秋男は木蔭に立って再び生言霊の祝詞を奏上し、葭原国を開くため、水上山の第三子が言霊によって悪魔を打ち負かし、言向け和すと宣り上げた。すると、心地よい風が吹き通り、山腹の女郎花をゆるがせ、めでたい鳥の声がすがすがしく、虫の声もうるわしく聞こえてきた。
一同は言霊の威力に力を得て、壁立つ山肌を山頂に向かって登り始めた。山頂も間近になったころ、一同は腰をおろして体を休め、下界を眺めながらそれぞれここまでの述懐と、最後の決戦の決意を歌っていた。
すると突然、山頂から大岩石の雨が降り落ちてきた。五人は危険の中を省みずに岩の雨をくぐって山頂に達した。すると、猛獣毒蛇の悪魔たちがいっせいに五人に襲い掛かってきた。
五人は火種を奪おうと火口に殺到したが、猛獣毒蛇の群れは必死で襲い掛かった。そして五人をくわえると、次々に火口に投げ下ろしてしまった。
五人の勇者は火口の火に焼かれ、白骨となって天高く舞い上がり、地上に落ちて果てた。