一行は馬上にて歌を歌いながら進んでいく。
先頭の宇礼志穂の神は、真鶴国固成の功績を歌い、今は天地に黒雲かかると聞く西方の国を開くために、万里の駒にまたがり、千里の荒野原を行く、と歌う。また、先遣隊として行った美波志比古の神によって道が踏み固められていることにも言及する。
顕津男の神はしばらく駒を止めて、玉藻山を仰ぎつつ、来し方を顧みる述懐の歌を歌い、これまでの出来事と比女神たちを偲んだ。
四柱の従者神たちはそれぞれ、述懐の歌を歌って続いた。また一同、西方の国に立つ曲神の雲を払わんと、抱負を歌った。
すると顕津男の神は、一人真っ先に進みながら、歌を歌った。従者神たちに頼る自分の心を厳しく自戒し、神業をなすのは他ならぬ自分独りであり、濁った多くの言霊よりも、一つの良き言霊で曲津神を言向け和す、という決意を新たにした。
従者神たちは、自らおごった心がなかったか畏れかしこみ、顕津男の神の言霊の威力への信頼を新たにする述懐の歌を歌った。
顕津男の神を先頭に、一行は大野原を進んで行く。