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文献名1霊界物語 第79巻 天祥地瑞 午の巻
文献名2第3篇 伊吹の山颪よみ(新仮名遣い)いぶきのやまおろし
文献名3第21章 汀の歎き〔2002〕よみ(新仮名遣い)みぎわのなげき
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
燕子花は最愛の夫に醜い竜の体を見られたことを恥じらい、大井ケ淵に見を投じて、これから先は淵の底から艶男の声を聞いて楽しみとするのみの生活を覚悟した。燕子花は竜体に還元してしまったので、人語を発することができなくなってしまった。そして、心の内で歎きの述懐歌を歌った。

山神彦、川神姫の二人は、夜中の出来事を聞き、驚きと歎きのあまり、表戸を固く閉じて七日七夜、閉じこもってしまった。艶男は突然の出来事に、驚き歎きつつ、朝夕に大井川のみぎわ辺に立って、追懐の歌を歌っていた。

水上山の政をつかさどる四天王は、あまりの異変に驚き、今後の処置を艶男に計ろうと居間を訪ねたが、もぬけの殻であった。驚いて、もしや艶男は燕子花の後を追って淵に身を投げようとしているのではないかと、急いで大井川の淵瀬に来て見れば、はたして艶男は両岸をはらし、涙の袖を絞って歎いていた。

四天王のひとり、岩ケ根は背後から艶男を抱え、残された御子や父母のことを思い、おかしな心を起こさないように諭した。艶男は、もはや自分には死しかないと思い定めたのだ、と答えた。

続いて、四天王のひとり真砂もまた、艶男をいさめたが、艶男は、もはや死に思いを定めたので、あとは自分に代わって竜彦を育ててくれ、と答えた。

さらに、真砂、水音は艶男を諭す歌を歌い、ようやく艶男は、自分も人の情けを知る身であると答え、一行は館に帰り行くこととなった。
主な人物 舞台 口述日1934(昭和9)年07月20日(旧06月9日) 口述場所関東別院南風閣 筆録者谷前清子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年10月25日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 269頁 修補版 校定版393頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7921
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本文  燕子花は初産の苦しさに疲れ果て、御子を抱きしまま、ぐつたりと前後を忘れて眠り居たりしが、最愛の夫艶男に吾醜き元の姿を見つけられしをいたく恥らひ、斯くなる上は何時までも夫の愛を保つ由なく、又吾身のうら恥かしさを案じ煩ひの余り、大井ケ淵に身を投じて、全く元の竜体と変じ、とこしへに此淵に沈みて、艶男の声を忍び忍びに聞きつつ楽しまむものと覚悟を極めたりけるが、燕子花は最早竜体と還元したる以上、人語を発する由なく、心の中にて思ひのたけを歌ふ。
『背の君の情の露のかがやきて
  いとしき御子は今生れたり

