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文献名1霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳の巻
文献名2第3篇 葦原新国よみ(新仮名遣い)あしはらしんこく
文献名3第14章 花見の宴〔1970〕よみ(新仮名遣い)はなみのえん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2017-11-12 15:35:56
あらすじ
葦原比女は、桜ケ丘の聖所に朝香比女の神一行を招いて大宴会を開いた。国津神たちは、高地秀の宮から天津神が救いにやってきたと聞いて、集まって踊り狂い、感謝と歓喜を表した。

葦原比女のもてなしに朝香比女は感謝の歌を歌った。そして、田族比女の神から送られたダイヤモンドを、天の真火の火打石とともに、贈り物として葦原比女に与えた。

そして、ダイヤモンドの光よりも、真火こそが真の夜光の玉である、と歌い諭した。

葦原比女をはじめ、従者神たちは感謝の意を歌に表した。一方、朝香比女の従者神たちも、桜ケ丘ののどかで美しい様を詠み、葦原比女の神にもてなしへの感謝を表した。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月22日(旧11月6日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者森良仁 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年5月5日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 92頁 修補版 校定版244頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7814
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本文  葦原比女の神の廿年来鎮まりいます桜ケ丘の聖所は、面積比較的広く、東西一里南北二里に亘り、梅、桃、桜、楓、無花果、橘、椿、山吹等の果樹の彼方此方に塩梅よく植ゑ込まれ、其周囲には曲津神の襲来を防ぐべく深き濠を囲らし、表門には一筋の岩以て造りたる橋を架け渡し、風光絶佳の妙境なりける。今を盛りと咲き揃ひたる梅、桃、桜の花は芳香を四辺に薫じ小鳥は歌ひ蝶は舞ひ、此聖所の彼方此方には丹頂の鶴、鷺など春の陽気をうたひ喜び遊べる状態は、恰も広重の画を見る如き光景なりける。
 葦原比女の神は遠来の客を心の限りを尽して犒はむとし、諸神に命じて種々の珍しき果物等を横山の如く置き足らはし、五柱の神々を正賓として大宴会を開かせ給ひける。
 茲に数多の国津神は、高地秀の宮居より救ひの神現れますを伝へ聞き、先を争ひ集ひ来り、濠の外側に「ウオウオ」と叫びながら踊り狂ひ跳び廻り、感謝と歓喜の至誠を表しにける。
 茲に朝香比女の神は百花の爛漫と咲き乱れたる状を珍しみ給ひ、庭の面に立出で給へば、数多の国津神は濠を隔てて其輝ける御姿を拝し奉り、天の岩屋戸の開けたる如く、各自に言霊のあらむ限りを鳴り出で、仰ぎつ俯しつ感謝と歓喜の声は、天地も為に覆へるばかり思はれにける。
 朝香比女の神は四辺の珍の景色を暫し眺めつつ再び八尋殿に帰り、設けの席に着かせ給へば葦原比女の神は敬意を表すべく、あらむ限りの盛装を尽して種々の美味物を御手づから朝香比女の神に奉り、且つ打解けて国土の現状など包まず隠さず語らひ給ふにぞ、朝香比女の神も其隔てなき真心を甚く喜ばせ給ひ、御歌もて心のたけを宣らせ給ふ。

『隔てなき葦原比女の神宣
  聞きて吾魂清しく生くるも

 風光の殊に勝れし桜ケ丘の
  聖所に吾は命を延ばせり

 心あつき神々等の待遇に
  感謝の涙湧き出づるかも

 美はしき浄き装ひ凝らしまして
  吾等を迎へし神の尊さ

 いつの世にか吾忘れめや清しかる
  花の神苑に一日を遊びて

 美はしく装ひませど光ある
  宝石の飾りなきが床しき』

 葦原比女の神は御歌もて酬へ給ふ。

『葦原の国土には葭葦萱草の
  生ふるのみにて宝石はなし

 音に聞く万里の島根はダイヤモンド
  其他の宝石沢なりと聞く』

 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『この光るダイヤモンドは万里の島の
  田族比女より賜はりしはや

 吾こそは光の神となりければ
  ダイヤモンドの光はいらなく

 此玉を燧石と共に葦原比女の
  神の御前に贈らむと思ふ

 いざさらば受けさせ給へ常闇の
  夜さへ光るダイヤモンドよ』

 葦原比女の神は感謝の意を表しながら御歌詠ませ給ふ。

『葦原の国土の鎮めの燧石を
  賜ひし上に玉を賜ふか

 有難し公が賜ひし此玉を
  国土の宝と永遠に伝へむ

 月のなき夜は此玉を力とし
  曲津を避けて国土を守らむ』

 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『吾贈るダイヤモンドの光よりも
  真火こそ夜光の玉にぞありける

 此真火の功によりて常世ゆく
  闇の幕も清く晴るべし』

 葦原比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『真言ある公の御教畏みて
  国津神等を導かむと思ふ

 竜大蛇醜の曲津見も今日よりは
  公の光に滅び行くべし

 此国土を豊葦原の中津国と
  永遠に定めて国魂生まむ

 五千方里の国土広ければ端々は
  未だ潜むなり醜の曲津見は

 今日よりは百神等と村肝の
  心を合せ曲津を罰めむ』

 真以比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『吾公は夜光の玉を得ましけり
  朝香比女神の心の光に

