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文献名1霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
文献名2第3篇 善戦善闘よみ(新仮名遣い)ぜんせんぜんとう
文献名3第13章 五男三女神〔1945〕よみ(新仮名遣い)ごなんさんじょしん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-05-29 08:48:45
あらすじ
宇宙の創造、天地開闢と大神業に奉仕する天界の正神は、純粋なことこの上ない清鮮の水火を呼吸して生命を永遠に維持し、無限の力徳を発揮する。

一方、邪神は濁りと穢れと曇りから発生したものであり、混濁の空気を呼吸して生命を保持し、あらゆる醜悪な行為をなして過ごす霊性を持つ。邪神のあるところ、必ず邪気充満し、黒雲みなぎって森羅万象の発育に害を与える。

大神の清澄な言霊の水火から成り出でた万里の島にも、ついに邪気が発生し、悪竜・大蛇となって神人・禽獣の命を脅かし始めた。また地が固まっておらず、国土が定まらない紫微天界の当初においては、生言霊で言向け和すことは容易ではなかった。

神々は、数億万年後の世界のために、あらゆる悪神・邪気の霊を根本的に絶滅させようと、あらゆる苦難に耐え、全能力を傾けて活動していた。

今、現代の私がこの清明な天地に安らかに生を保っていられるのも、四季の順序が調った地上に美しい景色を鑑賞し、命をはぐくむ日月を拝することができるのも、みな、太初の神々が身を捨てて活動した賜物である。これを思うと、その厚恩は海よりも深く、スメール山よりも高く、筆舌に尽くしがたい。

宇宙創造・天地開闢の神業における神々の苦心を、いくぶんなりとも察知するなら、この恩の広さ大きさに感激の涙を流して感じ入ることになろう。そうであれば、現代にいかに不遇の地位にあったとしても、一言でも恨み言を言ったり、神命を軽んじる無道を犯すなど、夢にもあってはならない。

主の大神の直系であり、また太初に特に全力を注いで修理固成した紫微天界の結果である我が地球、中でも特に葦原の中津御国では、尊厳無比の主の大神から流れ出でた皇統が、永遠にあらゆるものに対して無限の恩恵を与えている。

このことを思うと、私(出口聖師)は敬神尊皇報国の誠を昼夜絶え間なく尽くし捧げまつって、忠孝、仁義、友愛などの神より授かった固有の精神を、ますます発揮すべき天職天命のあることが知られるのである。

さて、ここに万里の島の御樋代神として降臨した田族比女は、白馬ケ岳に巣くう魔神を掃討しようと十柱の従者神を従えて出陣した。

楠の大木の生い茂る泉の森の聖所に到着し、夜が明けるのを待って部署を定めた。泉の森を作戦上の本営とし、輪守比古、若春比古を側に守らせ、霊山比古、保宗比古、直道比古、正道比古、雲川比古、山跡比女、千貝比女、湯結比女の五男三女神に先陣を勤めさせた。

