
  御子生みに立たすヒーローの岐美よ』

 美味素の神は馬上豊に御歌詠ませ給ふ。

『駒止めて岐美と休らふ大野原に
  吹き渡る風も言霊の水火よ

 心地よくわが面を吹く科戸辺の
  風は正しく神の水火なり

 八千草の蔭に潜みて鳴く虫の
  声も残らず言霊の水火なり

 岐美が功慕ひて玉藻の山鶴は
  翼揃へて見送り来るも

 何処となく白梅香りさやさやに
  音楽響く岐美の旅立ち

 玉藻山西吹く風に梅桜
  清き花弁舞ひ来るかも

 久方の雲井の上にも梅咲くか
  岐美の頭上に花びらの散る

 心地よく澄みきらひたる大空の
  したびを伊行く吾ぞ楽しき

 昼月の光は御空に白々と
  円き姿を浮べ給へり

 昼ながら彼方此方の大空に
  輝き初めぬ大なる星は

 駒止めてゆるゆる憩ひ玉へかし
  この行先に曲津の待てれば

 曲神を言向け和す言霊の
  水火を固めて用意せむかな

 地稚き八雲立ちたつ国原は
  醜の魔神の棲所なりけり

 月も日も照男の神の治めます
  西方の国土は未だ地稚し

 地稚き西方の国土の彼方此方に
  湧き立つ雲は魔神を隠せる

 日南河越ゆれば最早西方の
  曲津の棲む国常闇の国土よ

 いざさらば轡を並べて進むべし
  岐美の光に包まれにつつ』

 顕津男の神は駒に鞭うち、宇礼志穂の神を後方に廻らせ、真先に進ませながら、御歌詠ませ給ふ。

『国魂神生む我なれば御供神
  如何で頼らむ独神進まばや

 大勢の力を借らむをぢなさを
  恥ぢらひ我は前に進まむ

 我は只一人進まむ百神よ
  心に任せて従ふもよし

 言霊の水火の力を学ぶべく
  従ひ来るも我さまたげじ

 森羅万象は言霊の水火に生れたる
  思へば何かわれ恐れめや

 我も亦言霊の水火を照らしつつ
  醜の曲霊を言向け和さむ

 濁りたる数の言霊放つより
  良き言霊の一つが強し

 禊して清め澄ませし言霊に
  我は和めむ醜の魔神を

 百神の厚き心は思ひやれど
  我は国土生みよ一人進まむ』

 斯く歌ひ終り、駒の蹄の音カツカツと嘶き高く勇ましく、鈴の音もさやさやに、若草もゆる大野原を前に立たせ進ませ給ふ。四柱の神は恐る恐る御後方に従ひながら続かせ給ふ。
 宇礼志穂の神の御歌。

『知らず識らず心傲りてわが岐美の
  前に立ちたる心を悔ゆるも

 愚なる吾にもあるか吾が岐美の
  光も知らず前に立ちける

 百神の言霊よりもわが岐美の
  生言霊は輝くものを

 言霊の水火完からずして吾は今
  御前に仕へし愚さを悔ゆ

 真鶴の国は広けし言霊の
  水火を清めて仕へ奉らばや

 わが岐美の尊き光みながらに
  気付かざりしよ愚なる吾は

 山も野も木草もすべて言霊の
  水火に生ると始めて覚りぬ

 千代鶴姫命も岐美の清らけき
  水火に生れますを思へば畏し

 わが岐美の生ませ給ひし真鶴の
  国土を汚すと思へば恐ろし

 わが御魂濁らひあれば言霊の
  水火も曇りてはづかしきかも

 今日よりは禊の神事を励みつつ
  心みがきて言霊生かさむ』

 魂機張の神の御歌。

『思ひきや瑞の御霊のわが岐美は
  水火の光の神にますとは

 わが岐美の雄健び言葉聞きしより
  わが魂線はをののきにけり

 天地の神の御用に仕へしと
  誇り居たりし心の恥づかし

 天地の神の御用に使はれ居ながらも
  知らず識らずに心傲りぬ

 主の神の恵によりて朝夕を
  神に仕ふるわが身なりしよ

 果しなき生命の種を抱へつつ
  言霊の岐美を覚らざりける

 永久の生命保ちて瑞御霊
  国魂生まさむ万世までも

 恥づかしく吾なりにけり知らず識らず
  心傲りて光を忘れし』

 結比合の神の御歌。

『駒の背に跨り御供に仕へ行く
  今日のわが身は楽しかりけり

 天も地も澄みきらひたる国原を
  鶴に送られ虫に迎へられつ

 真鶴の幾千万の翼に送られて
  国土生みの供に仕ふる嬉しさ

 わが為を思はず国の御為に
  尽すは善とわれは思へり

 わが為を思ひて国を次にする
  心は正しく悪なりにけり

 善悪の差別を立てて今日よりは
  神の御供につかへ奉らむ

 よしやよし荒野の果に倒るとも
  神国の為には厭はざるべし

 国土を生み御子生みませるわが岐美の
  御供に仕ふるは清き御魂なるべきを

 わが魂はひたに曇れば言霊の
  水火も濁りて恥づかしきかも

 わが岐美の神宣なければ今日よりは
  曲津に向ひて言霊宣らじ』

 美味素の神の御歌。

『天地の中に抱かれ進み行く
  岐美の御供は畏かりけり

 西方の国土ははろけし八雲立つ
  雲井の空も濁らひて居り

 曇りたる西方の国土を照らします
  岐美の功の大さを思ふ

 わが岐美は言霊神にましましぬ
  出で行く先に輝き給へば

 天地の水火を合せて進み行く
  岐美の旅路にさやる神なし』

 神々は各自述懐歌をうたひながら、果しも知らぬ大野原を、顕津男の神の御後方に従ひ心いそいそ進ませ給ふぞ畏けれ。
(昭和八・一一・二九 旧一〇・一二 於水明閣 森良仁謹録)
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