 曲津見を焼き尽すべき燧石と
  玉を賜ひし光の神はや

 常闇を隈なく照らす御光の
  神現れましぬ桜ケ丘に

 春風に桜の花弁ひらひらと
  散り込みにけり八尋の殿に

 盃の波に一ひら浮きて匂ふ
  桜は国土の花にぞありける

 葦原の国土の標章と今日よりは
  桜の花を旗に印さむ』

 成山比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『葦原の国土の曲津見言向けし
  光の神と伊向ひ居るかも

 何よりも尊き玉を賜ひけり
  真火の燧石と夜光の玉を

 吾公の御胸に翳し花の丘に
  立たせ給へば美はしからむを

 比女神の髪の翳しの桜花も
  夜光の玉には及ばざりける』

 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『此処に来て春の弥生の心しぬ
  花の林に百鳥の声

 百鳥は花の梢を飛び交ひつ
  吹き来る風に香りを散らせり

 いつまでも花の盛りのあれかしと
  願ふは一人吾のみならじ

 万里の島は初夏なりしに此処に来て
  若やぎにけり春の花見つ』

 栄春比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『春の日の栄えを吾は目の前り
  桜ケ丘に清しみ見るも

 御光の神の現れます此丘は
  梅桃桜一度に笑へり

 花笑ふ春の弥生を嬉しみて
  小鳥はうたひ蝶は舞ふなり

 葦原の国土の常世の春うたふ
  山鶯は神の御声か

 鶯も迦陵頻伽も花の春を
  終日あかずうたひ続くる』

 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『荒れ果てし此新国土にも斯の如
  聖所ありとは知らざりにけり

 葦原の此処は地上の天国か
  国津神等の歓ぎの声すも

 常磐樹の松の緑の下蔭に
  百花千花咲き匂ひつつ

 地の上に天国建つる御樋代の
  神の功と仰がれにけり

 願はくは幾億万年の末までも
  梅桃桜は伝へたきかな

 仰ぎ見る紫微天界の中にして
  斯く麗しき神苑は見ざりき

 八十の国八十島まぎて吾は今
  地上天界の苑に遊びぬ

 仰ぎ見る雲井の空に屹然と
  春めき立てる鷹巣の山かも

 白雲の帯を締めたる鷹巣山の
  春の姿は一入さやけし

 今日までは鷹巣の山も黒雲に
  非時包まれ雨を降らしつ

 盃の数重なりて吾は今
  心狂はしく勇みたつなり』

 八栄比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『広々と廻れる濠の面蒼み
  真鯉緋鯉の跳ぬる春なり

 水の面に跳び上りつつ真鯉は
  春の光に鱗を照らせり』

 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『聞くからに名も怖ろしきグロノスや
  ゴロスの潜みし島とは思へず

 斯の如き浄き清しき桜ケ丘に
  春の旅路の疲れを慰む

 気魂も神魂も春の光見つ
  蘇りたる桜ケ丘かも

 山も野も春霞してそよろ吹く
  風は千花の香り含めり

 はしけやし桜咲くなり此丘に
  御樋代神と春を親しむ』

 霊生比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『曲津見の醜の荒びに艱みてしを
  安けく春に今日を逢ひける

 御光の神の天降りの無かりせば
  桜の薫る春は来らじ

 七八年梅桃桜の花咲かず
  風冷えにつつ曇らひにつつ

 花の木は数多あれども曲津見の
  邪気に曇りて春はなかりき

 昨日まで冷え渡りたる天地の
  冬は忽ち春となりける

 二十年を此島ケ根に住みにつつ
  花咲く春に逢はざりにけり

 梓弓春の永日も傾きて
  黄昏の幕は降りにけらしな

 天津日は隠ろひ給へど大空を
  渡らふ月の光のさやけさ

 常磐樹の森に眺めし月舟を
  今宵は桜ケ丘に見るかも

 桜木の花の梢の露照りて
  其美はしさ弥まさりつつ

 御空行く月も愛でさせ給ふらむ
  桜ケ丘の花の盛りを』

 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『珍しき月の光に照らさるる
  夜の桜は又も珍し

 草枕旅の疲れも桜ケ丘の
  月と花とに忘らひにけり

 爛漫と咲き乱れたる梅桃桜の
  春の姿を公に見るかな

 月も花もたぐはむ術もなかるべし
  朝香の比女の神の光に

 葦原の国土の真秀良場に新しく
  清しく建てる八尋殿はも

 八尋殿に夕を立ちて花に照る
  御空の月に吾魂生かしつ

 いつまでも花は梢に止まらで
  嵐に散り行く思へば惜しきも

 鶯も迦陵頻伽も百鳥も
  今日の一日を楽しく遊べよ

 今日こそは花の真盛りよ明日されば
  此清庭に花筵せむ』

 斯く神々は月と花とを賞め讃へ乍ら、終日旅の疲れを休らひ、常世の春を言祝ぎ給ひける。
(昭和八・一二・二二 旧一一・六 於大阪分院蒼雲閣 森良仁謹録)
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