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文献名1霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
文献名2第3篇 善戦善闘よみ(新仮名遣い)ぜんせんぜんとう
文献名3第17章 剣槍の雨〔1949〕よみ(新仮名遣い)けんそうのあめ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
保宗比古の神は、進軍歌を歌いながら、谷間伝いに登っていたが、霊山比古が追い払った曲津神の巌が、前後左右に、ものすごい音を立てて落下してきた。その巌つぶての中に、御樋代神・田族比女の神が、巌に圧せられている様が見えた。

とっさに助けに出ようとする保宗比古だったが、空より「待て」と大喝一声が聞こえた。保宗比古は、御樋代神は泉の森の本営にいることを思い起こし、これは曲津神の計略であることを悟ったのである。

保宗比古は、その計略を見破ったと歌に歌うと、曲津神は必死の力を集め、攻撃をはじめた。にわかに黒雲が沸き起こってあたりも見えないほどの闇となり、雨がざっと降り出し風は巌も吹き散らすほどとなり、槍の雨、剣の雨を保宗比古の身辺に降らせた。

保宗比古は猛烈な邪気に囲まれて呼吸もつまり、言霊を使用することもできなくなり、あやうく曲津神のために死に至ろうという状態になってしまった。

そこへ、泉の森の方から、巨大な火光がごうごうと大音響を立て、天地を震動させながら、保宗比古の神の頭上高く光り、前後左右に舞い狂った。すると、谷間の邪気、雨、槍剣の嵐もたちまちに止み、太陽の光がくまなく照りわたった。保宗比古はたちまち心身爽快となって、大勇猛心によみがえった。

保宗比古は、思い上がりの心が曲津神に付け入る隙を与えたことを反省し、また御樋代神の神力をたたえ感謝し、今の戦いを述懐しながら、神言を宣りあげつつ、魔棲ケ谷の森林さして、登って行った。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月16日(旧10月29日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者白石恵子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月30日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 664頁 修補版 校定版289頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7717
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本文 『主の言霊に生り出でし
 紫微天界の中にして
 万里の海に浮びたる
 万里の島根は地稚く
 国内未だに定まらず
 雲霧四方に塞がりて
 時じく邪鬼は跳梁し
 森羅万象の生命を
 損ひ破る忌々しさに
 御樋代神と生れませる
 田族の比女の神柱
 此土の司とましまして
 森羅万象を守らむと
 万里ケ丘なる聖所に
 仮の御舎建て給ひ
 十柱神を従へて
 朝な夕なに太祝詞
 宣らせ給へど如何せむ
 国土の初めに生れたる
 邪気のかたまり太刀膚の
 醜の竜神大蛇等は
 吾物顔に跳梁し
 万里の島根は常闇の
 淋しき世界となりにけり
 田族の比女の神司
 この惨状を除かむと
 いよいよ十柱神々を
 従へ泉の森林に
 其の本営を定めまし
 白馬ケ岳の南側の
 魔棲ケ谷に立て籠る
 醜の曲津に言霊の
 征矢を放ちつ照らさせつ
 吾等八柱神司
 いよいよ魔棲ケ谷の奥深く
 進ませ給ふ今日こそは
 天地開けしはじめより
 例もあらぬ神業ぞ
 ああ惟神々々
 主の大神の言霊の
 水火の幸ひいちじるく
 八十の曲津を悉く
 言向け和せ此の国土の
 雲霧も隈なく掃蕩し
 心安国の心安く
 生きとし生けるものみなの
 生命を永久に守るべく
 吾言霊に極みなき
 生命と光を賜へかし
 谷の流れは淙々と
 木霊に響き山風は
 吾等の前途に吹き荒ぶ
 八十の曲津は今日の日の
 言霊戦に辟易し
 周章狼狽せし結果
 いろいろ雑多に身を変じ
 あらゆる詐術を施して
 必死となりて防ぐなる
 此の首途の面白さ
 曲津の奸計の深くとも
 魔棲ケ谷は暗くとも
 谷の流れは濁るとも
 道の難所は多くとも
 如何で恐れむ言霊の
 水火の力にいや進み
 曲津の砦に立ち向ひ
 生言霊の光もて
 根本的に顛覆し
 此の世の害を除くべし
 吾等は神の子神の宮
 生言霊の水火かりて
 現はれ出でしものならば
 進まむ道に仇をなす
 曲津はことごと消え失せむ
 ああ面白や勇ましや
 神の依さしの今日の旅
 守らせ給へと主の神の
 御前に慎しみ願ぎ奉る
 御前に慎しみ願ぎ奉る』
 斯く歌ひつつ、保宗比古の神は谷間を伝うて登らせ給ふ折もあれ、霊山比古の神の神力に、巌と固まりし曲津の化身なる石村は、雨霰と谷底に向つて矢を射る如く急転直下し来り、前後左右に落下するさま、百雷の一時に轟く如く、百狼の一時に吠え猛るが如く、川底の石と石と相打ちて迸る火光は、恰も電光の閃けるが如くにして、其凄惨のさま、形容すべからざるに到りける。岩飛礫の雨の中に悲鳴をあげて号泣する女神あり。保宗比古の神は、声する方に眼を注がせ給へば、豈計らむや、御樋代神にまします田族比女の神は、巨巌に圧せられ九死一生の苦難に遇ひ給ふにぞありける。
 保宗比古の神は、素破一大事、身命を賭しても御樋代神の御身を救ひ奉らむと、今や谷間に向つて飛び込まむとし給ひし刹那、何神の声とも知らず、空より一口「待て」との大喝一声耳に響きければ、保宗比古の神は、はつと気が付き、御樋代神は泉の森の本営におはしまして、一歩も進ませ給はざれば、かかる谷間におはす筈なし、全く醜神の吾等を苦しめむとする奸計なるべしと思ほすより、俄に勇気百倍し、谷底に雨霰と時じく落ちくだつ巌の雨を打ち見やりつつ、平然として御歌詠ませ給ふ。

