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文献名1霊界物語 第75巻 天祥地瑞 寅の巻
文献名2第4篇 千山万水よみ(新仮名遣い)せんざんばんすい
文献名3第21章 岸辺の出迎(二)〔1915〕よみ(新仮名遣い)きしべのでむかえ
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ顕津男の神はこの光景を見ても少しも動じず、にっこりとして歌を詠んだ。曲津神が力の限り脅そうとしておたけっているが、かえってその壮大な光景を見て楽しんでいるくらいだ。言霊の幸はう国であれば、曲津見のおたけびが強くても何も恐れることはないのだ、と。迎えに上がった神々は、顕津男の神の不退転の様子に驚き心を動かされ、それぞれ顕津男の神をたたえる歌を歌い、このような英雄を迎えた歓びを表した。そこへ、美波志比古の神がしづしづとこの場に現れて、顕津男の神に目礼した。美波志比古の神は、顕津男の神が真鶴国を立ち出でて西方の国に旅発つに先立ち、途中の道々に橋を架けるために(顕津男の神に無断で)先に立っていたのであった。しかし、美波志比古が歌で語るところによると、橋を架けるという職掌を超えて、自身西方の国に先に進み入り、その結果、今まで曲津見の神の手下に捕らえられてしまっていたのであった。美波志比古の神は頓知でなんとか危害を逃れていたが、曲津見の神は顕津男の神がついに西方の国にやってきたことを恐れ、美波志比古を解放した。いま美波志比古は、自分の軽率を顕津男の神に懺悔すると同時に、曲津見の神たちが罠を張って顕津男の神を待ち構えていることを、注進に来たのであった。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年11月29日(旧10月12日) 口述場所水明閣 筆録者白石恵子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年2月3日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 396頁 修補版 校定版397頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7521
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本文  顕津男の神はこの光景を打ち眺め、莞爾として愉快げに御歌詠ませ給ふ。

