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文献名1霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻
文献名2前付よみ(新仮名遣い)
文献名3総説よみ(新仮名遣い)そうせつ
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
言霊学上の見地から、皇典である古事記の本当の意義を解釈し、皇道の大本を一般に知らしめようとして、霊界物語を著述している。

天地開闢とか宇宙創造の説については、世界各地の宗教や歴史詩の中にあるけれども、太古未開の人の想像力から生まれたものが多く、どれもその真相を把握するのが難しい。

言霊学から見た天地開闢・宇宙創造の説と比べると、雲泥の差があることを明らかにし、霊界物語がかつてない神書であることを示すつもりである。

まずは、皇国日本の神話から例に挙げる。

日本所伝の天地開闢説

最初は天地・陰陽が別れておらず、万物がまだできあがっていないときの状態は、混沌として脂が大海原に浮かんでいるような、卵の黄身白身が散り混ざっているような、形も区別もない状態。

後に、軽くて清んだ気は昇って天となり、重く濁ったものは沈んで地となった。

天が高天原、地が国。その間は大虚(おおぞら)があった。

国がわかく、水の上に漂って固まらないとき、葦の芽のような物が成り出でて、萌えあがって大虚の中に現れた。これが、高天原に生り出でた最初の神、天譲日天狭霧国譲月国狭霧尊(あめゆづるひあめのさぎりくにゆづるつきのくにのさぎりのみこと)=天祖と申し奉る神である。

その後に自ずから化り(なり)出でた神々のうち、独りづつ化り出でた神々を独化天神と言い、二柱づつ化り出でた神々を倶生天神と言う。また別に化り出でた神々を別天神(ことあまつかみ)と言う。

天地が開け初めたときに、高天原に化り出でた神は、第一に天之御中主神、第二に高皇産霊神、第三に神皇産霊神。以上三神以下、五柱神までが独神(ひとりがみ)で、別天神と言う。

その次に国之常立神、豊雲野神の二柱が独神であった。以下十神は配偶の神々であった。以上、国之常立神から伊邪那美神までを、神世七代という。

支那の開闢説

太初には何も存在せず、気がもうもうと広がり満ちているだけだった。その中に物の生じる萌しがはじまり、やがて天地が現れた。

天と地は陰陽に感じて、盤古という巨人を生んだ。盤古が死ぬときに、その体がいろいろなものに変化して、万物が生まれた。たとえば、息は風になり、声は雷、左眼は太陽、右目は月、手足と体が山々、血は河、肉は土、髪・ひげを星、皮膚の毛は草や木、歯や骨は金属と石、汗は雨、等々。

また別の話では、盤古が成長して一万八千年の間に九万里もの背丈になったので、天と地がわかれた、といわれている。

また、地下界に根を張り、天界にまで達している巨大な木を「世界樹」といい、スカンジナヴィアを始め、世界各地に言い伝えがあるが、中国にも世界中の神話があった。

波斯(ペルシャ)の宇宙創造説

世界の初めには、アフラ・マズダという尊い神と、アングラ・マイニウという邪悪な精霊があった。アフラ・マズダは光明の世界に住み、アングラ・マイニウは暗黒の深淵に住んでいた。

アフラ・マズダはさまざま生物を造りだした。アングラ・マイニウはそれを邪魔しようと、自分の召使となる悪魔を造った。

両神は、争いの期間を九千年と定めたが、最初の三千年はアフラ・マズダの思うことが何でもかない、次の三千年は互いにかちあって何事もうまくいかず、最後の三千年でアフラ・マズダはアングラ・マイニウを征服することになっている。

善悪両神の争いによって、大地やさまざまなものが作られていく。アフラ・マズダはアングラ・マイニウからすべてのものを保護するために、ゾロアステルという予言者を創造して、この世に送り出した。

希臘(ギリシャ)の天地開闢説

ギリシャの神話は天地開闢であって、宇宙創造ではない。すなわち、世界は長い年月を経て次第に現在の状態になったのであり、創られたものではない。神々も世界の初めから存在していたのではなく、後からこの世界の中に生まれてきたものである。