田族比女の神が下知の歌を歌うと、霊山比古の神は返答歌に決意を込め、ただ一騎、南方の原野の真中を、魔棲ケ谷方面めがけて駆け出した。

続いて保宗比古、直道比古、正道比古、雲川比古、そして三女神がそれぞれ、出陣の歌を歌うと、魔棲ケ谷を目指して駒を進めて行った。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月15日(旧10月28日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月30日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 644頁 修補版 校定版215頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  宇宙の創造、天地開闢と大神業に奉仕したまふ天界の正神は、至粋至純なる清鮮の水火を呼吸して、其の生命を永遠無窮に保持し、無限の力徳を発揮し給ふに反し、濁りと汚れと曇りより発生したる邪神は、常に混濁の空気を呼吸して其の生命を保持し、あらゆる醜悪なる行為をなして、日夜を楽しむの霊性を持つものなれば、邪神のある処必ず邪気充満し、黒雲漲りて森羅万象の発育に大害を与へ、主の神が修理固成の神業に極力反抗し妨害せむとするものなり。併しながら邪神自身としては、最も真正にして至当の所行と感じ居るが故に、極力其の悪業を改め、生成化育の善道に従はむとはせざるなり。
 茲に主の大神の清澄無垢にして、至粋至純なる言霊の水火より生り出でたる万里の島ケ根も遂には邪気発生して、さも恐ろしき太刀膚の竜となり、或は猛悪なる大蛇と化して非時に雲霧を起し、邪気を吐き、天地を混濁せしめ、日月星辰の光を遮り、万物の発育を妨げ、神人禽獣等の生命を脅かし且つ短縮せしめて能事了れりとなし、会心の笑を漏らし居るこそ忌々しく、到底善言美詞の言霊をもつて完全に済度し得べからざる難物なり。故に未だ地稚く国土定まらざりし紫微天界の頭初に当りては、生言霊の武器をもつて言向け和す事容易ならざれば、神々は数億万年後の世界の為に、所有悪神邪気の霊を根本的に絶滅せしめむと千辛万苦に堪へ、其為に全能力を傾注し、活動し給ひたるなり。
 実に吾人がこの清明なる天地に安らかに生を保ち得るも、四季の順序調へるこれの地上に諸々の山水の明媚なる風光を観賞し、生命の日月を拝し得るも、皆太初の神々等の舎身的御活動の賜にして、その厚恩は海よりも深く又スメールの山よりも高く、到底吾人の言語をもつて言ひ現はし称へ了る事は不可能と知るべし。吾人にして宇宙創造の神業と天地開闢の神々の御苦心を幾分にても察知し奉る時は、この鴻恩の大なるに嗚咽感泣し、現代に処して如何なる不遇の地位にあるとも、唯一言の怨み言をのべ又は神命を軽んずる無道の罪を犯す事、夢寐にもあらざるべきなり。
 主の大神の直系にして且つ太初に特に全力を注ぎて修理固成したまへる紫微天界の終結たる我地球、特に豊葦原の中津神国尊厳無比にして、其皇統は主の大神より流れ出で、永遠無窮に森羅万象に対し無限の恩恵を賜ふ事を思へば、吾人は敬神尊皇報国の至誠を昼夜間断なく尽しまつり捧げまつりて、忠孝、仁義、友愛等の神授固有の精神を弥益々に発揮せざるべからざるの天職天命ある事を知るべし。
 茲に万里の島の御樋代神として天降り給ひし田族比女の神は、如何にもして、これの島ケ根を主の大御神の依さしのままに清浄無垢、至喜至楽、至善至美、至清至潔なる天国浄土に拓かむとして、あらむ限りの神力と神策を発揮し給ひけれども、未だ白馬ケ岳の南側にあたる万谷千谷の奥処には曲神の邪気凝り固まりて、時々雲霧を起し、万里ケ島の天地を咫尺弁ぜざるまでに包みて、動植物の発育を妨害したりければ、御樋代神は止むを得ず、大勇猛心を発揮し、白馬ケ岳の悪魔を徹底的に掃蕩せむと思召し、十柱の従神を従へ、千里の荒野を駒の背に踏み破りつつ、辛うじて楠の大木の生ひ繁りたる目路も届かぬ限りの泉の森の聖所につかせ給ひ、月下に一夜を安息し、夜の明くるを待ちて弥々、魔棲ケ谷の悪霊を掃蕩すべく、部署を定めて出で立たせ給ひ、御身自らは泉の森を策戦上より本営と定め、輪守比古の神、若春比古の神を御側に守らせおき、霊山比古の神、保宗比古の神、直道比古の神、正道比古の神、雲川比古の神、山跡比女の神、千貝比女の神、湯結比女の神の五男神三女神をして先陣を勤めしめ給ひける。

