竜の島根は、艶男が姿を消してより、大竜身彦の命と弟姫の神は奥殿深く姿を隠し、また七乙女の半分以上も姿を消してしまったため、火の消えたようなさびしい有様となってしまった。
七乙女のうち、取り残された撫子、桜木、藤袴をはじめ、島の姫神たちは、嘆きのあまり伊吹山の鏡湖の汀に集まり、天を仰いで日夜慟哭しながらおのおの述懐の歌を述べていた。
すると、鏡湖の水を左右に分けて昇ってきた女神は、海津見姫の神であった。竜神族の女神たちははっとひれ伏して敬意を表した。
海津見姫の神は、天の数歌を授け、人の姿になるために、人身となるまで言霊を宣り上げるようにと諭した。
これより、島根の竜神たちは、昼夜絶えることなく天の数歌を宣りあげると、一年後には完全な人身と生まれ変わった。竜の島は、宝の島、美人の島、生命の島と称えられるにいたった。