第一にこの世界を支配したのは、ウラノス(天)とガイア(地)の二神であった。続いてクロノスとレアの治世(黄金時代)が、そして最後にゼウスとヘラがこの天地の主宰者となった。

それぞれ、前代の父神を倒して治世が交代したが、最後は正義の代表者ゼウスが勝利した。

エジプトの開闢説

世界の初めには、ただどろどろした水のようなものが果てもなく広がっていた。

その中に一つの神があった。神は自分の名前を「夜明けにはケベラ、日中はラア、夕刻はツーム」と名乗って現れた。そして、種種の神々や男と女、動物や植物が生まれた。

メキシコ・コナファ族の天地創造説

太初、ただどこまでも広がっている水があり、その中からいつとはなしに大地が現れた。大地ができると、ある日二人の鹿の男神と女神が現れた。

マヤ族の万物創造説

太初にはただ闇が広がっていた。そして、ただ神々だけが存在していた。一人の神が大きな声で、『大地よ、現れよ』と叫ぶと、たちまちその声に応じて大地が現れた。

最初に作られた人間たちは悪事をなしたので、滅ぼされた。次にとうもろこしの粉を練って男女8人の人間をつくった。

最初、人間は火を持っていなかったが、トヒル(ぶらつく者)という神が自分の両足をすり合わせて火を燃やし、人間に与えた。

トヒルは8人の最初の人間たちを率いて、太陽が見える地に導いた。人間たちはキシェ族の祖先となった。

ある日、キシェ族の前に神々が幻のように現れて、人間のいけにえを要求した。キシェ族たちは、近くの他の部落を襲い、激しい抵抗にあったが、神々の助けで打ち破った。

やがてキシェ族の祖である最初の人間8人のうち、4人の男は寿命が近づいた。男たちは子孫たちを呼び寄せ、別れの言葉を言った。たちまち4人の男は姿を消してしまい、あとに大きな巻束が現れた。キシェ族はその巻束を、「包まれたる厳の宝」と名づけ、決してそれを開かなかった。

北欧に於ける宇宙創造説

太初は空の空であった。そこにはただ、無限に広がる虚無の深淵があった。この深淵「ギンヌンガ・ギャップ」の北の果てには極寒の世界「ニフルハイム」があり、南の果ては極熱の世界「ムスベルハイム」があった。

極熱世界から飛び散る火花が、深淵の底にある氷を溶かして蒸気を生んだ。その蒸気が、極寒世界の冷たい風にあたって凝り固まり、氷の巨魔イミルと巨大な牝牛アウヅムブラが生まれた。

牝牛は氷の塩をなめているうちに、氷の中から神「ブリ」が生まれた。神は神々を生み、巨魔イミルはその敵となる巨人たちを生んだ。神の中でもオーディンが神の王者となった。

最後に神々は巨魔イミルを打ち倒し、その体から大地を造って世界の中心におき、また海や草木を作った。頭蓋骨から天蓋を造って、四隅を小人たちに支えさせた。

太陽と月は馬車に乗せて、それぞれ巨人の子に引かせた。

太平洋西北岸創造説

世界の初め、水だけがあった。天には銀狐と狼が住んでいた。狐は天に穴をあけて地に降り、小さな島を作った。狼もそこに降りてきて一緒に暮らした。

狐は島を踏み伸ばして、現在の世界のような大きな世界にした。狐は人間や動物、木や泉などを作っていった。狐と狼は議論の末、一年を春・秋・冬の三つの季節に区切った。

英領北亜米利加(アメリカ)創造説

天上世界には、ウィアンドット族が住んでいた。ある日、酋長の娘は天上世界の床を掘りぬいた穴から、りんごの木と共に下界に落ちてしまった。

娘は白鳥の背に助けられた。動物たちは相談の末、がまが落ちてきたりんごの木から土を取り、亀の背中に塗りつけて大地を造った。そして娘はそこに住んだ。

つぎに、大きな亀と小さな亀が天上に昇り、光を集めて玉にし、太陽と月になった。

阿弗利加(あふりか)神話

怠惰カメレオン(ベチュアナ族、バロンガ族、バスト族などに伝わる)