『東の空を茜に染めなして
  天津日の神昇りましぬる

 木々の葉におく白露も七色の
  光放ちてよみがへりたり

 久方の天の岩窟の開けたる
  心地するかも昇る朝日に

 いざさらば醜の曲神の潜むてふ
  魔棲ケ谷に進ませ神等

 輪守比古若春比古の二柱は
  吾にいそひて此地にありませ

 曲神の醜の奸計の深ければ
  泉の森に控へ守らむ

 五男神三柱女神は主の神の
  水火を御楯に疾く進むべし

 曲神は千万軍を整へて
  十重に二十重に固め居るなり

 束の間も生言霊の太祝詞
  絶やさずつづけて静に進めよ』

 霊山比古の神は答の御歌詠ませ給ふ。

『有難し御樋代神に選まれて
  けふの先頭に吾は立つなり

 曲神の奸計は如何に深くとも
  いかで恐れむ神の御為め

 雲霧も隈なく晴れし今朝の春を
  進みて行かむわれぞ楽しき

 朝風はそよろに梢を渡りつつ
  今朝は殊更水火澄みにけり

 泉の森清き清水に身を清め
  出で立つ神魂にはむかふ曲なし

 天津日に春のみゆきの消ゆるごと
  滅び失すべし曲の砦は

 いざさらば御樋代神よ二柱よ
  わがゆく軍を守らせたまへ』

と言ふより早く、霊山比古の神は只一騎駒に鞭うち、南方の原野の中央を魔棲ケ谷の方面目蒐けて駈け出で給ふ。
 保宗比古の神は今や出陣せむとして、御歌詠ませ給ふ。

『霊山比古神は先頭に駈け出でぬ
  吾後れめや曲津の征途に

 田族比女神の神言に従ひて
  いざや進まむ魔棲ケ谷へ

 大空の隈なく晴れし今日の日は
  心の駒の頻りに勇むも

 曲神の日に夜に吐ける黒雲の
  水火を払ひて国土を清めむ

 幾万の魔神の群を言霊の
  水火に払ふと思へば勇まし

 万里の島にさやる雲霧吹き払ひ
  いや若春の国土造らばや

 吾駒の足掻せはしも醜神を
  踏み躙らむと駒も勇むか

 此島の開け初めしゆはじめての
  曲を譴責めの戦楽しも

 千万の奸計の罠をしつらへて
  曲津は待つらむ吾行く道に

 何事も主の大神の御心に
  違はじものと慎み進まむ

 曲神といへども元は主の神の
  水火と思へば憎まむ道なし

 善き道に帰順ふならば醜神も
  吾は助けむ神のまにまに』

 かく御歌詠ませつつ、
『田族比女の大神、二柱の大神、いざさらば、吾行手を守らせ給へ』
と言ひ残し、馬背に一鞭あてて大野ケ原の中央を一直線に南へ南へと進ませ給ひける。
 直道比古の神は出立にのぞみ御歌詠ませ給ふ。

『御樋代神田族比女の神にもの申す
  神言畏み征途に上らむ

 仰ぎ見れば魔棲ケ谷の谷間より
  又も黒雲湧きひろごるも

 曲神は再び天地を常闇に
  包まむとするか心憎しも

 漸くに蘇りたる生物を
  損はむとする醜の雲霧

 魂線の光をてらし言霊の
  水火を固めて曲津を払はむ

 天地を隈なく照らしたまひたる
  日光を今や黒雲包めり

 天津日の光を永久に万有に
  照らさむために吾は進むも

 天地の正しき道を踏みわけて
  進まむ吾に曲津さやるべきや

 曲神は横さの道を彼方此方に
  開きて神世を乱さむとせり

 一すぢの生言霊の正道に
  横さの道を蹴破り進まむ

 霊山比古の神は先頭に立ちたまひ
  早くも御姿見えずなりけり

 吾も亦曲津の征途に後れじと
  駒に鞭うちいそぎ進まむ』

 かく歌ひながら、駒に一鞭あて一目散に駈け出し給ひぬ。
 正道比古の神は出立にのぞみ御歌詠ませ給ふ。

『三柱の神は早くも出でましぬ
  吾も進まむ曲津の征途に

 次ぎ次ぎに御空は曇り天津日の
  光をかくしぬ曲津の黒雲

 雨さへもまじりて雲は大空を
  いや次ぎ次ぎに包まひにけり

 曲神の元つ棲処に押し寄せて
  湧き立つ雲の根を断たむかな

 雨嵐黒雲いかに荒ぶとも
  吾は恐れじ言霊の武器あり

 曲神の勢いかに猛くとも
  正しき道の光に及ばじ

 心長くしのびしのびて正道を
  踏みわけ進まむ曲津滅ぶまで

 いざさらば御樋代神よ二柱よ
  これの聖所に吾等を照らせよ』

と言ひつつ、又もや駒の背に一鞭あてて駈け出し給ふ。
 雲川比古の神は御樋代神に一礼し、ひらりと駒に跨りながら、

『いざさらば雲川比古は五柱の
  殿軍として征途に上らむ』

と言ひつつ一目散に駈け出し給ふ。
 山跡比女の神、千貝比女の神、湯結比女の神は御樋代神の前に並立し、手拍子足拍子を揃へて首途の祝歌を歌ひ給ふ。
『白馬ケ岳は高くとも
 魔棲ケ谷は深くとも
 醜の曲津は数限り
 なく集ふとも言霊の
 清き水火もて打払ひ
 斬り放りつつ万里の島の
 天地の雲霧吹き清め
 森羅万象悉く
 月日の恵の露うけて
 千代も八千代も永久の
 生命を保ち弥栄え
 五穀は稔り果実は
 虫の害なくよく育ち
 春の山野の百花は
 艶を競ひて咲き匂ひ
 百鳥歌ひ虫の音は
 清くすがしくさえざえて
 万里ケ島根は永久の
 天国浄土と生るべし
 治めたまはむ御心の
 雄々しき今日の出でましよ
 御供の神と選まれて
 吾等三柱比女神は
 白馬の背に跨りつ
 泉の森を立ち出でて
 遠き荒野を打ちわたり
 魔棲ケ谷の醜神の
 醜の荒びを言向けむ
 ああ惟神々々
 天晴れ国土晴れ草も木も
 生きとし生けるもの皆は
 心晴れ晴れ勇めよ勇め
 生きよ生き生き永久までも
 尽きぬ生命を保ちつつ
 主の大神の守らせる
 万里ケ島根の禍を
 払ひ清むる旅立ぞ
 ああ頼もしき次第なり
 御樋代神よいざさらば
 吾等が行手を守りませ
 泉の森の聖所に
 永久の光をなげたまひ
 行手を明したまはれよ
 偏に祈り奉る
 ああ惟神々々
 生言霊のスの水火に
 勇み進まむいざさらば』
と歌ひ終り舞ひ納めて、三女神は一斉に白馬の背に跨り、悠々として征途に上らせ給ひける。
(昭和八・一二・一五 旧一〇・二八 於大阪分院蒼雲閣 加藤明子謹録)
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