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文献名1霊界物語 第79巻 天祥地瑞 午の巻
文献名2第1篇 竜の島根よみ(新仮名遣い)たつのしまね
文献名3第6章 再会〔1987〕よみ(新仮名遣い)さいかい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
一方、水火土(しほつち)の神に送られて竜宮島に上陸した艶男(あでやか)は、鉄門の前に立って名乗りをあげた。

門を守る女神は、水火土の神と艶男の来訪を、大竜殿に居た弟姫神に奏上した。弟姫は、兄の来訪を知って恋しさとうれしさ、恥ずかしさが一度にあふれたが、表には現さず、国津神の長の子をねんごろに迎え入れるように命じた。

竜神の案内で、水火土の神と艶男は大竜殿に進み入った。そして、奥殿で簾ごしに妹の弟姫神と言葉を交わした。二人は互いの関係の清さを水火土の神の前に明かした。そして艶男は妹が今は竜宮島の弟姫神として竜神王に嫁いだことを祝った。

そこへ、大竜身彦の神が、重臣たちを従えて戻ってきた。大竜身彦の命は、弟姫神の兄の来訪を喜び、艶男を宴に招待した。一行は弟姫神について、大奥に進んでいった。
主な人物 舞台 口述日1934(昭和9)年07月16日(旧06月5日) 口述場所関東別院南風閣 筆録者林弥生 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年10月25日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 195頁 修補版 校定版114頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7906
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本文  水火土の神に送られて竜宮島に上陸したる艶男は、鉄門の前に立ち、
『われこそは国津御祖の神の子よ
  早く鉄門を開けさせ給へ

 麗子のあとを尋ねて今此処に
  来りしものよ鉄門早や開け』

 門の中より、女神の声として、
『いづ方の神か知らねど此の鉄門
  主の許しなければ開かじ

 今しばし待たせ給はれ弟姫の
  神の御前に伺ひ来らむ』

 水火土の神は声巌かに門外に立ち、
『われこそは水火土の神よ竜神の
  王に知らせよ人送り来つと

 竜宮の島を開くと大丈夫を
  われは導き此処に来れり』

 女神は急ぎ、やや長き城内を馳せながら、大竜殿の奥の間さして参入し、弟姫神の居間に拍手しながら、声も静かに歌もて奏上する。
『何神かわれは知らねど水火土の
  神に送られ門に立たせり

 御名を問へばわれは艶男と宣らしけり
  姫に会はむと待たせ給へる

 汀辺の鉄門を開きまつらむや
  御言聞かむとわれは詣でし』

 弟姫の神は、恋しさと嬉しさ恥かしさが一度になり、顔の色までサツと変へながら、何喰はぬ顔にて、
『とにもあれかくにもあれやいち早く
  鉄門を開き迎へまつれよ

 大竜身彦は生憎伊吹の高山に
  籠らひ給へばゆきとどかねど

 ねもごろに待遇して来よ其人は
  水上の山の御祖の神の子よ』

 女神は、
『畏しや君の御言に従ひて
  われ速に迎へ来らむ

 御庭はいと広ければ急ぐとも
  半時ばかりは待たさせ給はれ』

 かく歌ひ終り、御前を罷り下り、人面竜身の体を前後左右にゆすりながら、汀の鉄門に近づき来り、中より閂を取り外し、満面に笑を湛へて、
『御祖神の御子におはすと宣りしより
  弟姫の神は喜びましける

 いざさらばわれは御供に仕へつつ
  君を御前に送りまつらむ

 水火土の神も諸共進みませ
  弟姫神は待たせ給へり』

 水火土の神は、
『いざさらば姫の言葉に従ひて
  艶男の君進みましませ

 われも亦御後に従ひ竜神の
  司の館に進みゆかなむ』

 艶男は道々小声にて歌ふ。
『ああいぶかしやいぶかしや
 大野ケ原の草の根に
 魂となりて言挙げし
 麗子姫は今此処に
 生命保ちてみまかりし
 われと再び会はむとは
 遠き神代の昔より
 例もあらぬ喜びぞ
 ああ夢なるや夢なるや
 夢か現かまぼろしか
 如何に考へすませども
 あの世の人となり果てて
 われに言とひすぐさまに
 火団となりて湖の上を
 たばしりゆきし麗子に
 又も此世に会はむとは
 思ひもよらぬ夢なれや
 水火土の神の御教に
 生きておはすと思へども
 なほ解きかぬる今日の謎
 さはさりながらわれとても
 一度は此世を去りしもの
 神の情に助けられ
 再びこの世に蘇り
 生きたるためしもあるものを
 麗子姫も其の如く
 何れの神にか救はれて
 この竜島に助けられ
 輝き給ふものならむ
 ああ訝しや訝しや
 夢の浮世と聞くからは
 夢路をたどる心地して
 夢の国なる夢の姫に
 会はむ今日こそ楽しけれ
 ああ惟神々々
 御霊幸倍坐世』
 ここに第二の楼門を潜り、金砂銀砂の敷きつめられし庭の真中を奥殿さして進み入る。
 奥殿の入口には、二人の侍女白き上衣に紅き袴を穿ち、少しく竜体の尻尾を現しながら、慇懃に迎へ、
『海原をはろばろ越えて天降りましし
  君のよそほひ尊きろかも