『風も吹け雨も降れ降れ雷も
  轟けわれは楽しみて見む

 雷は天にとどろき稲妻は
  闇を裂きつつひた走るかも

 日南河濁水みなぎり河底の
  巌は下手にころがり落つるも

 曲津見は力の限りを現して
  われ威嚇さむと雄猛るらしも

 曲神よ力の限りをわが為に
  猛びて見せよ地割るるまで

 かくのごと児戯に等しき雄猛びを
  何か恐れむ光のわれは

 面白き雄猛び見るもスウヤトゴルの
  山よりおろす雨風いかづち

 言霊の幸はふ国土よ曲津見の
  雄猛び強くもわれは恐れじ』

 茲に臼造男の神は、瑞の御霊の不退転の態度にいたく驚きつつ、御歌詠ませ給ふ。

『曲神の雄猛び強き河の辺に
  立たせる岐美の大らかなるも

 岐美こそは紫微天界の中にして
  国土生みませるヒーローの神よ

 スウヤトゴルの山の曲津見今ここに
  力の限り雄猛びけるかも

 国津神はこの雄猛びになやめども
  光の岐美は動きたまはず

 河水はいやつぎつぎに澄みきらひ
  河底までもすきとほりけり

 日南河水の底ひの小魚のかげ
  見えわくるまで澄みきらひたり

 曲津見の神の雄猛びも束の間の
  河水濁せしばかりなりけり

 もろもろの鳴物入りの曲津見の
  業も忽ち消え失せにける

 瑞御霊光の岐美の現れましし
  西方の国土はいよよ栄えむ

 西方の国の司の照男神も
  大曲津見になやみ給ひぬ

 山となり巌となりて曲津見は
  西方の国土を曇らせ行くなり

 朝夕を雲に包まれ西方の
  稚き国原は月日だもなし

 今日よりは光の岐美の現れませば
  御空の月日も輝き給はむ

 上と下の臼を造りて神々の
  食物の種磨くわれなり

 左より右にめぐりて五穀の
  荒皮をはぎ神にまゐらす

 天の狭田長田に生ひし稲種も
  実らずなりぬ曲津見の水火に

 今日よりは天地清くひらけなむ
  光の神の出でましぬれば』

 内容居の神は御歌詠ませ給ふ。

『われは今照男の神の御供して
  瑞の御霊を迎へむと来し

 幾万里山野を越えて出でましし
  光の岐美を雄々しく思ふ

 国土を生み国魂神を生ましつつ
  万里の旅に立たす岐美はも

 西方の国土は曲津見はびこりて
  草木も萌えず稲種みのらず

 神々のなげきの声は西方の
  国土の天地をとざしてやまず

 曲津見は十二の頭を持ちながら
  時折風雨をおこして荒ぶも

 曲津見の荒ぶ度毎神々は
  邪気に打たれて倒るる悲しさ

 朝夕に禊の神事をいそしみて
  われは漸く生命保てり

 えんえんと天に冲する黒雲は
  みな曲津見の水火なりにけり

 愛善の国にもかかる曲津見の
  潜みゐるとは知らざりにけり

 力なき吾にはあれど村肝の
  心をきよめ言霊きよめむ

 駿馬の嘶きさへも清々し
  光の岐美の出でませしより

 日並べて曇り重なる西方の
  国土の行末案じつつゐし

 かくのごと光の神の現れまさば
  西方の国土に望みわきけり』

 初産霊の神は御歌詠ませ給ふ。

『言霊の光の岐美の現れますと
  聞きしゆわれはいさみ迎へぬ

 真鶴の国土を固めて瑞御霊
  今西方の国土に来ますも

 嬉しさの限りなるかも悩みてし
  国土を救ふと神現れませる

 生れませる神悉く亡びゆく
  西方の国土を悲しみしはや

 曲津見の大蛇の邪気に襲はれて
  神も草木も萎れつ亡びつ

 亡びなき天津神国の中ながら
  醜の猛びは防ぐよしなし

 ヒーローの神現れましぬ光り満てる
  神現れましぬ目出度き今日を

 月も日も御空の雲に包まれて
  今日まで乱れし西方の国土

 スウヤトゴルの清き山脈の頂上ゆ
  折々放つ邪気はうれたき

 高照の山より落つる日南河の
  清瀬にたちてわれ禊せむ

 一日だも禊の神事を怠らば
  曲津見忽ちわれを襲ふも

 国津神は朝夕日南の河波に
  禊をはげみて息つきて居し

 今日よりは西方の国土の大空に
  月日も清く照り渡るらむ

 仰ぎ見れば雲のはざまゆ天津陽の
  光はさしけり河のおもてに

 天津陽の輝く日こそなかりけり
  岐美河岸に立たせし日までは

 国津神は御空に輝く天津陽の
  光を始めて拝みけるかも

 西方の国土に集る曲津見の
  水火重なりて黒雲となりぬ

 黒雲を晴らさむよしもなかりけり
  生言霊の力足らねば』

 愛見男の神は御歌詠ませ給ふ。

『待ち待ちて今日のよき日にあひにけり
  この河岸に岐美を迎へて

 スウヤトゴルの山の姿は麗しく
  はき出す水火は天を包めり

 万丈の黒煙はきて大空の
  月日を包みし雲の憎かり

 今日よりは曲津見の邪気つぎつぎに
  散りて御空は清くなるべし

 朝夕を禊の神事に仕へつつ
  岐美の出でまし久しく待ち居し』

 かかる所へ、美波志比古の神は駒に鞭うち、しづしづと此場に現れ給ひ、顕津男の神に黙礼しつつ、御歌詠ませ給ふ。

『わが岐美の旅に先立ち出でて来し
  われは神業をあやまりしはや

 御供に仕ふべき身を知らず識らず
  心傲りて先き立ちしかも

 何事もおもひにまかせず苦しみぬ
  岐美より先に出でにし罪かも

 みゆきある道の隈手をみはしかくると
  出でにし吾は夢となりける

 美波志比古の神にはあれど瑞御霊
  御許しなくば何事も成らず

 今となりてわが愚しき心根を
  つくづく思へば恥づかしきかな

 瑞御霊ゆるさせ給へ今日よりは
  神言のままに動きまつらむ

 曲津見の神の輩下に捕へられ
  われは今日まで苦しみにけり

 瑞御霊ここに渡らせし功績に
  曲津の神はわれを許せり

 曲津見の神はいろいろ手向ひの
  わざととのへて岐美を待ち居り

 心して進ませ給へ曲津見は
  光の岐美を亡ぼさむとすも

 八尋殿数多並べて曲津見は
  岐美屠らむと待ちかまへ居るも

 曲津見の喉下に入りて漸くに
  虎口を遁れ帰り来しはや

 表むき曲津の神に使はれつ
  暫しの間をたすかりて居し』

 ここに美波志比古の神は、わが身の職掌を尊重するあまり、瑞の御霊のみゆきに先き立ち、渡り難き難所にみはしを架け渡し、御便宜を計らむとして先に立ち出で給ひしが、瑞の御霊の御許しなかりし為に、一切万事齟齬を生じ、一も取らず二も取らず、遂には曲津見の神の謀計の罠に陥りて、生命さへも危くなりけるが、早速の頓智に曲津見の神に媚びへつらひ、今まで虎口を遁れ居たりしぞ嘆てかりける。
(昭和八・一一・二九 旧一〇・一二 於水明閣 白石恵子謹録)
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