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文献名1霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
文献名2第3篇 善戦善闘よみ(新仮名遣い)ぜんせんぜんとう
文献名3第16章 妖術破滅〔1948〕よみ(新仮名遣い)ようじゅつはめつ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
征服戦主将である霊山比古の神は、三柱の比女神による言霊戦部署を、広原の片に立つ楠の根元に定めた。そしてどんなことがあろうと、アオウエイの言霊が聞こえるまでは、一歩もその場を動くことなく、男神の戦闘を助けるように生言霊の光を放つよう、命じおいた。

霊山比古は深谷川の右側、保宗比古は左側、直道比古は第二の谷間の右側、正道比古は左側、雲川比古は最左翼を、それぞれ言霊を絶え間なく宣りあげつつ、登っていくこととなった。

曲津神たちは、登山道に千引きの岩となって立ちふさがったが、神世無双の英雄神である一同はものともせず、強行的に生言霊を上げながら、おのおの進んでいく。

霊山比古は、駒をとどめおき、心静かに言霊歌を歌った。自ら、ヲ声より生まれた主の神の生き宮居であり、主の神の御手代である、と名乗り上げた。

霊山比古は、行く手をさえぎる巌の上を飛び越えていくが、そのたびに曲津神の巌は、綿のように揺らいだ。その中のもっとも大きな巌の上に突っ立ち、タトツテチ、カコクケキの生言霊を宣りあげると、曲津神は本当の巌となり、動くことができなくなってしまった。

霊山比古は勝利の歌を歌った。すると、曲津神の化けた巌々は、いっせいに大音響をたてて、谷底へ落ちくだりはじめた。霊山比古がふと見下ろすと、三柱の比女神たちが登ってくるのが見えた。そして、落ち下る巌に、押し潰されそうになり、泣き叫ぶ声が聞こえてきた。

霊山比古はすぐさま助けに下りて行こうとしたが、三柱の比女神は、楠の下で言霊を照らして鎮まり待機しているはずなので、谷を登ってくるはずがない。自分が下りていったら、上から押し潰そうという曲津神の計略と気づき、霊山比古は、大巌の上で四股を踏み鳴らし、曲津神の大巌を地中に深くめりこませ、埋めてしまった。

霊山比古が作戦計画に時を移そうと、しばし息を休めていると、田族比女の神がにわかに現れ、竜の岩窟へ進め、と指令を下した。霊山比古はカコクケキの言霊を発すれば、田族比女の神に変化した邪神は、答えにつまり、身体震え、次第に細くなって煙のごとく消えてしまった。

