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文献名1霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳の巻
文献名2第1篇 波濤の神光よみ(新仮名遣い)はとうのしんこう
文献名3第6章 焼野の月〔1962〕よみ(新仮名遣い)やけののつき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
国津神の村に一夜の宿を取った神々は、どことなく心が勇んで眠られず、焼野原をあちこち逍遥しながら、月を仰いで歌を歌っていた。

一同は、グロノス・ゴロスを追い払った月夜の美しさ、明日の曲神征途への抱負、顕津男の神の功の賛美、旅の述懐などを歌に歌った。

朝香比女の神はしづしづと現れ、明日の征途を前に眠れぬ神々たちをなだめる歌を歌った。最後に、野槌彦がおそるおそる一行の前に現れ、明け方も近いので、どうか床に入って休むよう一同に勧めた。

やがて夜が明けると、神々は国津神の歓呼の声に送られつつ、はるかの野辺に見える醜の沼をさして、馬上静かに進んでいった。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月20日(旧11月4日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者林弥生 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年5月5日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 56頁 修補版 校定版403頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7806
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本文の文字数2016
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本文  忍ケ丘の国津神が潜める村に一夜の雨宿りをなしたる神々は、何処となく心勇みて眠られぬままに、焼野原を彼方此方と逍遥しつつ、月を仰ぎながら御歌詠ませ給ふ。
 初頭比古の神の御歌。

『晴れ渡る月のしたびに照らされて
  われは焼野の風に吹かれつ

 大空の蒼の限りを照らしつつ
  焼野ケ原を月は覗けり

 焼き捨てし百草の根に黒々と
  積れる灰に光れる露かも

 余りにも月の光の強ければ
  烏羽玉の黒き灰も光りつつ

 森閑と静まりかへるこの丘の
  夕べの月は一入さやけし

 見の限り荒野の原の真中に
  忍ケ丘の松は生えたり

 眺めよき忍ケ丘の松ケ枝に
  今宵の月は宿り給へり

 松ケ枝を透して仰ぐ月光は
  千々に砕けて風にさゆれつ

 何時までも夜の明けざれと思ふかな
  忍ケ丘に冴ゆる月見れば

 一点の雲かげもなき蒼空の
  海渡りゆく月舟清し

 顕津男の神の御霊ゆ生れましし
  月は一入かげ美はしも

 天渡る月の面輪を眺めつつ
  顕津男の神の功を偲ぶも

 西方の国土にまします顕津男の
  神も今宵の月見ますらむ

 遥々と遠の海河渡り来て
  忍ケ丘の月を見るかな

 グロノスやゴロスのかげも消え失せて
  四辺輝く月の荒野よ

 国津神も黒雲散りし大空の
  今宵の月を初めて見るらむ』

 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『小夜更けて眠られぬままに起立の
  われは忍ケ丘に登りし

 丘の辺の窟を立ち出で露光る
  松の梢の月を見るかな

 松ケ枝に月をかけつつ外しつつ
  忍ケ丘に遊ぶは楽しも

 明日の日の健びおもひてわが心
  いきりたちつつ眠られぬかな

 目路遠く輝く沼の水底に
  潜める曲津も月を見るらむ

 輝ける月の面輪に照らされて
  沼の曲津は驚きゐるらむ

 今宵われ沼のほとりに進まむと
  心はやれど御許しなきも

 そよそよと夜半吹く風の音清み
  御空に月は軽くふるへり

 初夏ながら未だこの島は春なりき
  鷹巣の山に朧の雲湧く

 昼の如明るき野辺にわれたちて
  西行く月を惜しみけるかも

 見の限り御空の蒼にわが魂は
  ひたされにつつ蘇りけり

 明けぬれば沼の魔神を罰めむと
  心の駒ははやり立つなり

 御樋代の神の御許しあるならば
  明日をも待たで進まむものを』

 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『南の御空の果てにぼんやりと
  薄ら白雲おきたちにけり

 白雲は次第々々に拡ごりて
  月のかたへに及びけるかも

 大空に白玉真玉かけし如
  輝き給ふ今宵の月の男

 月読の舟の明るさわが魂は
  乗りて進むも高地秀の峰に

 高地秀の峰より天降らす御樋代神の
  御魂照らして清き月はも

 いろいろの艱みを忍ケ丘に来て
  伊吹き払ひぬ松吹く風に

 右左虫の声々喧ましく
  常世の春を寿ぎにける

 種々の虫の音さやかに聞えけり
  焼野ケ原に命保つか

 吹く風に火は力得て荒野原の
  百草千草焼きつくされぬ』

 天晴比女の神は御歌詠ませ給ひぬ。

『爽かに晴れ渡りたる大空を
  薄ら白雲包まむとすも

 白雲は御空に軽く遊びつつ
  月の光にさやらざりけり

 顕津男の神の御霊と天渡る
  月読の舟は冴えきらひつつ

 澄みきらひ澄みきらひたる大空を
  澄みきる月の渡る清しさ

 草枕旅の夕べを大空の
  月に照らされ蘇へりつつ

 駿馬の嘶きかそかに聞えけり
  月夜に駒は目を醒しけむ

 国津神の安き眠りを醒しつつ
  嘶く駒の心なきかな

 御樋代の神の御息は静かなり
  草の枕にみ寝ましながらも』

 かく歌ひ給ふ折しも、御樋代神は夜半の眼を醒させ給ひ、御髪の乱れを繕ひながら静々と四柱の神の月に憧れゐる側近く現はれ給ひ、

『四柱の神は夜更けを眠らずに
  月照る丘にさまよへるかも

 虫の音もひたにしづまる真夜中を
  休ませ給へ明け近からむを

 明けぬれば生言霊のあらむ限り
  言挙げすべき公等ならずや

 草も木も安く眠れる小夜更を
  ささやき給ふはいぶかしきかも

 明けぬれば醜の魔神と戦ひて
  烏鷺を定むるその身ならずや』

 初頭比古の神は御歌に酬へて、

『余りにも空行く月のさやけさに
  わが魂線は蘇へりつつ

 一夜をわれ眠らずも言霊の
  戦に立てば必ず勝たむ

 二夜ともなき望月の光なれば
  眠らむとして眠らえぬわれ』

 かく歌ひ給ふ折しも、国津神の野槌彦は恐る恐る五柱の神の御前に這ひより、

『久方の天津神たちうら安く
  これの清床に休ませ給へ

 大空の月はさやかに照れれども
  明け方近し御床に入らせよ』

 漸くにして、忍ケ丘の夜は明けぬれば、ここに神々は国津神の歓呼の声に送られつつ遥の野辺に水面輝く醜の沼を眺めつつ、馬上静かに進ませ給ひける。
(昭和八・一二・二〇 旧一一・四 於大阪分院蒼雲閣 林弥生謹録)

     ○

 天祥地瑞第六巻第一篇の口述を終りたる午後六時なりき。分院の清庭に立ち出で見れば、旧十一月四日の上弦の月の右方下に太白星の影附着し、又五寸ばかり上方に稍光薄き星一つ輝ける珍しき御空を仰ぎつつ世の移り行く非常時日本の空気を悟りたり。
            口述者識
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