 さりながら産みのなやみの苦しさに
  後前忘れて吾は眠りし

 眠る間を元つ姿を背の君に
  見られし後はせむすべもなし

 歎くとも及ばざるらむ吾姿
  君の眼にふれたる上は

 よしやよし元つ身体に還るとも
  君の情は永久に忘れじ

 夜な夜なの親しき枕も夢なりし
  今は現幽所をへだてて

 大井川水清ければとこしへに
  吾身の棲処にふさはしく思ふ

 背の君は言ふも更なり生れし子は
  肥立つにつけて吾を恨まむ

 国津神の妻とはなれど元つ身は
  いやしき獣の吾身なりけり

 背の君の幸を思ひて吾は今
  惜しき生命を捨てむとぞする

 吾魂のいのちは永久にこの淵に
  深く沈みて君を守らむ

 よしやよし浮名はいかに竜の身の
  恥を忍びて淵に沈まむ

 御父もおどろき給はむ御母も
  歎かせ給はむ今日の吾身を

 恐ろしき妻を持ちしと背の君は
  夜な夜な憂ひに沈み給はむ

 背の君の心思へばかなしけれ
  獣を抱きしと謗られ給へば』

 斯くの如くに忍び忍びに述懐を終へて、大井の川底深くその霊身は以前の竜体を保ちける。
 ここに山神彦、川神姫の神は、夜半の出来事を聞き、驚きと歎きに包まれ、人に顔見らるるも恥かしと、表戸を堅く閉して七日七夜をさし籠りけり。
 艶男は突然の出来事に、且驚き且あきれ且歎かひつつも、さすがは夫、妻のかなしき心を憐れみ、朝な夕な大井の川の汀辺に立ちて、追懐の歌をうたふ。
『あはれあはれ吾恋ふる妻は今いづこ
 朝な夕なを汀辺に
 立ちてし見れど影もなく
 涙は雨と降りしきり
 吹き来る風もさみしげに
 涙の頬をなでてゆく
 いかなる宿世の因縁か
 獣の身を持つ燕子花の
 やさしき姿にほだされて
 妹背の契り八千代までと
 誓ひしことの今は早
 淵の水泡と消えにけり
 ああ恋しもよかなしもよ
 汝が魂この世に生きて
 只一言のいらへごと
 つばらに述べよ燕子花
 よしやよし竜の姿になれるとも
 吾はいとはじ
 汝と吾と
 露の情に凝まりし
 貴の御子なる竜彦の
 日々の生ひたち玉の肌
 汝に見せたく思へども
 今はせむなし幽界の
 神となりつる汝なれば
 さはさりながら吾心
 汝が情を忘れかね
 朝夕川辺に迷ひ来つ
 くだらぬくり言くり返し
 せめては心のなぐさめと
 憂き年月を送るなり
 ああ燕子花よ燕子花よ
 汀に清く紫に
 匂へる花のそれならで
 同じ名を負ふ汝が身は
 今は敢なくなりしかと
 思へばかなしさ堪へがたく
 吾も汝が後追ひて
 これの淵瀬に入らむかと
 夕べ夕べをとつおひつ
 思案にくるる悩ましさ
 汝は知らずや聞かざるや
 ああ悩ましもかなしもよ
 生命死せむと思へども
 老いたる父母のおはすあり
 歩みもならぬ吾子あり
 せめて吾子の生ひ立ちを
 見とどけし上汝が後を
 慕ひて淵に沈むべし
 待たせ給へよ吾妻よ』
 あたりに人なければ、千万無量の思ひを並べて歎き居る。
 四天王の司等は、余りの異変に驚きの余り物も言はず、仮殿に集り青息吐息の態にて、この後は如何なり行くならむと歎き居にけり。斯くて在るべきにあらねば、艶男の君に今後の処置を計らむと居間を訪ぬれば、蛻の殻、驚きて、もしやもし若君は姫の後を追ひしにはあらずやと、岩ケ根は真砂、白砂、水音、瀬音の四天王を伴ひ、大井川の淵瀬に急ぎ来て見れば、艶男は両眼をはらし、涙の袖を絞りて何事かかこち居る。
 岩ケ根は差足抜足しながら艶男の側に近づき、背後よりむんずと身を抱へ、
『若君はここにいますか必ずや
  弱き心を持たせ給ふな

 姫君は水の藻屑となり給ひ
  君が心の苦しさを知る

 さりながら父母います御身なり
  夢魂を曇らせ給ひそ

 愛らしき稚子の生ひ立ち見る迄は
  止まり給へ弥猛心を

 いとこやの妻に別れし君なれば
  心を乱し給ふも宜よ

 罷りたる人は呼べども帰らまじ
  御国の為に思ひ直せよ』

 艶男は之に答へて、
『岩ケ根の厚き心は悟れども
  今の吾身は死より外なし

 姫の後追ひて一道に向はむと
  吾は心を定めたりける

 さりながらよくよく思へば父母の
  歎きは吾より深かるものを』

 真砂は、
『竜神の島より来たす姫なれば
  斯くなるべしとかねて思ひぬ

 さりながら世継の御子の生れませば
  水上の館は永遠に栄えむ

 この国の栄え思ひて若君よ
  暫し生命をながらへ給はれ

 若君に過ちあれば吾とても
  館に仕ふる顔はなし

 大井川底の心は知らねども
  深きは吾等が歎きなりけり

 若君の歎き宜よと思へども
  神の御為忍ばせ給へ』

 艶男は之に答へて、
『汝が言葉宜よと聞けど吾魂は
  震ひをののき死なまく思ふ

 汝等が心なやませ吾魂は
  悪魔の群に馳せ入りにけむ

 竜彦は二人が仲の遺児ぞと
  思へば安し生命死すとも

 汝等は吾に代りて竜彦を
  育みくれよ御代を継ぐまで』

 真砂は答へて、
『川底の白砂までも透きとほる
  大井ケ淵の今日は濁れる

 天津空に雲かさなりて小雨ふる
  淵の面に波紋描けり

 天地の神も歎かせ給ふらむ
  天津陽光も見えまさずして

 歎かひの雲に包まれ水上山
  貴の館は小雨降るなり

 春雨のしとしと降れる今日の日は
  君の涙か吾身の涙か

 吹く風も冷たくさみしこの朝を
  吾は川辺に袖しぼるなる』

 水音は歌ふ。
『大井川上津瀬に立つ岩ケ根を
  うつ水音も細く聞え来

 大井川水音静めて今日の日を
  歎くか御空ゆ細雨の降る

 かかる世にかかる歎きを見ることは
  水音吾も思はざりしを

 兎も角も若君の心和めむと
  探ねてここに吾等来にけり

 神々のかなしき心を憐れみて
  一先づ館に帰らせ給へ

 貴の子の御顔つらつら御覧し
  今日の歎きをなぐさめ給へ』

 艶男は之に答へて、
『川水の流るる見れば吾心
  死にたくなりぬかなしさ余りて

 さりながら吾も人の子情をば
  知らぬ岩木にあらずと知れよ』

 瀬音はかなしき声を張り上げて、
『滝津瀬の音も淋しく聞ゆなり
  燕子花姫の身罷りし日ゆ

 汀辺に咲ける菖蒲の紫も
  今日の歎きにしをれ顔なる

 兎にもあれ角にもあれや死は易し
  重き生命を捨てさせ給ふな

 天地の今や開けし心地かな
  君の心の岩戸開くれば

 吾等又心安んじ国の為
  館に長く仕へ奉らむ

 歎かひの雲を払ひて永久に
  これの館を照させ給へ』

 ここに岩ケ根他四人は、艶男の前後に附き添ひ、いそいそとして貴の館に帰り行く。
(昭和九・七・二〇 旧六・九 於関東別院南風閣 谷前清子謹録)
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