一行十二柱の神々は、黄昏の中、常盤樹茂る広い森かげに安着した。国土がまだ稚い島にもかかわらず、松の幹は太く所狭しと生い茂り、土一面の白砂は、白銀を敷き詰めたようで、所々に湧き出る清水は、底の真砂も見えるほどに、夕月の影を映して鏡のように輝いていた。
この森のところどころに空き地があって、居ながらに空を仰ぐことができるのであった。二柱の御樋代神は、笠松の根株に萱草を敷いて、安らかに息をつき、歌を歌いあった。
朝香比女の神はこの森の深さとすがすがしさを称える歌を歌った。葦原比女は、朝香比女の邪神を追い払った活躍を感謝し、真火の燧石の神徳をたたえた。
従者神たちも、星月を眺めながら、あるいは述懐し、あるいはすがすがしい森の様子を歌に歌いこんだ。そうしているうちに次第に夜はふけていった。
やがて東雲の空を寿ぎながら、十二柱の神々は、生言霊の神嘉言を宣り終わると、駒にまたがり、鷹巣の山の麓にある館をさして急ぎ進んでいった。