霊山比古はふたたび勝利の歌を歌った。そして、向かいの谷辺にわたり、保宗比古の神業を助けようと、次の行動計画を練った。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月15日(旧10月28日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者林弥生 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月30日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 660頁 修補版 校定版273頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  一行の先頭にたち、醜の曲津に対し征服戦主将と任けられたる霊山比古の神は、思ふところありてか、三柱比女神の言霊戦の部署を、広原の片方にこんもりと立てる楠の樹の根元と定め、如何なる事ありともアオウエイの言霊の聞ゆる迄は、一歩も此処を動き給はず、吾等が戦闘を援くべく生言霊の光を放ち、ひかへさせ給へと、かく命じ置き、霊山比古の神は深谷川の右側を、保宗比古の神は左側を、直道比古の神は第二の谷間の右側を、正道比古の神は第二の谷川の左側を、雲川比古の神は最左翼を、各自言霊を間断なく宣り上げつつ登らせ給ふこととはなりける。
 ここに曲津神等は、五柱の神の激しき鋭き清き赤き照り渡る言霊の水火の力に怖ぢ恐れ、登山を防がむとして八十の曲津見を駆り集め、何れも巨大なる千引の巌と化せしめ、神々の登らす道の前途に、折り重なりて遮りたれば、一歩も進みたまふこと能はざるに至りたり。されど神々は何れも神世に於ける無双の英雄神におはしましければ、かかる曲津神の全力をつくしての防禦も何のものかはと、強行的に生言霊を宣り上げながら各自に進ませ給ふぞ雄々しかりける。
 ここに霊山比古の神は、駒を小笹ケ原の楠の樹蔭に遊ばせ置き、右側の谷間を強行的に攀ぢ登らせ乍ら、心静かに言霊歌を詠ませ給ふ。
『白馬ケ岳はさかしとも
 魔棲ケ谷は深くとも
 千引の巌はさやるとも
 山気は怪しく濁るとも
 主の大神のヲの声に
 なり出でここに霊山比古の神と
 御名を賜ひし吾なれば
 如何でひるまむ魔の山も
 霊の神山と浄めつつ
 万里の島根の雲霧を
 生言霊に伊吹き払ひ
 雲霧隈なく晴らしつつ
 国土にわざ為す太刀膚の
 大蛇を始め肝向ふ
 心きたなき大蛇の輩を
 言向け和しならざれば
 わが言霊の剣もて
 百段千段に斬り放り
 国土の災をば永久に
 除きまつらむ惟神
 神は吾等と倶にあり
 吾はもとより主の神の
 ヲ声の言霊御子なれや
 永久に鎮まる主の神の
 貴の宮居なり生の宮居よ
 かくも尊き言霊の
 水火を保ちて世に出でし
 われは真言の主の神の
 貴の御樋代御手代よ
 ああ勇ましき今日の旅
 魔神は如何にさやるとも
 大蛇の荒びしげくとも
 百津石村の千引巌
 吾等が行手を囲むとも
 何かあらむや言霊の
 貴の剣をぬきかざし
 力限りに進むべし
 ああ面白や面白や
 天地開けし初めより
 かかるためしはあら尊
 万里の島根を永久に
 うら安国と定むべく
 魔神の征途に向ふこそ
 実に勇ましき次第なり
 ああ惟神々々
 生言霊に幸あれや』
 かく御歌詠ませ給ひつつ  さしもに嶮しき荊蕀の道を
 深谷川に添ひ乍ら  ただ一柱悠々と
 進ませ給へば曲津見の  群は見上ぐるばかりの巨石となり
 幾百千とも限りなく  道の前途を塞ぎつつ
 崩れかからむと揺ぎ出す  その光景の凄じさ
 霊山比古の神は曲津見の  いたづらならむと恐れげも
 なく巌をば飛び越えて  登らせ給へば百千々の
 千引の巌は各も各も  綿の如くにゆるぎ出し
 事の意外にあきれたる  その活劇のをかしさに
 霊山比古の神は其の中の  最も巨大なる巌の上に
 突つ立ち給ひつつ  化身の巌を悉く
 タトツテチ、カコクケキと  生言霊を宣り上げて
 真言の巌と為し給へば  さすがの邪鬼も動き得ず
 かすかに呻吟の声たてて  進退不動となりにける。

『曲津見の醜の奸計の浅はかさ
  われを奸計らひ謀られけるも

 曲津神は数の限りを集めつつ
  巌となりてわれにさやれり

 さやりたる曲津見の神の化け巌を
  わが言霊に真巌と固めし

 かくならば曲津神等も動くべき
  力なからむああ面白し

 曲津神の奸計は深く見ゆれども
  生言霊に容易く亡ぶる

 亡ぶべき運命を持てる曲津見の
  雄猛びこそは憐れなりけり

 わが立ちしこれの巌も曲津見の
  中に勝れし輩なりける

 東側の谷間の悪魔ことごとを
  率ゐし曲津を足下にふまへるも

 曲津神は身動きならぬ常巌と
  なりてかすかにうめきゐるかも』

 かく歌はせ給ふ折しも、百千の巌は谷間に向つて百雷の落つるが如き大音響をたて、佐久那太理に落ちくだち始めたり。
 霊山比古の神は、この光景を面白しと大巌の上に立ちて瞰下し給ふ折しもあれ、三柱比女の神は静かに登り来まし、千引の巌に圧せられ泣き叫び給ふ声、天地も割るるばかり聞えける。ここに霊山比古の神は三柱比女神を救はむと、巨巌の上より飛び下り給はむとせしが、俄に心付き給ひて、待てしばし、三柱の比女神は楠の大樹の下蔭に言霊照して鎮まりいませば、この谷間を登り来まさむ理由なし。曲津神は一計を案じ、吾目をくらまし、三柱比女神と見せかけわが救ひゆく谷道に、上より巨巌となりし悪魔は落ち来て、わが気魂を砕かむ奸計なるべしと思召すより、平然として三柱の神の悲鳴を瞰下し給ひつつ御歌詠ませ給ふ。

