暁を告げる山烏の声に、早朝目を覚ませば、栄城山の朝風は颯颯と吹き入り芳しく、大野が原に霧が棚引き日陽に映え、えもいわれぬ美しい景色であった。
比女はこの景色を歌に歌い、東に高照山、西に高地秀山を眺めては来し方を述懐し、顕津男の神への思いをつづった。
そのうちに、神々が迎えにやってきた。小夜更の神が奉った石楠花の花を見ても、顕津男の神への思慕を深くする比女であったが、神々の案内で、山頂の宮居の大前に上って行った。
栄城山の宮居の聖所に立った朝香比女は、顕津男の神自らが開いた宮居に感無量となり、声もさわやかに神言を奏上した。
比女の礼拝に聖所もいつになく晴れ渡り、その清清しさを栄城山の神々は述懐歌に歌い、一同は再びつづら折の山道を下って休憩所の八尋殿へと下っていった。