世界の初めに、ウンクルンクルという神さまががカメレオンを呼び、人間たちを不死にすると伝えるように言った。しかしカメレオンは途中で居眠りをしてしまった。

その間に、神の考えが変わってしまった。そして、蜥蜴に人間は死ぬようになると伝えるように言った。蜥蜴は居眠りをしていたカメレオンを追い越して、先に死の知らせを人間に伝えたため、人間はいつかは死ぬ者となってしまった。

兎の粗忽(ホッテントット族)

月が兎を呼び出して、人間を不死にすると伝えるように言った。しかし兎は間違えて逆のことを伝えたために、人間は死ぬ者となってしまった。

月は何故欠けるか

太陽が、月に腹を立てて、少しずつ小刀で見を削っている。しかし、月がなくなってしまってはかわいそうなので、小さくなると削るのをやめる。そして、月が回復すると、また削り始めるのである。

太陽の出現

昔あるところに、不思議な男が住んでいて、脇の下からまばゆい光が出ていた。人々は、男が眠っている間に男を大空へ投げた。男は仕方なく天上界に住むうちに、次第に体が丸くなり、太陽になった。

死の起源

昔、月が生き物たちを不死にしてやろうといったが、兎がそれを決して信じなかった。月は腹を立て、生き物を死ぬ者と定めてしまった。

ヘブライ天地創造説

神は始めもなく終わりもなかった。神が天地を創造する前は、世界は暗黒のみであった。

神は「光あれ」という言葉で光を創造することから世界創造の第一日を始めた。最後に人間をはじめ生物を6日目に作って、7日目には安息をとった。神は最初の人間アダムを楽園に住まわせ、その肋骨から伴侶のイブを作った。

パレスチン創造説

昔、神は土からアダムという人間を造った。そして、天使たちにアダムをあがめるように言ったが、イブリスという天使だけは従わなかったので、楽園から追い出されてしまった。そのため、イブリスはアダムを恨んだ。

アダムは両性具有に造られていたが、やがて男と女に分かれた。男はアダム、女はリリス、またはエル・カリネーと呼ばれた。

エル・カリネーはアダムにことごとく逆らったので、神の怒りをかって楽園を追い出され、イブリスの妻となった。そして二人の間にたくさんの悪魔が生まれた。

神はアダムの肋骨からエバを作った。二人は夫婦となって楽園で暮らした。しかし、イブリスは蛇の口を借りて、エバに、禁断の食物である小麦を食べさせた。神は怒って、アダム、エバ、イブリス、蛇を楽園から追い出した。

アダムとエバは離れ離れに地上に降されたが、アダムは罪を心から悔いていたので、天使ガブリエルが二人をアラファト山で再会させた。

ミクロネシヤ創造説

ナウリ島の創造説:天地ができるまえ、果てしなく広がる海に、年老いた蜘蛛が浮いていた。あるとき蜘蛛は、非常に大きな貝を見つけ、その貝の口を押し開き、中にいた2匹のカタツムリと地虫の協力で、貝を天と地とした。小さなカタツムリが月になり、大きな方が太陽になった。地虫の汗から海ができた。

マーシャル群島の創造説:ロアという神が、暗礁を陸にし、植物と島々を造った。

また別の創造説では、世界中から生まれた女が、天空神エラファズから与えられた砂を撒くと、大地ができた。

また別の創造説では、タブリエリックという神が鳥となって混沌の世界を翔け、リギという蝶が大地と海の上を飛んで二つを分かち、他の神々が天と大地を分けて上に押し上げた。

日月神話

ギルバート諸島:昔、神ナ・レアウが二人の人間、デ・バボウという男とデ・アイという女を造った。神は二人に、決して子供を作ってはならないといったが、二人は三人の子を産んだ。それが太陽、月、海となった。