『三柱比女の神にはあらで醜神の
  醜の奸計よ面白きかな

 如何程に泣き叫ぶとも曲津神の
  醜の奸計よ比女は無事なり

 比女神をわれ救はむと下りなば
  これの巌はわれを打つべし

 永久にこの巌ケ根を地深く
  埋めて千代のこらしめとせむ』

 ここに霊山比古の神は、大巌の上に四股踏みならし給へば、未だ地稚きこの谷川辺は、一足踏ます毎に巨巌は土中に一尺余りも、め入り込みて遂には其の表面を地上に現はすばかりとなりにける。
 ここに霊山比古の神は、この巌を憩所とし、暫し水火を休めて、作戦計画に時を移し給ふ。折しもあれ、

『霊山比古神の功の尊さを
  見むとてわれは天翔り来つ

 清水湧く泉の森を立ち出でて
  われいや先に此処に来つるも

 かくの如功のしるき汝なれば
  いざや進まむ竜の巌窟へ

 われこそは御樋代神の田族比女よ
  ゆめ疑ふな霊山比古の神』

 霊山比古の神は御歌もて応へ給ふ。

『御樋代の神と白すは偽りなるよ
  わが眼は清しわが魂明し

 曲津見は御樋代神と身を変じ
  われ亡ぼすと奸計み居るも

 わが敏き眼迷はさむとする曲津神の
  奸計の罠の浅はかなるも

 真汝は御樋代神にあるならば
  わが言霊に応へまつれよ

 カコクケキ輝き渡る主の神の
  水火の力に曲津を照らさむ

 汝こそは魔棲ケ谷にたてこもる
  竜に仕ふる魔神なるべし』

 かく歌ひ給へば、御樋代神に変装したる邪神は、何の応へもなく、言句つまり、身体震ひ戦き、次第々々に姿細り、煙の如く消え失せにける。

『面白し曲津の神の奸計は
  今や煙となりて消えぬる

 百千々の巌と変り三柱の
  比女神と化りさやぐ曲津かも

 曲津見は再び御樋代神となり
  われ悩ますと現はれしはや

 言霊の水火の力に敵しかねて
  煙と失せけり曲津見の神は

 白馬ケ岳百谷千谷に潜みたる
  曲津はしきりに黒雲吐くかも

 曲津神もここを先途と戦ふか
  百谷千谷に黒雲たちたつ

 巌となりてころげ落ちたる曲津神の
  猛びの音は天にとどけり

 いざさらば生言霊の剣もて
  曲津の砦に直に向はむ

 見渡せば千峡八百峡ことごとく
  あやめもわかぬ黒雲包みぬ

 わが立てるこの巌ケ根の四方八方は
  雲霧晴れてそよ風渡るも

 三柱の比女神もしも登りませば
  われは魔神にあやまたれけむ

 三柱の神は何処までも動かじと
  誓ひ給へばわれ憚らじ

 三柱の神の悩みと見せかけて
  われを奸計らふ曲津ぞ浅まし

 御樋代の田族の比女の神柱と
  なりて曲津は欺かむとせり

 田族比女神は泉の清森に
  いまして光を送らせ給ふも

 曲津神の奸計は深く見ゆれども
  為す業見れば浅はかなるも

 曲津見の一部は巌と固まりて
  わが魂線はしばし休らふ

 今よりは向つ谷辺に渡らひて
  保宗比古の神業たすけむ』

(昭和八・一二・一五 旧一〇・二八 於大阪分院蒼雲閣 林弥生謹録)
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