 この島は弟姫神の出でましに
  総てのものは蘇りける

 水火土の神と諸共出でましし
  御祖の神の御子を拝む』

 艶男はこれに応へて、
『海原を水火土の神に救はれて
  珍の島根に渡り来つるも

 金砂銀砂きらめく庭をふみながら
  心清しく蘇りぬる

 弟姫の神と申すは水上山の
  麗子姫におはしまさずや』

 侍女神はこれに応へて、
『汝が君の言葉は正し弟姫は
  麗子姫と申しけるとか

 麗子姫は君のいでまし喜びて
  待たせ給へりいざ案内せむ』

 かく歌ひながら、水火土の神諸共に奥殿に導きゆく。
 弟姫の神は兄の訪ひ来りしを喜び給へども、すでに大竜身彦の命の妻となり、此国の司と仰がるる身の上なれば、如何に恋しき兄なればとて、昔の如く安々と語り給ふわけにもゆかず、又侍女従神たちにも大いに憚り給ひつつ、胸とどろかせ給ひける。
 兄妹は互に恋を語り合ひ、生命までもと誓ひし仲なれども、まだ父母の許しなければ一度の交りもなく、清浄潔白の間柄なれば、艶男も別に大竜身彦の命の妻となりしを恨む心もなく、釈然として簾の外より透し見ながら歌ふ。
『汝が身のかくれ給ひしたまゆらに
  心いらちてわれはさわぎぬ

 叢に潜める君の御魂と
  しばしのうちは語らひしはや

 火の玉となりて走れる君があとを
  尋ねて吾は此処に来にけり

 みまかりしならむと思ひてわれも亦
  玉耶湖水に身を投じけり

 折もあれ水火土の神に救はれて
  再び生命よみがへりける

 今の君は妹ならずこの国の
  司にまさばためらひ心わく』

 簾の中より、声さはやかに弟姫の神は歌ふ。
『いとこやの君の御顔すかし見て
  わが胸の火は燃えたちにけり

 しかはあれど互に清き仲なれば
  世に恥づるべき事はあらまし

 水火土の神のいませる御前に
  清き心を互に明かさむ』

 艶男は歌ふ。
『姫神の御言かしこし今よりは
  竜の島根の君と仰がむ

 村肝の心と心清ければ
  われは歎かじ生命死すとも

 この島に渡り給ひて間もあらず
  司となりし君ぞ雄々しき

 この状をわが父母に伝へなば
  喜び給はむよみがへる如』

 水火土の神、
『姫神の清き心の雄々しさを
  竜身の彦に詳細に語らむ

 水火土の神は二人のあかしせむ
  清き心の兄妹なるを』

 斯かるところへ、春木彦、夏川彦を先頭に、大竜身彦の命は秋水彦、冬風彦を後に従へ、悠々として帰らせ給ひ、この場の光景を見て、さも嬉しげに二人に目礼しながら、
『汝こそは水火土の神一柱は
  何れの神かよくも来ませる

 竜宮の島根は漸く開けたり
  弟姫神の貴の光りに

 弟姫の神に噂を聞き居たる
  艶男彦は君にまさずや』

 艶男は歌もて応ふ。
『われこそは麗子姫の兄にして
  艶男といふ国津神なり

 ゆくりなく麗子姫の後追ひて
  この島ケ根に渡り来つるも

 弟姫は汝が命の妻となりて
  仕へまつると聞くぞ嬉しき』

 大竜身彦の命は儼然として応ふ。
『親しかる兄妹二人この島に
  天降りましたる事のめでたき

 いざさらば奥に進ませ給へかし
  うましきものを品々進めむ

 水火土の神の功績伏し拝み
  嬉し涙にわれはくれつる』

 斯かるところへ、弟姫神は簾をさつと上げ、大竜身彦の命の前に慇懃に目礼しながら、
『わが君は帰りましけりわが君は
  心ほがらに兄に語らすも

 わが君の御心聞きて今更に
  嬉し涙にくれにけらしな

 いざさらば君に従ひ大奥に
  進みゆかなむ艶男の君と』

 艶男は直ちに歌もて応ふ。
『御後に従ひ行かむ大奥に
  先だちませよ弟姫の神

 わが前に進みましませ水火土の
  神は生命のみおやなりせば』

 ここに、二柱は弟姫神のしりへに従ひ、大竜身彦の命と共に廊下の階段をきざみながら、大奥さして進み入る。
 艶男は水火土の神に送られて
  汀の鉄門につきにけるかも

 姫神に導かれつつ又鉄門
  潜りて竜宮奥殿に入る

 金銀の砂を素足にふみながら
  弟姫の居間にとほされにける

 弟姫の神と言問ふ間もあらず
  大竜身彦は帰り来れり

 大竜身彦は二人の来訪を
  いたく喜び奥に案内す

 弟姫の神のみあとに従ひて
  水火土、艶男は大奥に入る。

(昭和九・七・一六 旧六・五 於関東別院南風閣 林弥生謹録)
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