註:この太陽・月・海を産んだ神話は、伊弉諾、伊弉冊の二神が天照大神、月読命、素盞嗚命を産んだという神話を連想させる。

人類の起源

人間は、昔天から降ってきた神の子である、または神の娘が水と一緒に小さな生き物を飲み込んで、人間の祖先を生んだ。また、神が樹に火をつけた火花と灰から、人間の祖先が生まれた。

インドネシヤ創造説

ミナハッサ島:海の中に岩があり、岩から鶴が生まれた。また、そのとき岩が流した汗から、女神ルミム・ウットが生まれた。女神は、鶴の助言に従って砂を撒き、世界を作った。女神は西風に体をさらしているうちに、一人の男の子を産んだ。母と子は別れて世界を廻るうち、お互いを見忘れてしまい、出会ったときに結婚してしまった。そしてたくさんの神々が生まれた。

中央ボルネオのカヤン族:天空から海の中へ大きな岩が落ちてきた。その表面が粘土に覆われ、虫に岩が噛み砕かれて砂土に覆われた。また、太陽から刀の柄が落ちてきて根をおろし、大きな樹になった。次に月から葡萄の蔓が落ちてきて、樹にまつわりついた。樹と葡萄が抱き合って、男の子と女の子が生まれた。二人が結婚して、カヤン族の祖先となった。

中央ボルネオ:世界の初めに一匹の蜘蛛が天から降りてきて、巣を作った。その巣に小さな石がひっかかり、だんだん大きくなって大地になった。天から樹が落ちてきて、そのあと葡萄が樹に巻きついた。すると、一人の男と一人の女が天から木の上に降りてきて、男は刀の柄を、女は紡錘を地面に落とした。刀の柄と紡錘が男と女になって、子供を産んだ。その子は体と頭を持っているだけで、手も足もなかった。その子がひとりでに子を産み、その子達が結婚してまた子供が生まれた。こうしていろいろな神々が生まれた。

蛇の頭の上の大地

東南ボルネオ:世界の初めには天空と海があった。海の中に蛇が泳ぎまわり、その蛇は光り輝く石をはめた黄金の冠を頭にかぶっていた。神はその頭に土を落とし、それが大地となった。

スマトラ島のトバ・バタク族:空に七つの世界があり、もっとも偉大な神ムラ・ディアディが二羽の鳥を召使として住んでいた。神は大きな樹を生やして天を支えた。神は、雌鶏の卵から生まれた3人の女と、神が作った3人の男を結婚させようとした。しかし、一人の男の顔は醜かったので、その男と結婚するはずだった女は下界に逃げた。神が男を水筒に入れて投げたので、ついに女は拒みきれず結婚した。それが人間の祖先となった。

スマトラ島のハイリ・バタク族:偉大な神バタラ・グルの妻がお産のとき、鹿の肉を所望した。神は召使と共に鹿を求めて行くうちに深い穴を見つけて入り、海に下り立った。神は光で闇を払い、持っていた土で大地を作った。

以上、古今東西各国の天地開闢・宇宙創造の説は、日本の皇典の所伝のほかは荒唐無稽なものである。天祥地瑞に比べて、天と地ほどの違いがあるのである。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月05日(旧10月18日) 口述場所水明閣 筆録者谷前清子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月23日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 418頁 修補版 校定版3頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  言霊学上の見地より、皇典古事記の包含せる真意義を解釈し、以て皇道の大本を普く江湖に知らしめむとして本書を著述する事とせり。天地開闢や宇宙創造の説に就ては、東洋は更なり、欧洲亜細亜等の宗教又は史詩に散見すれども、太古未開の人の想像力より生れたるもの多く、何れもその真相を把握するに苦しまざる可からず。皇国言霊学の上より見たる天地開闢宇宙創造の説に比ぶれば天地霄壤の相違ある事を比較して、本書の前古未曾有なる神書なる事を示さむと欲し、茲に各国の神話伝説を列記して諸士の参考に供せむと欲するものなり。先づ皇国日本より例証を挙げむとす。
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