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文献名1霊界物語 第80巻 天祥地瑞 未の巻
文献名2第2篇 秋夜の月よみ(新仮名遣い)しゅうやのつき
文献名3第9章 露の路〔2013〕よみ(新仮名遣い)つゆのみち
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1934(昭和9)年07月27日(旧06月16日) 口述場所関東別院南風閣 筆録者内崎照代 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年12月5日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 336頁 修補版 校定版168頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm8009
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本文  ここに秋男一行は  月見ケ丘を後にして
 豊栄のぼる天津日の  光を頭に浴びながら
 露おく野辺をすたすたと  高き陸地を選びつつ
 右や左に折れくぐり  秋の栄の女郎花
 萩や桔梗におくられて  さも愉快げに進むなり
 秋男は声をはり上げて  心の丈をうたひつつ
 進みゆくこそ勇ましき。
『水上山を立ち出でで
 ふみもならはぬ大野原
 毒虫毒蛇をさけながら
 水奔草の害毒を
 ものともなさず進み来る
 道の行く手に黄昏れて
 月見ケ丘に一夜の
 露の宿りをたのみけり
 百花千花は丘の上に
 所狭きまで咲き匂ひ
 秋の夕の虫の音は
 清くさやけく聞ゆなり
 大空遥に見渡せば
 緑の空は弥高く
 雲の底ひは弥深く
 みなぎらひたる真中を
 無心の月は皎々と
 輝き渡り地の上の
 総てのものを照しけり
 吾等一行はこの丘に
 月を愛でつつ虫聞きつつ
 花の色香を称へつつ
 歌詠みあそぶ折もあれ
 一天俄にかき曇り
 黒雲四辺を包みつつ
 白銀なせる月かげも
 星ものこらず呑みほして
 闇のかたまり地に落ちぬ
 暗さはくらし吾々は
 声を力にかたり合ふ
 時しもあれや訝しき
 譏りの婆アがあらはれて
 口を極めて嘲笑する
 われ等はここに意を決し
 天地の神を伏し拝み
 生言霊を宣りつれば
 さすがに猛き鬼婆も
 忽ち旗を巻きをさめ
 いづくともなくかくれけり
 再び月は皎々と
 雲を洗ひて出でましぬ
 月見ケ丘の草も木も
 百花千花虫のかげ
 手にとる如く見えければ
 天の恵みと勇みつつ
 秋の尾花の歌よみて
 その夜は漸く明けにけり
 譏り婆アの住むといふ
 火炎の山に進まむと
 吾等は一行五人連れ
 尾花の露をかき分けて
 ここまで漸く来りけり
 ああ惟神々々
 神の光に守られて
 曲の征途に進むこそ
 これにましたる幸はなし
 進めよ進め、いざ進め
 松、竹、梅をはじめとし
 桜も勇めこの首途』
 松は先頭に立ちて歌ふ。
『悪竜猛り湿虫はをどる
 萱草生ふる中道を
 皮の衣に身を固め
 われら一行五人連れ
 高光山に進むなり
 行く手の道は遠くとも
 悪魔は如何にさやるとも
 われ等はおそれじ大丈夫の
 まことの力をあらはして
 神の依さしの神業に
 勇み進むで仕ふべし
 道の行く手にさやりたる
 闇の中なる鬼婆も
 生言霊にやらはれぬ
 いざこれよりは言霊の
 水火をますます清めつつ
 神を真の力とし
 まことの教を杖として
 如何なる悪魔の捕手にも
 撓まず届せず進むべし
 冬男の君の御行方
 探ぬるまでは何処までも
 後へは引かぬ大丈夫の
 高き心は桑の弓
 通さにやおかぬ大和魂
 守らせ給へ天津神
 国津御神の御前に
 心を清めて願ぎ奉る
 ああ惟神々々
 今日の首途に幸あれや
 わが言霊に光あれ』
 竹は歌ふ。
『高光山の麓まで
 国形見むと進みます
 秋男の君に従ひて
 花咲き匂ふ秋の野を
 虫の鳴く音におくられて
 進み来れば昼月の
 かげは御空に白々と
 浮ける姿に秋は来ぬ
 秋日短かく黄昏れて
 道の行く手にあたりたる
 月見ケ丘の聖場に
 一夜をあかし諸々の
 善事曲事見聞きしつ
 樹下のやどりも早あけて
 今日は楽しき旅衣
 悪魔の征途に進むなり
 冬男の君の御行方
 草を分けても探し出し
 安否を君に報ずべし
 若しも曲津に亡ぼされ
 あの世の人となりまさば
 何と詮術なけれども
 必ず仇を打ちきため
 君の恨みを晴らすべし
 譏り婆アの言の葉に
 冬男の君は鬼婆に
 謀られ身亡せ給ひしと
 聞く言の葉の真ならば
 吾等は黙してあるべきや
 吾等が力のある限り
 生言霊のつづくだけ
 打ち出しきため斬り払ひ
 この葭原の国原を
 うら平けくうら安く
 拓かにやおかぬわが心
 うべなひ給へ天地の
 神の御前に願ぎ奉る』
 梅は歌ふ。
『尾花の香り弥清く
 匂ふ小路を辿りつつ
 毒竜イヂチをさけながら
 君の御供に仕へゆく
 今日の旅路の勇ましさ
 秋は漸く更けにつつ
 百草千草は花ひらき
 芳香四方に薫ずなり
 空ゆく鳥の翼まで
 秋陽をあびてぴかぴかと
 御空の玉と輝けり
 ああ勇ましや勇ましや
 吹く風清き秋の野の
 旅ゆく吾は村肝の
 心の駒も勇み立ち
 身の疲れさへ忘れけり
 ああ惟神々々
 秋野の旅に幸あれや
 わが生言霊に力あれ』
 桜は歌ふ。
『吹く風清く空高く
 駒は勇みて嘶ける
 水上山を立ち出でて
 君の御供に仕へつつ
 一夜の露の草枕
 やうやうここに明け初めて
 火炎の山を目あてとし
 悪魔の征途にのぼるなり
 水奔草の毒葉に
 当てられ身亡せ水奔鬼
 彼方此方にひそみたる
 あやしき野辺を進むなり
 吾等は神の子神の宮
 如何なる曲もさやるべき
 草葉にすだく虫の音も
 林に囀る鳥の音も
 谷川流るるせせらぎも
 吾に力を添ふる如
 進め進めと響くなり
 ああおもしろや楽もしや
 秋男の君に従ひて
 御樋代神のあれませる
 高光山に舞ひのぼり
 四方の国形見渡して
 これの大野を開くべく
 進みゆくなり天津神
 道の隈手も恙なく
 守らせ給へと願ぎ奉る
 ああ惟神々々
 わがゆく旅に幸あれや
 わが言霊に力あれ』
と歌ひつつ一行五人勇ましく進む折しも、俄に咽喉渇き堪へ難くなりけるが、こんもりと生ひ繁りたる常磐樹の蔭に、ささやかなる茶店の如きものありて、四五人の若き乙女手を翳し、一行を招き居たりける。
(昭和九・七・二七 旧六・一六 於関東別院南風閣 内崎照代謹録)
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