『面白し魔棲ケ谷の曲津見の
  力限りの演劇なるかも

 千引巌の降るよと見しは曲神の
  醜の輩の断末魔なる

 霊山比古神の宣らせる言霊に
  曲津は石となりて落ちしよ

 斯くならば此の谷沿ひ曲津見の
  その大方は潰えたるらし

 三柱の比女神たちの宣り給ふ
  生言霊かあたり明るし

 耳すませ滝津瀬の音を窺へば
  三柱神の御声響けり

 百条の谷の流れを集めたる
  この大谷の水は濁れり

 谷底ゆ湧き立つ霧は膨れ膨れ
  竜の形となりて昇り来

 面白く姿を変ふる谷の間の
  霧は次第に薄らぎゆくも』

 斯く御歌詠ませ給ふ折しも、空俄に黒雲襲ひ来り、咫尺を弁ぜず常闇となり、雷轟き電光走り、驟雨沛然として臻り、白馬下しの風は、さしもに重き千引の巌を木の葉の如く吹き散らし、槍の雨、剣の雨、間断なく保宗比古の神の身辺に向つて殊更しげく降り注ぎ、その危険到底言語のつくし得べからざるに迫りける。曲津神は此処を先途と全力を尽して保宗比古の神の征途を扼し、且つ滅亡せしめむと、必死の力をここに集注せしなり。
 保宗比古の神は、曲神の猛烈なる邪気に囲繞されて、呼吸つまり胸苦しく、頭は痛み出し手足の働き全く止まり、生言霊に使用すべき天の瓊矛なる舌は、硬ばりて如何ともするに由なく進退ここにきはまりて唯曲津見の為すがままに任せ死を待つより外何の手段もなかりける。
 かかる所へ泉の森の彼方より、巨大なる火光轟々と大音響をたて、天地を震動させながら、保宗比古の神の頭上高く光りて、前後左右に舞ひ狂ひければ、谷間の邪気は跡形もなく消え失せ、巌の雨も槍剣の暴雨も影をかくし、天地寂然として太陽の光隈なく伊照らし給ひければ、ここに始めて保宗比古の神の生言霊は活動の自由を得、身心忽ち爽快となりて、幾千億の敵にも屈せざる大勇猛心に蘇へり給ひけるぞ畏けれ。

『面白き曲津の神のすさびかな
  醜言霊のわざをぎ始めし

 剣槍巌の雨を降らせつつ
  吾身の周囲を驚かせける

 吾もまた醜の曲津に囲まれて
  身動きならず苦しみしはや

 曲津見も侮り難き力もちて
  神のいくさをなやませしはや

 時じくに生言霊を唱ふべき
  道忘れをり心あせりて

 吾神魂進退ここにきはまりしを
  助けたまひぬ御樋代の神は

 知らず識らず心驕りて曲津見の
  醜の奸計におちいりにけり

 今更に吾魂線の緩みたる
  こと悔ゆれども詮なし恥づかし

 今よりは心の駒を引きしめて
  時じく宣らむ貴の神言を

 曲津見の影はあとなく消え失せて
  谷間を渡る風の音清しき

 淙々と落ちて流るる滝津瀬の
  水音さへも冴え渡りける

 曲津見は第一戦に敗北し
  魔棲ケ谷の奥に隠れしか

 飽くまでも追撃戦を継続し
  神の依さしの神業を遂げむ

 向ふ岸の巌の上に言霊の
  光を放ちて霊山比古は立たすも

 霊山比古神の祈りに御樋代神は
  光となりて出でましにけむ

 霊山比古神の著けき神力に
  比べて吾は小さきものなり

 知らず識らず曲神をきたむと吾心
  驕りしものか憂き目に遇ひしよ

 第一の曲津の作戦かくのごと
  激しきものとは思はざりしよ

 次々に醜の曲津は全力を
  尽して吾等に迫り来るらむ

 寡をもちて衆に対する此の神業
  なみなみならぬ言霊戦なり

 霊山比古神の姿はつぎつぎに
  小さく見えつ高のぼりませり

 吾もまた生言霊の光にて
  これの谷間をのぼり進まばや

 谷の間を深く包みし黒雲の
  影消え去りて輝く日の光』

 保宗比古の神はかく述懐歌をうたひながら、岩根木根踏みさくみつつ神言を不断的に宣りあげて、魔棲ケ谷の森林さしてのぼらせ給ひける。
(昭和八・一二・一六 旧一〇・二九 於大阪分院蒼雲閣 白石恵子謹録)
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